俺のタマゴ

さつきのいろどり

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友情・1

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登山に慣れているのか、世楽は登るのが速い。

しかも、結構登ったのに
歩くスピード全然変わらねぇし。

世楽について来たおかげか
後ろの方を歩く生徒が、ゴマみたいに見える。

いつの間にか、かなり先頭を歩いていたんだな。

しかし、疲れた… 



改「せ…世楽って、登るの速いな…」

冬磨「別に、普通だけど」



普通じゃぇよ。全然、息切らしてねぇじゃん!



改「もしかしてさ…登山とか好きなの?」

冬磨「それ、君に話したところで
メリットあるの?」



う…。メリットなんて、ないっつの。

もう、ずっとこんな感じだし
俺、そろそろ心が折れそうなんだけど。

あー、マジでどうやって仲良くなりゃ
いいんだよ。



改「あ、ある!メリット、めちゃくちゃある!」

冬磨「あ、そう。」



適当に言ってみたけど、やっぱダメか。

世楽は、どうでもよさそうな表情で
俺の事をチラッと見ると、さっきよりも更に
スピードを上げて行ってしまった。

マジかよ!どんだけ、速いんだ!

もう、無理…


俺は、疲れた身体を少し休める為
その場に、しゃがみ込んだ。

茅菜も新も、ゴマだし大丈夫だよな。


しばらくして何人か、俺の前を通り過ぎると
俺の数メートル先の視界に、新が映った。



改「やば!」

新「なにー?お兄ちゃん、俺の事
待っててくれたのぉ!」



わざとらしく、俺に向かって叫ぶ新。

アイツ、全然疲れてなさそうなんだけど。

もしかして、俺が先に行ったの黙って
見てたのって俺を疲れさせるためだったとか?

性格悪いっつうか、ずる賢いっつうのか。

休憩して、軽く復活した俺は
世楽を追いかけて、目的地の頂上を目指した。



そして、あれから世楽には全く追いつけないまま、頂上に着いた。

新の奴、まさか俺にこのまま負けるなんて
思ってなかったんだろうな。

よっしゃ!
新にクロボシまた一つ付けたぞーーーーっ!
一歩リードしたぞーーーーっ! 

心の中で叫んだ。
今頃、新の奴…ムフフ

多分、いや絶対今
俺、妖しい表情してるわ。


頂上は、広いキャンプ場みたいだった。
自然豊かな大草原が広がっていて
ここで昼寝でもしたら、いい夢でも
見られそうだ。

小さい建物が幾つかある。
休憩所とかトイレとかかな?

確か、この後ここでバーベキューやるって言ってたな。

先に頂上で、待っていた先生達が既に準備を
終わらせていて、頂上に辿り着いた生徒達は
食べ始めていた。



改「あれ?」


世楽は?…いない?
俺の前を通り過ぎてった生徒は、数人。
まだまだ、後から登って来る生徒は
沢山いる。 

この少人数の中から、世楽を見つけるなんて
余裕のはずなんだけど、どこにもいないぞ?

トイレか?
丁度、行きたくなってきたのでトイレマークの付いた建物に、入った。

見た感じ、誰もいない。個室もだ。

先生や、先に着いてた生徒に聞いても
誰も見ていないと言う。

まさか…



世楽の奴、迷ったのか?
いやいや、一本道だったから迷うとか
まず、ねぇな。

じゃぁ、まさか落ちた!…とかだったりして。

俺の背筋が「ぞわっ」とした。



先生「おーい、二岾どこ行くー?
バーベキュー出来てるぞー!」



いやいや、まだ決まったわけじゃない。 

先生の叫んでる声が聞こえたけど
先生の声なんか無視して、俺の足は
たった今、登ってきた山を走って下りていた。






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