悪役令嬢が最強!伝説の魔法使いが悪役令嬢に転生。いろいろやらかして追放されて贖罪をしながらのんびり。この悪役令嬢あまり懲りてないみたい。

島風

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冒険者ギルド間新人模擬戦3

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「アル! やったね!」 

「......」 

「性格がドブ過ぎんか?」 

 

 私はアルを称えるとつい調子に乗って、アルを抱きしめてしまった。調子に乗りました。ごめんなさい。だから嫌そうな顔しないで! 普通女の子に抱きしめられたら嬉しくない? 

 

「アル、私にハグされると嫌なの?」 

「今、熱いから気持ち悪い......」 

 

 気持ち悪いって言われたよ。私、女の子なのに......相変わらずアルはマイペースだ。 

それにしても、アンは無言、エドヴァルドさんは何故か怒っている。でもそれ誉め言葉だよね? 

 

「私は正々堂々と戦います!」 

「頼むぞ! 今度はまともに頼む!」 

「正々堂々ってなんだ?」 

「聞きなれない言葉ね?」 

 

私とアルは顔を見合わせて首を傾げる。あまり聞いた事がない言葉だ。 

 エドヴァルドさんの言葉に頷き、模擬戦公式木剣を装備し会場へ足を進めるアン。 

目が座っている。怖い。多分、アル以上の激しい戦いになるな! 

アンはどう戦うだろうか? 私は目立ちたくないがアンは騎士になりたい訳だから、ここは目立つ方を選ぶだろうな。最も、騎士になるのは私が許さん。騎士になるのは使い物にならなくなってからにしてくれ! 

 アンの相手は、二十歳後半の若い槍使いだった。 

剣と槍は相性が悪い。ここは攻撃魔法を中心に戦うべきだろう。しかし、対戦中の仲間にアドバイスを送る事は禁止事項だ。許されているのは応援のみ! 

 槍使いは先ほどのイケメン程ではないが整った顔立ちとだ。槍を振り回しアイドリングするが、中々の槍裁き! かなりの使い手だ。しかも、闘気プラーナの動きを感じる。アンも圧倒的有利とはいかないかもしれない。 

 しかし、問題はこの槍使いのレベルがどの位かと言う事だ。闘気プラーナの使い方は圧倒的にアンの方が上手い。しかし、アンは華奢で、いくらも筋肉がなく、レベルも先日Lv3になったばかりだそうだ。はは、騎士学校には魔物討伐訓練がある筈だけど、全然経験値稼げなかったんだね、アン。だから貴方は私の物よ。今のアンがあるのは私のおかげだからね。異論は認めません。 

 クリスが失礼極まりない事を考えているが、アンはクリスの生暖かい目を気にする事なく、ただ、己の全力を出し切る事だけを考えていた。アンは人格も容姿も優れているのだ。普通だと、こっちが主人公キャラだ。 

決意を胸に、対戦者に礼と敬意を払い、剣を抜く。 

 

「……よろしくお願いいたします」 

「ああ、だが、お前達とは互角以上と考えさせてもらう」 

 

 対戦者の言葉に、対戦者の言葉にいやがうえにも気持ちが昂るアン。 

 

「全力を戦わせて頂きます。私は騎士になりたいので!」 

「騎士か………ふっ」 

 

 騎士は自嘲気味の笑みを浮かべた。この元騎士に何があったのかはわからない。だが、彼の目には闘気プラーナが漲る。アルと違い、騎士を目指す、心が真っすぐな女性アン。それはこの元騎士にも伝わったのだろう。元騎士は全力をかけて戦うだろう。騎士とはそういうものだ。 
 

 すらり 

 ひゅん 

 

 木剣を鞘から抜き放ち。身構える二人、先に動いたのはアンだった! 

 
焔爆炎舞バースト・ロンド」 

  

 槍使いを数メーターに及ぶ炎の幕が展開する! 槍使いは思わず、バックステップで避ける! その動きは素早く、実に3メートルを一瞬で移動する。だが! 
 

 「ちっ! 魔法使いだったのか?」 

 

 槍使いは対戦者が魔法使いとは思わなかった。魔法使いが少ないこの世界、ましてや、アンは剣を手にしていたのだから。だが、彼は更に過ちを犯していた。 

 
「これくらいの攻撃魔法では!」 

 

炎の魔法の中から突如アンが剣を掲げ飛び出してくる! 攻撃魔法は目くらましだったのだ! 

 

「何! ぐぁっ!」 

 

 槍使いは意表を突かれ、たやすく懐に入られた、そして一撃を胴にくらっていた。通常なら勝負ありだ。だが、勝敗の笛はならなかった。炎の攻撃魔法は審判の目も欺いていた。 

 

回復リカバリー!」 

「ズルいですね。回復魔法が使えるなんて」 

「魔法と剣、両法使える君に言われたくないね」 

 

 騎士は微笑む、そこには好敵手に恵まれた騎士の顔があった。 

槍使いの脇腹のあばら骨は折れていた。しかし、すぐさま水魔法の回復魔法を唱える。この槍使い、魔法も使いこなす、魔法戦士だった。 

 

「完全回復とはいかんか!」 

「それ位のハンデは欲しいです」 

「ふっ」 

 

この騎士、少々気障だ。しかし、先ほどの若い剣士より人間性は良いらしい。言動は至って紳士。 

 

「今度はこちらの番だ!」 

 

叫ぶと槍使いは急進した。そして、火の攻撃魔法を唱えた。 

 

炎の矢フレア・アロー」 

 

急進した後、至近距離からの攻撃魔法。アンは土の防御魔法を唱える。 

 
塗り壁地獄ストーン・ウォール」 

 

 アンの近くの地面がせりあがり、石の壁が出来上がる、槍使いは攻撃できない。しかし、これは悪手だろう。何故なら、自身の視界も塞いでしまう。思わず上を見るアン、石の壁を跳び越し攻撃される可能性がある。しかし、槍使い狙いはそうではなかった。 

魔法の効果が消え、石の壁が消えていくと、まだ、そこに槍使いはいた。 

 

「!?」 

「旋風突き!!!」 

 

槍使いとの距離は3mはある。通常なら、長い槍とはいえ、射程圏外、しかし、 

 

「突き! 突き! 突き! 突き! 突き! 突き! 突き! 突き! 突き!」 

 

槍使いの突きの衝撃破は3m先のアンまで迫っていた。アンは咄嗟に防御魔法を唱える。 

 

暴風トルネード幻影ディザスター!」 

 

 旋風突きとは槍士のジョブのスキルだ。短時間で多数の突きを繰り出し、その衝撃破で攻撃する。だが、その威力はそれ程ではない、おそらく目くらまし。さっきの様に塗り壁地獄ストーン・ウォールは石の壁を作り、強力な物理攻撃系の魔法には有効だが、目くらまし程度の魔法やスキルに使用すると視界を妨げられ、かえって対戦者の思うつぼだ。一方、暴風トルネード幻影ディザスターは風の魔法で、幻影効果で攻撃を逸らす効果がある。槍使いの突きは全て、アンではない所へ行った。しかし、これも目くらまし。槍使いの闘気プラーナが高まるのを感じる。何か強力な技を出すな! 

 

焔爆灰燼-激-えんばくかいじんげき!」 

 

 槍使いは強力なスキルと同時に炎の魔法を組み合わせた攻撃を使った。灰燼-激-かいじんげき、槍士の奥義、十分なプラーナを蓄えた時放つ事ができる槍攻撃の奥義、瞬間的に槍の威力を数倍に増やす事がえきる。それと同時に炎の攻撃魔法を同時に放っていた。だから技の名前が灰燼-激-かいじんげきでは無く、焔爆灰燼-激-えんばくかいじんげき! 

 

四属性防御ファランクス!」 

 

 4属性の攻撃魔法をも防御する四属性防御ファランクス! しかし、槍使いは同時に槍の奥義を放っている。この魔法は4属性の強力な魔法をも完全防御できる、だが、物理攻撃である槍の突きは回避できない。アンは自身の剣のみで、槍使いの奥義を受け止める必要がある。不意を突かれたアンに回避は無理な様だ。ここはさっきの塗り壁地獄ストーン・ウォールを唱えるべきだった。 

 

 ごきんと鈍い音が響いた。アンは槍使いの奥義を剣で受け止めた。槍使いは驚愕の表情。そして、剣と槍が打ち合う。アンは闘気プラーナを蓄えながら、剣戟を繰り出していた。 

 

「やりますね!」 

「こんなところで、まさか、これ程の好敵手と恵まれるとはな!」 

 

二人は完全に騎士同士の世界に入った。私......ちょっとついていけない世界...... 

ごきん、ごきん、ごきん 

重い音が鳴り響き、シモン先生が呟いた。 

 

「木の槍と剣の打ち合いって、あんな音するものなのか?」 

 

 通常の木の剣と槍ではない。アンも槍使いも木の剣、槍に闘気プラーナを纏っている。今のあの剣とは鉄の剣、槍とは比べようがない強さと硬さ、重さを持っているのだ。あの槍使いは相当な手練れだ。無意識に闘気プラーナをコントロールしている。 

しかし、私は気がついた、アンは木剣に闘気プラーナだけではなく、炎の魔法を纏わせ始めた。 

 

「こ、これは?」 

 

 それはアルが以前繰り出した。焔爆ファイヤー斬撃スラッシュ......いや、実際は氷の魔法を纏わせた魔法剣だが......その本当の炎の魔法剣バージョン。アンは一度見ただけで会得したのか? あるいはこの好敵手に勝ちうる手段がこれしかないと判断したのか? 確かにこれだけの手練れに勝つには魔法剣しかない。アンはLv3なのだ。優秀なジョブ剣士のスキルもタレントファイターのスキルもない。 

 剣に炎の魔力が渦巻き始める。槍使いの表情に焦りが見える。魔法を使う彼には魔力の流れがわかるのだろう。尋常ではない魔力がアンを渦巻いている事に気がついたのだろう。彼だけではない、それまで歓声を上げていた観客が静まりかえった。アンから魔力がほとばしる、魔力が無いものでも、その炎の魔力の奔流に皆、恐怖した。 

 

「今度は私の番です!」 

「いやなんなんだこれは!?」 

 

 槍使いは声を上げる。歴戦の彼が見た事のない魔法剣、それをアンは繰り出すつもりだ! 

コロッセオが静まり変える。それほど、アンの持つ剣から溢れ出す炎の魔力の奔流は観客に言い知れぬ恐怖を与えていた。 

 

「私の夢を、かなえさせて頂きます。私の持てる全ての力! ここに出します!」 

 

 ゴゴゴゴゴと魔力の量と勢いが増し、これからアンがとんでも無い一撃を繰り出す事明らかだ。会場にいる皆の髪をなびかせ、畏怖を与え、その魔法剣の奥義が繰り出される。 

 

「アイシクル・スラッシュ!」 

 

 また、まさかのネーミングミスであった。氷じゃねぇ、炎だよ。まさかアンが天然とは思わなかった。ここに及んで、それをするか? 

 

四属性防御ファランクス!」 

「うぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおぉ!?」 

 

 槍使いにあまりにも大きすぎるダメージが襲う、だが、直前に防御魔法を私が唱えた。アンの魔法剣の奥義は信じられない事に私の防御魔法すら貫通し、減衰して槍使いを襲った。アン、殺す気か? 騎士は勝負に加減ができないらしい。困った種族である...... 

 こうして勝負がついた。私が防御魔法を使った事は不問にされた。そうしなければ、次の者が死ぬのでは? という忖度だろう。 
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