悪役令嬢が最強!伝説の魔法使いが悪役令嬢に転生。いろいろやらかして追放されて贖罪をしながらのんびり。この悪役令嬢あまり懲りてないみたい。

島風

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魔王と勇者討伐3

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私が次々と魔物を討伐するものの、ガブリエルさんとアドロフさんは私だけに任せるのはいざという時に心もとないという意見を持ち、確かにその通りと私は二人の意見を尊重した。 

今は三人に任せている。もちろん私は聖歌を歌い、支援魔法も含めて三人を支援する。 

「はは、なんだやはり勇者の力は絶大じゃないか、ははははは」 

頭痛い、だから私の聖歌のおかげでコイツの魔力も闘気も倍増している訳だが、全く理解できていないのか馬鹿なのか、自身だけの力の様な発言が多かった。 

しかし、聖女のベアトリスは少し違った様だ。彼女は私に聖歌をはじめ、聖女としての知識を求めた。 

「お姉さま、私にも聖歌は歌えるのでしょうか? 私、力が足らず、帝国に貢献できず。お姉さまは変わられた。今は本当に一緒に協力して……ごめんさい。私、傲慢ですよね」 

追放されるまでにベアトリスに散々酷い事をしてきた私を許してくれると言うのだろうか? それなら、もちろん歓迎だ。私と協力して、聖女として成長したいのならむしろ喜んで教える。 

「ベアトリス、私がした事は消えない罪だけど、少しでも罪を許してくれるなら、もちろん聖歌も光魔法も教えるわよ。お姉ちゃんにものを頼むのに、そんなに遠慮しないで…」 

大丈夫であろうか? ベアトリスは私の事を信用してくれるだろうか? ましてや気軽にお姉ちゃんとだなんて思ってくれるだろうか? 私のした事はそれだけ罪だったのだ。自身でも悔やまれる。例え法律的にはたいした罪でないとしても、虐めを受けたベアトリスにとっては大きな心の傷だ。それが簡単に消えるものでは無い事は重々承知している。 

私はベアトリスに聖歌を教え、光魔法もたくさん教えた。二人は一見親しくなっていった。それが、見かけだけだという事に私は気がつかなかった。 

中層階を抜けて、騎士達の支援が受けられなくなって、段々私も魔物討伐に参加する様になった。幸い、ベアトリスも聖歌を歌える様になった。そして、かなり強力な魔物アークデーモンと戦い、何とか勝利を拾いそうな時、ベアトリスが呪文を唱える声が聞こえた。 

「闇の恩恵を、闇の真価を、今こそ示せ! ダークエンチャント!」 

闇属性の付与魔法? 何故今かけるの? ベアトリスが闇魔法が使えるのだなんて知らなかった。でも、アークデーモンに闇魔法はあまり効かない、新たな魔物が現れたのか?  
ベアトリスに確認すべく振り返ろうとするが、前方のアークデーモンから目を離す訳にもいかず、後にしようと思った、その時だった。私の胸から鈍く黒い剣が生えた。その剣は魔力で簡単に剣で貫かれる事の無い筈の私の胸をまるで蓮を貫く様に簡単に貫いた。 

私が剣を抜こうとすると、剣は触れるだけで痛みを伴った。これは呪いの魔剣だ。アッサーシンが暗殺などに使う呪いの剣、それを……私の背中から突き立てたのだ。 

ベアトリスが後ろから刺したのだとようやく理解した私は前世での出来事と今世でのアルやアン達の思い出が蘇った。特にアルとの子供の頃の楽しい甘酸っぱい思い出が駆け巡った。 

「カール様、言われた通りにあの人を殺しました! これでいいのですか?」 

「ベアトリス様、何故! 今のクリス何一つ悪行は働いていない! それどころか、我らの帝国を助けてくれる善行を行おうとしている。我らが追放したにも関わらずにです!」 

ベアトリスとガブリエルさんの大声で辛うじて意識を取り戻す。慌てて痛覚麻痺の呪文と連続治癒の魔法を唱える。とりあえず死は免れた。だが、この呪いの剣を抜かないと、命はない。 

そうか……私はベアトリスに後ろから刺されたんだ。全然許してなんてくれなかったんだ。 

「ベ、ベアトリス、そんなに私が憎いの? ……ごめんなさい」 

「お姉さまは私があんなに努力して助けた人達を簡単に篭絡して……私の事なんてもう誰も」 

「ち、違います。私達は今でもベアトリス様に感謝しています。何故この様な事を!」 

「お姉さまが憎い。胸が大きいだけで、帝都中の男性を虜にして、私なんて…」 

ベアトリスが私に嫉妬? そんな、私にとってベアトリスは聖女を具現化したかの様な存在、その彼女が私に嫉妬? 恨みなら受けても当然だろう、だが、私に嫉妬だなんて… 

「カール様も私に賛成してくれています。カール様がこの剣を用意してくださったのです」 

「余計な事をしゃべるんじゃねぇ!」 

アークデーモンに止めを刺したカールが振り返り、私達の近くに来る。そして、彼は剣を一閃した。ビシャっと血が私の顔にかかる。ベアトリスの血だ。 

「……ベ、ベアトリス。何故? 何故あなたが妹を?」 

「王国からの使者である聖女クリスティーナを殺害したんだ。当然だろう?」 

「一体何を? カール様?」 

「そうです。あなたはベアトリス様の婚約者でしょう?」 

私も理解が追い付かなかった。何故勇者カールが妹ベアトリスを殺す必要があるのか? 二人は愛し合っていたのでは無いの? 

「聖女、クリスティーナ…私の妃となれ、私の事が好きなんだろう? 今なら特別にこのエリクシールと解毒の魔法薬で助けてやる」 

「なっ! 気は確かか? クリスを追放しておいて今更、なんて事を考えて!」 

「カール殿、止めて下さい。貴方は勇者なのですよ!」 

カールと剣聖ガブリエル、賢者アドロフが口論になっていた。私は辛うじて残った意識で勇者カールに言葉を投げかけた。 

「し、死んでも、い、嫌よ。い、妹を殺した人…にだなんて…」 

何故、カールは私とよりを戻したいのか? 何故ベアトリスを殺したのか? 激しい痛みと消えゆく意識の中で大きな謎が蠢いた。
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