2・5次元に恋するのは浮気ですか?

さつきのいろどり

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夢か現実か

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お昼ご飯を済ませると、すぐに夕飯の買い出しに行く。

何を作ろうかとか、バランスの良いメニューにしなきゃな、とか
毎日、悩んでたりする主婦も多いんじゃないかなと思う。

「あれ食べたい!」とか言ってくれればいいのに
旦那に聞いても、子供達に聞いても大体「何でもいい」って言うから。

だから私は“自分が今、食べたい物”を作る事にしている。


そういやぁ、さっきの恋愛アプリ、リアルだったなぁ。
藤堂先生…ウサギちゃんだっけ。

ヒロインに対しての、あの態度の悪さと、他の人に対しての爽やかな笑顔と言葉遣い。
二面生がある設定。どう展開していくのか気になる。

あの、渡邊先生って言う保健の先生も、ある意味気になるけど。

あれ?私、あのアプリ楽しんでる?
いや、いや。ちょっと、続きが気になるだけ。

私は、買い物カゴに餃子を入れた。
今日は、餃子の気分だった。





夕飯の支度を終えた頃、旦那から「今日は、残業で遅くなる」と連絡があった。
金曜の夜は、残業になる事が多い。休日出勤したくないからだそう。

土日のどちらかは、子供達と遊んだり、どこかへ遊びに連れて行ってくれるけど
遅いと、片付けとか色々面倒なんだよね。まぁ、仕方ないんだけど…

子供達が寝ているのに、食べ終えた後、ガチャガチャと音が
立ってしまうような食器洗いは出来れば避けたいなって。

そんなの次の日でもいいじゃんなんて、言う人もいるけど私の性格上、ソレを許さない。
なにより洗い物を放置すると、黒いアレが寄って来るという…あぁ、恐ろしい。




夜十時過ぎ。子供達が自分の部屋で眠る頃、いつもは旦那と二人の時間だ。
だけど、今日はまだ、帰って来ない。
終電で帰ってくるとは思うけど…



私「ふぁぁぁあっ…眠っ」



テレビのチャンネルを変えようとリモコンに手を伸ばすと


『ピロリロリーン』


スマホが鳴った。

画面には見慣れないマークの通知が。 



私「何コレ?」



マークに触れると
 


私「あぁ、さっきのアプリ。」

 

旦那が来るまで、ストーリー進めようかな。
アプリをタッチすると、一話へ進みますか?と表示された。

はい。をタッチする…と







私「!」

チエコ「…おーい。いつまで寝てるのー?」

私「…へ?」

チエコ「もう、放課後だけど」

私「何が?」

チエコ「何って、アンタ。お昼食べた後、机に伏せたまま
六時間目終わるまで寝てたけど」



呆れた顔でチエコが言った。

え?だって私、たった今までスマホいじってアプリ開いて…



私「もしかして、寝てた?」

チエコ「だから、さっきからそう言ってるでしょうよ」

私「え?あ、あぁそうだっけ」

チエコ「寝ぼけてるところ悪いけどさ。イケメン二号の嶋野先生から伝言」



嶋野  遜しまのゆずる。担当教科は生物。いつもぼーっとしてて
何を考えているか分からない先生だけど、イケメンなんだよね。



チエコ「あんた寝てたから、罰として理科室、掃除だって。」

私「げっ!ま、マジ?」

チエコ「理科室の鍵、開けておくって。さぼったら今度のテストの採点
アンタのだけ見ずらい黄色のペンで採点してやるとか意味不明な事言ってたよ…」



き、黄色のペン…地味に嫌かも…。

あー、理科室かぁ。理科室って、生物の標本とかあるし、人体模型とかも何だか
不気味だから嫌なんだよね…
このまま帰りたいけど、授業中、爆睡してしまった私が悪いか。

仕方なく、理科室に向かう。

適当に掃除して帰ろう。取りあえず、掃き掃除しとけばいいよね?
掃除用具の入っているロッカーからホウキを取り出してゴミを集めた。
ゴミ箱は理科室のすぐ隣の部屋にある化学室だ。

化学室は、理科室と扉一つで繋がっている。
だから、わざわざ理科室を出なくても行けるのだ。


『ガラッ』


扉を開けると…

あれ?誰かいる?
薬品倉庫に人影が見えた。

しかも、この匂い…コーヒー?

ゴミをゴミ箱に捨てていると、誰かがこっちへ歩いてきた。コーヒーの香りと共に。



私「あ。」


化学教師の藤堂先生が立っていた。コーヒーが入っているであろうマグカップを持って。



藤堂「アンタ、何してんの?」


いやいや、先生こそ何してるんですか!と言葉にしようとすると


藤堂「あぁ、罰ゲームってアンタか。」

私「え?」

藤堂「嶋野先生が言ってた。」



ニヤニヤした顔で先生が言う。



私「罰ゲーム…せっ、先生こそ、ウサgむぐっ」

 

私は急いで口を両手で押えた!



藤堂「おい!今、ウサギちゃんて言おうとしただろ?」



ヤバイ!言わないでおこうと封印した言葉をつい、言いそうになってしまった。
だって、藤堂先生が罰ゲームとか、私の事からかうからっ。


『フルフルフル』


横に首を振る私に、藤堂先生が思い切り顔を近づけて…



藤堂「いいか、絶対誰にも言うなよ!」



わー。ハイパーイケメンまで約、五センチ~っ!
って、違う違う!



藤堂「おい!返事は?」

私「は、はい。」



小さく答えた。だって、息がかかりそうだったから。

すると、藤堂先生は私にコーヒーの入ったマグカップを渡してきた。



藤堂「飲め。」



テーブルには実験用のガスバーナーに三脚台、そしてフラスコの中には黒い液体が。

ん?もしかしてコーヒー、これで作った?



私「遠慮しときます…」

藤堂「心配すんな。まだ、飲んでねぇから」

私「いやいや、そっちではなく、フラスコ…」

藤堂「私物だから、俺の。コーヒー用にしか使ってねぇから」



あぁ、そうなんだ…って、そういう問題じゃないでしょって!
そんな事を思っていると、先生が



藤堂「あぁ、もしかして間接キス期待した?」

私「なっ!そ、そんな子供みたいな事、気にするわけな…」

藤堂「は?お前、子供だろ。」

私「あ。」



あぁ、そうか。このアプリ内では、私は高二で…あれ?
これアプリだよね?だって私、制服着てて…

ん?…リアルな、夢?



藤堂「アンタ、昼に餃子食っただろ?コーヒー飲めば
少しはマシになるんじゃねぇか?」

私「なっ!女性に対して随分ストレートに言いますね!
もう少し、デリカシーって物が…」



あれ?
今、先生、餃子って言ったよね?
さっき、夕飯に食べたけど…

このアプリのヒロイン、お昼に餃子食べたの?

でも、寝てるところからスタートしたよね。
何食べたか分かんないし。

設定が、餃子食べてた事になってたのかな?


設定…?いや、でも私
今、ここにいるし…夢にしても、何か変だな。



藤堂「アンタ、本当に高校生?」



え?



私「そ、そうです、けど…」



…多分



藤堂「ふぅーん?なんか、変な奴」

私「せっ先生に言われたくないです!」



フラスコでコーヒー淹れる先生の方が絶対に変!



私「ところで、出待ちしてた女子、いませんね?」



ちょっと、気になった事を聞いてみた。



藤堂「撒いた」

私「あの群れを、どうやって…」

藤堂「瞬間移動」

私「なんですかそれ!」

藤堂「アンタが言ったんだろ。俺、瞬間移動使えるらしいし?」



ニヤニヤしながら言う。

なんかこのイケメン、小憎たらしいんですけど。
しかも、何か悔しい!
落ち着こうと、コーヒーを一口飲んでみた。



『ぶーっ!』


何コレ、甘っ!激甘っ!!
どんだけ砂糖、入ってるの?



藤堂「わーっ!汚ぇな。」

私「だって、これ甘すぎ!」

藤堂「だからって、出す事ねぇだろ」

私「先生って、めちゃくちゃ甘党なんですね」

藤堂「甘党じゃなくて、コーヒーが苦いんだ!」

私「ふふふっ」



それを甘党と言うのに。
藤堂先生の言い訳が可愛くて、つい笑ってしまった。
すると、さっきまで目つきが悪かった先生の顔が少し照れた顔になった。



藤堂「なんだよ。笑うんじゃねぇ」


私「ふふふっ…あははははっ…えへへへ…」



『ゴン!』



私「いたっ!…ってててて……あれ?」



気が付くと、私は食卓テーブル頭をぶつけていた。…寝てた、よね?

時計は、アプリを起動してから数分しか経っていない。
スマホの画面を見ると、いつの間にかアプリは閉じていた。

ん?
口の中が、コーヒー味。

私、飲んだっけ?



私「!」



すぐに、アプリを起動して確認する。



私「飲んだ…。“ ヒロインが”だけど。でも、どうして?」


このアプリって、もしかして…

ただの恋愛シュミレーションゲームじゃなくて
現実っぽく体験出来るアプリだったりして。

ガラケー時代にやってた時のゲーム、選択肢あったのに、このゲームなかったし。
例えば、藤堂先生がコーヒーくれた時、すぐに受け取るかとか
拒否するかとか、そう言うの。

いや、まさかね。そんな機能を備えているアプリ、あるはずないよね。


何がどうなっているのかわからない私は、このアプリを紹介してくれた
ユイミに聞く事にした。

まだ、起きてるよね?

トークアプリのBコネを開いて、メッセージを送った。

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