悪役令嬢が最強!伝説の魔法使いが悪役令嬢に転生。いろいろやらかして追放されて贖罪をしながらのんびり。この悪役令嬢あまり懲りてないみたい。

島風

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帝都へ7

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女神様への祈りを捧げた後、皇城に再度向かった。ここで皇帝陛下に挨拶をした後、みんなの処に戻る段取りだ。旅立つ前に皇帝陛下にご報告をする必要がある。 

「よくやってくれた。それにしても女神様が奇跡を起こされるとは…そなたは本当に稀代の大聖女となったのだな」 

「とんでもございません。私自身がケジメがついたとは思えません。私の罪は未だあがなえておりません。ですから、これからも贖罪を粛々と務めます」 

「では、今後もアクイレイア王国の騎士として働くつもりか? 其方が望めば我が帝国の貴族に復帰し、相応しい貴族との縁談も私が自らとりまとめよう。そうは望まぬのか?」 

「陛下、大変ありがたい事ではございますが、私はアクイレイア王国の皆さまにも御恩があります。助けて頂いて、帝国の貴族に戻るのも不義理と思われます。それに、私は自身の罪を自身が許せた訳ではございません。納得できるまで罪を償う事ができるまでは正式に罪が消えたと思えません」   

ぶっちゃけほとんど嘘だ。今の私は貴族の令嬢である事より、アルと所帯を持って幸せに暮らしたい。それだけしか考えていない。もちろん贖罪の件は本当の事だ。女神様が許してくれても自身が許せない。 

「では、このまま魔境での戦いに赴くのか?」 

「はい。私には待っていてくれている人達がいます」 

私はにっこりと笑って言った。 

「帝都を追放されて失ったものより得たものが大きかったという事か…ならばあの追放刑もまた、女神様の天の采配だったのかもしれん。クリスティーナ嬢が王国で出会った者達がそなたの心を癒し、聖女に相応しい女性へと導いたのかもしれない。もっとも、我が帝国は失ったものが大きすぎた様ではあるがな…」 

「私は王国で大切な人達にお世話になりました。今も王国の騎士団が私の居場所です。今の私は彼らや彼女らに恩をお返しする必要があるのです。ご理解ください」   

私は胸に手をあて、想いを綴った。ちょっと、大げさだけどこれは嘘じゃない気持ちだ。ちょっと誇張し過ぎているのはアルやアンから教わったあざとさコンピュータだ。これで皇帝も私を引き止めにくいだろう。本音は聖女を自国で囲えれば、帝国は安泰なのだ。だが、今の状態を作ったのは他でもない、彼の息子、第一皇子カールなのだ。彼は必要以上私を引き止めたりしないだろう。そこまで厚顔無恥な人物ではない様だ。 

「達者で暮らせ。貴族復帰を辞退したが、名誉市民の称号を贈ろう。我が国に今後も気軽に来て欲しい。帝国の転移の魔道具を自由に使って構わない。そなたの家族にも頻繫に会ってやってくれ、私はそなたの父親に合わせる顔が無くての…せめてもの償いじゃ」 

「ありがたき幸せです。父も喜んでくれると思います。母や妹、家でお世話になった方達にもまた会えます。ありがとうございます」 

皇帝陛下は笑みを浮かべると手をあげ、謁見が終わった事を示唆する。しかし、 

「大変です。国王陛下!」  

「なんじゃ、騒がしい。本日の謁見は大聖女殿との謁見じゃ、場をわきまえよ」  

「それが、至急ご報告すべき情報が帝都の聖地ハノーヴァーよりございました」  

「どの様な内容じゃ?」  

「聖地の聖石に亀裂が生じました」  

「な、な、な、、なんじゃとぉぉぉぉぉぉ!!!!!」 

聖地ハノーヴァーとは帝都のすぐ近くの旧魔王城の跡地の事だ。魔王が討伐された後、魔族達は駆逐され、大魔石は完全に浄化された。当時のバース共和国の聖女の力はそれ程のものだったのだろう。私もセシーリアさんも大魔石を完全浄化までできそうにない。 

「それは魔王復活の兆しかもしれん、聖職者の長、教皇を直ちに呼べ! 更に騎士団長と勇者パーティを直ちに呼べ! 早々に教皇と協議し、調査団を組織する!」  

「は! 直ちに教皇様と皆様をお迎えに参ります」 

官吏が教皇を迎えに行くと、新たな謁見の為、騎士団長と、皇族の皇太子と第一皇子カールと聖女ベアトリス 、剣聖ガブリエル、賢者アドロフが謁見の間に入ってきた。他の官吏も多数入る。 

しばらくすると、官吏に付き添われ、聖職者が現れた。教皇だ。  

「国王陛下よ。重大な事態です。我が教団も既に聖地ハノーヴァーより聞き及んでおります。そして事態の原因もわかりました」  

「教皇よ。是非教えてくれ。かの地で何が起きた?」  

「皇帝陛下。教典によると起きた事は、魔王の封印が破れたと考えるべきでしょう。かの地では既に謎のダンジョンが発生しております」  

「聖なる祈りを捧げたばかりじゃと言うのに、一体何故?」  

「皇帝陛下。教典によると魔境が発生すると魔王の封印は破れます。そして女神エリス様は、1000年前に神託を下されております。女神の加護を受けし者が現れた時、魔王は復活するであろう。しかし、女神の加護を受けし者、魔王を完全に滅ぼすであろうと!」  

「ま、まさか!!」  

「そのまさかです。ケーニスマルク家の令嬢は青の魔導士であり、かつ同時に聖女です。魔王を完全に滅ぼす事ができるのは、かの聖女しかいないでしょう」  

「な、なんという事じゃ!」 

えっと、なんか、流れ的に私に魔王ぶち殺せって事? 生まれたばかりの魔王は簡単に倒せるけど、魔王は直ぐに復活しちゃうから、勇者の封印の魔法が必要なのよね。青の魔導士でも聖女でもなく、勇者が必要。500年前も封印事態は勇者が行った。倒したのは私だけど、封印したのは勇者だったのだ。 

「クリスティーナ嬢、頼みがある」 

「はい、わかっております」 

わかってます。はい、私の失言です。私言っちゃいましたね、『国難の折、少しでも私に貢献できる事があれば喜んでその身を差し出す所存です』…私のあざとさコンピュータの馬鹿! 
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