75 / 82
魔王と勇者討伐3
しおりを挟む
私が次々と魔物を討伐するものの、ガブリエルさんとアドロフさんは私だけに任せるのはいざという時に心もとないという意見を持ち、確かにその通りと私は二人の意見を尊重した。
今は三人に任せている。もちろん私は聖歌を歌い、支援魔法も含めて三人を支援する。
「はは、なんだやはり勇者の力は絶大じゃないか、ははははは」
頭痛い、だから私の聖歌のおかげでコイツの魔力も闘気も倍増している訳だが、全く理解できていないのか馬鹿なのか、自身だけの力の様な発言が多かった。
しかし、聖女のベアトリスは少し違った様だ。彼女は私に聖歌をはじめ、聖女としての知識を求めた。
「お姉さま、私にも聖歌は歌えるのでしょうか? 私、力が足らず、帝国に貢献できず。お姉さまは変わられた。今は本当に一緒に協力して……ごめんさい。私、傲慢ですよね」
追放されるまでにベアトリスに散々酷い事をしてきた私を許してくれると言うのだろうか? それなら、もちろん歓迎だ。私と協力して、聖女として成長したいのならむしろ喜んで教える。
「ベアトリス、私がした事は消えない罪だけど、少しでも罪を許してくれるなら、もちろん聖歌も光魔法も教えるわよ。お姉ちゃんにものを頼むのに、そんなに遠慮しないで…」
大丈夫であろうか? ベアトリスは私の事を信用してくれるだろうか? ましてや気軽にお姉ちゃんとだなんて思ってくれるだろうか? 私のした事はそれだけ罪だったのだ。自身でも悔やまれる。例え法律的にはたいした罪でないとしても、虐めを受けたベアトリスにとっては大きな心の傷だ。それが簡単に消えるものでは無い事は重々承知している。
私はベアトリスに聖歌を教え、光魔法もたくさん教えた。二人は一見親しくなっていった。それが、見かけだけだという事に私は気がつかなかった。
中層階を抜けて、騎士達の支援が受けられなくなって、段々私も魔物討伐に参加する様になった。幸い、ベアトリスも聖歌を歌える様になった。そして、かなり強力な魔物アークデーモンと戦い、何とか勝利を拾いそうな時、ベアトリスが呪文を唱える声が聞こえた。
「闇の恩恵を、闇の真価を、今こそ示せ! ダークエンチャント!」
闇属性の付与魔法? 何故今かけるの? ベアトリスが闇魔法が使えるのだなんて知らなかった。でも、アークデーモンに闇魔法はあまり効かない、新たな魔物が現れたのか?
ベアトリスに確認すべく振り返ろうとするが、前方のアークデーモンから目を離す訳にもいかず、後にしようと思った、その時だった。私の胸から鈍く黒い剣が生えた。その剣は魔力で簡単に剣で貫かれる事の無い筈の私の胸をまるで蓮を貫く様に簡単に貫いた。
私が剣を抜こうとすると、剣は触れるだけで痛みを伴った。これは呪いの魔剣だ。アッサーシンが暗殺などに使う呪いの剣、それを……私の背中から突き立てたのだ。
ベアトリスが後ろから刺したのだとようやく理解した私は前世での出来事と今世でのアルやアン達の思い出が蘇った。特にアルとの子供の頃の楽しい甘酸っぱい思い出が駆け巡った。
「カール様、言われた通りにあの人を殺しました! これでいいのですか?」
「ベアトリス様、何故! 今のクリス何一つ悪行は働いていない! それどころか、我らの帝国を助けてくれる善行を行おうとしている。我らが追放したにも関わらずにです!」
ベアトリスとガブリエルさんの大声で辛うじて意識を取り戻す。慌てて痛覚麻痺の呪文と連続治癒の魔法を唱える。とりあえず死は免れた。だが、この呪いの剣を抜かないと、命はない。
そうか……私はベアトリスに後ろから刺されたんだ。全然許してなんてくれなかったんだ。
「ベ、ベアトリス、そんなに私が憎いの? ……ごめんなさい」
「お姉さまは私があんなに努力して助けた人達を簡単に篭絡して……私の事なんてもう誰も」
「ち、違います。私達は今でもベアトリス様に感謝しています。何故この様な事を!」
「お姉さまが憎い。胸が大きいだけで、帝都中の男性を虜にして、私なんて…」
ベアトリスが私に嫉妬? そんな、私にとってベアトリスは聖女を具現化したかの様な存在、その彼女が私に嫉妬? 恨みなら受けても当然だろう、だが、私に嫉妬だなんて…
「カール様も私に賛成してくれています。カール様がこの剣を用意してくださったのです」
「余計な事をしゃべるんじゃねぇ!」
アークデーモンに止めを刺したカールが振り返り、私達の近くに来る。そして、彼は剣を一閃した。ビシャっと血が私の顔にかかる。ベアトリスの血だ。
「……ベ、ベアトリス。何故? 何故あなたが妹を?」
「王国からの使者である聖女クリスティーナを殺害したんだ。当然だろう?」
「一体何を? カール様?」
「そうです。あなたはベアトリス様の婚約者でしょう?」
私も理解が追い付かなかった。何故勇者カールが妹ベアトリスを殺す必要があるのか? 二人は愛し合っていたのでは無いの?
「聖女、クリスティーナ…私の妃となれ、私の事が好きなんだろう? 今なら特別にこのエリクシールと解毒の魔法薬で助けてやる」
「なっ! 気は確かか? クリスを追放しておいて今更、なんて事を考えて!」
「カール殿、止めて下さい。貴方は勇者なのですよ!」
カールと剣聖ガブリエル、賢者アドロフが口論になっていた。私は辛うじて残った意識で勇者カールに言葉を投げかけた。
「し、死んでも、い、嫌よ。い、妹を殺した人…にだなんて…」
何故、カールは私とよりを戻したいのか? 何故ベアトリスを殺したのか? 激しい痛みと消えゆく意識の中で大きな謎が蠢いた。
今は三人に任せている。もちろん私は聖歌を歌い、支援魔法も含めて三人を支援する。
「はは、なんだやはり勇者の力は絶大じゃないか、ははははは」
頭痛い、だから私の聖歌のおかげでコイツの魔力も闘気も倍増している訳だが、全く理解できていないのか馬鹿なのか、自身だけの力の様な発言が多かった。
しかし、聖女のベアトリスは少し違った様だ。彼女は私に聖歌をはじめ、聖女としての知識を求めた。
「お姉さま、私にも聖歌は歌えるのでしょうか? 私、力が足らず、帝国に貢献できず。お姉さまは変わられた。今は本当に一緒に協力して……ごめんさい。私、傲慢ですよね」
追放されるまでにベアトリスに散々酷い事をしてきた私を許してくれると言うのだろうか? それなら、もちろん歓迎だ。私と協力して、聖女として成長したいのならむしろ喜んで教える。
「ベアトリス、私がした事は消えない罪だけど、少しでも罪を許してくれるなら、もちろん聖歌も光魔法も教えるわよ。お姉ちゃんにものを頼むのに、そんなに遠慮しないで…」
大丈夫であろうか? ベアトリスは私の事を信用してくれるだろうか? ましてや気軽にお姉ちゃんとだなんて思ってくれるだろうか? 私のした事はそれだけ罪だったのだ。自身でも悔やまれる。例え法律的にはたいした罪でないとしても、虐めを受けたベアトリスにとっては大きな心の傷だ。それが簡単に消えるものでは無い事は重々承知している。
私はベアトリスに聖歌を教え、光魔法もたくさん教えた。二人は一見親しくなっていった。それが、見かけだけだという事に私は気がつかなかった。
中層階を抜けて、騎士達の支援が受けられなくなって、段々私も魔物討伐に参加する様になった。幸い、ベアトリスも聖歌を歌える様になった。そして、かなり強力な魔物アークデーモンと戦い、何とか勝利を拾いそうな時、ベアトリスが呪文を唱える声が聞こえた。
「闇の恩恵を、闇の真価を、今こそ示せ! ダークエンチャント!」
闇属性の付与魔法? 何故今かけるの? ベアトリスが闇魔法が使えるのだなんて知らなかった。でも、アークデーモンに闇魔法はあまり効かない、新たな魔物が現れたのか?
ベアトリスに確認すべく振り返ろうとするが、前方のアークデーモンから目を離す訳にもいかず、後にしようと思った、その時だった。私の胸から鈍く黒い剣が生えた。その剣は魔力で簡単に剣で貫かれる事の無い筈の私の胸をまるで蓮を貫く様に簡単に貫いた。
私が剣を抜こうとすると、剣は触れるだけで痛みを伴った。これは呪いの魔剣だ。アッサーシンが暗殺などに使う呪いの剣、それを……私の背中から突き立てたのだ。
ベアトリスが後ろから刺したのだとようやく理解した私は前世での出来事と今世でのアルやアン達の思い出が蘇った。特にアルとの子供の頃の楽しい甘酸っぱい思い出が駆け巡った。
「カール様、言われた通りにあの人を殺しました! これでいいのですか?」
「ベアトリス様、何故! 今のクリス何一つ悪行は働いていない! それどころか、我らの帝国を助けてくれる善行を行おうとしている。我らが追放したにも関わらずにです!」
ベアトリスとガブリエルさんの大声で辛うじて意識を取り戻す。慌てて痛覚麻痺の呪文と連続治癒の魔法を唱える。とりあえず死は免れた。だが、この呪いの剣を抜かないと、命はない。
そうか……私はベアトリスに後ろから刺されたんだ。全然許してなんてくれなかったんだ。
「ベ、ベアトリス、そんなに私が憎いの? ……ごめんなさい」
「お姉さまは私があんなに努力して助けた人達を簡単に篭絡して……私の事なんてもう誰も」
「ち、違います。私達は今でもベアトリス様に感謝しています。何故この様な事を!」
「お姉さまが憎い。胸が大きいだけで、帝都中の男性を虜にして、私なんて…」
ベアトリスが私に嫉妬? そんな、私にとってベアトリスは聖女を具現化したかの様な存在、その彼女が私に嫉妬? 恨みなら受けても当然だろう、だが、私に嫉妬だなんて…
「カール様も私に賛成してくれています。カール様がこの剣を用意してくださったのです」
「余計な事をしゃべるんじゃねぇ!」
アークデーモンに止めを刺したカールが振り返り、私達の近くに来る。そして、彼は剣を一閃した。ビシャっと血が私の顔にかかる。ベアトリスの血だ。
「……ベ、ベアトリス。何故? 何故あなたが妹を?」
「王国からの使者である聖女クリスティーナを殺害したんだ。当然だろう?」
「一体何を? カール様?」
「そうです。あなたはベアトリス様の婚約者でしょう?」
私も理解が追い付かなかった。何故勇者カールが妹ベアトリスを殺す必要があるのか? 二人は愛し合っていたのでは無いの?
「聖女、クリスティーナ…私の妃となれ、私の事が好きなんだろう? 今なら特別にこのエリクシールと解毒の魔法薬で助けてやる」
「なっ! 気は確かか? クリスを追放しておいて今更、なんて事を考えて!」
「カール殿、止めて下さい。貴方は勇者なのですよ!」
カールと剣聖ガブリエル、賢者アドロフが口論になっていた。私は辛うじて残った意識で勇者カールに言葉を投げかけた。
「し、死んでも、い、嫌よ。い、妹を殺した人…にだなんて…」
何故、カールは私とよりを戻したいのか? 何故ベアトリスを殺したのか? 激しい痛みと消えゆく意識の中で大きな謎が蠢いた。
1
お気に入りに追加
76
あなたにおすすめの小説

誰からも愛されない悪役令嬢に転生したので、自由気ままに生きていきたいと思います。
木山楽斗
恋愛
乙女ゲームの悪役令嬢であるエルファリナに転生した私は、彼女のその境遇に対して深い悲しみを覚えていた。
彼女は、家族からも婚約者からも愛されていない。それどころか、その存在を疎まれているのだ。
こんな環境なら歪んでも仕方ない。そう思う程に、彼女の境遇は悲惨だったのである。
だが、彼女のように歪んでしまえば、ゲームと同じように罪を暴かれて牢屋に行くだけだ。
そのため、私は心を強く持つしかなかった。悲惨な結末を迎えないためにも、どんなに不当な扱いをされても、耐え抜くしかなかったのである。
そんな私に、解放される日がやって来た。
それは、ゲームの始まりである魔法学園入学の日だ。
全寮制の学園には、歪な家族は存在しない。
私は、自由を得たのである。
その自由を謳歌しながら、私は思っていた。
悲惨な境遇から必ず抜け出し、自由気ままに生きるのだと。

オバサンが転生しましたが何も持ってないので何もできません!
みさちぃ
恋愛
50歳近くのおばさんが異世界転生した!
転生したら普通チートじゃない?何もありませんがっ!!
前世で苦しい思いをしたのでもう一人で生きて行こうかと思います。
とにかく目指すは自由気ままなスローライフ。
森で調合師して暮らすこと!
ひとまず読み漁った小説に沿って悪役令嬢から国外追放を目指しますが…
無理そうです……
更に隣で笑う幼なじみが気になります…
完結済みです。
なろう様にも掲載しています。
副題に*がついているものはアルファポリス様のみになります。
エピローグで完結です。
番外編になります。
※完結設定してしまい新しい話が追加できませんので、以後番外編載せる場合は別に設けるかなろう様のみになります。
【コミカライズ2月28日引き下げ予定】実は白い結婚でしたの。元悪役令嬢は未亡人になったので今度こそ推しを見守りたい。
氷雨そら
恋愛
悪役令嬢だと気がついたのは、断罪直後。
私は、五十も年上の辺境伯に嫁いだのだった。
「でも、白い結婚だったのよね……」
奥様を愛していた辺境伯に、孫のように可愛がられた私は、彼の亡き後、王都へと戻ってきていた。
全ては、乙女ゲームの推しを遠くから眺めるため。
一途な年下枠ヒーローに、元悪役令嬢は溺愛される。
断罪に引き続き、私に拒否権はない……たぶん。

【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?
みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。
ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる
色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く
ハズレ召喚として追放されたボクは、拡大縮小カメラアプリで異世界無双
さこゼロ
ファンタジー
突然、異世界に転生召喚された4人の少年少女たち。儀式を行った者たちに言われるがまま、手に持っていたスマホのアプリを起動させる。
ある者は聖騎士の剣と盾、
ある者は聖女のローブ、
それぞれのスマホからアイテムが出現する。
そんな中、ひとりの少年のスマホには、画面にカメラアプリが起動しただけ。
ハズレ者として追放されたこの少年は、これからどうなるのでしょうか…
if分岐の続編として、
「帰還した勇者を護るため、今度は私が転移します!」を公開しています(^^)
転生者はチートな悪役令嬢になりました〜私を死なせた貴方を許しません〜
みおな
恋愛
私が転生したのは、乙女ゲームの世界でした。何ですか?このライトノベル的な展開は。
しかも、転生先の悪役令嬢は公爵家の婚約者に冤罪をかけられて、処刑されてるじゃないですか。
冗談は顔だけにして下さい。元々、好きでもなかった婚約者に、何で殺されなきゃならないんですか!
わかりました。私が転生したのは、この悪役令嬢を「救う」ためなんですね?
それなら、ついでに公爵家との婚約も回避しましょう。おまけで貴方にも仕返しさせていただきますね?

溺愛最強 ~気づいたらゲームの世界に生息していましたが、悪役令嬢でもなければ断罪もされないので、とにかく楽しむことにしました~
夏笆(なつは)
恋愛
「おねえしゃま。こえ、すっごくおいしいでし!」
弟のその言葉は、晴天の霹靂。
アギルレ公爵家の長女であるレオカディアは、その瞬間、今自分が生きる世界が前世で楽しんだゲーム「エトワールの称号」であることを知った。
しかし、自分は王子エルミニオの婚約者ではあるものの、このゲームには悪役令嬢という役柄は存在せず、断罪も無いので、攻略対象とはなるべく接触せず、穏便に生きて行けば大丈夫と、生きることを楽しむことに決める。
醤油が欲しい、うにが食べたい。
レオカディアが何か「おねだり」するたびに、アギルレ領は、周りの領をも巻き込んで豊かになっていく。
既にゲームとは違う展開になっている人間関係、その学院で、ゲームのヒロインは前世の記憶通りに攻略を開始するのだが・・・・・?
小説家になろうにも掲載しています。

【完結】私ですか?ただの令嬢です。
凛 伊緒
恋愛
死んで転生したら、大好きな乙女ゲーの世界の悪役令嬢だった!?
バッドエンドだらけの悪役令嬢。
しかし、
「悪さをしなければ、最悪な結末は回避出来るのでは!?」
そう考え、ただの令嬢として生きていくことを決意する。
運命を変えたい主人公の、バッドエンド回避の物語!
※完結済です。
※作者がシステムに不慣れかつ創作初心者な時に書いたものなので、温かく見守っていだければ幸いです……(。_。///)
※ご感想・ご指摘につきましては、近況ボードをお読みくださいませ。
《皆様のご愛読に、心からの感謝を申し上げますm(*_ _)m》
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる