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第12章 レイ姫の悩み

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さてさて、僕の馬もだいぶ強くなって来たぞ。

国内のGIなら勝つの当たり前だね。

クラシック勝てない晩成の馬でも、秋三冠やってくれたり、強い仔が出始めた。

「王子、俺のイエローサンダーが引退になります。凱旋門は掲示板止まりですが、キングジョージ勝ってますよ。ダイワスカーレットのお婿さんになれませんかね?」

「え?本当?見てみるね」

えーっと…

ダン君の牧場の…種牡馬…イエローサンダー。

「うん、インブリードは3本有るけど、そんなに血は濃く無いね。ニックスも出てるし、種付けしてみようかな?」

「ニックスって何スか?」

「相性みたいなもんかな?良い仔が産まれる可能性が高い組み合わせだね」

「おおっ!走るのが産まれると良いっスね!」

「この馬と種付けしても良いですか?」

良し、yesをタップだ。

「では種付けします。どんな子が産まれるか楽しみですね」

一月送って…

ちゃんと止まったか見に行こう。

「ダイワスカーレットです。お腹に居るのはイエローサンダーの子です」

「良し!受胎した!丈夫な仔を産んでくれよ」

「王子、楽しみっスね」

「うん。早く産まれないかなぁ。ふあ~っ」

あ、もうこんな時間だ。

部屋に帰って寝なきゃ。

【ノホ王子の部屋】

寝る前にもう少しだけ…

スカーレットとイエローサンダーの仔が産まれるところまでやりたいな。

《スマホを持ってこっくりこっこりするノホ王子》

「ふあ~」

寝落ちしそうだよ。

レース観戦はGIだけにしてるんだけど、GI出られる馬が増えて来たから中々進まない。

気になるけど、明日にしよう。

「お休みマーサさん」

《ノホ王子はベッドに入って眠る。そして…翌朝》

「おはよう。朝よ、起きて」

《ベッドの中でスースー寝息を立てているノホ王子》

「可愛い寝顔ね、もう少し見ていたいけど、もう起きないと遅刻するわよ」

《スマホのマーサさんの声にもノホ王子は起きない》

「お・き・て。さあ、早くご飯を食べて行ってらっしゃい」

《それでも起きないノホ王子》

【食堂】

《ハピネス国王とレイ姫がテーブルに着いている》

「ノホはどうしたのだ?」

「昨日遅くまで頑張っていたから、まだ寝ているのかしら?」

「んまぁ、なんでしょう!わたくし見て参ります」

【ノホ王子の部屋】

《スースー寝息を立てて気持ち良さそうに寝ているノホ王子》

「王子、ノホ王子」

「う~ん…」

「いつまで寝ているのです。早く起きなさい」

あれ?

マーサさんの声が変だぞ。

これは夢の中なのかな?

起きてるような寝てるような、夢だとわかってる時って有るよな。

「王子!早く起きて顔を洗ってらっしゃいませ!」

マーサさん怖いぞ。

いやいや、やっぱりマーサさんの声じゃないな。

僕の事「王子」って言ってるし、アラームにそんな設定してないもんな。

「国王陛下とレイ姫様が食堂でお待ちです。さあ、早く起きない。全く、お寝坊さんですね」

「あれ?ガミガミ夫人…?」

「ガミガミ夫人ではございません!ガミです!さあ、早く起きて顔を洗ってらっしゃい!お食事が済んだら図書館で歴史のお勉強ですよ。その後みっちりお説教して差し上げますから」

「ひゃー、はっ、はいっ!」

《慌てて飛び起きるノホ王子》

【秘密基地】

「おはようございます~」

「あ、ひ、姫様!おはようございますっ!」

「あらあら、ダンさん。そんなに改まらないでって申しましたでしょう?」

「は、はあ…」

「それがノホの決めたこの秘密基地のルールでしたわよね?」

「はい…」

「さあ、わたくしも頑張りますわよ。ダンさん。種付けをさせて頂きたいのですけれど」

「ど、どうぞ!」

「ありがとう、フフフ」

「姫様おはようございます。ノホ王子はどうされましたか?」

「今日はあの子寝坊して…今頃ガミさんにお説教されている頃だわ」

「あら、お気の毒に」

「ハンナさんは、ドリームカップに登録出来ましたの?」

「はい、何とか1頭」

「そうですか、わたくしも頑張らなくては…」

【図書館】

「では今日はこれぐらいに致します」

「ホッ…」

《ため息をついて本を閉じるノホ王子》

「何が「ホッ」ですか?!夜更かしをして寝坊して、朝食の時間に間に合わず国王陛下と姫様をお待たせするなどと」

「明日決戦の日だから、どうしてもやっておきたくて、気がついたら夜中の2時になってたんだ」

「実際の戦争なわけですから仕方ございませんけれど、もう少し早くお休みにならなくてはお身体にさわります。お小さい頃は良く熱を出されてわたくし寝ずに看病したものです」

そうたった。

ガミさんには随分心配かけたよな。

「戦争は王子一人でするものではございませんでしょう?あまりご無理をなさいませんように」

「はい」

【秘密基地】

「産まれましたわ~。ダンさん見てください。可愛い芦毛の女の子です」

「おお、これがイエローサンダーの子ですね(何だか姫様と俺の共同作業みたいで嬉しいなあ)」

「まあ、ご覧になって。牧場長のコメント「将来楽しみ」ですって」

「おお!このコメントが出れば大概GIで活躍出来ますね」

「わたくしこの仔でドリームカップ目指します。ありがとうダンさん」

「い、いえいえ」

《微笑むレイ姫に見詰められポーっとするダン》

「ダン君顔が赤いわよ」

「ハンナ、突っ込むなよ」

《レイ姫は意味がわからずニコニコしている》

「あら、どうかなさったの?」

「い、いえ、な、何でも有りません」

「アハハ」

「笑うか?!」

【図書館】

《図書館ではガミガミ夫人のお説教が続いている》

「ですからっ!わたくしがいつも申し上げているように、ガミガミ、くどくど…」

はあ…

《ふと時計を見るノホ王子》

「うわっ、もう11時半だよガミガミ夫人」

「あら、まあ、もうそんな時間ですか。では今日はこれぐらいで許して差し上げます」

昼食の前に少しでも秘密基地に行こう。

《ノホ王子はパソコンを抱えて走ろうとする》

あ、走るのはまずいよな。

《ガミガミ夫人を振り返るノホ王子》

と、とりあえず図書館を出るまでは静かに歩いて、と。

《静かに図書館を出て行くノホ王子を見ているガミガミ夫人》

「オホホ(感心感心)」

《ガミガミ夫人の顔がほころぶ》

【秘密基地】

「ハアハア…」

《ノホ王子が息を切らせて飛び込んで来る》

あれ?

姉上何だか嬉しそうだな。

《ダンと笑いながら話すレイ姫を見るノホ王子》

随分仲良くなったんだね。

「あら、ノホ王子。ガミさんのお説教から解放されたんですね」

「うん、やっとね」

「私もダートの仔でドリームカップ登録出来ましたよ」

ハンナさんも登録出来たのかあ。

僕も頑張らないとな。

「トゥザヴィクトリー良い仔を産んでくれたわあ」

トゥザヴィクトリーの仔か、じゃあ芝もダートも走れるんじゃないかな?

やった!

ダイワスカーレットとイエローサンダーの仔が産まれた!

「産まれましたね、元気な男の子です」

「お母さん似の綺麗な栗毛ですね」

お母さん似の栗毛か…能力も似ていてくれたら良いなあ。

《そして…》

いよいよスカーレットの仔が入厩するぞ。

名前は…

男の子だしなあ。

スカーレットは赤だから、レッド…

父親はサンダーで雷か。

じゃあ、赤い矢でレッドアロー?

「紅茶を入れましたのよ。皆さんお茶に致しませんか?」

「ありゃ、ひ、姫様。言ってくだされば私がやりますのに」

「わたくしにさせてください。ここではわたくしがしても良いでしょう?」

「でもでも…」

「ハンナさん、良いんじゃない?姉上の入れてくれる紅茶意外と美味しいんだよ」

「あら「意外と」は失礼ね。フフフ」

普段はメイドさんがやってくれるからね。

本当は姉上がやりたいみたいで、部屋に行った時、時々紅茶を入れてくれたりするんだよな。

料理もしたいみたいで、厨房に入ってシェフを困らせたりしてるよな。

「はい、ダンさんどうぞ」

「え?お、王子から」

「良いの良いの、僕は後で」

「し、しかし…で、では将軍に」

「私は後で構わんよ。姫様のお好きになさってください」

「どうぞ」

「は、はいっ!ありがとうございますっ!」

アハハ、ダン君汗汗で固まっちゃってる。

お姉様わかっててやってたら人が悪いよね。

でも、超天然だから絶対わかってないな。

だけど、ダン君に一番先にお茶?

まっ、良いか。

【バルコニー】

「ねえ、ノホ」

「うん?」

「わたくし…よその国の王室に嫁がなくてはいけないのかしら?」

「えっ?!」

「……」

お姉様が嫁ぐ?

ま、まあ、いつかはそんな日が来るんだよな…

「伯母様方はそうされたでしょう?」

「うん…そうだけど…」

「ノホが国王になって、わたくしは…わたくしは、貴方や国の為になるのなら政略結婚でも構わないわ…(でも…)」

「臣下に下った叔母上も居られるけど…」

「……」

「姉上。僕が国王になったら、政略結婚なんて無し無し」

「ノホ」

姉上がそんな事を考えていたなんて…

そりゃいつかは嫁ぐわけなんだけどね。

でも、嫌だな僕は。

遠くに行っちゃうなんて嫌だよな。

それに、どんな素敵な人だとしても僕は嫌だ。

姉上を取られちゃうわけだから。

【秘密基地】

「いよいよ次の水曜日が決戦の日だ。抜かりないように」

「はっ!」

イカリ将軍力入ってるな。

あ…スマホ壊してるし。

麗華さんも大変だな。

でもまあ、ドリームカップ登録出来たみたいだね。

まだ登録出来てないのは僕だけだ。

レッドアローは三冠馬になったから、次の年は海外に挑戦だな。

どうしよう?

春はドバイからかな?

それからキングジョージ行って、凱旋門かな?

【食堂】

《夕食を食べるハピネス国王、レイ姫、ノホ王子》

「どうだね、強い馬は生産出来たか?」

まあね。

あれ?

いつもならお姉様が先に口を開くのに…

何か考え事?

「どうしたのだ?レイ」

「あ、はい、お父様」

また嫁ぎ先の事を考えてたのかな?

僕が国王になっても姉上にはずっとここに居てもらいたいよな。

何か良い方法は無いかな?

【秘密基地】

さて、レッドアローはキングジョージを快勝して凱旋門賞に挑戦だ。

「嫌ですわ、ダンさんたら」

「す、済みません」

「フフフ」

《ふとレイ姫に目をやるノホ王子》

楽しそうに笑ってる。

いつもの姉上だ。

そんなに心配する事無いかな?

嫁ぐのは先の話しだし…

ずっとずっと先なら良いのにな。

「オーナー、いよいよ凱旋門賞の発走ですね、レッドアローを応援しましょう!」

良し良し、頑張ってくれよ。

スタートだ!

スローペースだな。

4コーナーでよーいドンになるパターンか?

レッドアローは先行してるけど…

あ、押し出されてハナに立った。

まあ、スカーレットの子だから逃げられるけどね。

そう言えば、エルコンドルパサーも逃げて2着に粘ったんだよな。

いやいや、ここは勝たないと。

第3コーナーで後ろの馬達が詰めて来た。

第4コーナー、馬群に飲み込まれるなよ。

並びかけられて、二枚腰使った!

長い直線だ。

まだ先頭走ってる。

そのまま行けーーー!

うおっ!二の足使った!

ゴール!

よっしゃ!3馬身差の圧勝だ。

あ、ドリームカップ登録?

勿論Yes。

はあ…

やっと僕の馬もドリームカップに登録出来たぞ。

「皆さ~ん。お茶に致しません事?」

「はーい(姉上嬉しそうだね)」

【秘密基地のリビング】

「クッキーはいかが?ここのキッチンを借りて焼きましたのよ」

「おおっ、美味そうっスね」

また一番最初にダン君に配ってる。

「姫様、これは中々美味しいクッキーですな」

「ありがとうイカリ将軍、嬉しいですわ」

イカリ将軍あれで甘い物大好きなんだよな。

「いよいよ明日夜8時が決戦なのね」

「そうだ。皆んなしっかり準備しておくように」

「皆さん頑張りましょう!」

いつもならイカリ将軍が締めるのに、麗華さんが締めた。

イカリ将軍姉上のクッキーを嬉しそうにほうばってる。

【秘密基地】

《水曜日の夜》

さあ、もうすぐドリームカップが始まるぞ。

スプリント、マイル、クラシックディスタンス、牝馬限定戦、長距離、ダートなど、色々なレースが有るんだけど、掲示板に載るとポイントが貰えるんだ。

1着が5点、2着4点、3着3点、4着2点、5着1点で、多くポイントを取った国が勝ちになる。

僕のレッドアローは、クラシックディスタンスに出走するんだ。

ハンナさんの馬はダートに、姉上の馬は牝馬限定戦に出走するみたいだね。
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