悪役令嬢が最強!伝説の魔法使いが悪役令嬢に転生。いろいろやらかして追放されて贖罪をしながらのんびり。この悪役令嬢あまり懲りてないみたい。

島風

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魔王と勇者討伐4

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「兄上、そこまでです。しかし、せめて魔王を倒した後に凶行に及びませぬか?」 

声が聞こえた。中層階層を抜けて誰も来られない筈の下層ダンジョンに何故か人がいた。あれは第二皇子、いや現皇太子エリアス? 

彼だけではなかった。エリアスと聖女セシーリアさん、それにアル! 

「今助けてあげるから、セシーリアさんが…」 

どうしてアルはいつも微妙にカッコ悪いのかな? 助けに来てくれて嬉しい事は嬉しいだけど、余計な一言多いんだよな。そりゃ、アルにはどうしようもないよ。でも別にそれ責めたりしないよ。 

聖女セシーリアさんが解呪の魔法を唱え、アルが私に刺さった剣を抜く、そして直ぐ回復魔法で傷を回復してくれた。 

しかし、皇太子エリアスと皇子カールは口論になっている。 

「兄上、もうやめてください。あなたがしている事は人として間違っています。ましてや帝国を救うクリスティーナ嬢を呪いの剣で殺し、ベアトリス嬢を斬り殺すのだなんてもっての他だ!」 

「駄目なんだ! 魔王は勇者が倒す必要があるんだ! この悪女がのさばったせいで勇者の地位が落ちた。魔王を倒すのは私なんだ!!」 

「兄上! 貴方の個人的な感情でどうこうすべき事ではないでしょう? それに何故ベアトリス嬢まで? 二人もの聖女を手にかけるだなど、信じられない!」 

「お前の方こそどうなっているんだ? お前だって、クリスティーナが気に入らなかったんだろう?」 

「兄上、今のクリスティーナ嬢はご立派です。何故それがわからない?」 

二人が口論している間に私はベアトリスの元に行った。もしかしたら、未だ息があるのかもしれない。一縷の望みをかけて、ベアトリスの胸の鼓動を確かめる。しかし、 

「無理な様よ。クリスちゃん…もう心臓が動いていない。もう伝説の魔法、リザレクションでも唱えないと、生き返る事は無いわ…」 

「なら、リザレクションを唱えます!」 

私は言い切った。ベアトリスを助ける。それが私の宿命の様に思えた。ベアトリスは私の命を救ってくれた。ならば、今度は私が妹ベアトリスを救う時! 

「信じられない偽善だな? あれだけ妹を虐めておいて今更姉らしい事をしようだ等」 

「許されない罪を犯したからこそ、何とか償いたいと思うものではないですか?」 

私は勇者カールを睨みつけてそう言った。許せない、この勇者カールは私は許せない。 

「そうやって、前世でも人の都合も知らず、力を振りかざしたから死ぬ事になったんだ。ざまを見ろ」 

「!?」 

私は思わずカールを見た。カールの面差しはあの前世で私を見捨てた勇者に似ていた。そうか!? 彼が私を憎む理由。それは勇者として全くいいところ無く、私に全ての名声をもっていかれたあの勇者の生まれ変わり。私と同様、彼も前世の記憶を持っていたのか? 

しかし、今はベアトリスを救う事の方が先だ。私はメガヒールの呪文を改良して、新しい呪文を唱える事にした。リザレクションの呪文は前世で研究した事がある。要は回復魔法の最上級魔法だ。多量の魔力を込めて光属性の回復魔法を唱えれば理論上、例え心臓が止まっていても、損傷が激しい…例え脳が損傷した人間であっても生き返る筈だ。 

メガヒールの呪文の術式を改良したものへと変更し、呪文詠唱…の前に 

「セシーリアさん、聖歌をお願いします。私の魔力をあげて、回復の魔法を最大魔力でやってみます」 

「わかったわ。クリスちゃん。任せて」 

セシーリアさんの聖歌が完成すると、直ちに呪文の詠唱にはいった。 

「聖なる癒しのその御手よ 母なる大地のその息吹 我らが前に横たわる 傷つき倒れし彼者に我ら全ての力持て 今一度の力を与えんことを…リザレクション」 

最大魔力を込めた為か、私の体力がそがれる。魔法の使用回数は大幅に下がる。魔王討伐の前には痛い代償だ。だけど、ベアトリスの為になら、その価値はある。 

しばらくすると、ベアトリスの胸の鼓動が戻り、顔色が桜色に染まり、生者の顔色となる。 

「…う、うん。私…一体?」 

「ベアトリス、もういいのよ」 

「お、お姉さま…わ、私、私…」 

「ベアトリスは私が守るわ。それが長い間姉として何もできず、それどころか意地悪ばかりしていた悪い姉の務めよ」 

ベアトリスは泣き出してしまった。私の胸で泣きじゃくった。意識が戻り、自身が姉を殺害しようとしたことを、それを示唆したカールが自身を殺そうとした事も思い出したのだろう。 

「ごめん、なさい……」 

ベアトリスの消え入りそうな声を聞いて、私はベアトリスを抱きしめた。そして、セシーリアさんが怒涛の様にカールを責めた。 

「エリアス殿下、カール殿下の説得は無理でしょう。魔王は目の前ですし諦めてください、拘束します。裁判では当然死罪でしょうが、一応裁判を受けさせるという事でいいですか?」 

「お願いします。我が家の恥ですが、せめて罪を悔いて逝って頂きたい」 

勇者カールは目をむいて怒った。両目をむき出し、怒鳴った。 

「貴様ら馬鹿か? 私は勇者だ! 魔王を封印できる唯一の存在だ。故に至高の存在だ。それを死刑だと? 気でも触れたのか? そこの青の魔導士も魔王は倒せても復活を阻止する事はできぬのだぞ!」 

カールの尊大な意識は勇者である事が原因か…しかし、彼の言う事も一理はあるのだ。勇者がいないと魔王は封印できない。確かに勇者は人にとって至高の存在なのだ。 

「兄上、あなたはご存じないのですが、勇者は我が帝国にもう一人おります」 

「な、なんだと? そんな馬鹿な! 勇者が同時代に二人生まれる可能性なぞ、ほとんどないのだぞ? ましてや、ここ10年、聞いた事が無いわ」 

「勇者は将来皇帝になるあなた一人で十分だった。だから私に勇者の称号が現れた際にもそれは秘匿された。私は剣士という事になっておりますが、本当のタレントは勇者です」 

絶望的な顔に変わるカールの顔、そんな中、瘴気が急激に濃くなっていっている事に私はうかつにも気がつかなかった。 
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