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第4章 フィナンシェ姫
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〈間合いを取って睨み合う光の神と小倉杏〉
「(どうしたの?かかって来なさいよ)」
やはり強そうだな、隙が無い。
「(来ないならこっちから行くわよ)えーい!」
「くっ」
〈鍔迫り合いになる〉
「最近は、魔法石を使って剣に色々な力を加えられるの。炎や雷は良く見るけど貴方のは光なのね、初めて見たわ」
〈顔を寄せて小声で話す小倉杏〉
こんな時に余裕だな、この人は。
「でも、魔法石をつけると通常攻撃がパワーダウンするのが悩みどころなのよ」
「そういうものなのか?」
「え?貴方、魔法石使って無いの?あら本当、石が付いてない。じゃあ、その剣はいったい…」
「これ!何をブツブツ言っておるのだ!真面目に戦わんか!」
「ふっ!」
〈バックステップする杏と同時に剣を振り下ろす光の神〉
「っえーい!」
「(しまった!)ああーっ!」
〈光の剣が空を切る。杏は後ろに飛ばされ転がる〉
「うっ(何て力なの?あの剣はいったい何?)」
「それまで!勝者紫月光!」
ワー!!キャー!
「光の奴、勝ちやがった」
「本大会の優勝者紫月光には、次の武術トーナメントの出場権を与える。剣の腕を磨いておくように。以上!姫様に礼!!」
〈フィナンシェ姫を見上げている光の神〉
ほんに美しい姫君だ。
「負けちゃったわ。修行が足りないわね。貴方以外と強いじゃない」
〈姫に見とれる光の神に話しかける杏〉
「え?あ、いや私は…」
〈歩きながら話す2人〉
「武術トーナメント頑張ってね」
「武術トーナメントとは?」
「今度の相手は剣だけじゃないわよ。腕に覚えの有る強者達が国中から集まるのが武術トーナメント。皆んな予選を勝ち抜いて来てるから強いわよ」
【エントランス】
「餡先生と杏さんて、名前の字が反対だったら面白かったのに」
「だから、お前が言うか、って」
「そこ、誰かが突っ込むと思ったわよ」
「初めて会った時、そう言って笑ったの。それで仲良くなったのよね?」
「そうだっけ?」
「もう、杏ちゃんたら、忘れたの?」
【療養所】
〈光の神が剣を抜いて眺めている〉
剣の腕を磨いておけと言われたけれど…
「武術トーナメントも光君が優勝したりして」
「………」
「どうしたの?」
「私は、戦いは好かぬ」
「光君は好きだったよ」
「私は彼ではない」
「杏が聞いたらがっかりするわね。あの子、貴方に負けたのが悔しくて、また修行に行ったのよ」
【王宮】
「姫様、どうなされました?姫様、姫様!」
「侍従長様、いかがなさいました?」
「誰か!医者を、医者を、早く!」
〈ソファでぐったりしているフィナンシェ姫を見て驚く女官〉
「は、はい!」
【猫茶屋】
「小さい頃ね、大人になったらお兄ちゃんのお嫁さんになるんだって、思ってたの。でも「兄妹は結婚出来ないんだよ」って言われて沢山泣いたわ。大きくなって、血が繋がってないってわかったの。そしてお兄ちゃんに言ったら「何言ってるんだ、それでも兄妹だろ」って怒られちゃった」
「そうにゃのか(満のお兄ちゃんは死んだのニャ。魂は天に昇ったのニャ。今は違う魂だにゃんて、俺にはとても言えにゃいニャ)」
【療養所】
「あら杵さん、どうしたの?」
「最近剣の注文が立て込んでて、うっかり火傷しちまった」
「はい、ちょっと見せて」
「うっ、ててて」
「ラベンダーの精油で湿布しとくわね」
「ところで先生よ、王室が国中の名医を呼び寄せてるって噂耳にしたんだけどな、いったい何が有ったのかねえ?」
「さあね、きっと身分の高い人が病気にでもなったんじゃないかしら?」
「先生は行かないのかい?」
「私は行ってもどうせ信じてもらえないわよ。切ったり貼ったりする医者じゃないからね」
「切ったり貼ったりしねえで治せちまうんだから、名医なんじゃねえですか」
「はい、良いわよ。しばらくは毎日来てね」
「へいへい。俺は餡先生が国一番の名医だと思うんだけどな」
「ウフフ、ありがとね」
【王宮】
「姫様のご容体は?まだ意識が戻られないのか?」
「騎士隊長様。それが、原因がわかりません事にはどうにも手の施しようが有りません」
「もう下がって良い。次の医者を連れて参れ!」
「申し訳ございません」
【猫茶屋】
「ミミさん、ご飯の時間ニャ」
「ミャー(お腹空いたわ、早くちょうだい)」
〈猫達にご飯を運ぶ猫魔〉
「猫魔、保護猫じゃなくて、すっかりスタッフだね」
「保護猫?」
「ここの猫達は、皆んな保護猫だよ。里親さんが見つかったら貰ってもらうの」
「そうにゃのか、皆んな里親が見つかると良いニャ、って!ミミさんもか?!」
「ミミちゃんは気難しいからどうかな?このままここに居る気がする」
「ホッ….」
「猫魔、今ホッとしたでしょ?」
「そういうところは、突っ込むニャ!」
【療養所】
〈数日後〉
「光君、杵さんの火傷のところにヒーリングして」
「了解した」
「おいおい、光で大丈夫か?」
「大丈夫よ、私が伝授したんだもの。やればやるほどパワーアップするから、ほら、自信持ってやりなさい」
〈光の神は杵の腕の湿布を取ってヒーリングを始める〉
「温かくなって来た。餡先生の時と同じだ。光、ちゃんと出来てるぞ」
「跡が残らないで治りそうね」
〈向こうで声がする〉
「越野餡殿はおられるか?!」
「はい。何か?」
「失礼する」
〈騎士達が入って来る〉
「汚い所だ。本当に医者なのか?」
「わっ、何だってんだ?」
「杵さん、もう少しで終わるから動かんでほしいのだが」
〈騎士達の様子を窺う杵。構わず続ける光の神〉
「構わぬ、続けられよ」
「それで、貴方方はいったい…私に何の御用ですか?」
「そのような治療法で治るのか?」
「ええ、もう後3日ほど続ければ綺麗に治りそうですね」
「噂に聞いて参ったのだが、これが本当なら…うーん、すぐに城へ来て頂きたい」
「お城ですか?ああ、国中から医者達が集まってると噂で聞きましたけど、私はそういう医者とは違いますよ」
「構わぬ。藁にもすがる思いなのだ」
「(何か、よほどの事情が有りそうね)そうですね、私でお力になれるなら」
「有り難い!すぐに出られるか?」
「ええ…」
〈杵の施術が終わったのを確かめて〉
「構いませんよ。ちょっと待って」
〈目を閉じて霊視をする〉
「(これは…)光君も支度をして頂戴」
「その者も連れて行くのか?」
「彼の力が必要です」
「わかった、良いだろう」
「もう一人」
「まだ居るのか?」
「私の自由にやらせて頂けないのなら、お断りしますわ」
「わかった、もう一人でも二人目でも連れて行け」
【猫茶屋】
「七都ちゃん、猫まんまちゃん居る?」
「居るよ、ちょっと待ってて。猫魔!」
「はいニャ!」
「餡先生が用事が有るって」
「今行くニャ」
〈饅頭を食べながら猫魔が来る〉
「すっかりここの子になったわね。ごめんね、うちに置いてあげられなくて」
「気にしにゃくて良いニャ。俺はここが気に入ってるニャ」
「七都ちゃん、猫まんまちゃん借りるわね」
「だから、俺は猫まんまじゃにゃいニャ」
「もう一人の連れというのはどこに居る?」
「この子よ」
「うぬ!おのれ物の怪!」
〈剣を抜く〉
「私の仲間に剣を向けないで!」
「仲間が聞いて呆れるわ。物の怪ではないか!」
「嫌なら良いのよ。お城には行きませんから」
「剣を納めろ!越野殿の機嫌を損ねてはいかん」
「はっ」
「失礼致した。お急ぎください」
「にゃはは、仲間か。にゃんだか良い響きにゃニャ」
「そうよ、大切な仲間」
「でも家には置いてくれにゃいのニャ」
「ごめんね、光君と二人っ切りになりたくて」
「え?」
「冗談よ。お部屋が無いの」
「良いニャ、良いニャ。ちょっと言ってみただけニャ。猫茶屋は楽しいニャ。皆んな家族みたいなのニャ」
「良かったわね」
【宮中】
〈ウロウロと歩き回り落ち着かない侍従長〉
「女、女官長、姫様のご様態は?」
「侍従長様、少し落ち着いてください。そうウロウロと歩かれては、姫様が」
「これが落ち着いていられますか!ああ、フィナンシェ姫様…」
「私にも原因が掴めません。これではどのような治療をすれば良いのやら」
「もう良いです。下がりなさい」
「はい、申し訳ございません」
「騎士達はまだ戻らないのですかね?いったい何をモタモタしているのでしょう」
「侍従長様、ハポネ村の医者と仰いましたけど、信用出来るのでしょうか?」
「医者ではないようですが、腕は確かだという事ですよ」
「医者ではないですって?」
「ヒーラーだそうですが、今はそんな事はどうでも良いでしょう。とにかく姫様が助かりさえすればその者の身分など」
【城門前】
「うわーお城ニャ」
「そこの物の怪、宮中では粗相の無いようにな」
「物の怪、物の怪って、俺にだってちゃんと名前が有るニャ」
「そんな物には興味無い」
【宮中】
「侍従長様、騎士達が戻りました」
「そうですか。それで、医者は連れて来ましたか?」
「はい」
「すぐに通しなさい」
「承知致しました」
【廊下】
〈ふと立ち止まり目を閉じる餡〉
「(苦しいのでしょう?)」
「何をしている、早く歩け」
「国王陛下」
「陛下が何だと?」
「痛みを堪えていらっしゃるようです」
「陛下でしたら、先程医師が処方した薬を飲まれて眠っていらっしゃるはずですよ」
「待って(痛いのですね?苦しいのですか?)」
「ええい、早く来い!」
〈一人の騎士が餡の腕を掴む〉
「痛っ」
「おやめなさい。この国の騎士は、ご婦人に乱暴なのですね」
「貴様、平民の分際で生意気な!」
〈腰の剣に手をかける騎士〉
「光君」
「やめないか!この者の言う通りだぞ。失礼致した。こちらが姫様の部屋だ。入られよ」
【フィナンシェ姫の部屋】
〈ベッドに横たわるフィナンシェ姫の意識は無い〉
「どうだ。助けられそうか?いや、どんなにしても助けてもらわねばならぬ」
「やっぱりだわ。物の怪に憑かれてる」
「物の怪だと?」
「光君、お香を焚くわよ」
「了解した」
「フン、そんな物が何になるんだ?」
「浄霊には物の怪の嫌がる香りを使うんです」
「どうも信用出来んな」
「じゃあ、やめましょうか?」
「いや、続けてくれ。お前は余計な事を言って餡殿の機嫌を損ねるな」
「も、申し訳有りません」
「これで良いわ。しばらく待ちましょう…貴方」
〈騎士にぐっと近づく餡〉
「指揮官さん?」
「そ、そうだが?」
「私、国王陛下のお部屋に行きたいの」
「国王陛下の?何故だ?」
「痛みで苦しんでいらっしゃるから」
「何故そのような事がわかる?」
「霊視したんです」
「しかし、陛下は眠っておられると…うーん…良いだろう。付いて来るが良い」
「うん?お前は確か…」
〈じっと光の神の顔を見る指揮官〉
「思い出したぞ。ヴェネツィーの降臨祭の日の、剣術大会の優勝者」
「光君は、フィナンシェ姫をお願い。私は国王陛下の所へ行って来るわ」
「了解した」
「この者に任せておいて良いのか?」
「貴方も見たでしょう?療養所で、彼が火傷の患者にヒーリングしてたの」
「だが、あんな物はまやかしだろう」
「指揮官さん、この人何とかならないかしら?」
「お前は、余計な口を挟むなと、何度言ったらわかるのだ」
「はあ、申し訳有りません」
「さあ、行きましょう。国王陛下が苦しんでいらっしゃるわ」
【国王の部屋】
「うっ…ううっ…」
「ああ、陛下。どうして差し上げれば宜しいのでしょう?」
「目を覚まされたのか?」
「騎士隊長様。いいえ、痛みでお休みになれないのです」
「医者が処方した薬で眠っておられたのではないのか?」
「もう、どんなに強い薬も効きません」
「(どうしたの?かかって来なさいよ)」
やはり強そうだな、隙が無い。
「(来ないならこっちから行くわよ)えーい!」
「くっ」
〈鍔迫り合いになる〉
「最近は、魔法石を使って剣に色々な力を加えられるの。炎や雷は良く見るけど貴方のは光なのね、初めて見たわ」
〈顔を寄せて小声で話す小倉杏〉
こんな時に余裕だな、この人は。
「でも、魔法石をつけると通常攻撃がパワーダウンするのが悩みどころなのよ」
「そういうものなのか?」
「え?貴方、魔法石使って無いの?あら本当、石が付いてない。じゃあ、その剣はいったい…」
「これ!何をブツブツ言っておるのだ!真面目に戦わんか!」
「ふっ!」
〈バックステップする杏と同時に剣を振り下ろす光の神〉
「っえーい!」
「(しまった!)ああーっ!」
〈光の剣が空を切る。杏は後ろに飛ばされ転がる〉
「うっ(何て力なの?あの剣はいったい何?)」
「それまで!勝者紫月光!」
ワー!!キャー!
「光の奴、勝ちやがった」
「本大会の優勝者紫月光には、次の武術トーナメントの出場権を与える。剣の腕を磨いておくように。以上!姫様に礼!!」
〈フィナンシェ姫を見上げている光の神〉
ほんに美しい姫君だ。
「負けちゃったわ。修行が足りないわね。貴方以外と強いじゃない」
〈姫に見とれる光の神に話しかける杏〉
「え?あ、いや私は…」
〈歩きながら話す2人〉
「武術トーナメント頑張ってね」
「武術トーナメントとは?」
「今度の相手は剣だけじゃないわよ。腕に覚えの有る強者達が国中から集まるのが武術トーナメント。皆んな予選を勝ち抜いて来てるから強いわよ」
【エントランス】
「餡先生と杏さんて、名前の字が反対だったら面白かったのに」
「だから、お前が言うか、って」
「そこ、誰かが突っ込むと思ったわよ」
「初めて会った時、そう言って笑ったの。それで仲良くなったのよね?」
「そうだっけ?」
「もう、杏ちゃんたら、忘れたの?」
【療養所】
〈光の神が剣を抜いて眺めている〉
剣の腕を磨いておけと言われたけれど…
「武術トーナメントも光君が優勝したりして」
「………」
「どうしたの?」
「私は、戦いは好かぬ」
「光君は好きだったよ」
「私は彼ではない」
「杏が聞いたらがっかりするわね。あの子、貴方に負けたのが悔しくて、また修行に行ったのよ」
【王宮】
「姫様、どうなされました?姫様、姫様!」
「侍従長様、いかがなさいました?」
「誰か!医者を、医者を、早く!」
〈ソファでぐったりしているフィナンシェ姫を見て驚く女官〉
「は、はい!」
【猫茶屋】
「小さい頃ね、大人になったらお兄ちゃんのお嫁さんになるんだって、思ってたの。でも「兄妹は結婚出来ないんだよ」って言われて沢山泣いたわ。大きくなって、血が繋がってないってわかったの。そしてお兄ちゃんに言ったら「何言ってるんだ、それでも兄妹だろ」って怒られちゃった」
「そうにゃのか(満のお兄ちゃんは死んだのニャ。魂は天に昇ったのニャ。今は違う魂だにゃんて、俺にはとても言えにゃいニャ)」
【療養所】
「あら杵さん、どうしたの?」
「最近剣の注文が立て込んでて、うっかり火傷しちまった」
「はい、ちょっと見せて」
「うっ、ててて」
「ラベンダーの精油で湿布しとくわね」
「ところで先生よ、王室が国中の名医を呼び寄せてるって噂耳にしたんだけどな、いったい何が有ったのかねえ?」
「さあね、きっと身分の高い人が病気にでもなったんじゃないかしら?」
「先生は行かないのかい?」
「私は行ってもどうせ信じてもらえないわよ。切ったり貼ったりする医者じゃないからね」
「切ったり貼ったりしねえで治せちまうんだから、名医なんじゃねえですか」
「はい、良いわよ。しばらくは毎日来てね」
「へいへい。俺は餡先生が国一番の名医だと思うんだけどな」
「ウフフ、ありがとね」
【王宮】
「姫様のご容体は?まだ意識が戻られないのか?」
「騎士隊長様。それが、原因がわかりません事にはどうにも手の施しようが有りません」
「もう下がって良い。次の医者を連れて参れ!」
「申し訳ございません」
【猫茶屋】
「ミミさん、ご飯の時間ニャ」
「ミャー(お腹空いたわ、早くちょうだい)」
〈猫達にご飯を運ぶ猫魔〉
「猫魔、保護猫じゃなくて、すっかりスタッフだね」
「保護猫?」
「ここの猫達は、皆んな保護猫だよ。里親さんが見つかったら貰ってもらうの」
「そうにゃのか、皆んな里親が見つかると良いニャ、って!ミミさんもか?!」
「ミミちゃんは気難しいからどうかな?このままここに居る気がする」
「ホッ….」
「猫魔、今ホッとしたでしょ?」
「そういうところは、突っ込むニャ!」
【療養所】
〈数日後〉
「光君、杵さんの火傷のところにヒーリングして」
「了解した」
「おいおい、光で大丈夫か?」
「大丈夫よ、私が伝授したんだもの。やればやるほどパワーアップするから、ほら、自信持ってやりなさい」
〈光の神は杵の腕の湿布を取ってヒーリングを始める〉
「温かくなって来た。餡先生の時と同じだ。光、ちゃんと出来てるぞ」
「跡が残らないで治りそうね」
〈向こうで声がする〉
「越野餡殿はおられるか?!」
「はい。何か?」
「失礼する」
〈騎士達が入って来る〉
「汚い所だ。本当に医者なのか?」
「わっ、何だってんだ?」
「杵さん、もう少しで終わるから動かんでほしいのだが」
〈騎士達の様子を窺う杵。構わず続ける光の神〉
「構わぬ、続けられよ」
「それで、貴方方はいったい…私に何の御用ですか?」
「そのような治療法で治るのか?」
「ええ、もう後3日ほど続ければ綺麗に治りそうですね」
「噂に聞いて参ったのだが、これが本当なら…うーん、すぐに城へ来て頂きたい」
「お城ですか?ああ、国中から医者達が集まってると噂で聞きましたけど、私はそういう医者とは違いますよ」
「構わぬ。藁にもすがる思いなのだ」
「(何か、よほどの事情が有りそうね)そうですね、私でお力になれるなら」
「有り難い!すぐに出られるか?」
「ええ…」
〈杵の施術が終わったのを確かめて〉
「構いませんよ。ちょっと待って」
〈目を閉じて霊視をする〉
「(これは…)光君も支度をして頂戴」
「その者も連れて行くのか?」
「彼の力が必要です」
「わかった、良いだろう」
「もう一人」
「まだ居るのか?」
「私の自由にやらせて頂けないのなら、お断りしますわ」
「わかった、もう一人でも二人目でも連れて行け」
【猫茶屋】
「七都ちゃん、猫まんまちゃん居る?」
「居るよ、ちょっと待ってて。猫魔!」
「はいニャ!」
「餡先生が用事が有るって」
「今行くニャ」
〈饅頭を食べながら猫魔が来る〉
「すっかりここの子になったわね。ごめんね、うちに置いてあげられなくて」
「気にしにゃくて良いニャ。俺はここが気に入ってるニャ」
「七都ちゃん、猫まんまちゃん借りるわね」
「だから、俺は猫まんまじゃにゃいニャ」
「もう一人の連れというのはどこに居る?」
「この子よ」
「うぬ!おのれ物の怪!」
〈剣を抜く〉
「私の仲間に剣を向けないで!」
「仲間が聞いて呆れるわ。物の怪ではないか!」
「嫌なら良いのよ。お城には行きませんから」
「剣を納めろ!越野殿の機嫌を損ねてはいかん」
「はっ」
「失礼致した。お急ぎください」
「にゃはは、仲間か。にゃんだか良い響きにゃニャ」
「そうよ、大切な仲間」
「でも家には置いてくれにゃいのニャ」
「ごめんね、光君と二人っ切りになりたくて」
「え?」
「冗談よ。お部屋が無いの」
「良いニャ、良いニャ。ちょっと言ってみただけニャ。猫茶屋は楽しいニャ。皆んな家族みたいなのニャ」
「良かったわね」
【宮中】
〈ウロウロと歩き回り落ち着かない侍従長〉
「女、女官長、姫様のご様態は?」
「侍従長様、少し落ち着いてください。そうウロウロと歩かれては、姫様が」
「これが落ち着いていられますか!ああ、フィナンシェ姫様…」
「私にも原因が掴めません。これではどのような治療をすれば良いのやら」
「もう良いです。下がりなさい」
「はい、申し訳ございません」
「騎士達はまだ戻らないのですかね?いったい何をモタモタしているのでしょう」
「侍従長様、ハポネ村の医者と仰いましたけど、信用出来るのでしょうか?」
「医者ではないようですが、腕は確かだという事ですよ」
「医者ではないですって?」
「ヒーラーだそうですが、今はそんな事はどうでも良いでしょう。とにかく姫様が助かりさえすればその者の身分など」
【城門前】
「うわーお城ニャ」
「そこの物の怪、宮中では粗相の無いようにな」
「物の怪、物の怪って、俺にだってちゃんと名前が有るニャ」
「そんな物には興味無い」
【宮中】
「侍従長様、騎士達が戻りました」
「そうですか。それで、医者は連れて来ましたか?」
「はい」
「すぐに通しなさい」
「承知致しました」
【廊下】
〈ふと立ち止まり目を閉じる餡〉
「(苦しいのでしょう?)」
「何をしている、早く歩け」
「国王陛下」
「陛下が何だと?」
「痛みを堪えていらっしゃるようです」
「陛下でしたら、先程医師が処方した薬を飲まれて眠っていらっしゃるはずですよ」
「待って(痛いのですね?苦しいのですか?)」
「ええい、早く来い!」
〈一人の騎士が餡の腕を掴む〉
「痛っ」
「おやめなさい。この国の騎士は、ご婦人に乱暴なのですね」
「貴様、平民の分際で生意気な!」
〈腰の剣に手をかける騎士〉
「光君」
「やめないか!この者の言う通りだぞ。失礼致した。こちらが姫様の部屋だ。入られよ」
【フィナンシェ姫の部屋】
〈ベッドに横たわるフィナンシェ姫の意識は無い〉
「どうだ。助けられそうか?いや、どんなにしても助けてもらわねばならぬ」
「やっぱりだわ。物の怪に憑かれてる」
「物の怪だと?」
「光君、お香を焚くわよ」
「了解した」
「フン、そんな物が何になるんだ?」
「浄霊には物の怪の嫌がる香りを使うんです」
「どうも信用出来んな」
「じゃあ、やめましょうか?」
「いや、続けてくれ。お前は余計な事を言って餡殿の機嫌を損ねるな」
「も、申し訳有りません」
「これで良いわ。しばらく待ちましょう…貴方」
〈騎士にぐっと近づく餡〉
「指揮官さん?」
「そ、そうだが?」
「私、国王陛下のお部屋に行きたいの」
「国王陛下の?何故だ?」
「痛みで苦しんでいらっしゃるから」
「何故そのような事がわかる?」
「霊視したんです」
「しかし、陛下は眠っておられると…うーん…良いだろう。付いて来るが良い」
「うん?お前は確か…」
〈じっと光の神の顔を見る指揮官〉
「思い出したぞ。ヴェネツィーの降臨祭の日の、剣術大会の優勝者」
「光君は、フィナンシェ姫をお願い。私は国王陛下の所へ行って来るわ」
「了解した」
「この者に任せておいて良いのか?」
「貴方も見たでしょう?療養所で、彼が火傷の患者にヒーリングしてたの」
「だが、あんな物はまやかしだろう」
「指揮官さん、この人何とかならないかしら?」
「お前は、余計な口を挟むなと、何度言ったらわかるのだ」
「はあ、申し訳有りません」
「さあ、行きましょう。国王陛下が苦しんでいらっしゃるわ」
【国王の部屋】
「うっ…ううっ…」
「ああ、陛下。どうして差し上げれば宜しいのでしょう?」
「目を覚まされたのか?」
「騎士隊長様。いいえ、痛みでお休みになれないのです」
「医者が処方した薬で眠っておられたのではないのか?」
「もう、どんなに強い薬も効きません」
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未開拓の農産物、眠る鉱山資源、誠実で働き者の人々。
「必要ない」と切り捨てられた辺境には、未来を切り拓く力があった。
物流網を整え、作物をブランド化し、やがて「大商会」を設立!
数年で辺境は“商業帝国”と呼ばれるまでに発展していく。
さらに隣国の完璧王子から熱烈な求婚を受け、愛も手に入れるマリエール。
一方で、税収激減に苦しむ王都は彼女に救いを求めて――
「必要ないとおっしゃったのは、そちらでしょう?」
これは、追放令嬢が“経営知識”で国を動かし、
ざまぁと恋と繁栄を手に入れる逆転サクセスストーリー!
※表紙のイラストは画像生成AIによって作られたものです。
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
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