悪役令嬢が最強!伝説の魔法使いが悪役令嬢に転生。いろいろやらかして追放されて贖罪をしながらのんびり。この悪役令嬢あまり懲りてないみたい。

島風

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帝都へ6

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ガブリエルさんとアドロフさんにエスコートされて大聖殿に向かう。流石に衣装は聖女らしい白を基調としたドレスにした。聖殿で祈りを捧げるのだから当然だろう。ちなみ私はアルが永遠に私だけを愛します様に! って祈るつもりだ。あまりたくさんお願いされたら女神様も迷惑だろう。そもそも、私は女神様信じてない。もちろん、万が一いたら怖いので女神様を冒とくする様な事は言わないから安心して欲しい。 

「さあ、行ってらっしゃい。稀代の大聖女の聖なる祈りだ!」 

「我が国の為、お願いします。クリス!」 

帝都は聖女の聖なる祈りを待ち望み、民たちは聖殿の中からも溢れ出ていた。聖殿の広場には聖女が立つための櫓が特別に組まれていて、周りは民の熱気が凄い。私は広場の中央へ続く赤い絨毯を一人ゆっくりと進んだ。荘厳な聖楽隊の奏でる曲に合わせて広場の中央の櫓に進みでる。 

「聖なる祈りが、こんなに派手なものだったとは…」 

二人に促されて広場の中央に向かった私は、あまりの盛大さに驚いた。聖なる祈りを見た事はあるが、ここまで派手ではなかった筈だ。 

そして、私は櫓の上に登り、民に向かって、ぺこりと頭を下げた。私を許してくれた民へのお礼のつもりだ。そして、私は民に向かって自分の思いのたけを綴った。 

「アウクスブルク帝国の皆様。本日私がこの国の聖女様であるベアトリス様の代理をさせて頂く事になったのは、追放刑となった愚かな私を皆様が許して頂いたからです。私は自身の愚行を心から反省しております。この祈りは自身の愚行に対する贖罪のためと思っております。私は愚かでした。皇太子様の想い人である自身の妹ベアトリス様に嫉妬し、時には蔑む様な言葉を投げつけ、時には酷い仕打ち…虐めを行いました。中には私の預かり知らぬ件もございました。しかし、私は未来の皇太子妃という地位にいて、止める事もできたにも関わらず、見て見ぬふりをしておりました。こんな私が追放刑になるのも、聖女にも相応しくないのも、十分にわかっております。今は自身の罪を贖罪を重ねる事で少しでも償える事ができたらと思っております。 

今はアクレイア王国に身を置く身ではありますが、もし祖国のアウクスブルク帝国に贖罪ができたならとずっと思っておりました。こんなに早く、祖国の為に贖罪の機会を与えて頂いたのも皆様の寛容なお気持ちによるものです。また、私ごときが代役を務めるのも贖罪の内だと皇帝陛下よりこの役目を賜りました。もちろん、本来の聖女様であるベアトリス様にも大変感謝しております。国難の折、少しでも私に貢献できる事があれば喜んでその身を差し出す所存です。今日のこの日に、私に贖罪と皆様に貢献できる機会を頂き、本当にありがとうございます」 

私は再び民に頭を下げた。聖女が民に頭を下げる処など見た事がない。おそらく異例だろう。だけど、追放刑という罰を受けた犯罪者である私が聖女を務めるのだ。民には配慮したかった。折角聖なる祈りを捧げても、祈りを捧げた私に民が不満を漏らす様では皇帝陛下に申し訳がない、それに私のあざとさコンピュータもこう言っておいた方が後々無難だと告げていた。 

聖女がスピーチをするのだなどと思っていなかった民はその内容の謙虚さもあり、皆ぽかんと口を開けていた。そして、私が祈りを捧げ始めると、その言葉に耳を深く傾けていった。 

祈りは魔法等では無い。唯の想い、私はアルの事を一途に想った、そして、少しだけアウクスブルク帝国の人達の事を想って祈った。 

「敬愛する女神様。帝国を守護する歴代の勇者様、聖女様よ、もしも私の願いを聞き届けて頂けるのなら、この国に平和を、この国の魔石を浄化ください。一日一生。最善を尽くして女神様に祈り、女神様に祈りて最善を尽くす。悔いを残さないよう努力すれば、自ら道は拓ける。私に成すべき事があれば民の為、力となる事をお約束いたします。もしも私をお許し、贖罪の機会を与えて下さるならば、私は全身全霊をかけてその機会を持てる力の全てを注ぎます」 

唯の祈りの筈だった。私は女神様を信じてさえいなかった。しかし、既に太陽は沈み、夜の帳が明けたにも関わらず、ちょうど私のいる場所にだけ、太陽の様に明るい光が天から差した。ほとんど女優ライトだ。民は思わず私に魅入られたのではないだろうか? 実は自分でもビックリしている。私に魅入られてしまい、静まり返った民衆の中から、 

「あっ、あれはなんだ?」 

と声が上がる。それは光輝く聖龍だった。ロプロス、何故あなたがここに? 

「(僕は君の従魔であるだけでなく、女神様から加護を受ける聖なる獣だよ。これは女神様の思し召しだよ)」 

「(女神様って、ホントにいたの?)」 

「(信じてなかったの? 聖女の癖に?)」 

「(ま、まあ、普通、思わんでしょ)」 

私と聖龍のやり取りを聞かれたら、民も、特に神官等は激怒しそうだが、聖龍は女神様の使い、女神様が私の罪を許してくれた様にしか見えないだろう。しかし、私は言ってしまった。『贖罪の機会を与えて下さるならば、私は全身全霊をかけてその機会を持てる力の全てを注ぎます』 

余計な事を言ってしまったぜ。心から反省した。 
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