悪役令嬢が最強!伝説の魔法使いが悪役令嬢に転生。いろいろやらかして追放されて贖罪をしながらのんびり。この悪役令嬢あまり懲りてないみたい。

島風

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魔王と勇者討伐9

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女神様の「……どうしよう」という頼りない言葉を聞いて一瞬途方にくれたが、チャンスである。うまい方法、人にとっても魔王にとっても都合がいい方法が考えればいいんだ。 

「女神様、魔王の贖罪は人を殺さない事でいいのでよね? なら900年も人を殺してなかったんなら、いいんじゃないですか? 私も900年位生きていたら、流石に一人位殺していると思います」 

「クリスさん。人は1000年何度生まれ変わってもほとんどの人は人を殺したりしません。人を殺してしまうのはそれ程罪深いのです。もちろん例外はあります。戦争等で止む無く人を殺してしまう場合、そして…自身の命を守る場合…」 

「それなら、魔王は自身に襲い掛かってくる軍勢を殺したんでしょう? それって自身の命を守る為なんじゃ?」 

私は女神様の話を聞いて、それなら魔王に罪はないのではないかと思えた。 

「魔王が殺した軍勢の中の大半は何も知らない唯の兵士です。彼らはただ、命令されて魔王を殺そうとしたのです。彼らには妻や子もいたのです。そんな人達を何十万人も殺してしまったのです。それが罪ではないとは言えません」 

「じゃ、どうすれば魔王は許されるのですか? 人だけが許されて、魔王はどうするのですか? 不公平ではないですか?」 

私は思わず怒鳴ってしまった。それじゃ、あんまりにも魔王が哀れだ。 

「クリスさん。魔王は今許されました。魔王の贖罪は人を殺さない事ではありません。人と話あい、理解される事です。魔王が人に疎んじられたのもコミュニケーションが苦手だったからです。初代勇者が魔王に負の感情を抱いたのも魔王が理解し難かったからです」 

「今、許されたって事は私達が魔王と話しあったからですか? そんな事で良かったのですか?」 

「決してそんな事と言う程容易な事ではありません。人は自身と大きく異なる者に恐怖し、理解し難い者を嫌悪します。その心を克服しなければ魔王と人が話し合う事などできません。本来、魔王が人に理解を得られる様に努力すべきだったのです」 

「魔王は500年前と違って、私に話しかけてきました。だから話しあえたのです。それは魔王の努力だと思います」 

私は思っていた事を言った。魔王は私に語り掛けてきた。例え私に人を裏切れというものだったとしても、原因はそれだったのだから。 

「その通りですね。確かに今世は魔王の努力があったという点は認められます。故に人だけでなく、魔王も許しましょう」 

良かった。でも、気のせいか無理やり許した事にして、ハッピーエンドにして1000年前の女神様の過ちもなかった事にしている様な気がする。 

「あの、女神様、ちなみに今後虚数魔法使いのタレントを人に与える事はあるのですか?」 

「そんな事する訳ないでしょう!?」 

わぁ~やっぱり、この女神様、虚数魔法使いは欠陥だという事、薄々気づいてたんだ。でも自分は悪くないという事に無理やりする気だ。いかん、心が読まれているんだった。 

「……流石、女神様、なんてお心が広い」 

「私は女神です。当然の事です」 

「(クリスさん。わかってますよね? 誰かに真実をちくったりしたら、天罰ですからね!?)」 

「(わかってますよ。女神様…それにしても、女神様って、駄女神なんですね…)」 

「(な、なんでまたそれを言われるのかしら、私ってやっぱりそうなんですか?)」 

自分で自覚しましょう。 

こうして、人も魔王も許された。魔王は女神様の聖なる歌で瘴気を完全に浄化されて、魂と帰り、輪廻転生に戻った。そして、女神様は最後に教えてくれた。 

「クリスさん。最後の一つ教えておきます。あなたも薄々気づいているでしょうが、魔王を裏切った初代勇者は500年前にあなたを裏切ったあの勇者です。そして今世であなたを恨んだ勇者も同じ魂を持っています…そして、あなたの妹さん、ベアトリスさん。彼女は500年前の聖女…そして1000年前に魔王を裏切った恋人その人です。彼女も哀れな人なのです。彼女は本当に魔王を裏切った訳ではないのです。初代勇者に魅了され、間違いを犯した彼女は魔王の元に戻る勇気はありませんでした…魔王への愛が故に…。それに魔王の元に戻れる機会はなかったのです。それ程、彼は忌み嫌われていたのです。だから死の間際、『ごめんなさい』と一言残したのです。しかし、あの一言で彼は我に返った…」 

「ベアトリスが…」 

なら、せめて魔王に教えてあげたら良かったんじゃないだろうか? 

「いえ、ベアトリスさんは来世でいつかまた魔王と出会えると思います。だから、これで良いのです。これ以上ベアトリスさんに罪の意識を持たせるべきではないのです」 

「わかりました。ベアトリスは私の妹です。これ以上彼女に罪悪感を抱いてほしくありません。彼女は私を刺して、罪の意識を感じています。でも、私はむしろ、これでお相子だと思いました。私はベアトリスを許します。きっとベアトリスも私を許してくれると思います」 

女神様は最後に微笑を浮かべるとゆっくりと消えて行った。気がつくと、みんなが私を見ていた。そうか、女神様が顕現した時に周りが真っ白になったけど、そこには私と魔王と女神様しかいなかった。私はみんなの傍に返ってきたんだ。 

「クリス!?」 

アルだ。心配そうな顔で私を見ている。 

「アル、全部終わったわ。女神様が魔王を救ってくれた。もう、人は魔王に怯える必要はないわ」 

「じゃあ、ご褒美あげないとね」 

えっ? ご褒美って? て、アル、何顔近づけているの? 何私の腕を掴んで、近くに引き寄せているの? これって? 私は上を向いて目を瞑った…主人公がチョロインでいいのかな?
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