2・5次元に恋するのは浮気ですか?

さつきのいろどり

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噂の真相

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藤堂先生と平野先生が付き合っていると
噂が流れているみたい。

でも、それは有り得ない事を私は知っている。

なぜならこの前、藤堂先生が平野先生を
ふっている現場に出くわしてしまったからだった。

しかも、藤堂先生がBLだと平野先生は
思っているかも知れないのに
どうしてこんな噂が流れたのか。

いや、その前に誰がそんな噂を流したのか。

チエコと話をしながら教室へ向かう。



私「それ誰が言ってたの?」

チエコ「誰って、それは…」



『 キーンコーンカーン』



チエコ「やばっ!ホームルーム」



チャイムの音が鳴り終える前に、席に着くと
直ぐに藤堂先生が入って来たから
チエコの「それは…」の続きを聞きそびれてしまった。

教室がザワついているのは
多分、あの事だよね。



女子生徒A「あのっ、藤堂先生、噂は本当ですか?」



クラスの女子が藤堂先生に話しかけた。



私「!」



教卓の後ろに立つ藤堂先生と目が合った気がした。
一瞬、眉間にシワを寄せて鋭い目をしたと思ったけど、気のせい?
それとも、睨まれた?

まさか、私が変な噂を流したと思ってたりするの?



藤堂「噂とは何の事ですか?」

女子生徒A「平野先生と、付き合ってるって言うの本当ですか?」



単刀直入に聞くなぁ。
この子、藤堂先生ラブの一人だよね。

出席簿を持った藤堂先生の指がピクリと動いたけど、冷静な口調で藤堂先生が言う。



藤堂「誰が噂を流したのかは、わからないですが、足立先生から大切なクラスを、君達を預かっています。だから、今は恋愛しないと決めています。」



と、爽やかな笑顔で言い放った。



女子生徒A「今は、ですか?」

藤堂「ええ。ですから噂には惑わされないように。それでは、出席を取ります…」



私も、あの子と同じように“今は”に反応してしまった。
今はって事は、もしかして平野先生とは
これから付き合うかも知れないって事?

いやいや、それは無い!…はず、だよね。
こういう恋愛アプリって言うのは
ヒロインと両想いになるのが普通なんだから。

だけど“今は”って言うの気になるなぁ。

ん?
もしかして、あのお弁当攻撃でヒロインに落ちた?
いやいや、ヒロインはまだ好感度不足だよね、きっと。

テストの事で、呆れられたばっかりだし。
まだストーリー序盤だし
何か誤解されてそうだし。

それに、さっき睨んでたよね?多分だけど…

今後の展開、どうなるのかなぁ?

私は、他人事のように思っていた。
私自身が、この二・五次元世界のヒロインになって、それを体験しているという事をわかっているのに。

藤堂先生に、何か勘違いされてて
それが原因で嫌われたかも知れないのに
このストーリーを私は楽しみ始めていた。

怖い…けど、ワクワクする。そんな感じ。



ホームルームが終わると、藤堂先生は教室を出て行った。
なぜか藤堂先生をずっと見ていた私の目は
今度は一度も合わなかった。
さっきは、目が合った気がしたけど避けられたりして…。

藤堂先生のいなくなった教室で、女子達の安堵の声。

さっきの藤堂先生の“今は”っていう言動は
彼女がいないと言う事を示していた。

今後、誰かと付き合うだろうって事で
受け取り方によっては、女子生徒にも希望があるって事になるよね。

だから、ちょっと前までのダークな空気とは一変して今の教室はと言うと
お花畑の絨毯に、ふわふわとタンポポの綿毛が飛んでいるかの様。

男子達が、端っこの方で何やら文句を言っているようだけど、藤堂先生ラブの女子には
全く耳に入らない様子。



私「さっきの事だけど、誰から聞いたの?」

チエコ「あぁ、アレね。聞いたんじゃなくてさ…」



そう言いながら、スマホの画面を私に見せてきた。
見ると、この学校の専用ページと言うか掲示板のような物。

基本的に、学校の行事とかテスト期間とか、そういう事が載っている。

この学校の先生や生徒は、強制登録するらしい。

他には、昔の学祭の情報が載っていたり
スポフェ(スポーツフェスティバル・体育祭)の種目やアンケート等、色んな書き込みが出来るようになっていた。

先生と生徒がコミュニケーションを取れるように工夫してるのかな。

書き込みのほとんどは、校長先生のどうでもいいトークや写真に対する教員達のお世辞っぽい返信で埋まっていて

後は、渡邊先生の「保健室からのお知らせ」だった。

たまに、修学旅行や野外授業の行先アンケートに対して生徒達が行きたい場所のリクエストを書いているくらい。



チエコ「ここ見て!」



チエコが画面をスクロールして行くと…



「藤堂律兎と平野アヤメは付き合っている」

匿名で書き込みがあった。

平野先生ってアヤメって言う名前なんだ…
って、そこじゃないでしょ、私!

先生や生徒が自由に書きこめるからといっても
これは悪質すぎる!



チエコ「アンタいつも、見てないよね。」



ヒロイン、見ないタイプなんだ…
まぁ、多分私も見ないタイプだわ。
初めて私とヒロインが一致した瞬間。



チエコ「藤堂先生が来てから、何か書き込むかもと思って、女子みんなチェックしてるよ!」

私「そうなの?」

チエコ「まぁ、書き込まれた事ないけど。」



ないんだ。

まぁ、書かなそうだしね。
ってか、興味無さそう…

みんな、知らないんだもんね。
藤堂先生の本性を…



チエコ「それだけに、今回の噂は衝撃的だったよねー。
まぁ、藤堂先生本人が否定してたし、写真が貼られてる訳でもないし、ただの噂なんだと思うけど、誰が書いたんだろう?」



確かに…
生徒のイタズラ?…にしては、悪趣味。

何の為に、こんな事したんだろう?
何か、する必要があったのかな?

そう言えば、このサイトって、誰にでも見たり書き込んだり出来るのかな?



チエコ「このサイト。学校の先生と生徒しか
登録出来ないし、部外者は見たり書きこんだり出来ないはずなんだけどなぁ」





チエコって、超能力者設定?

…んなわけないか。

私の知りたい事、話し出したから
ちょっとびっくりしたよ。



チエコ「登録する時にフルネームで登録するから、匿名なんて絶対無理だし」



そうなんだ…
じゃぁ、どうやって?

このサイト作った人とか、そういうの詳しい人とかだったら出来るのかな?

何か、闇がありそう…



その後すぐに、この書き込みは消去されたけど
この問題はまだ、私の中では終わっていなかった。
もしかしたら、藤堂先生も。

私が書き込んだと藤堂先生が
勘違いしているかも知れないし。

もし誤解されていたなら、どうにかして解かなければ!

私とヒロインの思いが一致したのか、私の足は藤堂先生が、いるかもしれない化学室へと
向かっていた。

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