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第14章 それぞれの恋
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【フィナンシェの部屋】
「姫様、いえ陛下!それは恋ですわ!」
「恋?」
「プハーーーッ」
〈女官長が大きな声を出すので侍従長は飲んでいたコーヒーを吹き出す〉
「その殿方が今何をなさっているのか、どうして居られるのか、気になって気になって仕方が無いのでしょう?」
「ええ、それはそうですけれど…」
「そうやっていつもその方の事を思って居られるのですもの、恋ですよ、恋!懐かしい感じがするのも不思議ですけど、きっと縁があるのでしょうね」
「本当に不思議なの。遠い昔から知っていたような気がするのよ」
「縁の有る方と巡り会うと、そんな事のようですね」
「そうなのかしら…?」
「(姫様が恋をな…こんなにお小さい頃からずっと見て来たけれど…もうそのようなお年頃…いや、女王になられたのだから…しかし、このような話しになると女官長は生き生きしておるな)」
〈まるで自分も一緒に恋しているようにウキウキと話す女官長〉
「その方はどのような身分なのです?フィナンシェ様に相応しい方なのでしょうか?」
「えっ?(あの方は神様…でも今は…)」
「フィナンシェ様にもそろそろお相手を探さなくてはなりません。お父上が亡くなられたばかりですから、今すぐにというわけにも参りませんけど、それ相応の身分の殿方と…ブツブツ…ブツブツ…」
「(身分…身分など…身分など捨ててしまいたい)」
【猫茶屋】
「ねえ満。明日のお休みどこ行く?」
「ごめんね、明日はお兄ちゃんと音楽会に行くの」
「そっか、音楽会じゃ私もついて行くって言えないな(満、嬉しそうだね。まるでデートみたい。本当に好きなんだよね、光の事。まあさ、血は繋がってないんだけど…でも生まれた時から実の兄妹として育って来たのに…私なら有り得ないな)」
【王宮のオペラハウス】
〈光の神と満が席に付く。見上げる光。光の横顔を見る満。光の視線を追って満が見上げると、丁度貴賓席にフィナンシェが着席するところだった〉
【安藤七都の家】
「あーーー退屈だな…やっぱりついて行けば良かったかな?」
「ミャー」
「あれ?ミミ。猫魔まだ帰って来ないの?」
「ミャー」
「ご飯?ちょっと待ってね」
〈七都はミミのお皿にご飯を入れる。ミミはプイっと横を向く〉
「え?お腹空いてたんじゃないの?」
「ミャーミャー」
「じゃあ何よ?猫魔が通訳してくれないとわかんないよ」
【王宮のオペラハウス】
〈演奏が終わった。フィナンシェは自分の席に騎士隊長を招いて何やら話している〉
「はっ、畏まりました」
「お兄ちゃん、終わったわよ。起きて」
「うん?」
「気持ちよくて寝ちゃつてたでしょう?」
「ああ、本当に」
「紫月光殿、満嬢」
「あっ、騎士隊長さん」
「楽しんで頂けましたかな?」
「ええ、とっても」
「それは良かった」
「ねえお兄ちゃん?フフフ」
「ああ、まあ、その…」
「では、こちらへ参られよ」
【サロン】
〈騎士隊長に案内されてサロンに来るとクラブサンと弦楽器による室内楽の演奏が始まっていた。フィナンシェと親しい貴族達の姿に気後れする満〉
「良いのかしら?お邪魔して…」
「オッホン」
「(侍従長殿の咳払いが始まったぞ)」
「フィナンシェ様がお待ちです。どうぞこちらへ」
〈騎士隊長は警護の為戸口に立つ。侍従長に案内されて奥へ進む光の神と満。貴族達の視線が痛い〉
「侍従長様、ちょっと」
「少々お待ち下さい」
〈侍従長が二人の元を離れると、一人のご婦人がツカツカとやって来る〉
「ちょっとそこの貴方。どちらの領主ですの?」
「私達はハポネ村から来ました。領主ではありませんが」
「まあハポネ村?どうりで田舎臭いと思いましたわ。ハポネ村の貴族ですの?」
「ハポネに貴族は居りません」
「そうでしたわね。ここをどこだとお思い?身分を持たぬ者が出入りして良い場所ではありませんのよ。そして今宵は女王陛下と親しい者だけの集いですの。どうぞお引き取り遊ばせ」
「それでしたら私フィナンシェちゃん、いえフィナンシェ様のお友達で、お兄ちゃん、兄は主治医の助手です」
「まあお友達ですって?何て図々しい!それに今の主治医は平民だそうね?」
「越野餡殿の先祖はハポネの王族ですぞ、ドリアン男爵夫人」
「あーら騎士隊長様」
〈見兼ねて割って入る騎士隊長〉
「ハポネに王族が居たなんて大昔のお話しですわ。あの小さな国はブラマンジェ統一でこの国の一部になったのですもの」
「あれは統一と称した侵略です」
「騎士隊長様ともあろうお方がそのような事を仰って宜しいんですの?代々騎士隊長を務める伯爵家の貴方が。あの統一戦争は貴方の先祖が指揮したのではありませんか」
「くっ…(世が世ならあの方はハポネ国の王女。男爵家の者に侮辱される身分ではない)」
「女王陛下のお出ましーーー!」
〈ニコニコと挨拶を交わしながら歩くフィナンシェ。ツカツカと寄って行くドリアン男爵夫人〉
「フィナンシェ様、御機嫌よう。私の主人の地位なんですけど、もっと…ペチャクチャ、ペチャクチャ」
「失礼致した。フィナンシェ姫様が女王になられてからあのようなご婦人増えてな」
「フィナンシェちゃん大変ね。あ、いけない、女王陛下」
〈言っておいて騎士隊長の顔を見る満〉
〈光の神の姿を見つけて近寄ろうとして足を止めるフィナンシェ〉
「満さん(満さんもあの方がお好きなのね…いいえ、本当に好きなのは神様ではなくお兄様。あの方が天に帰られたら満さんはどうなさるの?あの方が帰られたら…わたくしは…わたくしは…)」
「オッホン」
「爺」
「お友達がお待ちかねですぞ」
【ブリのマルシェ】
「シイラーーー!」
「ああ七都。いらっしゃい」
「今日は一人?」
「満誘ったんだけど、光と音楽会だって。猫魔はこないだの魔物を魔界に連れて帰るって行ったっきりまだ帰って来ない」
「そっか。団ちゃんは?」
「え?何でくりきんとん?」
「だって仲良いから」
「まあ、仲が悪いって事じゃないけどさ」
「そうでしょ、そうでしょ。デートでもしたら?」
「やめてよ、あんな奴。ただの幼馴染みだよ」
「お似合いだと思うけどね」
「えーーーっ!!?何で私とくりきんとんがお似合いなのよ?」
「幼馴染みなら、気心が知れて良いよね」
「だから、あんなの何でも無いって」
「うんうん、そうかそうかぁ」
「そうかって、何でそんな嬉しそうな顔してんのよ!?」
【酒場】
「ハッ、ハッ、ハークション!ちくしょう!」
「団、風邪かい?」
「誰か俺の噂してやがるな」
「お前もそろそろ嫁を貰って、孫の顔見せちゃくれないかねえ」
「何だよいきなり」
「満ちゃんの尻ばっかり追いかけてたってさ、光が「うん」と言わなきゃ嫁に貰えないだろ」
「待ってろよ光。今に「大事な妹は親友のお前に頼む」って言わせてやるからな」
「何言ってんだよ。いい加減におし」
【魔界の扉】
「もう人間に呼び出されても出て来るんじゃにゃいぞ」
「ガー」
「猫魔ちゃん」
「光の天使。何で魔界の門から出て来たのニャ?」
「どれ程の魔物が魔界から出てるか、調査に来たのよ」
「人間界に来た奴は俺が連れ戻してるニャ」
「そうね、でも…もう猫魔一人じゃ手に負えない数かも」
「うーん…」
「人間界だけじゃなくて、天使界にも来てるし、聖域にまで入り込もうとしてるのよ」
「そうにゃのか…」
「猫魔の気持ちもわかるけど、魔物だって人間と同じ。良い子ばっかりじゃないのよ」
「わかってるニャ。だけどコイツのような奴は殺さずに帰してやりたいニャ」
【ザッハトルテ公爵領】
〈村人達が兵士に連れられて練兵場に向かう〉
「戦争になるだべか?」
「いったいどこと戦争するべさ?」
「オラ死にたくねえだよ」
「黙って歩かんか!」
〈ビシッ!と鞭が飛ぶ〉
「ぐはっ」
【練兵場】
「モタモタするな!早く並べ!」
「その者達は使えそうかね?」
「はっ!公爵様。ビシビシ鍛え上げます」
「良い指揮官を…確か、今年のブラマンジェ武術大会の勝者は我が領地の出身と聞いたが」
「女ですが」
「女であろうと何で有ろうと腕が立つのであれば良い(フィナンシェ、小娘が、この私の求婚を断りよって。目にもの見せてやるわ。待っているが良い)」
【酒場】
「おばちゃん、もう一本ください」
「もうそれぐらいでやめときなよ」
「こんなの呑んだうちに入らないわよ」
「餡先生の呑みっぷりと来たら、ココットと良い勝負だよな」
「前の光君はココットの事が好きだったけど、今の光君は違うわよね」
「まあ、すっかり忘れちまってるからな」
「フフッ、私にもまだチャンスが有るわね」
「前はあんなにガキ扱いしてたのに、本当に好きになっちまったんだな」
「おばちゃん、ワインもう一本ください」
「もう本当にこれでおやめよ」
「わかったわ。これが最後の一本」
「越野餡、来てたの?」
「あら、小倉杏ちゃん。どうしたの?こんな時間に」
「明日修行に行こうと思ってね。ブリの港から船に乗るから、今日はヴェネツィーの宿に泊まるのよ。寝る前に一杯やろうと思ってさ」
「おばさん、私もワインちょうだい」
「はいよ」
「じゃあ、今夜は呑も」
「お待ちどう、餡先生はもうやめときなよ」
「はいはい、仕方ないわね」
【宿屋】
〈バタバタと兵士達が入って来る。客達は何事かと見ている。宿屋の主人と話す兵士〉
「街を探すぞ」
〈そう言うとまたバタバタと宿屋を出て行った〉
【ヴェネツィーの街】
〈我が物顔に街を歩く兵士達。人々は兵士達を避けて立ち止まる〉
「いったい何だ?どこから来たんだ?」
「お城で招集したのかな?」
「戦争が始まるのかしら?嫌だわ」
「どこの国と戦争するって言うんだよ?」
【酒場】
「来年の武術大会は、光君と戦えるかしらね?」
「さあね、彼本当は戦うの好きじゃないみたいよ」
「まあ、その前にどこの大会で出場権を取るかだわ」
「小倉杏と言う女は居るか?!」
「何だい?あんた達は」
〈兵士達がズカズカと店に入って来る〉
「やめとくれよ、お客さんが驚いてるじゃないか」
「兵隊さんが私にいったい何の用なの?」
「お前が小倉杏か?」
「そうだけど、お前呼ばわりされる覚えは無いわね」
「生意気な女だ」
「隊長、やめといた方が良いですぜ、コイツブラマンジェ武術大会の勝者です」
「所詮女だろ」
「不愉快だわ。所詮女かどうか試してみる?」
「何?!女の分際で生意気な」
「女性に敬意を払わないところが騎士と違う所ね」
「そっちの女、今何と言った?!」
「野蛮だって言ったのよ」
「痛い目に遭わせてやる!」
「餡は関係無いでしょう?私が相手になるわ」
「ちょっとちょっと、外でやっとくれよ」
「出ましょう」
〈ゾロゾロと店を出て行く〉
「餡先生、見物に行かなのか?」
「見なくたって結果はわかってるもの」
「ほんじゃ、俺が見て来るか」
「もう終わってる頃じゃない?」
「まさか、いくら何でも今出て行ったばっかりだぜ」
【酒場の裏】
「う、痛てててて」
「あれま、本当に終わってたか。皆んなノビてやがる」
「お前、ザッハトルテ公爵領出身だろ、公爵様に逆らって家族がどうなっても良いのか!」
「何ですって?!」
「やめとけ。これ以上このバケモンと戦う力なんて残ってねえ」
「卑怯者…私がザッハトルテ公爵の命令に従えば家族には手は出さないわね?」
「たぶんな」
「仕方ない…わかったわ。私が指揮官ならあんた達、私の部下になるわけよね?」
「うっ」
「ぐっ」
「くそう!誰が女の隊長なんかに従えるか!」
「まだ他に言いたい事が有るかしら?」
「痛ててててて」
〈小倉杏は兵士の腕を捻り上げる〉
「杏さん、そのぐらいにしてやれよ」
「あ、団ちゃん。そこで気を失ってる奴らに水でもかけてやって」
「姫様、いえ陛下!それは恋ですわ!」
「恋?」
「プハーーーッ」
〈女官長が大きな声を出すので侍従長は飲んでいたコーヒーを吹き出す〉
「その殿方が今何をなさっているのか、どうして居られるのか、気になって気になって仕方が無いのでしょう?」
「ええ、それはそうですけれど…」
「そうやっていつもその方の事を思って居られるのですもの、恋ですよ、恋!懐かしい感じがするのも不思議ですけど、きっと縁があるのでしょうね」
「本当に不思議なの。遠い昔から知っていたような気がするのよ」
「縁の有る方と巡り会うと、そんな事のようですね」
「そうなのかしら…?」
「(姫様が恋をな…こんなにお小さい頃からずっと見て来たけれど…もうそのようなお年頃…いや、女王になられたのだから…しかし、このような話しになると女官長は生き生きしておるな)」
〈まるで自分も一緒に恋しているようにウキウキと話す女官長〉
「その方はどのような身分なのです?フィナンシェ様に相応しい方なのでしょうか?」
「えっ?(あの方は神様…でも今は…)」
「フィナンシェ様にもそろそろお相手を探さなくてはなりません。お父上が亡くなられたばかりですから、今すぐにというわけにも参りませんけど、それ相応の身分の殿方と…ブツブツ…ブツブツ…」
「(身分…身分など…身分など捨ててしまいたい)」
【猫茶屋】
「ねえ満。明日のお休みどこ行く?」
「ごめんね、明日はお兄ちゃんと音楽会に行くの」
「そっか、音楽会じゃ私もついて行くって言えないな(満、嬉しそうだね。まるでデートみたい。本当に好きなんだよね、光の事。まあさ、血は繋がってないんだけど…でも生まれた時から実の兄妹として育って来たのに…私なら有り得ないな)」
【王宮のオペラハウス】
〈光の神と満が席に付く。見上げる光。光の横顔を見る満。光の視線を追って満が見上げると、丁度貴賓席にフィナンシェが着席するところだった〉
【安藤七都の家】
「あーーー退屈だな…やっぱりついて行けば良かったかな?」
「ミャー」
「あれ?ミミ。猫魔まだ帰って来ないの?」
「ミャー」
「ご飯?ちょっと待ってね」
〈七都はミミのお皿にご飯を入れる。ミミはプイっと横を向く〉
「え?お腹空いてたんじゃないの?」
「ミャーミャー」
「じゃあ何よ?猫魔が通訳してくれないとわかんないよ」
【王宮のオペラハウス】
〈演奏が終わった。フィナンシェは自分の席に騎士隊長を招いて何やら話している〉
「はっ、畏まりました」
「お兄ちゃん、終わったわよ。起きて」
「うん?」
「気持ちよくて寝ちゃつてたでしょう?」
「ああ、本当に」
「紫月光殿、満嬢」
「あっ、騎士隊長さん」
「楽しんで頂けましたかな?」
「ええ、とっても」
「それは良かった」
「ねえお兄ちゃん?フフフ」
「ああ、まあ、その…」
「では、こちらへ参られよ」
【サロン】
〈騎士隊長に案内されてサロンに来るとクラブサンと弦楽器による室内楽の演奏が始まっていた。フィナンシェと親しい貴族達の姿に気後れする満〉
「良いのかしら?お邪魔して…」
「オッホン」
「(侍従長殿の咳払いが始まったぞ)」
「フィナンシェ様がお待ちです。どうぞこちらへ」
〈騎士隊長は警護の為戸口に立つ。侍従長に案内されて奥へ進む光の神と満。貴族達の視線が痛い〉
「侍従長様、ちょっと」
「少々お待ち下さい」
〈侍従長が二人の元を離れると、一人のご婦人がツカツカとやって来る〉
「ちょっとそこの貴方。どちらの領主ですの?」
「私達はハポネ村から来ました。領主ではありませんが」
「まあハポネ村?どうりで田舎臭いと思いましたわ。ハポネ村の貴族ですの?」
「ハポネに貴族は居りません」
「そうでしたわね。ここをどこだとお思い?身分を持たぬ者が出入りして良い場所ではありませんのよ。そして今宵は女王陛下と親しい者だけの集いですの。どうぞお引き取り遊ばせ」
「それでしたら私フィナンシェちゃん、いえフィナンシェ様のお友達で、お兄ちゃん、兄は主治医の助手です」
「まあお友達ですって?何て図々しい!それに今の主治医は平民だそうね?」
「越野餡殿の先祖はハポネの王族ですぞ、ドリアン男爵夫人」
「あーら騎士隊長様」
〈見兼ねて割って入る騎士隊長〉
「ハポネに王族が居たなんて大昔のお話しですわ。あの小さな国はブラマンジェ統一でこの国の一部になったのですもの」
「あれは統一と称した侵略です」
「騎士隊長様ともあろうお方がそのような事を仰って宜しいんですの?代々騎士隊長を務める伯爵家の貴方が。あの統一戦争は貴方の先祖が指揮したのではありませんか」
「くっ…(世が世ならあの方はハポネ国の王女。男爵家の者に侮辱される身分ではない)」
「女王陛下のお出ましーーー!」
〈ニコニコと挨拶を交わしながら歩くフィナンシェ。ツカツカと寄って行くドリアン男爵夫人〉
「フィナンシェ様、御機嫌よう。私の主人の地位なんですけど、もっと…ペチャクチャ、ペチャクチャ」
「失礼致した。フィナンシェ姫様が女王になられてからあのようなご婦人増えてな」
「フィナンシェちゃん大変ね。あ、いけない、女王陛下」
〈言っておいて騎士隊長の顔を見る満〉
〈光の神の姿を見つけて近寄ろうとして足を止めるフィナンシェ〉
「満さん(満さんもあの方がお好きなのね…いいえ、本当に好きなのは神様ではなくお兄様。あの方が天に帰られたら満さんはどうなさるの?あの方が帰られたら…わたくしは…わたくしは…)」
「オッホン」
「爺」
「お友達がお待ちかねですぞ」
【ブリのマルシェ】
「シイラーーー!」
「ああ七都。いらっしゃい」
「今日は一人?」
「満誘ったんだけど、光と音楽会だって。猫魔はこないだの魔物を魔界に連れて帰るって行ったっきりまだ帰って来ない」
「そっか。団ちゃんは?」
「え?何でくりきんとん?」
「だって仲良いから」
「まあ、仲が悪いって事じゃないけどさ」
「そうでしょ、そうでしょ。デートでもしたら?」
「やめてよ、あんな奴。ただの幼馴染みだよ」
「お似合いだと思うけどね」
「えーーーっ!!?何で私とくりきんとんがお似合いなのよ?」
「幼馴染みなら、気心が知れて良いよね」
「だから、あんなの何でも無いって」
「うんうん、そうかそうかぁ」
「そうかって、何でそんな嬉しそうな顔してんのよ!?」
【酒場】
「ハッ、ハッ、ハークション!ちくしょう!」
「団、風邪かい?」
「誰か俺の噂してやがるな」
「お前もそろそろ嫁を貰って、孫の顔見せちゃくれないかねえ」
「何だよいきなり」
「満ちゃんの尻ばっかり追いかけてたってさ、光が「うん」と言わなきゃ嫁に貰えないだろ」
「待ってろよ光。今に「大事な妹は親友のお前に頼む」って言わせてやるからな」
「何言ってんだよ。いい加減におし」
【魔界の扉】
「もう人間に呼び出されても出て来るんじゃにゃいぞ」
「ガー」
「猫魔ちゃん」
「光の天使。何で魔界の門から出て来たのニャ?」
「どれ程の魔物が魔界から出てるか、調査に来たのよ」
「人間界に来た奴は俺が連れ戻してるニャ」
「そうね、でも…もう猫魔一人じゃ手に負えない数かも」
「うーん…」
「人間界だけじゃなくて、天使界にも来てるし、聖域にまで入り込もうとしてるのよ」
「そうにゃのか…」
「猫魔の気持ちもわかるけど、魔物だって人間と同じ。良い子ばっかりじゃないのよ」
「わかってるニャ。だけどコイツのような奴は殺さずに帰してやりたいニャ」
【ザッハトルテ公爵領】
〈村人達が兵士に連れられて練兵場に向かう〉
「戦争になるだべか?」
「いったいどこと戦争するべさ?」
「オラ死にたくねえだよ」
「黙って歩かんか!」
〈ビシッ!と鞭が飛ぶ〉
「ぐはっ」
【練兵場】
「モタモタするな!早く並べ!」
「その者達は使えそうかね?」
「はっ!公爵様。ビシビシ鍛え上げます」
「良い指揮官を…確か、今年のブラマンジェ武術大会の勝者は我が領地の出身と聞いたが」
「女ですが」
「女であろうと何で有ろうと腕が立つのであれば良い(フィナンシェ、小娘が、この私の求婚を断りよって。目にもの見せてやるわ。待っているが良い)」
【酒場】
「おばちゃん、もう一本ください」
「もうそれぐらいでやめときなよ」
「こんなの呑んだうちに入らないわよ」
「餡先生の呑みっぷりと来たら、ココットと良い勝負だよな」
「前の光君はココットの事が好きだったけど、今の光君は違うわよね」
「まあ、すっかり忘れちまってるからな」
「フフッ、私にもまだチャンスが有るわね」
「前はあんなにガキ扱いしてたのに、本当に好きになっちまったんだな」
「おばちゃん、ワインもう一本ください」
「もう本当にこれでおやめよ」
「わかったわ。これが最後の一本」
「越野餡、来てたの?」
「あら、小倉杏ちゃん。どうしたの?こんな時間に」
「明日修行に行こうと思ってね。ブリの港から船に乗るから、今日はヴェネツィーの宿に泊まるのよ。寝る前に一杯やろうと思ってさ」
「おばさん、私もワインちょうだい」
「はいよ」
「じゃあ、今夜は呑も」
「お待ちどう、餡先生はもうやめときなよ」
「はいはい、仕方ないわね」
【宿屋】
〈バタバタと兵士達が入って来る。客達は何事かと見ている。宿屋の主人と話す兵士〉
「街を探すぞ」
〈そう言うとまたバタバタと宿屋を出て行った〉
【ヴェネツィーの街】
〈我が物顔に街を歩く兵士達。人々は兵士達を避けて立ち止まる〉
「いったい何だ?どこから来たんだ?」
「お城で招集したのかな?」
「戦争が始まるのかしら?嫌だわ」
「どこの国と戦争するって言うんだよ?」
【酒場】
「来年の武術大会は、光君と戦えるかしらね?」
「さあね、彼本当は戦うの好きじゃないみたいよ」
「まあ、その前にどこの大会で出場権を取るかだわ」
「小倉杏と言う女は居るか?!」
「何だい?あんた達は」
〈兵士達がズカズカと店に入って来る〉
「やめとくれよ、お客さんが驚いてるじゃないか」
「兵隊さんが私にいったい何の用なの?」
「お前が小倉杏か?」
「そうだけど、お前呼ばわりされる覚えは無いわね」
「生意気な女だ」
「隊長、やめといた方が良いですぜ、コイツブラマンジェ武術大会の勝者です」
「所詮女だろ」
「不愉快だわ。所詮女かどうか試してみる?」
「何?!女の分際で生意気な」
「女性に敬意を払わないところが騎士と違う所ね」
「そっちの女、今何と言った?!」
「野蛮だって言ったのよ」
「痛い目に遭わせてやる!」
「餡は関係無いでしょう?私が相手になるわ」
「ちょっとちょっと、外でやっとくれよ」
「出ましょう」
〈ゾロゾロと店を出て行く〉
「餡先生、見物に行かなのか?」
「見なくたって結果はわかってるもの」
「ほんじゃ、俺が見て来るか」
「もう終わってる頃じゃない?」
「まさか、いくら何でも今出て行ったばっかりだぜ」
【酒場の裏】
「う、痛てててて」
「あれま、本当に終わってたか。皆んなノビてやがる」
「お前、ザッハトルテ公爵領出身だろ、公爵様に逆らって家族がどうなっても良いのか!」
「何ですって?!」
「やめとけ。これ以上このバケモンと戦う力なんて残ってねえ」
「卑怯者…私がザッハトルテ公爵の命令に従えば家族には手は出さないわね?」
「たぶんな」
「仕方ない…わかったわ。私が指揮官ならあんた達、私の部下になるわけよね?」
「うっ」
「ぐっ」
「くそう!誰が女の隊長なんかに従えるか!」
「まだ他に言いたい事が有るかしら?」
「痛ててててて」
〈小倉杏は兵士の腕を捻り上げる〉
「杏さん、そのぐらいにしてやれよ」
「あ、団ちゃん。そこで気を失ってる奴らに水でもかけてやって」
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婚約者を甘やかし過ぎていたことに気付いた彼女は、その場で婚約解消を宣言する。
前半はたぶん普通の令嬢もの、後半はおっさんコメディーです。
ゲーム未登場の性格最悪な悪役令嬢に転生したら推しの妻だったので、人生の恩人である推しには離婚して私以外と結婚してもらいます!
クナリ
ファンタジー
江藤樹里は、かつて画家になることを夢見ていた二十七歳の女性。
ある日気がつくと、彼女は大好きな乙女ゲームであるハイグランド・シンフォニーの世界へ転生していた。
しかし彼女が転生したのは、ヘビーユーザーであるはずの自分さえ知らない、ユーフィニアという女性。
ユーフィニアがどこの誰なのかが分からないまま戸惑う樹里の前に、ユーフィニアに仕えているメイドや、樹里がゲーム内で最も推しているキャラであり、どん底にいたときの自分の心を救ってくれたリルベオラスらが現れる。
そして樹里は、絶世の美貌を持ちながらもハイグラの世界では稀代の悪女とされているユーフィニアの実情を知っていく。
国政にまで影響をもたらすほどの悪名を持つユーフィニアを、最愛の恩人であるリルベオラスの妻でいさせるわけにはいかない。
樹里は、ゲーム未登場ながら圧倒的なアクの強さを持つユーフィニアをリルベオラスから引き離すべく、離婚を目指して動き始めた。
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