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魔王と勇者討伐5
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「お、お前が悪いんだ……魔王を倒すのは勇者である私の役目なはずなのに……」
そんな理由で私やベアトリスが殺されてたまるか! そもそも魔王討伐の手柄をそんなに誇りたいのか? 人にとって魔王討伐は種族が生き残る為、必須の戦いなのだ。そこに名誉だの誇りだのと言っていていい訳が無い。
「私は人を殺した事はありません。しかし、初めて殺意が湧きました。もちろん、人を殺す様な事はしません。しかし、魔王との戦闘中に何をされるかわかりませんから、死なない程度に痛めつけて行動不能にするという事でいいでしょうか?」
私はかなりあくどい笑みを浮かべている事だろう。かつて妹ベアトリスを虐めていた時に浮かべていた笑みがこれなのかもしれない。長い間忘れていた感情、悪意だ。
「その役目は僕がするよ。僕もいい加減、この男には腹がたってね。前世だけでなく、今世でまで僕のクリスが殺されそうになったかと思うと殺意が止められない!」
「アル君、だから殺したら駄目だからね。そうね、エリアスさんに任せましょう。でも、その前に私もこの人に言いたい事があるの、それを先に言わせて?」
皆、頷いた。セシーリアさんは何を言う気だろう?
「私ね、クリスちゃんが追放刑になった時に思ったの、本当にクリスちゃんが悪いの? ベアトリスさんを害したのは確かにクリスちゃんよ。でもその原因を作ったのは誰かしら?」
「そんなもの、そこのアホな聖女が私に惚れるからいかんのだろう? 私は心底嫌悪したし、ベアトリスの方が好みだった」
セシーリアさんはすーと息を吸い込むと、一気にまくしたてた。
「あなたはクリスちゃんの婚約者でしょう? それなのにベアトリスさんに気が移るのだなんて、この浮気者! そもそも皇族が好き嫌いで結婚なんてできると思う方がおかしいの! この頭のおかしい糞馬鹿野郎!」
はっ、なんかセシーリアさんの発言ですーと私の胸のもやもやが取れた。
「その通りです。兄上、貴方はかなり大きな勘違いをしておられた。ベアトリス穣と婚約をしたと吹聴している様ですが、そんな事は父上もケーニスマルク家も了承しておりません。ベアトリス穣とは、私とが正式に婚約が決まりました。あなたの心残す処は何もございません」
「そ、そんな事、そんな事、私は認めん! 私が認めないのだ!」
その時、周囲に爛れた瘴気が満ち溢れる。どういうことだ? 未だダンジョンの最終階層ではない。この瘴気はまるで?
「駄目っ! みんな、下がって」
「な、何だ!」
私はベアトリスを抱えて後に大きく跳躍した。そして、セシーリアさんはエリアスさんが、ガブリエルさんとアドロフさんはアルが連れて後ろに跳躍する。その瞬間、私たちが今までいた空間に闇の剣が降り注いだ。そして、勇者カールがズタボロになり闇に侵食されて消えて逝った。
「こ、これは……」
この魔法…これは闇属性最上位魔法神滅斬(ラグナ・ブレード)。魔王の得意とする魔法だ。使えるものは当然…しかし、それより、この魔法を発動するのにつかわれたのは魔素ではない。虚無だった。私と同じ…何故魔王が虚無を?
「ふふふ、敵地で仲間割れとはな。やはり人間は愚かしいな。いやこの大陸の人間は… と言うべきかな。しかし、その中でも王侯貴族は格別に愚かな様だな。礼を言うぞ、勇者をこんなにも簡単に殺すことができた事に」
ダンジョンの廊下に突然黒衣の男が現れた。黒い甲冑、黒い剣を身につけた男。そう、彼がそうなのだ。
「……魔王」
そんな理由で私やベアトリスが殺されてたまるか! そもそも魔王討伐の手柄をそんなに誇りたいのか? 人にとって魔王討伐は種族が生き残る為、必須の戦いなのだ。そこに名誉だの誇りだのと言っていていい訳が無い。
「私は人を殺した事はありません。しかし、初めて殺意が湧きました。もちろん、人を殺す様な事はしません。しかし、魔王との戦闘中に何をされるかわかりませんから、死なない程度に痛めつけて行動不能にするという事でいいでしょうか?」
私はかなりあくどい笑みを浮かべている事だろう。かつて妹ベアトリスを虐めていた時に浮かべていた笑みがこれなのかもしれない。長い間忘れていた感情、悪意だ。
「その役目は僕がするよ。僕もいい加減、この男には腹がたってね。前世だけでなく、今世でまで僕のクリスが殺されそうになったかと思うと殺意が止められない!」
「アル君、だから殺したら駄目だからね。そうね、エリアスさんに任せましょう。でも、その前に私もこの人に言いたい事があるの、それを先に言わせて?」
皆、頷いた。セシーリアさんは何を言う気だろう?
「私ね、クリスちゃんが追放刑になった時に思ったの、本当にクリスちゃんが悪いの? ベアトリスさんを害したのは確かにクリスちゃんよ。でもその原因を作ったのは誰かしら?」
「そんなもの、そこのアホな聖女が私に惚れるからいかんのだろう? 私は心底嫌悪したし、ベアトリスの方が好みだった」
セシーリアさんはすーと息を吸い込むと、一気にまくしたてた。
「あなたはクリスちゃんの婚約者でしょう? それなのにベアトリスさんに気が移るのだなんて、この浮気者! そもそも皇族が好き嫌いで結婚なんてできると思う方がおかしいの! この頭のおかしい糞馬鹿野郎!」
はっ、なんかセシーリアさんの発言ですーと私の胸のもやもやが取れた。
「その通りです。兄上、貴方はかなり大きな勘違いをしておられた。ベアトリス穣と婚約をしたと吹聴している様ですが、そんな事は父上もケーニスマルク家も了承しておりません。ベアトリス穣とは、私とが正式に婚約が決まりました。あなたの心残す処は何もございません」
「そ、そんな事、そんな事、私は認めん! 私が認めないのだ!」
その時、周囲に爛れた瘴気が満ち溢れる。どういうことだ? 未だダンジョンの最終階層ではない。この瘴気はまるで?
「駄目っ! みんな、下がって」
「な、何だ!」
私はベアトリスを抱えて後に大きく跳躍した。そして、セシーリアさんはエリアスさんが、ガブリエルさんとアドロフさんはアルが連れて後ろに跳躍する。その瞬間、私たちが今までいた空間に闇の剣が降り注いだ。そして、勇者カールがズタボロになり闇に侵食されて消えて逝った。
「こ、これは……」
この魔法…これは闇属性最上位魔法神滅斬(ラグナ・ブレード)。魔王の得意とする魔法だ。使えるものは当然…しかし、それより、この魔法を発動するのにつかわれたのは魔素ではない。虚無だった。私と同じ…何故魔王が虚無を?
「ふふふ、敵地で仲間割れとはな。やはり人間は愚かしいな。いやこの大陸の人間は… と言うべきかな。しかし、その中でも王侯貴族は格別に愚かな様だな。礼を言うぞ、勇者をこんなにも簡単に殺すことができた事に」
ダンジョンの廊下に突然黒衣の男が現れた。黒い甲冑、黒い剣を身につけた男。そう、彼がそうなのだ。
「……魔王」
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