12 / 66
12神級魔法使いが弱すぎるのだが?
しおりを挟む
互いの魔法の詠唱を終えた俺と貴族ゲリン。
しかし、俺はスライムを使わないで素手で殴りに行った。
油断を誘うためだ。召喚魔法使いが使い魔を放置して殴りに行く訳がない。
だが、この手は大抵の魔物にも、神級魔法の使い手の兄にも有効だった。
だが。
ゲリンに急接近して、驚くも素早く迎撃に入られて、双方の中間点で激突して。
そして、圧し負けた。
ギリギリ剣を手で受けて直撃を免れるも、ゲリンは俺の初手を躱わした。
「!?」
バックステップで後ろに下がり、次の手数を出す前にゲリンの斬撃が襲い掛かる。
スピードでも、力でも圧されている。
「ははははは! どうだアル! これが僕の神級魔法の力さ! なんだか知らんが、小手先の魔道具の力で何とかしようとしても、本物の前では無力さ!」
ゲリンは俺の身体強化(小)のスキルを魔道具の力と思ったらしい。
まあ、この世界でスキルは一人一つ、スライムを召喚した俺のスキルが召喚魔法だとしたら、普通そう考えるだろう。
だが。
「どこで手に入れたかしらないが、ちょっと強力な魔道具を手に入れたからと言って、調子に乗らないことだね! 君と僕では格が違うのさ。分かったか? アル、これが僕と君との間の永遠に埋められない溝なんだよ!」
「ゲリン!」
気分良さげに話すゲリンの演説の話の腰を折って、話しかけた。
「俺は召喚魔法使いだよな?」
「はぁ?」
コイツは俺の魔法が召喚魔法で、使い魔が待機しているのを忘れているのだろう。
「……相手のことを良く知りもせず、一方的に見下げるのは止めた方いい。昔から言うだろう。『彼を知り己を知れば百戦危うからず』ってな」
「はは! 何を言うかと思えば、負け犬の遠吠えにしか聞こえないね!」
しかし、俺の言葉に耳を傾けるわけもなく、彼は勝手に勝利を確信しているようだ。
「いいか、女神は僕を選び、この力を与えたんだよ! ……ふっ、お前のインチキな魔道具やコケ脅しにもならないスライムの使い魔と違って、これが選ばれし者の力なんだ!」
「……」
「羨ましいだろう? でも残念だったね。お前は女神に選ばれなかったハズレスキルの所持者! 選ばれなかった君にこんな力はないよ! さあ、今この力で殺してあげよう!」
「ふ~ん。わかった、じゃあ俺のスライムの威力を見てもらえるか?」
「──はっ? 何を言っているんだ! スライムごときに何ができるって言うんだ! 君のような平民が僕と対等に戦おうと考えたこと自体が烏滸がましい!」
まったく、女神から選ばれたのだと? 何をして選ばれたのだ?
何もせず、ただ運で選ばれたとしか思えない力で一体この男は何を誇っているんだ?
エーリヒはハズレスキルだったけど、領地経営の天才だった。
領地の騎士団長のベルンハルトはハズレスキルでもひたすら研鑽して騎士団長にまで上り詰めた。
俺は思う、真に偉大なのは彼らのような努力で実績を勝ち取った人たちなんだと。
それを理解していないから、こんな力ずくで、一辺倒な戦い方しかできないのだろう。
もっと工夫して、相手を良く観察すれば勝ち筋もあっただろうに。
俺はゲリンの能力を見切っていた。コイツは大した敵じゃない。ただ、身体強化の魔法で剣による力押しだけ。
これで汎用魔法などを混ぜて戦われたら、強敵だったろうが。
俺はスライムに、こう命じた。
「お遊び程度に弄んでやれ、死なない程度にな!」
『ぴぎゃーーーーーー』
放置されていたスライムが突然一声上げるとたちまち。
「ひぎゃぁあああああああ、あぶし、あばん、あべん」
ドコドコドコ、ボクッ!? バシバシバシ!! ポコーン、ボコ……
「えええええええっ!?」
何故かリーゼが驚きの声を上げる。
「きえぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇえええ」
スライムに何度も何度も殴打されて転げまわったゲリンは最後に胸に直撃を受けて崖の方に素っ飛んで行った。
「きょーーーーーーーーーーーー!」
バス、バシン、ドスン。
崖にぶつかったゲリンは反動で跳ね返って、こちらに帰ってきて。
「昇竜拳!!」
最後は俺の拳で天高く飛んで行って、例によって地面に落ちて大の字の形の穴を作った。
なんか、散々ほざいた癖に、弱い。
「神級魔法使いが弱すぎるのだが?」
決着の一撃を叩き込んで、俺は思わず呟いてしまった。
しかし、俺はスライムを使わないで素手で殴りに行った。
油断を誘うためだ。召喚魔法使いが使い魔を放置して殴りに行く訳がない。
だが、この手は大抵の魔物にも、神級魔法の使い手の兄にも有効だった。
だが。
ゲリンに急接近して、驚くも素早く迎撃に入られて、双方の中間点で激突して。
そして、圧し負けた。
ギリギリ剣を手で受けて直撃を免れるも、ゲリンは俺の初手を躱わした。
「!?」
バックステップで後ろに下がり、次の手数を出す前にゲリンの斬撃が襲い掛かる。
スピードでも、力でも圧されている。
「ははははは! どうだアル! これが僕の神級魔法の力さ! なんだか知らんが、小手先の魔道具の力で何とかしようとしても、本物の前では無力さ!」
ゲリンは俺の身体強化(小)のスキルを魔道具の力と思ったらしい。
まあ、この世界でスキルは一人一つ、スライムを召喚した俺のスキルが召喚魔法だとしたら、普通そう考えるだろう。
だが。
「どこで手に入れたかしらないが、ちょっと強力な魔道具を手に入れたからと言って、調子に乗らないことだね! 君と僕では格が違うのさ。分かったか? アル、これが僕と君との間の永遠に埋められない溝なんだよ!」
「ゲリン!」
気分良さげに話すゲリンの演説の話の腰を折って、話しかけた。
「俺は召喚魔法使いだよな?」
「はぁ?」
コイツは俺の魔法が召喚魔法で、使い魔が待機しているのを忘れているのだろう。
「……相手のことを良く知りもせず、一方的に見下げるのは止めた方いい。昔から言うだろう。『彼を知り己を知れば百戦危うからず』ってな」
「はは! 何を言うかと思えば、負け犬の遠吠えにしか聞こえないね!」
しかし、俺の言葉に耳を傾けるわけもなく、彼は勝手に勝利を確信しているようだ。
「いいか、女神は僕を選び、この力を与えたんだよ! ……ふっ、お前のインチキな魔道具やコケ脅しにもならないスライムの使い魔と違って、これが選ばれし者の力なんだ!」
「……」
「羨ましいだろう? でも残念だったね。お前は女神に選ばれなかったハズレスキルの所持者! 選ばれなかった君にこんな力はないよ! さあ、今この力で殺してあげよう!」
「ふ~ん。わかった、じゃあ俺のスライムの威力を見てもらえるか?」
「──はっ? 何を言っているんだ! スライムごときに何ができるって言うんだ! 君のような平民が僕と対等に戦おうと考えたこと自体が烏滸がましい!」
まったく、女神から選ばれたのだと? 何をして選ばれたのだ?
何もせず、ただ運で選ばれたとしか思えない力で一体この男は何を誇っているんだ?
エーリヒはハズレスキルだったけど、領地経営の天才だった。
領地の騎士団長のベルンハルトはハズレスキルでもひたすら研鑽して騎士団長にまで上り詰めた。
俺は思う、真に偉大なのは彼らのような努力で実績を勝ち取った人たちなんだと。
それを理解していないから、こんな力ずくで、一辺倒な戦い方しかできないのだろう。
もっと工夫して、相手を良く観察すれば勝ち筋もあっただろうに。
俺はゲリンの能力を見切っていた。コイツは大した敵じゃない。ただ、身体強化の魔法で剣による力押しだけ。
これで汎用魔法などを混ぜて戦われたら、強敵だったろうが。
俺はスライムに、こう命じた。
「お遊び程度に弄んでやれ、死なない程度にな!」
『ぴぎゃーーーーーー』
放置されていたスライムが突然一声上げるとたちまち。
「ひぎゃぁあああああああ、あぶし、あばん、あべん」
ドコドコドコ、ボクッ!? バシバシバシ!! ポコーン、ボコ……
「えええええええっ!?」
何故かリーゼが驚きの声を上げる。
「きえぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇえええ」
スライムに何度も何度も殴打されて転げまわったゲリンは最後に胸に直撃を受けて崖の方に素っ飛んで行った。
「きょーーーーーーーーーーーー!」
バス、バシン、ドスン。
崖にぶつかったゲリンは反動で跳ね返って、こちらに帰ってきて。
「昇竜拳!!」
最後は俺の拳で天高く飛んで行って、例によって地面に落ちて大の字の形の穴を作った。
なんか、散々ほざいた癖に、弱い。
「神級魔法使いが弱すぎるのだが?」
決着の一撃を叩き込んで、俺は思わず呟いてしまった。
51
お気に入りに追加
2,609
あなたにおすすめの小説

学校ごと異世界に召喚された俺、拾ったスキルが強すぎたので無双します
名無し
ファンタジー
毎日のようにいじめを受けていた主人公の如月優斗は、ある日自分の学校が異世界へ転移したことを知る。召喚主によれば、生徒たちの中から救世主を探しているそうで、スマホを通してスキルをタダで配るのだという。それがきっかけで神スキルを得た如月は、あっという間に最強の男へと進化していく。

パーティーを追放されるどころか殺されかけたので、俺はあらゆる物をスキルに変える能力でやり返す
名無し
ファンタジー
パーティー内で逆境に立たされていたセクトは、固有能力取得による逆転劇を信じていたが、信頼していた仲間に裏切られた上に崖から突き落とされてしまう。近隣で活動していたパーティーのおかげで奇跡的に一命をとりとめたセクトは、かつての仲間たちへの復讐とともに、助けてくれた者たちへの恩返しを誓うのだった。

ハズレスキル【分解】が超絶当たりだった件~仲間たちから捨てられたけど、拾ったゴミスキルを優良スキルに作り変えて何でも解決する~
名無し
ファンタジー
お前の代わりなんざいくらでもいる。パーティーリーダーからそう宣告され、あっさり捨てられた主人公フォード。彼のスキル【分解】は、所有物を瞬時にバラバラにして持ち運びやすくする程度の効果だと思われていたが、なんとスキルにも適用されるもので、【分解】したスキルなら幾らでも所有できるというチートスキルであった。捨てられているゴミスキルを【分解】することで有用なスキルに作り変えていくうち、彼はなんでも解決屋を開くことを思いつき、底辺冒険者から成り上がっていく。

外れスキル【削除&復元】が実は最強でした~色んなものを消して相手に押し付けたり自分のものにしたりする能力を得た少年の成り上がり~
名無し
ファンタジー
突如パーティーから追放されてしまった主人公のカイン。彼のスキルは【削除&復元】といって、荷物係しかできない無能だと思われていたのだ。独りぼっちとなったカインは、ギルドで仲間を募るも意地悪な男にバカにされてしまうが、それがきっかけで頭痛や相手のスキルさえも削除できる力があると知る。カインは一流冒険者として名を馳せるという夢をかなえるべく、色んなものを削除、復元して自分ものにしていき、またたく間に最強の冒険者へと駆け上がっていくのだった……。

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。
だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった
何故なら、彼は『転生者』だから…
今度は違う切り口からのアプローチ。
追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。
こうご期待。

どうも、命中率0%の最弱村人です 〜隠しダンジョンを周回してたらレベル∞になったので、種族進化して『半神』目指そうと思います〜
サイダーボウイ
ファンタジー
この世界では15歳になって成人を迎えると『天恵の儀式』でジョブを授かる。
〈村人〉のジョブを授かったティムは、勇者一行が訪れるのを待つ村で妹とともに仲良く暮らしていた。
だがちょっとした出来事をきっかけにティムは村から追放を言い渡され、モンスターが棲息する森へと放り出されてしまう。
〈村人〉の固有スキルは【命中率0%】というデメリットしかない最弱スキルのため、ティムはスライムすらまともに倒せない。
危うく死にかけたティムは森の中をさまよっているうちにある隠しダンジョンを発見する。
『【煌世主の意志】を感知しました。EXスキル【オートスキップ】が覚醒します』
いきなり現れたウィンドウに驚きつつもティムは試しに【オートスキップ】を使ってみることに。
すると、いつの間にか自分のレベルが∞になって……。
これは、やがて【種族の支配者(キング・オブ・オーバーロード)】と呼ばれる男が、最弱の村人から最強種族の『半神』へと至り、世界を救ってしまうお話である。

A級パーティーを追放された黒魔導士、拾ってくれた低級パーティーを成功へと導く~この男、魔力は極小だが戦闘勘が異次元の鋭さだった~
名無し
ファンタジー
「モンド、ここから消えろ。てめえはもうパーティーに必要ねえ!」
「……え? ゴート、理由だけでも聴かせてくれ」
「黒魔導士のくせに魔力がゴミクズだからだ!」
「確かに俺の魔力はゴミ同然だが、その分を戦闘勘の鋭さで補ってきたつもりだ。それで何度も助けてやったことを忘れたのか……?」
「うるせえ、とっとと消えろ! あと、お前について悪い噂も流しておいてやったからな。役立たずの寄生虫ってよ!」
「くっ……」
問答無用でA級パーティーを追放されてしまったモンド。
彼は極小の魔力しか持たない黒魔導士だったが、持ち前の戦闘勘によってパーティーを支えてきた。しかし、地味であるがゆえに貢献を認められることは最後までなかった。
さらに悪い噂を流されたことで、冒険者としての道を諦めかけたモンドだったが、悪評高い最下級パーティーに拾われ、彼らを成功に導くことで自分の居場所や高い名声を得るようになっていく。
「魔力は低かったが、あの動きは只者ではなかった! 寄生虫なんて呼ばれてたのが信じられん……」
「地味に見えるけど、やってることはどう考えても尋常じゃなかった。こんな達人を追放するとかありえねえだろ……」
「方向性は意外ですが、これほどまでに優れた黒魔導士がいるとは……」
拾われたパーティーでその高い能力を絶賛されるモンド。
これは、様々な事情を抱える低級パーティーを、最高の戦闘勘を持つモンドが成功に導いていく物語である……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる