悪役令嬢が最強!伝説の魔法使いが悪役令嬢に転生。いろいろやらかして追放されて贖罪をしながらのんびり。この悪役令嬢あまり懲りてないみたい。

島風

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帝都へ3

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帝都の転移の魔道具の施設で市民? に挨拶をした後、休息をはさんで実家に馬車で向かった。一般の市民が乗る様な貧相な馬車ではない。皇帝陛下の馬車だろう。紋章が皇室のものだった。侯爵令嬢だった私も初めて乗った。 

「それにしても、本当にその姿で宜しいでしょうか?」 

「私はアクレイア王国の騎士です。騎士服が相応しいと思います」 

「それを言われると帝国としては辛いです」 

「全く、つくづく我らは愚かな事をした…」 

私はガブリエルさん達が運んでくれた実家の私の昔の衣装を辞退して、騎士服のままで実家に向かう事にした。私の国外追放は取り消されたが、ケーニスマルク家の令嬢に復帰した訳ではなかったのだ。 

「お気にされずに…全ては私が悪いのです」 

「いや、我らが気になる。あなたは帝国にとって恩人なのです」 

「そうです。ディセルドルフの街を救って頂いたのでしょう?」 

「…しかし」 

その結果、旧自由同盟領は事実上離反した。彼らは私を盟主と仰いでいるのだ。素直に歓迎されるとは思えない。 

「これからたくさんの街を救って頂く事になります」 

「そうです。我らにとって、貴方はなくてはならない大切な存在なのです。それなのに私達は何て事を…」 

この二人は本当に私の追放が行き過ぎたものだと思ってくれているのかもしれない。でも、全ての人がそうとは思えない。少なくても私の婚約者、皇太子は私を追放どころか、本当は斬首刑に処したかった位なのだ。 

「本当に私は歓迎されているのでしょうか? 聖女セシーリア様なら誰もが尊いと思える聖女様です。でも、私は悪行が災いして追放刑になった様な女です」 

「正直、今は皆、我に返っています。白状します。私も追放刑に関わったものです。あの時はそれが当然と思いました。しかし、今は後悔しています」 

「私も同じです。私も悔いています。クリスティーナ嬢が悔いる必要なぞありません。国民も皆、貴方の味方です。国民は最初から貴方の味方でした。貴重な聖女を追放刑にする等、我らはどうかしていた。それに貴方の罪は唯の女性の嫉妬です。罪になる程の事ではございませんでした。それは国民の方が良くわかっておりました」 

「ありがとうございます。そう言って頂けると心が晴れます」 

二人は顔を見合わせ、罰が悪そうにした。私は二人に笑顔を送った。以前なら決してこんな事はしなかっただろう。男性に媚を売るのだなんて…でも、とても便利なんだもん。アンから教わった。 

「クリスたんの笑顔が…尊と過ぎる!」 

「尊とい! 魔法写真! ええい、エドヴァルドは何でこんな肝心な時に!」 

いや、君達、かなり上級貴族だから、もうちょっと体裁繕った方がいいわよ。 

「二人共、クリスと呼び捨てにしてください。あと、たんは駄目です。禁止」 

私が胸の前で手でXをしてアピールすると、ようやく二人は頬を緩ませた。 

「気を使って頂いたみたいですな」 

「クリス、と、本当に呼ばせて頂いて宜しいのですか?」 

「いいですよ。私はアクレイア王国の騎士爵です。お二人はこの国の有力な貴族様、当然ではないですか?」 

「いや、それは…」 

「なんというか、同意できない」 

「じゃあ、私に好意を持ってくれたので、特別に許します」 

そういって、またニッコリ笑った。ホント、私も随分変わったな。こんな事できる様な器用な子じゃなかったのに…アンの女子力アップの教育の賜物だな。 

二人はまた、顔を合わせると、それから私の方を見て、とても素敵な笑顔で見てくれた。 

「着いた様ですな」 

「今日は久しぶりに家族と団らん下さい。明日、又迎えに来ます」 

「ありがとうございました」 

馬車を降りる時も二人は私を貴族の令嬢の様に扱った。手を取ってもらって、馬車を降りる。スカートでもなくパンツスタイルの騎士服を着ているのに令嬢の様な扱いは傍目には妙な光景に移るだろう。だが、二人の私への好意は感じる事ができた。 

二人と御者さんにお礼を言って馬車を後にすると、ケーニスマルク家の正門についた。 

「ひえぇ…」 

自分の実家を見て目が丸くなる。私の実家って大貴族だった。その壮麗なつくりの屋敷を見てびっくりしてしまった。以前は何も気にもしなかったけど、改めて見ると自分は本当にここに住んでいたのかと疑問になる。 

「クリス!! クリスかい!」 

「お父様!!」 

私を呼ぶ声が聞こえた。久しぶりの父親の声を聞いて。嬉しくなった。それに父は家で待っていられなくなったのではないだろうか? 普通、貴族が門の外にまで簡単に出て来る事はない。 

「おお、立派になって、やはりお前は私の娘、鼻が高い。しかし、すまなかった。お前がこんなに大変な思いをして、立派になったのに、私は何もしてやれなかった」 

「そんな事はありませんよ。イェスタ叔父様に私を見守ってくれる様頼んでくれたんでしょう? とても嬉しかったですよ」 

そう言って、微笑みを浮かべて父を見る。 

「おお、クリスが笑ってくれている…」 

父は涙を流して、私を抱きしめた。 

「すまない、本当にすまなかった。無力な父を許してくれ」 

「お父さん、私はお父さんの子です。それは何時までたっても変わりません。愛してます」 

父は涙が止まらない様だった。娘との再会に感動してしまった様だ。それにしても、私の笑顔、凄い威力だな。みんな、ちょろすぎん? 

「クリスさん、お帰りなさい。何と言っていいのか…」 

「お義母様、気になされないでください。私が悪いのです。それにお義母様も私の事をイェスタ叔父様に頼んでくれたんでしょう?」 

「ええ、私はあなたのお母様に貴方の将来を託されました。貴方に何かあつたら、マリア様に申し訳がたちません。本当に良かった」 

「私の方こそ、ご心配をかけて申し訳ございませんでした」 

今まで一度もお義母様にきちんとした対応をした事はなかった。だけど、500年前の私の記憶がこの人は善人だと告げていた。私はお義母様を母親として接する事にした。 

「…お義姉さま」 

「ベ、ベアトリス…」 

私の前に現れたのは、あの異母妹のベアトリスだった。私はベアトリスにあったら、どうしてもやらなくてはならない事があった。それが出来て良かったのかもしれない。 

「ベアトリス。私は悪いお姉さんだった。貴方に意地悪ばかりして、満足に話した事もなかった。ごめんなさい。許してもらえないかもしれないけど、謝る。お姉さんが悪かったです」 

私は妹に頭を下げた。皆、ビックリしていた。 

「クリスさん、そんな…ベアトリスに頭を下げるのだなんて、マリア様に申し訳がたたない」 

「お義母様、私は貴方の娘ですよ。クリスと呼び捨てにしてください。それに悪いのはどう考えても私の方です。怪我までさせてしまった…許してください」 

「お姉様、顔をあげてくださいまし」 

妹の許しの言葉に私は安堵した。それに、母に心を開く事ができた。 

「お帰りなさい。クリス…あなたは私の娘、クリスです」 

「お母様…」 

「お姉さま」 

私達三人は抱き合って、泣いてしまった。とても長い時間がかかったけど、ようやく本当の家族になれた。そう思えたのは、私がまだまだ、人の心の闇を知らなかったからだろう。 
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