ハズレスキルがぶっ壊れなんだが? ~俺の才能に気付いて今さら戻って来いと言われてもな~

島風

文字の大きさ
上 下
1 / 66

1追放? お前らの方が困ると思うんだが?

しおりを挟む
「この出来損ない! 貴様は追放だ!!」   

冷たく、大きな声が、部屋中に響いた。   

「生まれた時から落ちこぼれだとは思っていたが、よりにもよってハズレスキルとはな! お前らしい!!」   

怒りと嘲りの両方を含んだ声が、俺に冷たく浴びせかけられる。   

「優秀な兄に比べて、何の成長もないばかりか、魔法すらろくに使えないことが確定するとは! このベルナドッテ家に恥をかかせおって!! 名誉あるわが家からハズレスキル持ちが現れるなぞ!! そんなお前を今まで養わなければならなかったワシの気持ちが、お前に分かるか?」   

バシン! 父は俺に近付くと、その頬を平手で叩いた。    

俺の頬が赤くなり、同時にガシャンと花瓶が割れる音が響く。   

父が怒りに任せて花瓶も床に叩きつけたのだ。   

俺は父親の大人気ない反応に冷静に対応する。 

  

魔法王国、ユグドラシル。  

その名の通り、魔法が国家の根幹にある王国である。  

しかし、実態は【才能魔法】に秀でた貴族達の独裁国家だった。  

この国は強い魔法の力をもって他国の侵略や魔族、魔物の脅威から民を守ることができる貴族だけがこの国の支配者となるとしていた。  

そんな歪んだ人種差別の身分制度が、この国の基盤となっている。  

 

16歳の誕生日に全ての人が女神から【才能魔法】が贈られ、1つだけスキルが与えられる。 

俺の【才能魔法】の鑑定の結果は【底辺召喚魔法】だった。   

貴族には普通、攻撃魔法など、戦いに特化した【才能魔法】が贈られる。 

才能には『神級魔法』、『伝説魔法』、『上級魔法』の3つがあり、順に強い才能になる。   

兄が女神から贈られた才能は最上級の神級だった。 

一方、俺の才能は聞いたこともない謎の才能だった。 

 

「それで、どんなスキルを持っているんだ? 鑑定を続けてくれ」 

父が謎の才能の内容を確認するよう鑑定家に促す。 

俺の頭上にスキルの内容が浮かんできた。 

才能:底辺召喚魔法 

スキル:スライム召喚 

「スライム召喚……」 

俺のスキルは召喚魔法らしい。スライムとは最も弱い、平民ですら棍棒一つで勝てる魔物だ。 

……ハズレスキルだ。 

「ギャハハハ!? お前らしい。私と違って落ちこぼれのお前らしい!」 

実の兄のエリアスが侮蔑をたっぷり含んだ声で嘲笑する。 

「アル! 今すぐお前を家から追放する。お前は貴族ではない。だから、街に住むことも許さない。街の外に放りだす!! 二度と顔を見せるなぁ!!」 

「そんなことをすれば、領地経営が苦しくなると思うが?」 

俺は、こいつらバカかと思った。  

魔法王国ユグドラシルの貴族、魔法使いの中の魔法使い、賢者と謳われるガブリエルを家長とする、ベルナドッテ家の次男として生まれた俺は魔法の才能がないと蔑まれ、冷遇されていた。  

それに比べて兄のエリアスは子供の頃から魔法の才能に恵まれていた。   

それに引き換え、俺は魔法の才能がなく、他の武芸や学業が良かったにも関わらず、いつも兄と比較されて育ってきた。   

親になじられるのは辛い。比べられるのが辛い。愛情が兄にばかり向くのが辛い。   

子供の頃は少しでも親の気を引くため、必死で魔法の勉強をした。   

しかし、俺には魔法の才能はなかった。 

どんなに頑張っても、簡単に魔法学校のトップをとってくる兄に対して、俺はどんなに必死で頑張っても、クラスの真ん中になるのがやっとだった。   

それでも俺は両親に褒めてもらいたくて、ほんの少しでもいいから愛情が欲しくて、必死で努力した。   

その努力が実ったのか、一度だけ苦手な風魔法の試験で100点が取れた。   

100点の試験結果を持って、いそいそと家へ帰った。   

両親が褒めてくれる! 俺のことを見てくれる!!   

そう思うと、心がはやった。   

そして、帰宅するなり、   

「父様! 母様!! 俺、風魔法の試験で100点をとったよ!」   

大声で両親に言った。てっきり、俺のことを褒めてくれる言葉が待っていると思っていた。   

だけど、   

「五月蠅い! お前なんかのことはどうでもいい! エリアスが大変なんだ!!」   

帰ってきたのは父親からの罵声だった。   

「本当にエリアスと違って空気も読めない子なのね! 本当に血が繋がっているのかしら?」   

そして、実の母親から投げつけられた言葉。   

兄のエリアスと俺の血が繋がってなければ、俺は誰の子なんだ、母親よ?   

子供心でもそう思った。でも、当時の俺は親離れできていなかった。   

「お、俺ね、一生懸命頑張って、風魔法のテストで初めて100点とったんだよ!」   

俺は必死にアピールした。両親に褒めてもらいたかった。   

両親に関心を持ってもらえる機会は二度とないんじゃないかと思えて。 

「エリアスは風魔法の試験がおもわしくなくて、魔法学園での成績が2位になってしまったんだ!! 運悪く、風魔法のテストでいつになく悪い点をとったおかげでな!!」   

「それなのに、お前は風魔法の試験で100点取ったなんて嘘をついて!!」   

「ち、違う。本当に100点取ったんだよ!」   

俺は必死に自分が100点を取ったと主張した。でも、それは大きな間違いだった。   

簡単な話だ。自分の子が風魔法の試験で悪い点をとったおかげで、2位の成績になってしまったんだ。   

そこへ、よその子が風魔法の試験で100点取ったなんてうそぶいたなら……   

そう、俺はよその子と同じだったんだ。彼らにとって……   

「嘘をついてまで、兄を貶めたいのか? お前には人間の赤い血が流れているのか?」   

「あなたには人の心がないのね……」   

赤い血が流れていない?    

人の心がない? 

お前らだろ?   

今から思えば、はっきりわかる。   

俺は両親の子じゃない。例え血が繋がっていても。   

その時から、俺は彼らを親と認識できなくなった。   

それから、両親の冷遇は更にひどくなった。それで俺は13歳の時から、領地の辺境で暮らすことを願いでた。 

俺の意見はあっさり通った。それだけ俺への関心が低かったのだろう。 

そして、俺は人生の師とも言える人物に出会った。両親は領地をほったらかしにして遊び惚けていたが、その領地経営を一人で切り盛りしていたのが、執事長のエーリヒだった。 

彼は俺に惜しみない愛情を注いでくれた。そして、気がついたら、領地経営の手伝いをするようになっていた。 

そして、俺はこの分野の才能はあったのか、エーリヒと二人で更に領地を繁栄させていた。  

「領地経営で困ると思うのだが?」 

「なんだその態度は。そのスキルでは貴族など名乗れるわけがないだろう?」  

俺はやっぱりなと思った。元より、父に肉親として扱ってもらおうだなんて……両親にそんな感情がある筈もない。 

だが、こいつらはバカだ。今、この家を誰が支えているのかわかっていない。  

だが、俺は、父、ガブリエル・ベルナドッテによって、魔法の名門、ベルナドッテ子爵家を追放され、街からも追放された。  

もっとも、困るのはあっちだと思うのだが…… 
しおりを挟む
感想 58

あなたにおすすめの小説

学校ごと異世界に召喚された俺、拾ったスキルが強すぎたので無双します

名無し
ファンタジー
 毎日のようにいじめを受けていた主人公の如月優斗は、ある日自分の学校が異世界へ転移したことを知る。召喚主によれば、生徒たちの中から救世主を探しているそうで、スマホを通してスキルをタダで配るのだという。それがきっかけで神スキルを得た如月は、あっという間に最強の男へと進化していく。

パーティーを追放されるどころか殺されかけたので、俺はあらゆる物をスキルに変える能力でやり返す

名無し
ファンタジー
 パーティー内で逆境に立たされていたセクトは、固有能力取得による逆転劇を信じていたが、信頼していた仲間に裏切られた上に崖から突き落とされてしまう。近隣で活動していたパーティーのおかげで奇跡的に一命をとりとめたセクトは、かつての仲間たちへの復讐とともに、助けてくれた者たちへの恩返しを誓うのだった。

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

弟に裏切られ、王女に婚約破棄され、父に追放され、親友に殺されかけたけど、大賢者スキルと幼馴染のお陰で幸せ。

克全
ファンタジー
「アルファポリス」「カクヨム」「ノベルバ」に同時投稿しています。

ハズレスキル【分解】が超絶当たりだった件~仲間たちから捨てられたけど、拾ったゴミスキルを優良スキルに作り変えて何でも解決する~

名無し
ファンタジー
お前の代わりなんざいくらでもいる。パーティーリーダーからそう宣告され、あっさり捨てられた主人公フォード。彼のスキル【分解】は、所有物を瞬時にバラバラにして持ち運びやすくする程度の効果だと思われていたが、なんとスキルにも適用されるもので、【分解】したスキルなら幾らでも所有できるというチートスキルであった。捨てられているゴミスキルを【分解】することで有用なスキルに作り変えていくうち、彼はなんでも解決屋を開くことを思いつき、底辺冒険者から成り上がっていく。

外れスキル【削除&復元】が実は最強でした~色んなものを消して相手に押し付けたり自分のものにしたりする能力を得た少年の成り上がり~

名無し
ファンタジー
 突如パーティーから追放されてしまった主人公のカイン。彼のスキルは【削除&復元】といって、荷物係しかできない無能だと思われていたのだ。独りぼっちとなったカインは、ギルドで仲間を募るも意地悪な男にバカにされてしまうが、それがきっかけで頭痛や相手のスキルさえも削除できる力があると知る。カインは一流冒険者として名を馳せるという夢をかなえるべく、色んなものを削除、復元して自分ものにしていき、またたく間に最強の冒険者へと駆け上がっていくのだった……。

A級パーティーを追放された黒魔導士、拾ってくれた低級パーティーを成功へと導く~この男、魔力は極小だが戦闘勘が異次元の鋭さだった~

名無し
ファンタジー
「モンド、ここから消えろ。てめえはもうパーティーに必要ねえ!」 「……え? ゴート、理由だけでも聴かせてくれ」 「黒魔導士のくせに魔力がゴミクズだからだ!」 「確かに俺の魔力はゴミ同然だが、その分を戦闘勘の鋭さで補ってきたつもりだ。それで何度も助けてやったことを忘れたのか……?」 「うるせえ、とっとと消えろ! あと、お前について悪い噂も流しておいてやったからな。役立たずの寄生虫ってよ!」 「くっ……」  問答無用でA級パーティーを追放されてしまったモンド。  彼は極小の魔力しか持たない黒魔導士だったが、持ち前の戦闘勘によってパーティーを支えてきた。しかし、地味であるがゆえに貢献を認められることは最後までなかった。  さらに悪い噂を流されたことで、冒険者としての道を諦めかけたモンドだったが、悪評高い最下級パーティーに拾われ、彼らを成功に導くことで自分の居場所や高い名声を得るようになっていく。 「魔力は低かったが、あの動きは只者ではなかった! 寄生虫なんて呼ばれてたのが信じられん……」 「地味に見えるけど、やってることはどう考えても尋常じゃなかった。こんな達人を追放するとかありえねえだろ……」 「方向性は意外ですが、これほどまでに優れた黒魔導士がいるとは……」  拾われたパーティーでその高い能力を絶賛されるモンド。  これは、様々な事情を抱える低級パーティーを、最高の戦闘勘を持つモンドが成功に導いていく物語である……。

『おっさんの元勇者』~Sランクの冒険者はギルドから戦力外通告を言い渡される~

川嶋マサヒロ
ファンタジー
 ダンジョン攻略のために作られた冒険者の街、サン・サヴァン。  かつて勇者とも呼ばれたベテラン冒険者のベルナールは、ある日ギルドマスターから戦力外通告を言い渡される。  それはギルド上層部による改革――、方針転換であった。  現役のまま一生を終えようとしていた一人の男は途方にくれる。  引退後の予定は無し。備えて金を貯めていた訳でも無し。  あげく冒険者のヘルプとして、弟子を手伝いスライム退治や、食肉業者の狩りの手伝いなどに精をだしていた。  そして、昔の仲間との再会――。それは新たな戦いへの幕開けだった。 イラストは ジュエルセイバーFREE 様です。 URL:http://www.jewel-s.jp/

処理中です...