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第七話

ラララ・ララバイ

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サイレンの音が鳴り響く。暗黒の夜の地で行われるカーチェイスは永久に語り継がれるだろう。
泥棒が物を盗んで行く様に、警察だって泥棒を捕まえる。
世界の法則は代わり続ける。強者が弱者の上に立つ。
弾丸の音が雷鳴の様に鳴り轟く。正義とは言え、人間を殺してしまえば。犯罪者と何も代わり無いのでは無いだろうか? 
邪魔する人間を消して初めて実現する楽園は全て紛い物だ。
貴方は自分の欲望の為だけに人を殺せますか?
今。持っている全ての物を捨てられる勇気はありますか?
貴方は憧れを捨てる事が出来ますか?憧れに身を任せて自分を滅ぼす覚悟はありますか?
禁じられた恋の行く末は如何に…
この物語は、愛する男の為に全てを捨てた女の話
貴方は最後まで正義を貫き通せますか?





20XX X月 X日 

とあるアパートに一人の若い女が居た。この時彼女はまだ知らない。ある男のせいで自分の人生の歯車が砕け散るなんて事に…



私は、大学に通う為に実家を出て上京してきた。随分此処のアパートにも慣れてきた。お隣さんはいい人だし、大家さんもいい人だ。但し唯一、学校によって行われる許されないイベントがある。それは…
「ひえぇ!また赤点だぁ!留年しちゃうよぉ…」
そう。恐らく学生の99%が嫌っている呪いの儀式だ。勉強という洗脳を私に行い。点数が悪い生徒には人権が無くなる。それを回避するには、方法は一つしかない。それは…
「やっぱり…勉強…やるしかないのか…」
私は覚悟を決め切れなかった。私は禁断の行為をしてしまう…ただの大学生にはもう戻れない。ガリ勉大学生に為ってしまう!それだけは嫌だ!高校生の時のトラウマを忘れたか!?…いいや、私は忘れない。忘れられないね!メガネをかけて本を読んでいただけでガリ勉扱いされ、回りから人間が消えてしまい…青春は全てラノベに溶かした高校生の三年間。
大学では友達、恋人に恵まれたかったんだ…
それと私には誰にも言えない秘密がある。それは…
インターホンが鳴る。私は戦争から帰って来た息子を迎え入れる様に、嬉しさに満ち溢れていた。
荷物を開ける。そこに入っていたのは…
「きちゃ~プロが厳選したカッコかわいいショタ100選!!」
そう。私はショタコンだ。ショタを簡単に説明すると…小さくてカッコかわいい男の子の事だ。
中学生の頃に大事にしていたハンカチを落としてしまい。私が必死に探していると…
「落としたよ。お姉ちゃん」
ズキュン!!その瞬間、私の心のハートはショタ一色に染め上げられた。
この秘密は誰にも絶対に言えない。この私、竜宮渚の秘密だ!!そういえば申し遅れましたね
私の名前は竜宮渚。よく友達からは変わってるのは名前だけじゃなくて、性格もだね。と、言われるが訳が分からない。私はただのそこら辺にいる至って平凡なショタコンだ。

現在時刻 18時22分 
私には毎日欠かさずにやっている日課がある。
「お!もう、こんな時間か…さて!日課の公園の見回りでもいくかな!」
私は公園の見回りを欠かさ無い。いや、欠かした事は無い!今日もカッコかわいいショタを見つけられるといいんだけどね…

銀色公園にて
私はショタを逃さぬようジェット機の如く、足早に公園へと向かった。
「あの"銀色"の髪…間違いない!あれは小学3年生の三日月陽炎くん!」
"銀色"の髪を靡かせる整った顔付きをした彼は私の片思いの相手だ。友達に病弱で休みがちな女の子の友達がいるらしいが…知ったこっちゃ無いのね!私はどうすればあの子を振り向かせる事が出来るのかを考えるだけなのね!
もし陽炎くんが私に好きだって言ってくれたらな…私はショタコンを卒業出来るかもしれない。駄目に為ってしまった私を助けてよ陽炎くん!!
綺麗な銀色の髪を靡かせ、陽炎くんが私に声をかけてくれた
「よぉ!姉さん、今日も見回りか?焦らなくていいんだぜ?あんたはまだ大学生だ。きっといい人があんたと結婚してくれるさ。おいらも将来、する予定さ。だからコツコツお金を貯めてるんだ」
陽炎くん…貴方はまだ小学三年生にして、既に将来の事を考えている…だが察するに、陽炎くんはこの私…竜宮渚の事など眼中にすら入れて居ないだろう。
どうすれば陽炎くんの心を掴めるか。私の心はその事で埋め尽くされた。まるでポッカリと空いた心の穴を無理矢理埋めるかの様に。
私のテストの点数はみるみるうちに悪くなった。何をしようとも、私の頭の中には陽炎くんが出てきてしまう。陽炎くんは小学生、オマケに低学年だ。対する私は大学生。天と地の差がある。
貴方なら、禁断の恋にピリオドを付けられますか?人間は憧れを捨てる事など出来やしない。
私の中の歯車は狂い始めた。

次の日

朝の光が眩しい。どうやら私はぐっすり眠れた様だ。
「陽炎くん…本当に貴方は罪な人ね。私を駄目にするなんて…私は貴方と一緒にいたい。貴方を連れ去りたい。人間は憧れを捨てる事など出来やしない」

私はいつも通りの時間に向かい、いつも通り見回りを開始した。
お目当ての物はすぐに見つかり。私は陽炎くんに声をかけようとした所…私の知らない女がいた。
陽炎くんはその女にとても暖かい、まるで炎の様に暖かい笑顔を見せていた。私の目の前ではそんな暖かい笑顔を見せた事無いのに…
私は悪いと思いながらも陽炎くん達の会話を盗み聞きした。
ほらね?人間は憧れを捨てられる訳が無いのさ。
例え自分の身が滅びようとも、憧れを捨てる事など出来やしないだろう。
陽炎くんは楽しそうに話す。私の前ではそんな嬉しそうにしてくれた事は無かったのに…
私はよく聞こえなかったが、「弥生」「幸福屋」の2つの単語が聞こえた。
幸福屋…聞いた事ある。まさか…陽炎くんは弥生とか言う女に騙されて良い様に利用されようとしてるんじゃ?!
許せない…陽炎くんを騙すなんて、決して許される事じゃねぇぞ!!ぶち殺して殺らないと気が済まねぇ!
私はさっさと帰り、陽炎くんを救う作戦を練った。
「私以外にも協力者が必要ね…早速電話しよう」
案外。電話はすぐに応答した。
「Hey!!!渚。折り入ってお願いってなんです?」
この女の名前は神宮寺神楽。唯一無二の親友であり、唯一のショタコン仲間だ。
早速。陽炎くんを一秒でも早く救いたいので、私は作戦を伝える事にした。
「神楽、私はショタを誘拐したいの」
「WAO!!ストップですよ!犯罪はノーです!」
案の定。神宮は驚いた、普通の人間なら当たり前の反応だが。真実を知ってしまった私は一刻も早く陽炎くんを助けたいの!
「私ね。騙されているショタを見放す事なんて出来ないの、私は!陽炎くんを助けたいの!貴方の助けが必要なんだ!お願い!私と陽炎くんを助けて!」
泣く声が電話越しに轟いた。神宮はどうやら理解してくれたようだ。
「sorry…私が間違ってましたネー…では、ショタを誘拐しましょうです!」
「ありがとう…この恩は一生忘れないよ」
やはり…神楽ならわかってくれると思っていた。
ちなみに、神楽は日本生まれの日本育ちだ。英語を混ぜて話しているが、ただのカッコつけだ。

次の日の夜

予め伝えておいた集合場所に到着した私達は早速ターゲットを探し出したが、探す必要も無かった。
神楽がふと思ったのか、私に疑問をぶつけてきた
「Hey!!!渚。どうしてあの"銀色"の子がこの時間にいるって知ってたんです?」
「陽炎くんは…この時間に病院に行くって知ってるから。ストーカー舐めんなよ?」
神楽は大笑いしたが、心配性なのか、私に疑問をぶつけてきた。
「sorry!!忘れてました!渚は世界に通用する一流のストーカーでしたね。ですが…こんな大通りで誘拐して大丈夫ですか?」
私は自信満々に答えた。
「YES!!私達のドライブテクニックなら警察なんかイチコロですネー」
神楽は不満気だったが、結局。運転手を務めてくれるらしい。
私達は陽炎くんに声をかけた。
「こんばんは!陽炎くん。こんな夜中歩いてたら誘拐されるぞぉ~」
陽炎くんは余計なお世話だと言わんばかりに。愛想笑いした。
隙ありだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!
「神楽!!お願い!」
「YES!!任せるネー」
神楽は小柄な身体の癖して陽炎くんをお姫さま抱っこをして車の中に乗り込んだ。後部座席から即座に運転席に飛び移ると思いっきりアクセルを踏んだ。
陽炎くんは訳が分からないのか声を出せていなかった。
迅雷の如く、私達の乗る車は猛スピードで高速道路を爆走している。
このまま巧く逃げ切れると思っていたが、現実はそう甘くない様だ。後ろから聞き覚えのあるサイレンが鳴り響く。まるで私達を威嚇するかの如く
神楽が焦り出した。
「SHIT!!警察に気付かれましたヨー!!」
「案ずるな!頭文字(かしらもじ)Dで鍛えたチェイス力を発揮する時ですよ!」
神楽が笑いを堪えながら言った。
「WAIT!!ちょっと待って下さい!もしかして  イニシャルDの事言ってますか?かしらもじって言いましたよね!?…ていうか、頭文字Dに警察から逃げてる時ありますか?それならまだレ○ニンジャゴーの方がまだ…」
私達が下らない事を言っている間に警察はどんどんスピードを上げていく。
神楽が叫んだ。
「まずいです!警察がもうすぐ後ろに…渚、パトカーを壊して下さい!トランスファー?だったっけ?それで早く壊して下さい!」
「やかましいわ!トランスファーは未来編だからまだこの時代に無いよ!それと私は超進化人類じゃありません!鎌鼬もアルテミスも使えません!」
神楽が覚悟を決めて叫んだ。
「もう追い付かれます!此処は覚悟を決めて下さい!あの山に突っ込みますよ!I can fly !!」
私達の車はガードレールをぶち破り、山に突っ込んだ。こんな展開、ワ○スピでしか観たこと無いぞ!
陽炎くんはとっくに気を失っている。
私も気を失うには5秒もかからなかった。




気付けば私達は拠点に到着していた。神楽の家系はお金持ちだから、山奥にある別荘を貸してもらった。
その時私は気付かなかった。私達と陽炎くん以外にも、もう一人誰かがいた事に…
私達は早速陽炎くんを監禁…じゃなかった。お部屋に入れた。
私達は陽炎くんが目を覚ますまでティータイムの時間を過ごす事にした。
「huh…助かりましたネ。警察は此処に気付いて無い様です。陽炎を監禁してどうするんです?

陽炎くんを監禁してどうするかって?そんなの一つに決まっている。
「陽炎くんが私以外の女と話すなんて許さない…弥生とか言う女から陽炎くんを取り戻す!」
「WAO!!壮絶ネー」
私達は下らない会話をして時間を潰した。




檻の中

おいらには理解出来なかった。今まで仲良くしていた姉さん達から急に誘拐されるなんて…
このままおいらは二人に死ぬまで監禁され続けるのか!?そんなの嫌だ!弥生がおいらを待っているんだ!
誰でもいい。助けてくれ…
突然、おいらの前に金髪ツインテールの女が現れた。
「貴様。此処から出たいか?そしてあの女達を殺したいか?」
そんなの俺の返事は一つに決まっていた。
「ああ。殺してやりたいさ…だけど…おいらの力じゃアイツらは…」
「案ずるな。貴様が殺す訳では無い。私がアイツらを殺す。だが、一つ契約を結んで貰う」
「契約って?」
「私は人間では無い。私はネクロマンサーだ。お前の胸に刻印魔法を刻み…」
どうやら難しそうな言葉を言い出したのでおいらが制した。
「待て待て。わかった。契約を結ぶ」
女はニヤリと笑い。
「契約成立」
と、だけしか言わなかった。
女はすぐに姉さん達の所に向かった。殺してる様子は分からないが何とか、声を聞く事は出来た。
「誰ですか!?貴方は…此処は私の別荘で…」
「バレット」
途端に雷鳴の様な凄まじい音が鳴り響いた。あんなのを喰らえば即死だろう。
「神楽!?貴様…神楽になんて事を…」
「バレット」
また、雷鳴の様な凄まじい音が鳴り響く。まるで魔法使いみたいだ…
「駆除完了っと」
途端においらの胸に紋章が刻まれた。
ツインテールの女はどうやらとても驚いている様だ。
「貴様!?どうして死なない!?小学生の肉体じゃあ私の刻印魔法の負荷に耐えられないはず…
まさか…お前…自分の命よりも守りたい大事な人がいるのか?」
「ああ。おいらは弥生と一緒に生きる。此処で死ぬ訳には行かないんだよ!」
「驚いた…まさか己の決意だけで運命をねじ曲げるなんて…久し振りに見た。運命に抗い、幸せな未来を勝ち取ろうとする姿はこんなにも神々しくて、輝かしい物だったのか…」
(だが、お前は詰めが甘いな。確かに即死は回避したが…自分が心から幸せだと感じた瞬間。お前は死ぬ)
(今は言わないでおこう。心から喜んで死ねる様に…本当は私だって…刻印魔法なんて使いたくないさ。だが、妹の命が危ないんだ…許してくれ)

5年後。弥生は幸福屋の力のお陰で病気を治した事が陽炎の命を奪ったという事には気付かなかった。
炎の様に綺麗な光だが、命儚き存在。それが三日月陽炎の一生だった。
決して霊子は陽炎の命を吸った訳では無い。弥生の病気を治した時点で陽炎の命は無かった。
霊子は陽炎が自分と契約してくれると分かり、もしかしたら陽炎を救えるかも…そう思ったが、現実は甘くなかった。例え、沢山の人から幸せを奪った自分でも役に立てなかった。
三日月陽炎の死は、名誉な事だったのだ。
言っただろう?人間は憧れを捨てる事など絶対に不可能なのだ。例えそれが自分の命を破滅させようとも。
遥か未来では彼の偉業を称え、大日本帝国最強の人造人間の名前に使った。
禁断の恋が叶う世界など存在しないのだ。
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