『神様が引退したら大変な事になりました』

大輝

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最終章 因縁の戦い

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【フランツの丘千代子婆ちゃんの猫茶屋】

「猫まんま。これちょっと食べてみとくれ」

「お婆ちゃんこんにちは」

「おや、満。あんたも一つどうだい?」

「わあ、美味しそう。ありがとう、頂きます」

「猫まんま。こっちとどっちが美味しいね?」

「つぶつぶのも美味いけど、ツルツルのも美味いニャ」

「そうかい、そうかい。そりゃ良かったよ」

「この葉っぱは食べて良いにょかニャ?」

「それは香りを楽しむのよ」

「まあ、食べる人も食べない人も居るわな」

「私はそろそろ行くわね。早く戻らないと、ケガ人がひっきりなしに運ばれて来るの」

「フランツの町はどうなってるんだい?」

「騎士さん達が門を破って中に入れたみたい。上手く逃げ出せた人はお城で匿ってるわ」

「ここだって、いつどうなるかわかりゃしないね。あんたも気をつけるんだよ」

【餡先生の療養所】

〈満が戻って来る〉

「なあ、光、杵さんとこ行こうぜ。武器を鍛えておかねえとよ、ここだっていつあいつらが攻めて来るかわかんねえだろ?」

「そうだな。参るか」

〈療養所を出る2人を心配そうに見送る満〉

【杵さんの店】

〈中に入ると臼さんが金物屋の店番をしている〉

「いらっしゃい」

「杵さん居るかい?」

「奥に居るよ」

【店の奥の杵さんの仕事場】

「ふう、近頃は騎士達の武具の注文ばかりで大忙しだ」

「忙しついでに、俺達の剣も鍛えてくれよ」

「だから、忙しいって言ってんだろ」

「騎士達は皆んなフランツの町に行っちまってる。この丘を守れるのは俺達ぐらいだぜ」

「そうか、しょうがねえな。剣を出しな」

「水の魔法石を手に入れたんだ。付けてくれや」

「ああ、良いともよ。だけど、光の剣には魔法石は付かねえな」

「やっぱりか(まあよ、光は魔法石なんざ無くたって平気さ)」

「こりゃ本もんの水の魔法石だな。いったいどうやって手に入れたんだい?」

「猫魔に貰ったんだよ。青いドラゴンを倒した時見つけたらしいぜ」

【餡先生の療養所】

〈騎士達の治療をする餡先生と満〉

「もう、お兄ちゃんたら。こんなに忙しいのに早く帰って来てよ」

「フランツの町はどうなってるの?」

「ああ、まだザッハトルテ軍と睨み合いだ。だが俺達は負けないよ先生。隊長は先生との約束を守る為に頑張ってる。俺達だって待ってる人が居るからな」

「そうね。町の人を連れ出せたら必ずここへ連れて来てくださいね。心身ともに疲れ切っているでしょうから」

【天上界女神の泉】

〈水面にフランツの町の様子が映し出されている〉

「ザッハトルテ公爵め、いい加減にしやがれ。ヴェネツィーの騎士隊が田舎の軍隊に負けるかよ!」

〈光の天使が来る〉

「よう、爺さんはまだ起きねえのか?」

「起きるどころか、深い深い眠りの中よ」

「恐らく、負のエネルギーのせいでしょう。わたくしも具合が悪くなりそうです」

【魔界】

〈谷底から目が光っている。負のエネルギーが谷底に集まっている。黒い霊体が煙のように登って来る。霊体の目が赤く光る。その煙が蛇の様な龍の姿になる〉

「うるさい奴だ。待っていろ」

【ザッハトルテ公爵の屋敷】

〈祈祷師が呪詛をしている〉

「そうだ、呪いをかけて負のエネルギーを集めるのだ」

「はい、大魔道士様」

〈一つの体一つの顔。その顔が代わる代わる祈祷師と大魔道士の顔になって会話する〉

「蘇れ闇の龍よ」

〈黒い霊体が現れる。黒い霊体は蛇の様な龍の姿になる〉

「おお!遂に、遂に復活したか!」

「俺を呼んだのはお前だな。再び俺を呼びどうしようと言うのだ」

「決まっていよう。今度こそこの世界を征服する」

「その為にはどんな犠牲も厭わぬな」

「無論」

「望み通りにしてやろう」

〈そう言うと闇の龍は祈祷師の生気を吸い取る。祈祷師はバタッと倒れ死ぬ。その体から黒い霊体が出る。大魔道士の霊である。その霊体は人の姿になる〉

「久しぶりだな、大魔道士よ。ほう、そこに有るのが俺の新しい肉体か」

「ああ、そうだとも。お前の為に用意したのだ、有難く思え。闇の龍よ、お前が復活したら話して聞かせたい事が山と有った」

「そうか。だが、その必要は無い」

「何?うぐっ…」

「お前は俺の一部になるのだからな」

〈闇の龍は大魔道士の霊体を飲み込んだ〉

【天上界女神の泉】

「まあ大変、あの者が復活したようです」

「女神さん?何でわかるんだ?」

「感じるのです」

「女神様、私人間界に行って参ります」

「そうしてください」

「お前が行ってどうなるんだよ?」

「光の神様を手伝うの。あの時と同じようにはさせない、絶対!」

〈そう言うと光の天使は飛んで行く〉

【フランツの丘千代子婆ちゃんの猫茶屋】

「よう、猫魔。良くも飽きずに婆ちゃんの菓子食ってるな」

「くりきんとんも食べるニャ」

「俺は良いや。今は甘いもん食いたい気分じゃねえからな」

「じゃあ、神様が食べるニャ」

「神様だ?」

「ひ、光ニャ」

「頂こう」

〈猫魔が立ち上がる〉

「どうした?猫魔」

「奴が来るニャ」

「奴だぁ?」

〈光の神が立ち上がり空を見上げる〉

「何だよ、二人して…?」

「この気配はあいつニャ」

「闇の龍」

〈光の神の腰の剣が紫色の光に包まれる〉

「(来たか)」

「(間に合ったわね)」

〈テレパシーのように心の中で会話する光の神と光の天使〉

「(もうわかってるでしょう。アレが復活したの)」

「(ああ)」

「(今度はあの時みたいに情けをかけたりしないでよ)」

「(わかっている)」

「来る」

「来るニャ」

「団は危ないからどこかへ」

「ふざけんなよ!俺だって!俺にだって出来る事が有るだろ?お前と一緒に戦う」

「だが、これまでの相手とは違う」

「わかってらい!お前達見てりゃそれぐらい俺にだってわかる。一人でかっこつけんなや!死ぬ時は一緒だろ?!」

「(言っても無駄なようだ。それだけの覚悟が有るのなら共に戦わん。死ぬで無いぞ団殿)」

〈北の空から黒い物が覆いかぶさるように流れて来る〉

「くりきんとん!婆ちゃんを頼むニャ!」

「任せとけ!」

【天上界女神の泉】

「来やがった。どうすんだよ?どうにかならねえのかよ?女神さんよう。爺さんが寝てやがったって、あんただって神様なんだから何とかなんねえのか?」

「わたくしにはどうする事も…」

「そんな、そんな事いうなよ。助けてやってくれよ」

「光の神に頑張って貰いましょう」

「あいつかよ、頼りねえな。おーい、そっちの俺!しっかりしやがれ!お前にかかってるんだぞ!」

【フランツの丘】

〈闇の龍が姿を表す〉

「待たせたな、猫魔。借りを返しに来たぞ」

「何度来たって同じニャ。お前はまた魔界で眠るのニャ」

「魔界の奥の深い深い谷底で、あの暗闇の中でこの日が来るのをどれ程待った事か」

「来い!闇の龍(皆んな皆んな俺が守る。必ず守ってみせるニャ)」

【天上界女神の泉】

「始まったぞ。そいつは今迄の奴とは違う。すんげえ強えーんだ。だけど猫魔、負けんなよ。絶てえ、絶ーってえ負けんなよ」

〈水面に闇の龍と戦う猫魔の姿が映し出されている。ピョンピョンと飛び回って攻撃をよける猫魔〉

「うああっ!巻き付きやがった!猫魔ーーー!!!」

【フランツの丘】

「うぐっ」

「くそう!猫魔を離しやがれ!!えーーーい!!!」

〈栗金団は剣を振り下ろし切っ先から水の魔法を繰り出す〉

「はぁはぁはぁ、くそう、これぐらいじゃびくともしねえ」

「雷(いかずち)よ」

〈光の神は闇の龍に雷を浴びせる〉

「おおっ、水に濡れた体に雷が効いたみてえだな」

〈しかし猫魔は闇の龍に巻き付かれたままである。調子に乗って攻撃を仕掛ける栗金団に闇の龍の攻撃〉

「うるさいハエめ」

「ぐはっ」

「栗金団が吹っ飛ぶ」

「栗金団、栗金団!許さない、もう許さない。たとえ天の神様が許してもお前だけはこの俺が許さないぞ!ぐああああっ!!!」

【天上界女神の泉】

〈水面に猫魔達の姿が映し出されている〉

「よっしゃ!猫魔が変身したぞ」

〈猫魔は締め付ける闇の龍の体を振りほどく〉

「必殺桜餅ーーー!!!」

〈桜餅が舞う〉

「やったか?効いてねえのか?猫魔の必殺技だ、少しぐらい効いてんだろ?」

【フランツの丘】

「猫魔、俺は大丈夫だ、心配いらねえ。痛ててて…しっかし、猫魔の必殺技受けてもくたばりやがらねえか」

「猫魔ちゃーん。桜餅さっき二種類食べたでしょーう?」

「満、いつの間に?」

〈満が走って来る〉

「来るな!危ないから療養所に戻るのだ」

「嫌、お兄ちゃんや猫魔ちゃんが戦ってるのに」

「満ちゃん俺俺、俺も居るぜ」

「猫魔ちゃん。桜餅は二種類よー!」

「聞いてねえし」

「必殺、道明寺ーーー!!!」

「ぐはっ」

「今のはちょっと効いたみてえだな」

「だがまだだ。油断するな」

「猫魔ちゃーん、もう一つよー!」

「必殺長命寺ーーー!!!」

「ぐああああっ!!!」

〈ドスーン!!!と大きな音をたてて闇の龍が倒れる〉

「やったぞ!」

「猫魔ちゃんがまだ変身したまま…猫魔ちゃーん。もう良いの、もう良いのよー!」

【天上界女神の泉】

「満の奴…」

〈その時水面に微かに動く闇の龍の姿が映し出された〉

「己…あの…小娘…」

「うおっ!動きやがった。まだ生きてやがる。危ねえぞ!」

「こうしてくれる」

〈闇の龍は蛇のような赤く長い舌を伸ばして満を叩きつける〉

「キャー」

「満?満ーーー!!!」

【フランツの丘】

〈満を膝に抱く光の神〉

「満、満」

「お兄…ちゃん…」

「誰か!誰か餡先生を!」

「やめ…て」

「しっかりするのだ」

「こんな…危険な…所に…餡…先生を…呼ば…ないで」

「喋るな」

「餡先生は…怪我をした…騎士さんや…フランツの…人達を…」

「喋るな!」

「だから…こんな危険な…場所に…餡先生…は…来ない…で…ほしい…の…」

「何ですって?私はヒーラーよ。怪我人がいればどこへだって行くわ」

「餡先生、満が、満が」

「診せて」

〈満の胸に手を当ててヒーリングする餡先生。餡先生のエネルギーが消耗する〉

「(これは…もう…もう私には…)」

「泣かないで…お兄…ちゃん」

「ごめんなさい…私の力不足…」

「満?満、満ーーーっ!!!」

〈光の神の身体が金色の光に包まれる。紫月光の身体から光の神の霊体が抜け出る〉

「何だ?どうなっちまったんだ?」

「これが本当の光の神様の姿なのね」

【古城のバルコニー】

「今の光、あの物凄まじい光、あれは…(あの方が…そばに居たい。何もして差し上げられないけれど、そばに…)」

【フランツの丘】

〈紫月光は満の横に横たわっている。二人の亡骸を見る光の神。そして…〉

「あの時、お前に改心する猶予を与えようなどと考えた私が間違っていた。お前は私の魂の一部。父上が私を作った時、必要の無い部分を取り去った物」

「そうとも、同じ父に作られた一つの魂なのだ。それを!闇の部分はいらぬと、切って捨てられた。この屈辱がお前にわかるか?」

「お前は私の心の闇。お前と一緒に居たならば私は光の神では居られぬ」

「そうとも、わかっている。俺ももう疲れた。早く楽に、楽になりたい。お前の手で楽にしてくれ」

〈その時光の神の腰の剣から光の天使が語りかける〉

「騙されないで光の神。今アレが可哀想だと思ったでしょう?ダメよ。それがアイツの手なんだから(貴方は優し過ぎるの、でも、それが命取りになる時も有るのよ)」

〈光の神は目を伏せている〉

「満ちゃんは死んだのよ、そいつが殺したの」

「神様って何だよ?満も光も死んじまったじゃねえか!」

「満…すまぬ…」

「何なんだよ!おい!」

「団君」

〈光の神に掴みかかろうとする栗金団を餡先生が止める。そこへ闇の龍が光の神に蛇のような体を巻き付ける〉

「甘いな、甘い甘い、甘いわ!」

「神様!神様を離せ!」

〈猫魔が突っ込んで行く〉

「猫魔!!」

〈光の神の体が金色の光に包まれる〉

「うおおおおぉ!眩しい眩しいぞ!」

「猫魔今だ!やっちまえ!」

「必殺道明寺!!長命寺!!」

「ぐああああーーーっ!!!」

「光の神様、今度こそ完全に消滅させるのよ!」

「ゆくぞ光の天使!」

「はい!」

「でーーーぃ!!!」

〈光の神が剣を振り下ろす。緑色の風が竜巻を起こし闇の龍を飲み込んで行く〉

「猫魔!」

「花の舞い桜餅ーーー!!!」

「ぐあっ!ぐああああーーーっ!!!」

「やったぞ!」

【古城】

「姫様!いえ、女王陛下!猫魔様がやりましたぞ!」

「騎士達もです!フランツの町が解放されました!ザッハトルテ軍が引き上げて行きました!」

「そうですか(あの方はどうしていらっしゃるかしら?きっと…天に戻られるのだわ…)」

【墓地】

〈紫月光と紫月満が同じ墓の中に埋葬された〉

「くそ!あの野郎。光の神!帰っちまいやがった。猫魔も一緒に。寂しいじゃねえかよ!」

「団君。詳しい話しを聞かせてあげるわ。今晩は夜通し飲み明かしましょう」

「ああ、いつまでもメソメソしてたってあいつらは喜ばねえもんな」

【天上界女神の泉】

「お兄ちゃーん」

「満!」

「こっちが本物のお兄ちゃんね」

「ああ、正真正銘本物の紫月光だ」

「光の神様も優しくて良かったけど」

「おい!」

「フフフ」

「満、兄ちゃんに会えたニャ。これで良かったみたいにゃニャ」

「猫魔ちゃんはこれからどうするの?」

「俺は普通の猫に生まれてみたいのニャ。だから、神様にお願いしてみるニャ」

ーLa finー
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