悪役令嬢が最強!伝説の魔法使いが悪役令嬢に転生。いろいろやらかして追放されて贖罪をしながらのんびり。この悪役令嬢あまり懲りてないみたい。

島風

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魔王と勇者討伐6

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「その魂の波動、そなた、あの時の青髪の魔導士か?」 

「そうよ。500年の時を超えてあなたを滅ぼす為に来たのよ」 

くくくっと魔王は薄ら笑う。何故こんなにも余裕がある? 500年前よりかなり情勢は不利な筈だ。この魔王は生まれたばかりなのだ。 

「そなた、500年前はアリシアと名乗っていたな、今世ではなんと言う?」 

「クリスよ、何故そんな事を聞くの?」 

「クリスかいい名だ……そしてまっすぐで、未だ何も闇を知らぬのだな、いずれ知る事になるだろうが…そうだ、クリス、罪深い人を裏切り、我の味方につく気はないか?」 

私に仲間になれと? そんな事は断固拒否する。何故私が魔王の下につかねばならないのか? 

「お断りよ。そんなことをする理由が考えられない」 

しかし、なぜ魔王は私を味方に引きこもうとするのだろうか? それにこの魔王は虚無を使った。500年前は使っていなかった、何を企んでいるのか? 

「た、たすけてくれ……」 

魔王の後ろから、今にも消えいりそうな声が聞こえてきた。その声は勇者カールのものだった。 

「うん? まだ生きていたのか?」 

魔王は振り返り、床から勇者カールの首をボロ雑巾の様につかみ、持ち上げた。 

流石に勇者、闇魔法への耐性が高いから生きていたのだろう。しかし、彼の命は風前の灯だ。 

「兄上!」 

エリアス皇太子が勇者カールに向かって声をかける。前へ出ようとするので、それを制する。魔王は勇者カールの襟首をつまんだまま、私たちを見た。 

「この愚か者を気に掛けるのか? お前達人間の事は本当にわからん。この男はクズだ。お前達はなぜこんなヤツを気にかける。味方殺しの愚か者なぞ捨て置けば良いだろう」 

「兄上は罪をおかした。しかし、それでも、人として罪を悔いて処罰を受けて欲しい」 

「くだらんな、そんなものは自己満足だ。この男にそんな価値なぞはない。そうだ、証明してやろう。 

おい、お前、お前の命とお前の国の民全て、その二つのうち一つだけ助けてやろう。さあどちらかを選んでみろ?」 

魔王は勇者カールに顔を近づけて薄ら笑いを浮かべる。答えを予想しているのだろう。多分、彼は…彼は死の淵にあっても尚も生への執着を捨てていない様だった。必死に声を絞りだす。 

「わ、私の命を、私の命を助けてくれ」 

魔王はにやりと笑うと、 

「これが勇者か? そら見た事か? 貴様の兄か? だが、人とはこういうものなのだ」 

「兄上……」 

エリアス皇太子は、勇者カールの恥知らずな命乞いを聞いて茫然自失となる。 
カールは腐った人間だ。だが、人間は誰しもが腐っている訳じゃない。 

「まあ、予想通りの答えを聞けて、余興としてはまずまずだな。そうだな、貴様の願いだが、嫌だな、貴様もこの大陸の民も全て殺す」 

「そ、そんな、ぐぁっ!!」 

断末魔の声をあげ、勇者カールの身体がびくんと震える。 

「勇者らしい、見苦しい最後だったな。この様な人間なら殺しても構わん」 

そう言う魔王につまみあげられている勇者カールは、人形のようにダラリと手足を垂らしていた。もう、命はついえているだろう。 

「もう一度問う……やはり我の味方につく気は無いか?」 

「お断りよ。なぜ私に裏切れと言うの? 私があなたの眷属に近いとでも言うの?」 

「それは……教えてやろうか?」 

魔王は問いかけようとしているが、突然魔法が発動する気配を感じた。私に向かい、闇魔法が襲う、しかし、アルが瞬歩のスキルで助けてくれる。 

「ふん、貴様には貴様を愛する者がいる様だな。哀れな、いずれ裏切られるものに」 

「アルは私を裏切ったりはしない!」 

魔王はくくくと笑い、話し始めた。 

「私も人だった頃はそう思っていた。見せてやろう。私の素顔を」 

そういって、魔王は黒い兜を脱いだ。 

「―――――~~~~ッ!!!!」 

魔王の髪は青く染まっていた。 

「青く染め上がった髪、お前にはこれが何を意味するのかわかるだろう。私も青の魔導士、虚数魔法使いだ。そして、元は人間だった。お前は何故前世で殺されたかわかっているのか? お前は疎まれたのだ。あまりに強大な力を持ち過ぎたお前はアクレイア王国の人々に殺されたのだ。あれは勇者の独断ではない。さあ、我の側へつけ、そして人に懲罰を与えるのだ。憎いだろう? 何の罪もないお前は王国に殺されたのだ」 

「あなたの言う事は本当なのかもしれない。でも、私には私を慕う人がいた。私を愛してくれる人がいた。いえ、私が愛していたんです! 青の魔導士が虐待されていて、不条理だと何度も思った。でも、私は人を憎んだりはしない。だって、私は愛している人がいるから! 愛されなくても、愛する人の為、国を亡ぼしたりを、多くの人を死に追いやるなどとは思わない」 

「クリス、僕は僕の為なら、クリスが人を裏切っても仕方ないと思うよ」 

アル、今は黙っていて、後で電撃10000回ね。 

私はでも理解した。それは何故前世で不条理に勇者と聖女に見捨てられたのか、勇者も聖女もあの場所から私抜きでは生還できる筈などが無い……つまり命をかけて私を殺した。何故か? それは私にはアクレイア王国を滅ぼし、全ての人を殺してしまうだけ力があるのだからだろう… 

「……どうせ最後は裏切られるのだ。お前の未来を教えてやろう。前世と同じか、もしくは我と同じ道を歩むしかないのだからな」 

「あなたに何があったと言うの? あなたが元々人なら何故こんな酷い事ができるの?」 

魔王がどうして生まれたのか? 古くから探求するものは多かった。しかし、その答えに辿りついた者はいない。魔王は人であり、青の魔導士だったというのか? 強大な力を持つと魔王になってしまうのか? 

「アクレイア王国の建国の話はどう伝わっているのだ?」 

「初代勇者と聖女が魔王を封印し、王国を建国したとあります」 

「くくくくっ、勇者と聖女? あのあくどい男と卑しい女が?」 

「勇者と聖女を侮辱するのですか?」 

「そもそも疑問に思わないのか? 魔王と言われる我が現れる前にも人の国は存在したはずだろう? 我は人の歴史よりその歴史は短い。我は人から生まれたのだからな」 

確かに魔王誕生の起源は不明だ。だが一方で、魔王誕生とアクレイア王国建国以前の歴史に関する書物は一切見つからなかった。魔王誕生の際の戦いで焼失したとされているが…… 

「私は1000年前に生まれた。いや、魔王になった。女神が人に怒り、懲罰を与えた。懲罰を与える役割として、その為に私は生まれた。私は女神より人を蹂躙する役割を与えられた」  

「そ、そんな、女神様が本当にいるのなら、そんな事をするはずがない!」  

私は女神様を信じてはいなかった。でも、女神様が本当にいるのなら、そんな筈等あるか! 

「人はあまりに傲慢で嫉妬深かった、初代勇者と呼ばれる男は卑怯者だった。そして初代聖女はクズだった。私はアクレイア王国建国の英雄だった。しかし、私の居場所はアクレイア王国にはなかったのだ。二人は私の幼馴染で、子供の頃からのつきあいで、勇者は親友だったし、聖女は私と婚約の約束までしていたのに…それなのに裏切った」 

「あなた、愛していた人達に裏切られたの?」 

私はこの魔王が何を言わんとしているかが、わかった。彼は裏切られたのだ。おそらく最愛の人にすら… 

「ああ、私は馬鹿だった。永遠の愛…そんなものがあると思っていた頃もあった。人は愚かなものだ。誰しも自身の事が可愛い。そして、人は妬み、嫉み、そしてその心は移ろいやすい」 

「つまり、幼馴染の彼女に振られて寝取られて、ブチぎれて人を殺しまくっている訳だ」 

えっとアル、私もちょっとそうかなと思ったけど、そんなにストレートに言っちゃ駄目なやつだからね? 

「我は…我は…」 

アルが魔王を泣かしちゃった…… 
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