ハズレスキルがぶっ壊れなんだが? ~俺の才能に気付いて今さら戻って来いと言われてもな~

島風

文字の大きさ
上 下
8 / 66

8クリスの婚約破棄?2

しおりを挟む
「クリスティーナ様、私はアンネリーゼ・ユングリングと申します。こんなに身近で話すのは初めてですね。それにしても、噂通りの尊さ。感服しましてよ。私の友人が失礼を致しました」   

「私の方こそ、アンネリーゼ様のご友人とはつい知らず、申し訳ございませんでした」    

「気にしないで、クリス、それに私のことはアンネと呼び捨てして頂戴。友達になってくれないかしら? 友達なら当然よね?」  

「で、殿下とご友人だなど、こ、光栄です。是非……」  

私は汗ばんだ。てっきり、配下の令嬢達を睨んだ私への王女殿下の牽制。てっきり私はそう思ってしまった。  

「だから、堅いのなしよ。アンネと呼んで、さっきの御令嬢方は気にしないで。彼女らが興味あるのは、王女という私の肩書きだけ。私はそんな方々の肩を持つようなことは致しません。それより、アンソフィさんと友人関係にあるとは、本当に噂通りの方なのですわね。できれば私もアンソフィさんの友人にして戴けないかしら?」   

「!?」  

驚いた。王女殿下が、平民に興味を持つなんて。  

「ねえ、あなたアンソフィさんよね。私はクリス。ご存知かしら?」  

「は、はい……ケーニスマルク家の……あの、お、お許しください……!」  

「……許す? 何のことかしら?」  

そうか、私はこの子を助けるために嘘を言ったけど、本人にとって、圧迫感しかなかったのかもしれない。それにきっとアンは私も彼女に嫉妬して嫌がらせしにきたと思っているのだろう。  

「勝手に友人にしてごめんなさい。でも、心外よ。私はあなたに嫉妬して意地悪なんてしないわよ」  

「あら、やっぱり、まだクリスもアンも友達じゃなかったのね」  

ここはアンとアンネと友達になった方が良いな。アンにとっても私にとっても。  

私は王家の嫁ぐ身、その王家の一員たる王女殿下の友人になることは好ましい。  

それに、平民のアンの友達になることも彼女にとって有益だろう。  

誰も王家に連なる者の友人を害する者などいないだろう。  

アンの魔法の才は間違いなく、将来この国にとって有益だ。くだらない貴族の嫉妬で失うわけにはいかない逸材なのだ。  

だから私はアンに微笑みかけながらこう言ったのだった。  

「お願いがあるの。──私と、本当にお友達になってくれないかしら?」  

「── 私も是非お願いしますわ」  

「はい、お二人共、お友達になって下さい。わ、私、この学園に一人の友達もいなくて……」  

こうして私達はアンと友人になった。そして、彼女の魅力にどんどん惹かれて行った。  

アンは、普通にいい子だった。天真爛漫、気取ったところがまるでない彼女は貴族である私にはとても新鮮だった。そして、それはアンネも同様らしかった。  

謙虚で、そのくせ生まれ持った魔法の才能に驕ることなどなく素直で純真。  

容姿は愛らしく、その後多くの令息が彼女に魅入られることになった。 

私とアンネはアンと友人として過ごせたことはとても幸せだった。そして、彼女への嫌がらせが加速することから守るためにも手を尽くした。  

……なのに。  

彼女が2年上の私の婚約者、第一王子カールに見初められるとは夢にも思っていなかった。  それは学園主催の舞踏会でのことだった。  

その時、大広間に流れていた音楽が変わった。ダンスの時間が始まったのだ。みな最初は婚約者同士と踊るため、めいめい決められたパートナーと互いに手を取り中央に進み出ていく。  

私も婚約者のカール殿下と踊ろうと、彼の方に目を向けた。しかし彼は私に手を差し出そうとはせず、歪んだ笑顔で私を睨んでいた。やがて彼は意を決したように口を開き、こう言った。  

「クリスティーナ・ケーニスマルク。貴方との婚約を破棄する事とする」   

「殿下、それは一体?」 

「見苦しいぞクリス! 貴様は醜い嫉妬に駆られて、あのような悪事に手を染めるとはな!」  

殿下の言っていることの意味が分からなかった。 

「……なんのことでしょう?」  

「とぼけるな! 魔法の天才アンソフィ嬢が虐めにあっていると聞いた! お前の仕業だろう!」  

何故か殿下は、これまでの嫌がらせを全ての私のせいにしようとしてきたのだ。  

「カ、カール様……クリスは……!」  

「アンよ、お前は優しい。庇いたくなる気持ちも分かるが……だが、これがこの女の本性だ!」  

アンは当然私の仕業ではないと知っている。それどころか、私達は親友。必死に私のために弁明してくれる。しかし、カール殿下の決めつけの大声にぴしゃりと止められて、驚いて、びくりと体を震わせて黙り込んでしまう。無理もない、平民の彼女にとって、彼は雲の上の存在。  

会場には驚きの声があがった。私とアンは親友だ。それを知っている者は多く、間違いであることはみな知っていた。 

だが。  

「カール殿下がああ仰っているんんだ、きっと間違いであるはずがない」  

「その通り。クリス様……やはり本性を隠しておられたんですね!」  

そして、カールの言葉に微塵の疑いも持たない彼の取り巻き、この有力者の子弟たちが次々と同調してしまった。 

この時、親友の王女アンネがいてくれたら。しかし、彼女は運悪く、舞踏会を休んでいた。  

その舞踏会が終わってすぐ、王家から正式に婚約を破棄する旨の書状が届いた。それは一方的な通知だったが、格下である私たちには、それに異を唱える術はなかった。   

そして私は、婚約者に捨てられた令嬢という不名誉な烙印を押されることになった。社交の場ではあの舞踏会でのことが面白おかしく語られ、私の噂はあっという間に広がっていった。 

私のこれまでの努力はなんだったのか? それを想うと、悲しかった。 

そして、私はその時、一人の男の子の名前と顔を思い出した。 

……アル。 

私は面白おかしく学園中に流布される噂に心を害し、学園を休学して、父の友人である、イエスタ叔父様の領地に静養に向かった。そして。 

「ふっ! ははははは! 無駄ですよ、この私からは逃げられませんよ!」 

殿下の腹心である、アルの兄、エリアスに追われ、命を奪われそうになった。 

その時私の口から出た言葉は。 

「……助けてよぉ! アル!」  

「もちろんだが?」  

その時……応えが、あった。 
しおりを挟む
読んで頂いててありがとうございます! 第14回ファンタジー小説大賞 参加作品 投票していただけると嬉しいです! ブックマークもね(__)
感想 58

あなたにおすすめの小説

救助者ギルドから追放された俺は、ハズレだと思われていたスキル【思念収集】でやり返す

名無し
ファンタジー
 アセンドラの都で暮らす少年テッドは救助者ギルドに在籍しており、【思念収集】というスキルによって、ダンジョンで亡くなった冒険者の最期の思いを遺族に伝える仕事をしていた。  だが、ある日思わぬ冤罪をかけられ、幼馴染で親友だったはずのギルド長ライルによって除名を言い渡された挙句、最凶最悪と言われる異次元の監獄へと送り込まれてしまう。  それでも、幼馴染の少女シェリアとの面会をきっかけに、ハズレ認定されていた【思念収集】のスキルが本領を発揮する。喧嘩で最も強い者がここから出られることを知ったテッドは、最強の囚人王を目指すとともに、自分を陥れた者たちへの復讐を誓うのであった……。

道具屋のおっさんが勇者パーティーにリンチされた結果、一日を繰り返すようになった件。

名無し
ファンタジー
道具屋の店主モルネトは、ある日訪れてきた勇者パーティーから一方的に因縁をつけられた挙句、理不尽なリンチを受ける。さらに道具屋を燃やされ、何もかも失ったモルネトだったが、神様から同じ一日を無限に繰り返すカードを授かったことで開き直り、善人から悪人へと変貌を遂げる。最早怖い者知らずとなったモルネトは、どうしようもない人生を最高にハッピーなものに変えていく。綺麗事一切なしの底辺道具屋成り上がり物語。

勇者パーティーに追放された支援術士、実はとんでもない回復能力を持っていた~極めて幅広い回復術を生かしてなんでも屋で成り上がる~

名無し
ファンタジー
 突如、幼馴染の【勇者】から追放処分を言い渡される【支援術士】のグレイス。確かになんでもできるが、中途半端で物足りないという理不尽な理由だった。  自分はパーティーの要として頑張ってきたから納得できないと食い下がるグレイスに対し、【勇者】はその代わりに【治癒術士】と【補助術士】を入れたのでもうお前は一切必要ないと宣言する。  もう一人の幼馴染である【魔術士】の少女を頼むと言い残し、グレイスはパーティーから立ち去ることに。  だが、グレイスの【支援術士】としての腕は【勇者】の想像を遥かに超えるものであり、ありとあらゆるものを回復する能力を秘めていた。  グレイスがその卓越した技術を生かし、【なんでも屋】で生計を立てて評判を高めていく一方、勇者パーティーはグレイスが去った影響で歯車が狂い始め、何をやっても上手くいかなくなる。  人脈を広げていったグレイスの周りにはいつしか賞賛する人々で溢れ、落ちぶれていく【勇者】とは対照的に地位や名声をどんどん高めていくのだった。

固有スキルが【空欄】の不遇ソーサラー、死後に発覚した最強スキル【転生】で生まれ変わった分だけ強くなる

名無し
ファンタジー
相方を補佐するためにソーサラーになったクアゼル。 冒険者なら誰にでも一つだけあるはずの強力な固有スキルが唯一《空欄》の男だった。 味方に裏切られて死ぬも復活し、最強の固有スキル【転生】を持っていたことを知る。 死ぬたびにダンジョンで亡くなった者として転生し、一つしか持てないはずの固有スキルをどんどん追加しながら、ソーサラーのクアゼルは最強になり、自分を裏切った者達に復讐していく。

外れスキル【転送】が最強だった件

名無し
ファンタジー
三十路になってようやくダンジョン入場試験に合格したケイス。 意気揚々と冒険者登録所に向かうが、そこで貰ったのは【転送】という外れスキル。 失意の中で故郷へ帰ろうとしていた彼のもとに、超有名ギルドのマスターが訪れる。 そこからケイスの人生は目覚ましく変わっていくのだった……。

パーティーを追放されるどころか殺されかけたので、俺はあらゆる物をスキルに変える能力でやり返す

名無し
ファンタジー
 パーティー内で逆境に立たされていたセクトは、固有能力取得による逆転劇を信じていたが、信頼していた仲間に裏切られた上に崖から突き落とされてしまう。近隣で活動していたパーティーのおかげで奇跡的に一命をとりとめたセクトは、かつての仲間たちへの復讐とともに、助けてくれた者たちへの恩返しを誓うのだった。

学校ごと異世界に召喚された俺、拾ったスキルが強すぎたので無双します

名無し
ファンタジー
 毎日のようにいじめを受けていた主人公の如月優斗は、ある日自分の学校が異世界へ転移したことを知る。召喚主によれば、生徒たちの中から救世主を探しているそうで、スマホを通してスキルをタダで配るのだという。それがきっかけで神スキルを得た如月は、あっという間に最強の男へと進化していく。

A級パーティーを追放された黒魔導士、拾ってくれた低級パーティーを成功へと導く~この男、魔力は極小だが戦闘勘が異次元の鋭さだった~

名無し
ファンタジー
「モンド、ここから消えろ。てめえはもうパーティーに必要ねえ!」 「……え? ゴート、理由だけでも聴かせてくれ」 「黒魔導士のくせに魔力がゴミクズだからだ!」 「確かに俺の魔力はゴミ同然だが、その分を戦闘勘の鋭さで補ってきたつもりだ。それで何度も助けてやったことを忘れたのか……?」 「うるせえ、とっとと消えろ! あと、お前について悪い噂も流しておいてやったからな。役立たずの寄生虫ってよ!」 「くっ……」  問答無用でA級パーティーを追放されてしまったモンド。  彼は極小の魔力しか持たない黒魔導士だったが、持ち前の戦闘勘によってパーティーを支えてきた。しかし、地味であるがゆえに貢献を認められることは最後までなかった。  さらに悪い噂を流されたことで、冒険者としての道を諦めかけたモンドだったが、悪評高い最下級パーティーに拾われ、彼らを成功に導くことで自分の居場所や高い名声を得るようになっていく。 「魔力は低かったが、あの動きは只者ではなかった! 寄生虫なんて呼ばれてたのが信じられん……」 「地味に見えるけど、やってることはどう考えても尋常じゃなかった。こんな達人を追放するとかありえねえだろ……」 「方向性は意外ですが、これほどまでに優れた黒魔導士がいるとは……」  拾われたパーティーでその高い能力を絶賛されるモンド。  これは、様々な事情を抱える低級パーティーを、最高の戦闘勘を持つモンドが成功に導いていく物語である……。

処理中です...