悪役令嬢が最強!伝説の魔法使いが悪役令嬢に転生。いろいろやらかして追放されて贖罪をしながらのんびり。この悪役令嬢あまり懲りてないみたい。

島風

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赤の森の大討伐4

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「エリスちゃん、気持ち大丈夫? 街でこんなに長い間お風呂入れない事なかったでしょ?」 

「はい、初めての経験です。私、奴隷でしたけど、お風呂は普通に入れてもらっていたので」 

良かった。エリスちゃんはそれ程虐待されてなかったんだ。いや、可憐さが減ると思ったのか? あのジジイ、とんでもない奴だ。エリスちゃんの愛らしい顔を見るとホント腹立つ、こんな可愛い子を性のはけ口に使おうのだなんて、エリスちゃんは未だ14歳なのに! 

「クリスさん。ありがとうございます。助けてくれて…私、クリスさんに助けてもらえなかったら、今頃…」 

「エリスちゃんがいい子だから、きっと、女神様が引き合わせてくれたのよ」 

「あれ、クリスさん、女神様信じてなかったんじゃ?」 

「都合のいい時は信じる事にしているの、悪い事考える時、信じていると困るでしょ?」 

「クリスさんらしいですね。でも、クリスさんはホントは優しい人なんですね」 

「な! なんて事言うの! 私が優しい人だなんて!」 

私は思わず顔が赤くなってしまった。私が優しい人? ちょっと気持ち悪い。 

「クリスさんは悪ぶっているだけのホントは優しい人ですよ」 

だから、あまり私をなじらないでヨ。 

そんなこんなで5日目の朝の支度をすると、早々に魔物に遭遇した。 

「新たな魔物が1体、出現しました! 1時の方向から移動してきます! 魔物は龍!」 

索敵担当が大声で叫んだ。それはそうだろう。龍! ドラゴンだ。ドラゴンはS級の魔物だ。ついに私達はSクラスの魔物に遭遇した。そうだ、森の魔物たちの行動範囲が狂っている今なら、こんな処でSクラスの魔物に遭遇することも十分あり得る話だ。 

うっそうと茂る木々の高い枝を掻き分けて現れたのは、1体の水龍だった。水龍”ウォータードラゴン”、そう魔物の中でも最も強力な力を持つものだ。このクラスの魔物は魔族か同じ龍族しかいない。 

「クリスちゃん、聖歌を! アンさん、エドヴァルドさん、前線をお願い、私はクリスちゃんの護衛をするわ、流石にドラゴンは手強いわよ!」 

「はい、セシーリア様」 

「任せてください。聖女様」 

「セシーリアさん。私、聖歌、歌います」 

Θυμάσαι όταν είχες μάτια  

Θυμάσαι πότε τα χέρια άγγιξαν το ένα το άλλο;  

Ήταν το πρώτο μου ταξίδι αγάπης  

Σε αγαπώ τόσο 

δεν είμαι μόνος  

Επειδή είσαι 

私はアルを想い、聖歌を歌った。昨日のアルの涙が思い出された。私を守れない事への悔し涙。アルの悔し涙は私にはとても美しく思えた。普段なら、馬鹿にするところなのに、私、どうしたんだろう? 

私の聖歌が完成すると騎士団は戦いを始めた。ドラゴンの体長は10mにも達する、それに加え、ドラゴンの鱗は剣も魔法も寄せ付けない。強力になった騎士団とて簡単に勝てる相手じゃない。しかし、私には勝機が見えた。ウォータードラゴンの弱点は雷撃だ。つまり、聖女の得意な攻撃魔法がかなり効果がある、例え龍の鱗をもってしても阻めない程の雷撃を叩きつければ、ドラゴンと言ってもただでは済まない筈! いや、例えウォータードラゴンでなくても、雷撃の攻撃は他の龍種にかなりのダメージを与える筈だ。龍の鱗は雷撃を阻めない。何故聖女、聖人の光魔法に雷撃があるのか? 雷撃は創世神が使ったとされる魔法だ。雷撃を阻む事はいかなる手段でもできない。だから、創世神様は光魔法にのみ雷撃を与えた。そして、今、私は雷撃の攻撃魔法ライトニングギガボルトを使える。聖女レベル20、虚数魔法レベル20、それに加え、聖女の聖歌。魔素を使えば、この世界ではレベル99に匹敵する魔法が使える筈。私は剣を抜き放った。 

「クリスちゃん?」 

「セシーリアさん。ウォータードラゴンの弱点は雷撃ですよね?」 

「そうね。確かに」 

「私、雷撃の魔法を放ちます。セシーリアさんはアルの事、お願いします」 

「わかったわ。私は援護に回る、攻撃魔法はクリスちゃんの方が上手だからね」 

大気中から魔素を集める、空の雲が渦巻き始める。魔素が渦巻くと共につられて雲が渦巻いているのだ。そして、 

『ゴロゴロ ピカッ』 

渦巻く魔力が術者の詠唱する魔法をいち早く顕現させてしまう。未熟! 無駄なエネルギーを使ってしまった。まだ、この魔法はあまり慣れていないのだ。 

「スレイヤード・スレイヤード・バルモル 青き光の雷よ ライトニングギガボルト!」 

力ある言葉が放たれると、上空の雲の戴より、雷撃が落ちる。 

『バリバリバリバリ ゴロゴロゴロゴロ ズガーン』 

雷がウォータードラゴンに落ちる。雷をかわす手段等ない。最強の呪文が放たれた。雷撃を受けたドラゴンはのたうちまわる! 

「グギャァァァァァァァァァァァァ――!」  

ドラゴンの咆哮をあげ、騎士達がこの機を逃さず、ドラゴンに向かう。だが、ドラゴンはその目を私に向けた。ドラゴンの目が私と合う。ドラゴンが私を最大の脅威と認識したのだ。そして、 

シュン 

「何だと!」 

残音を残して、ドラゴンは消えた。いや、これは瞬歩のスキル! そして、目の前にドラゴンは移動していた。 

「逃げて! クリスちゃん!」 

しかし、あまりに突然で私は対処できないでいた。一瞬の油断、こんなに早く移動できる筈がなかった。魔物は魔法やスキルを使えない筈だった。一部の例外、イレギュラーなものを除いて、他でもない、自身が経験した事、世の中には絶えず例外が存在する、それが今、私の目の前に、龍の顎が迫っていた。 

「クリス!!!!!!!!」 

アルの声だ。 

「きゃぁああああああああ」 

アルは私を突き飛ばした、そして、 

「ギャァァァァァァァァァァァァ――!」 

龍はアルを咥えていた。私の身代わりにアルが? 龍はアルをふいっと顎から離した、目標を間違えた事に気がついたのだろう、そして、再び私を見た。 

「よくも、私のアルをぉぉぉぉを!!」 

怒りに何もかも忘れた、私は魔素ではなく虚無で魔法剣を発動させた。 

「飛翔レイブン」 

大空に羽ばたき、宙で軌道を変えると、龍に一閃向かった。 

『バキバキバキバキバキバキ』 

雷撃を纏った魔法剣で龍に向かい、一閃、龍は私をその顎で捕えようとしていた。私は口の中に自ら入った。 

「飛燕斬! 雷」 

『ズカーン』 

私の魔法剣は龍の口、そして頭を吹き飛ばした。咆哮はない、既に顎も頭も吹き飛ばしたのだ。後は、騎士団がなんとかしてくれるだろう。私はそのまま飛翔の魔法でアルの元へ行った。 

「アル! アル! 今、治癒の魔法をかけてあげるから! 

聖なる癒しのその御手よ 母なる大地のその息吹 我らが前に横たわる 傷つき倒れし彼者 我ら全ての力持て 今一度の力を与えんことを! メガヒール!」 

アルは動かなかった。 

「嫌よ、アル! 死なないで! お願い! メガヒール、メガヒール、メガヒール!」 

「クリスちゃん…」 

セシーリアさんが私に声をかけてくれた。セシーリアさんなら、 

「セシーリアさん、メガヒールより強力な治癒魔法使えませんか?」 

「…ごめんなさい。私もメガヒールまでしか使えないの」 

「そ、そんな…」 

私は思わずアルを抱きしめた。血まみれのアル。こんな、アルはこんな奴じゃない。なんで私をかばったりしたの? 魔物は怖いんでしょ? なんでこんな時にだけ! 

「メガヒール! メガヒール! メガヒール! メガヒール!」 

「クリスちゃん、無駄よ。それ以上は…」 

「嘘ですよね? セシーリアさん? アルはもう」 

「違うわよ。アル君、もうほとんど治癒されてるわよ…」 

「えぇ?」 

私は慌ててアルを見る。アルの顔がピクリと動いた。いつの間にか顔色も戻っている。 

「アル、これはどういう事かしら?」 

私は眉毛をピクピクさえながら聞いた。 

「いや、クリス、君の胸の中が思いのほか気持ち良くてつい」 

アルはというと、私の胸に顔をうずめている状態だった。そういえば私、胸でかかったな。つまり、こいつ(アル)は今、私の胸の感触と温かみを楽しんでいる訳だ。こんな非常時に… 

「ア~ル!?」 

「いや、クリス、ごめんよ、謝るよ。だから、その雷撃は止めて! 今、死にそうになったばかりなんだ。ほんとに死んじゃうよ」 

察しがいい私の幼馴染は私が何をするつもりか直ぐに察した様だ。 

「五月蠅い! 死ね!」 

『バリバリバリバリ ゴロゴロゴロゴロ ズガーン』 

その後、雷撃と治癒魔法を何度も何度も交互にアルにぶちかました。 
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