悪役令嬢が最強!伝説の魔法使いが悪役令嬢に転生。いろいろやらかして追放されて贖罪をしながらのんびり。この悪役令嬢あまり懲りてないみたい。

島風

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冒険者になりたいと思います。

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 ケルンの街で、安宿を探して泊まると、アルと相談した。相談というより、私の決意を話した。私は馬車の中でこれからどうやって生きていくか考えていた。贖罪も生きていかないとできない。 

 

「アル、ありがとう。私の事許してくれて......」 

「その事はもう忘れて、これからは一緒に頑張って生きよう」 

「本当にありがとう」 

 

 宿に併設されたレストランで食事を取る。長旅で疲れていたし、路銀は心元ない。アルは少し所持金があったが、追放者の私はわずかなお金しか持たされていなかった。1週間もこの宿に泊まると無くなる。明日からはもっと安いレストランを探さなければ......そう思っていた。 

 

「アル、私、冒険者になろうと思うの」 

「冒険者? クリスが?」 

 

 アルは驚いた様だ。彼は私が前世で大魔導士だった事を知らない。当然の反応だ。しかし、路銀は心もとなく、生きる為の術は私にはない。消去法で、できる事は限られるのだ。 

 しかし、私が大魔導士だった事は告白できない。虚数魔法使いは事実に反して悪役なのだ。勇者を裏切った悪人として歴史に刻まれている。もし、私が虚数魔法使いだと知れたら国をあげて討伐されかねない。実際、帝国では法律で、虚数魔法使いが発見された場合、勇者や騎士団はこれを直ちに討伐すると決まっている。この王国、アクイレイア王国も同様だ。 

 

「アル、私は聖女なのよ。この力で、ポーションとか作れば、人の役にたてる。それに生きるための術も身につくわ」 

「確かに君は聖女だね。でも、ポーションの作成が主で、魔物を討伐したりする訳じゃないんだね?」 

 

 私は目が泳いだ。魔物討伐してぇー。前世でたくさんの魔物、魔族、ついに魔王を倒した。正直、魔物退治は趣味の分野に入る。 

 

「やっぱり、魔物退治とかしたいんだね」 

 

何をおっしゃる、アルさん、私は何も言ってませんよ! 

 

「なんでわかったの? ていう顔してるね。クリスは昔から判り易いだよ」 

 

マジ? それって、私が単純って事? アル、優しいと思ったけど、結構毒舌? 

 

「いや、魔物退治はその、贖罪の為に!」 

「贖罪?」 

「うん。私、贖罪をしたい。人の為に役に立ちたい。私はアルにしか謝罪ができなかった。他の人には......もちろん今更言っても意味はないんだろうけど、自分で自分を許すのに贖罪が必要だと思うの」 

 

我ながら、もっともらしい事言うのうまいな。てへ♡ 

 

「嘘だね。いや、贖罪したいというのは本当かもしれないけど、魔物退治の事話す時の目は好奇心が向いている時の君の目だよ。贖罪の為なんかじゃない」 

 

しまった。ここは幼馴染の弱点。色々な事が直ぐにばれる。 

 

「はうっ」 

 

私は思わず呻いた。 

 

「久しぶりに聞いたな、その「はうっ」ていうの、懐かしいな」 

 

 そりゃ、貴族令嬢が「はうっ」なんて気軽に言えませんよ。意外と貴族ご令嬢って疲れるんだからね! 

 

「でも、実際、アルだって、何か手に職あるの? アルは確か騎士学園に通っていたでしょ? じゃ剣をとか使う職業って、冒険者位じゃないの?」 

「言われてみるるとそうだね。騎士学園を卒業して騎士団への入団が認められたら、騎士になれるけど、中退しちゃったからね」 

 

私はとてつもなく、不安にかられた。それは...... 

 

「アル、まさか、あなた、私の為に騎士学園を?」 

「違うよ。僕は用済みになったんだ」 

「えっ?」 

「君も知っているだろう。僕のお父さんは男爵だけど、お母さんは正式な妾じゃなかった。だから、本来、騎士学園になんて通わせてもらえる身分じゃなかったんだ。僕は君と幼馴染だったから、騎士学園に通わせてもらえたんだ。侯爵令嬢の君の幼馴染が情けない人生を歩むと、ベルナドッテ家も体裁悪いんだ」 

 

 心配して損した! あれ? でも、彼が用済みになったのは......つまり、私が貴族でなくなったから......私が彼の居場所を......私は自分のしでかした事の大きさを知った。自身のみならず、アルの人生まで...... 

 

「ア、アル、ごめんなさい。ごめんなさい。」 

「だから、それはもういいって!」 

「だって、だって!」 

「子供の頃お嫁さんになってくれるって言ったろ?」 

 

はい。いいました。子供の若気の至りです。ぷしゅーと顔から湯気が出る。 

 

「私がアルのお嫁さんになればいいの?」 

 

私は恐る恐る聞いた。それで、アルが幸福になってくれるなら? 

 

「いや、それは無理!」 

 

なんですと! 幼馴染で、この関係で、それはなくない? 

 

「君の事は好きだけど、それが恋愛感情からなのか幼馴染として好きか良くわからないんだ。ぶっちゃけ、凄い可愛い人に好かれたら、そっちに鞍替えするかもしれない」 

「ひ、酷ぇー」 

 

アルは思った事をそのまんま言ってくれた様だ。 

 

「でも、それならなんで、私と一緒に来てくれたの? 帝都で暮らした方が良かったんじゃ?」 

「僕にも良くわからないけど、君を守らなければという強い思いがあって、自分でもそれを止められなかったんだ」 

「それはやっぱり愛なんじゃ?」 

「違う」 

 

 即答かよ。おい! 少し位、夢見させてよ。幼馴染から好かれたら嬉しいわよ。自身が好きかどうかはおいておいて! 

とはいうものの、アルは冒険者になる事を承諾してくれた。そして、明日から宿は馬小屋にする事にした。路銀をかなり節約できる。他にも収穫があった。ちょうどレストランはアルバイトを募集中だった。だから、私はレストランで夜に働く事になった。アルも厨房で皿洗いの仕事をもらえた。これで、しばらくは生きていける。 

 

 

 私は自室に戻ると久しぶりに自身のステータスを確認した。ステータス魔法。一般魔法と呼ばれる魔法だ。この魔法が使えるのは女神様から12歳の時にタレントをもらえた者だけが使える。ほとんどの人は使えない。それに、人前で使う事もないし、あまり自身のステータスを明かす事はない。私の場合、虚数魔法使いという事がばれるので、この習慣は助かる。 

 

「ステータス!」 

 

唱えると自身のステータスが数値化されて出てくる 

 

タレント: 

聖女Lv1 

虚数魔法使いLv1 

 

スキル: 

製薬Lv1 

光魔法Lv1 

虚数魔法Lv1 

 

ジョブ: 

無し 

 

 やはり虚数魔法使いとなっている、記憶だけでなく、虚数魔法使いのタレントが私に宿った。しかし、Lv1......最初からやり直しか...... 

 

 てっきり前世の力が自身にそのまま宿ったかと思ったが、それはなかった。折角チートできると思ったのに......いや、虚数魔法使いになるだけで十分チートなんだけど。 

 

 この世界にはタレントという物が存在する。タレントとは12歳の時、女神様が選ばれたものにのみ与える加護だ。その力は信じがたく、タレントのある者の1年は無い者100年に相当すると言われる。タレントは私の様な戦闘向きの他、施政や商業、農業、建築等様々な分野にある。それを授かった者は普通、帝都や王都で要職につく事ができる。確実に優秀なのだ。国がほおっておく筈が無い。 

 

 このタレントにはクラス1からクラス4まで分類される。クラス4が最高峰で、クラス1が最低クラスだ。私の虚数魔法使いと聖女のタレントはクラス4に分類される。だが、虚数魔法使いをクラス4に分類していいものかどうか? いうなら、虚数魔法使いはクラス5に分類すべきだ。何故なら、虚数魔法使いの加護が他のタレント剣聖、剣豪、賢者よりはるかに加護が強い。これに匹敵するのは勇者位だろう。おそらく勇者と虚数魔法使い以外のタレントに相応するものがないため、あくまでクラス4なのだろう。 

 

 そして、タレント以外にジョブというものが存在する。これは誰にでも習得できるものだ。普通教会でお布施をすれば誰でももらえる。このジョブも馬鹿にならない。ジョブのある者の1年は無い者の10年に相当すると言われる。それ位差があるものだ。 

ジョブは複数持つ事ができる。それで、複数持つものもいるがそれ程多数持つ者はいない。何故なら、折角のジョブも複数持つと、レベルが上がりにくくなる。レベルというのはそのジョブの習熟度だ。つまり複数のジョブには経験値がより多く必要になるのだ。 

レベルが上がる程、女神の加護は強くなる。その為、複数のジョブを持つより一つのジョブのレベルを上げる方が戦い等の分野では常識だ。その方が強くなりやすいのだ。 

 

 

 虚数魔法使いである事は秘密にしないと......もし、バレたら国を挙げて滅ぼされる。それでは贖罪ができない。例えアルでもこの事は伝えらえない。バレないようひっそり生きなければ。 

 

 

 明日は馬小屋か......ちゃんとしたベッドは今日で最後かもしれない。そう思って、ベッドで寝入る。たくさん寝ておかないと体がもたない。前世で学んだ重要な経験則だ。そうこうするうちに私は寝入った。
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