悪役令嬢が最強!伝説の魔法使いが悪役令嬢に転生。いろいろやらかして追放されて贖罪をしながらのんびり。この悪役令嬢あまり懲りてないみたい。

島風

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帝都へ5

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私はガブリエルさんとアドロフさんに連れられて、皇帝陛下の居城へ招かれた。皇帝に挨拶をした後、帝都の一番大きな神殿で私が聖なる祈りを捧げる事になる。 

私はドレスに着替えるかどうかを聞かれたが、アクレイア王国の騎士服で謁見する事にした。今の私は令嬢では無く、王国の騎士なのだ。そして、ついでに聖女なのだ。 

謁見の間でしばらく待たされるが、そこには勇者であり、皇太子でもあるカールが…つまり、私のかつての婚約者がいた。今は彼の事等何とも思わないが、何とも言いにくい感情が浮かぶ…彼は私への極刑を望んだのだ。私の婚約者だったのに… 

しばらくして、皇帝陛下がおなりになった。 

「我が国の為にご足労をかけてすまなかった。心より感謝する。我が国の聖女は未だ力が弱く、アクレイア王国の聖女である其方の力を貸して欲しい。そうだ、旧自由同盟領でのそなた達の働きにも感謝しなければならんな」 

「まってください。父上! こんな事はあり得ない! この女はこの国を追放された咎人だ。それを聖女として迎えるのだなどと大問題だ!」 

「カールよ。先程申しただろう? 力の弱い我が国の聖女に代わって、王国の聖女に代行で聖女の祈りを神殿で祈ってもらう。何の問題があるのだ?」 

「問題だらけだ! この女が聖女な訳がない。国民を騙す気ですか?」 

「皇帝陛下、私は確かに罪人でございます。本当に私で宜しいのでしょうか? 我が国には他に聖女が二人おります。それなのに私が等と――」 

私は自分が思っている疑問をぶつけた。帝国が聖女を希望するのは当然だろう。しかし、何故栄えある聖女の祈りに私を指名したのだろう。 

「クリスティーナ嬢よ。私の贖罪の為だ、頼む、我が国の為、聖なる祈りを捧げてくれ」 

「しかし……えっ?」 

聖なる祈りを捧げる事に躊躇した事より、皇帝の贖罪という言葉に驚いた。贖罪をすべきなのは私だろう。贖罪の為、祈りを捧げろと言うのであればわかるが、皇帝陛下が贖罪? 

皇帝陛下は更に言葉を続けた。 

「勅命である。本日を持ち、クリスティーナ嬢の貴族籍剥奪を撤回する。あの裁判は誤りである事明白、再度裁判のやり直しを命じる」 

「そんな馬鹿な! 父上、気でもふれられたのか?」 

「いい加減にせよ。カール皇太子、嫌、カール皇子よ」 

「な、何を一体? 父上?」 

「カールよ。クリスティーナ嬢が義妹のベアトリス穣に怪我を負わせたのは事実、それ以外の事も知っておる。しかし、たかが事故や学園内のいざこざ位で貴族籍を剥奪したり、追放刑に処す等、行き過ぎであろう? この様な裁判は我が国の恥だ! お前をはじめ、多くの者が裁判に圧力をかけた。裁判記録に目を通して頭が痛うなったわ!」 

「何だと――!?」 

「クリスティーナ・ケーニスマルク嬢に、この国難に際して聖女として聖なる祈りを捧げる事を切望する。そして、今日より、貴方は帝国ケーニスマルク家の姓を名乗って欲しい」   

「ええっ?」 

いかん。思わず本音が出た。この国に私の味方がいるのだなんて、思わなかった。 

そういえば、アクレイア王国で騎士爵を拝領してたのだけど、どうしよう? 同時に二つの貴族籍持っていいのかしら? しかし、私の心は直ぐに決まった。 

「皇帝陛下、陛下のお優しさに、私は感激致しました。しかし、私が罪を犯したのは事実です。それに私は追放刑を受ける事で自身の醜悪な部分を改める事ができました。私は自身に罪がなかったのだなどと思った事はございません。裁判についても異存はございません」 

わ~、私、健気、ここは好感度爆上げしておこう。私のあざとさコンピュータが高速演算し、結論を導き出す。アルとアンのおかげで私、かなりあざとくなった。 

「そなたは困難の中、真の聖女へと成長したのだな…全く我が子カールには人を見る目がない。裁判のやり直しも貴族籍への復帰も関係者への配慮か? 全く何処までも尊い娘か…」 

「い、いえ、その様な事は! 私の真意でございます」 

いや、ホント、確かに裁判のやり直しや貴族籍剥奪の件が不当なら責任者に処罰が下るのかもしれない。でも、私、そこまで考えてなかったわよ。私、この国の有力貴族の娘だった。それに冤罪だなんていったら、たらり、責任者が斬首刑とかならない? そんなの嫌よ。私の為に誰かが厳しい刑を受けるのだなんて嫌! 

「父上、ではこの女が伝説の悪女であり、暗黒の魔導士である件をどうされるおつもりか? 我が国の法では伝説の暗黒魔導士発見の折には討伐すべしとあります。命じて頂ければ、今、直ぐこの場で私が首を撥ねてごらんにいれます」 

 

わ~この皇太子、どんなけ私に殺意持ってるの? 付きまとったりして迷惑だったろうけど、どうしてそこまで私に殺意を向けるのかしら? とは言ったものの、暗黒の魔導士の件は私もごくりと唾を呑んだ。皇帝陛下はどう考えているのだろうか? この地にわざわざ髪を青く染めあげたままで行けと言われた。しかし、それについての帝国からの公式見解を私は未だ聞いていない。 

この皇帝陛下、まさかこれだけ私への好意をあげておいて、『そうだった、斬首刑にしなきゃ、忘れてたテヘペロ』とか言わんだろうな? 

「カール皇子よ。我が国がアクレイア王国から聖女の助力を受けるにあったて、条件が示された。それは歴史の修正じゃ。暗黒の魔導士の法令は勅命で既に停止した。歴史は今、正すべき時なのじゃ。我が国の本当の建国の主は暗黒の大魔導士、いや、青の魔導士様の従者なのじゃ。我が国は青の魔導士様のおかげで成立したのだ。それに当時の魔王を討伐したのもその青の魔導士様なのじゃ」 

「な、何だと――!?」 

皇太子が場をわきまえず、大声をあげて、わなわなと震える。 

「み、認めん、そんな、そんな事を…」 

皇太子は屈辱にまみれている様だったけど、私、そこまで嫌われてんのね? それはそれで凹むわ~。 

「皇子カールよ。貴様は気がつかなかったのか? 私がそなたを皇太子では無く皇子と呼んだの事を?」 

「どういう事ですか? 陛下?」 

「そのままの意味じゃ。貴様を皇太子から廃し、第二皇子をこれより皇太子とする」 

「な、何故です? 私に何の御不満が? この女が卑怯にも私を陥れたのですか?」 

「いい加減に言葉に注意せよ。そなたのかつての婚約者は聖女にして、英雄、青の魔導士様、そなたが気軽に話しかけて良い存在ではない。ましてやこの方は今は旧同盟領、いや、来年までには青の同盟として正式に独立する国の女王なのじゃぞ」 

「そ、そんな、この女が女王だなどと」 

「まだ言うか! 頭が高い、貴様は直ちにこの聖女様へお詫びを申し上げろ! 少しは考えろ。今、旧同盟領やアクレイア王国の力を借りられなければ我が国は消滅する。この聖女様は我が国の命運を握られておるのだ。その聖女様を追放刑になどにした其方の狭量、とても帝国の皇帝なぞ務まらん」 

「ち、畜生…」 

「二度とこの聖女様を侮辱する様な言は吐くな。もし、一言でも侮辱ととれる発言を私が聞いたら、即、皇子廃嫡の上、国外追放とする」 

ちょっと可哀そうになってしまった。私、馬鹿よね? 普通、ざま~て思ってもいいんだろうけど、かつて愛した人の没落はちょっと引いた。私が原因だし、妹ベアトリスの婚約者だし… 

私は少しブルーな気持ちで、皇城を後にし、大聖殿へと向かった。 
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