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第12章 はーいお注射ですよ~

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【Lapis夢が丘店】

「篠崎さんもアクセ作るんですか?」

「はいぃ。あ、由良で良いですよぉ」

「由良ちゃんは器用だから、助かってるんだ」

「オーナーって不器用なの?」

「そうなんですぅ。可愛いでょう?」

「そういうの可愛いって言うのか?」

「こんにちはー」

「あれ?愛里ちゃん。どしたの?」

「皆んなどうしてる?」

「サロンに居るよ」

「私が行くと警戒するわよね」

「にゃんズ?」

「そうそう」

今日は、愛里さんは猫達の注射に来てくれたんだ。

「一匹ずつ連れて来てもらおうかな?」

「じゃあ、僕がまずタマを連れて来るよ」

【サロン】

あ~皆んなしてくっついて寝てるなあ。

いつでも好きな時に食べられるようになったもんだから、食べ物で釣っても来ないし…

いやいや、タマは来なくても、食べ盛りのチビ君達が来るな。

おもちゃなんか出したらよけいに大騒ぎになるだろうな。

タマは大人しいから、ネットに入れなくても大丈夫だけどね。

「タマ、良い子だね~抱っこ抱っこちようね~」

「(え?何?)」

〈タマはキョトンとしながらも大人しく遊に抱っこされる〉

さすがに重いな。

Lapisのパパのニコロぐらい大きいもんな。

ポンちゃん達が変に思って警戒するといけないから、悟られないようにしないとね。

「さあ、あっちでキレキレ(綺麗綺麗)しようね~」

〈遊はタマを抱いてブラシを持って部屋を出る。ポンが首を上げて見ている〉

【売り場】

嘘をついちゃいけないから、とりあえずブラシして、っと。

「(気持ち良いな。俺キレキレ好きだな)」

「タマは良い子だね」

「捕まえててね」

愛里さんはそう言うと、サッと注射を済ませちゃった。

凄く上手い。

タマは一瞬の事で怖がったりしなかった。

「はい、良いわよ。次の子お願い」

次はポンちゃんだね。

最近抱っこさせるけど、注射はタマみたいに良い子にしてないだろうな。

見つからないように、先にこっちに洗濯ネット用意しとくかな?

あれ見ちゃうと警戒するもんね。

〈遊がサロンからポンを連れて来ると真理絵がサッと洗濯ネットを被せた〉

「ニャー!(何よ?何するのよ?)」

やっぱり怒ってる。

「シャー!(またこんなのに入れて!これに入れられた時は、必ず嫌な事するんだから)ウーツ!」

愛里さんが手を近づけると、洗濯ネットの中から猫パンチだ。

「よちよち、抱っこしようね」

〈遊は暴れるポンをなんとか抱っこした〉

「ちゃんと捕まえててよ」

大人しくしててくれよ。

「ふー」

やれやれ…

洗濯ネットって本当凄いよ。

これが無かったら僕、きっと傷だらけだ。

「さーて、後はチビちゃん達ね」

「捕まるかな?」

「私手伝いますよぉ」

【サロン】

僕はチビトラにしよう。

チビトラは、赤ちゃんの時は好奇心旺盛でママについて来たって稲さんが言ってだけど、チビタマの方は怖がりで中々姿見せなかったんだって。

だから、チビタマはチビトラより体が小さかったらしい。

それが今ではねぇ…

チビトラは甘えん坊で、すぐ抱っこだけど、チビタマはちょっと凶暴。

猛獣?

「ブタ猫」

「本当太ってますねぇチビタマちゃん」

「食いしん坊だからね」

って、由良ちゃん、いつの間にかちゃんとチビタマを抱っこしてる。

初めてお風呂に入れた時もそうだったよね。

あの時も本当助かった。

猫は犬と違って体が臭くならないし、そんなにお風呂に入れなくて良いらしい。

年を取った猫をお風呂に入れたら油が抜けて死んじゃった事が有るんだ。

本当にお風呂のせいかわからないけど、触るとやたらと手に油がついた。

夏にお風呂に入れて、秋になって涼しくなったら死んじゃったんだ。

だから、お風呂に入れなければ良かったって、凄く後悔した。

【売り場】

「ニャッ(またあの人居る。怖い事する人だ)」

チビタマの注射は終わった。

チビトラは僕の手の中でバタバタしてる。

「ガウッ(噛んじゃった)」

今度は、僕の手に頭をつけて甘えてる。

「(噛んでごめんなさい)」

そーっと噛んだから痛くないんだけど、噛んでおいてこうやって甘えるの、テンちゃんと同じだね。

ゴメン、ゴメンて言ってるんだね。

「はーい、終わったわよ」

「うちのLapis達も注射しないとな」

「Lapis?猫の名前ですか?」

「うん。LapisとRutile」

「わはっ、二匹とも石の名前」

「このお店の名前と同じですね」

そうか、麻里愛ちゃん達には話して無かったね。

「Lapisは本店を開店した頃生まれたんだ。黒い猫なんだけど目の色がブルーだからね」

「ラピスラズリの色ですね」

「それでLapis?」

「うん。看板猫にしたかったんだけど、凄い焼きもち妬きで、僕が誰かと話してるだけで怒るから無理だね」

「あら、可愛い。愛されてるんですね」

「Rutileは赤ちゃんの時ご飯食べに来てた子なんだ」

「保護猫ですか」

「私、行ってあげようか?注射」

「いらっしゃいませ」

あれ?

素子ちゃん。

「どしたの?」

「ねえ遊ちゃん。シトリンて石有る?シトリンだかシトロンだかわかんないけど、夢に出て来たのよ」

「シトリンね。11月の誕生石」

「トパーズも誕生石でしょう?」

「素子ちゃん11月だったね」

「良く覚えてるわね」

「まあ、元恋人ですから」

「えっ?」

「えーーーっ?」

二人ともそんなに驚くか?

「あら、そうなんだ」

愛里さんはさすがに大人の反応かな?

〈遊は棚からシトリンを出す〉

「これがシトリン。こっちが天然で、これが加熱。これはアメジストを加熱した物だね」

「へー、色々有るんだ…ねえ、シトリンで何か作ってよ」

「うん。じゃあ工房行こうか」

〈工房へ向かう遊と素子をポカンと見ている麻里愛、真理絵、愛里〉

「あの二人、別れても仲良いよな」

「羊里さん、タマちゃんご飯ですぅ」

「ほい」

【工房】

「夢の中でシトリン、シトリンて言ってんの。普通夢なんて起きたら忘れちゃうじゃない?それがハッキリ覚えてたからさ、気になってね」

「誕生石って、よけいに頑張ってサポートしてくれるんだよ。シトリンが「トパーズじゃなくてシトリン選んで」って言ったんだね」

「え?そうなの?」

「腱鞘炎で薬飲んでたでしょう?胃が痛くなかった?」

「痛かった。気持ち悪くなったよ」

「シトリンて、胃痛に効くんだよね」

「へー、本当?!」

〈びっくりして目を丸くする素子〉

「必要な時必要な石と巡り会うって、前に言ったよね?素子ちゃんお酒呑むし、シトリンは必要だと思ってたんだ」

「お酒は呑むわよ。昨日も宴先輩と美都先輩のお店行ったし」

相変わらず三人一緒だよね。

「シトリンは、胃腸と肝臓に良いから」

「そうなんだあ…あ、それ可愛い」

「これ使って何か作ろうか」

「うん。ピアスが良い」

「オッケー。じゃあ、水晶も胃粘膜生成を促すから…こんな感じで」

「あはっ、揺れるの可愛い。キラキラしてる」

「プレゼントするよ」

「良いわよ」

「だって、誕生日だし」

「やめてよ」

「何で?」

「「何で?」って聞く?全く遊ちゃんは。私達とっくに別れてるのよ」

「でもさ」

「自分で買います!」

【売り場】

「じゃあねー」

「ありがとうございました」

素子ちゃん結局買って行った。

プレゼントするって言っても聞かないんだもんな。

すぐに欲しいからって、さざれも持って行った。

浄化待ち嫌なんだって。

まあ、またここまで取りに来るのも大変だよな。

電車乗らないといけないし。

【天空路家】

〈翌日。チャイムが鳴る。遊はインターフォンで返事をする〉

「はい」

「こんにちはー」

【玄関】

「どうぞ」

「お邪魔します」

【和室】

Lapis達が逃げ回ると大変だから、和室に入れて閉めておいたんだけど、良い子にしてるかな?

「サッと済ませちゃうわよ」

「う、うん」

「(何?この人誰?)」

「(何だか怖いよ)」

はぁ、やっぱり警戒してるな。

隅のほうに隠れちゃったぞ。

「Lapisおいで~。良い子だね~」

「(嫌よ、怖いもの)」

「抱っこ抱っこちようね~」

「ちゃんと抱いててよ」

愛里さん凄いな。

Lapisが怖がる暇も無くあっという間に注射を終わらせちゃった。

次はRutileの番だぞ。

【キッチン】

〈春陽がお茶を淹れているとLapisが来る〉

「(もう、何よあの人)」

「ねえLapis。パパちゃん見張っててね(愛里さんと二人っきりにならないように)」

【和室】

〈遊に抱かれて体をぐにゃぐにゃして逃げようとするRutile〉

「(パパちゃん放してよ。怖いよぉ)」

「じっとしてないと、針が折れたりしたら大変だぞ」

「はい、終わり。良い子ね」

「ふー…」

【リビング】

「これからまだ仕事?」

「ううん、今日はオペも入ってないし、あとはどっかでお昼ご飯食べて帰るだけ」

「呑むんじゃなくて?」

「勿論呑むわよ」

「昼間だよ」

「ランチの時にワインぐらい呑むでしょう普通」

「ちょっとこれ握って」

「何?この石。綺麗」

「アイオライト。肝臓の解毒や肝細胞の再生を助けたりするんだよ」

「へー、肝臓に良い石なんだぁ」

「肝臓に良い石はたくさん有るね。この棚に有るのはだいたいそうだよ」

〈愛里はソファーから立ち上がって遊の横に行く。遊に体を寄せて覗き込むように棚を見る愛里〉

「シャー!(パパちゃんにくっつかないで!)」

「あら、Lapisちゃん怒ってる」

「ウーウウウ!(私のパパちゃんなのよ)」

また始まったぞ。

Lapisの焼きもち。

「何で怒ってるの?注射したからかしら?」

Lapisが怒らないのは、春陽ちゃんだけだもんな。

麻友さんにだって、いまだに「ウー」って言うし。

「怖い事や、痛ーい事するから、嫌われちゃうのよね」

「(もう!早く帰ってよ)」

「失礼します」

「あら、こんにちは。お店で会ったわよね」

「お茶をどうぞ」

「(ふーん…妹みたいな子って言ってたけど、こうやって家に居るんだ…まるで奥さんみたいに)」

あれ?

何だか変な空気?

女の子って、何でいつもこうなんだろう?

すぐに仲良くなれないんだよね。

あ、Lapisも女の子だよな。

何だか不機嫌な顔してるぞ。

〈遊の手に手をかけてカリカリとするRutile〉

「Rutile。どうちたの?抱っこでちゅか?」

「はあ?天空路さんて猫を相手にするとそうなるの?」

「変?」

「まあ、そういう人良く居るけどね。すっごいイケメンとかが、動物を前にすると突然変わったりするわよね」

「ま、まあ、僕はすっごいイケメンじゃないけど」

「あら、イケメンよ。意外と」

意外とですか。

「ではでは、そろそろ失礼します」

「あ、駅まで送るよ」

〈何と無く春陽の方を見る愛里。春陽はLapisを抱いて下を向いている〉

【駅までの道】

「(あの子が居なかったら、お昼付き合ってもらうのに。猫と一緒に留守番?よほどの仲じゃないとしないでしょう普通。妹みたいな子?ただそれだけ?)」

【駅前の花屋】

「ありがとうございました」

〈お客さんを見送って寿宴が出て来る〉

「あら?天空路さん(一緒に居るのは…あ、クリスタルの先生だわ。でもどうして?)」

「あ、宴さん」

「こんにちは」

「先生、その節はお世話になりました」

「クリスタルちゃん元気にしてますか?」

「はい、良く食べるので太ってます」

「去勢すると太るのよ。運動不足にならないように気をつけてあげてくださいね」

「猫だから、散歩しないし」

「おもちゃで遊んであげれば良いんだよ」

「そうか」

「天空路さんとこの子達避妊はまだよね。どうするの?」

「うん…Lapisに赤ちゃん産んでもらいたいな、と思ってるんだ」

「(天空路さんの家に行って来たのね。往診かしら?お店の子の親戚って言ってたわよね。もう、天空路さんの周りって女の人ばっかり)」
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