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第6章 れ、麗さん?

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【ノホ王子の部屋】

「ピッピッピッ、朝ですよ、起きてください。おはよう、お寝坊さん」

「はーい、起きますよ~」

「お・き・て。遅刻するわよ。さあ、ちゃんと朝ごはん食べて行ってらっしゃい」

〈もぞもぞとベッドから起き出すノホ王子〉

マーサさんの声、ずっと聞いていたいけど…

〈ノホ王子はスマホを取って目覚ましのアイコンをタップする〉

「ちゃんと起きられたわね。良い子よ~」

「は~い」

さて、今日も頑張りますか。

僕はガンシューティング得意じゃないから、皆んなの足を引っ張らないように頑張らないとね。

と、その前に、予習しとかないと!

予習しておくと、ガミガミ夫人の授業早く終わるんだよな。

【秘密基地】

〈燃え燃えでマウスを握るイカリ将軍〉

「何?ミニメールか(うん?麗さんだ)」

〈イカリ将軍はクランルームに入る〉

クラン茶
/麗/あの、わたくし中々上手に出来ませんの。イカリ将軍教えてくださいませんか?

「(うん?何故だ?)」

/猛将イカリ/良いが、何故私をそう呼ぶのだ?
/麗/あの、猛将イカリさんですので
/猛将イカリ/では、2人で練習モードに行こう
/麗/はい!宜しくお願い致します

〈猛将イカリと麗は練習モードの対テロリスト戦に入った〉

「ボイスチャットが出来るのだな」

/麗/はい

「(何故喋らんのだ?おっ、始まるか)」

〈5.4.3.2.1開始!〉

「リロードは出来る時にしておけ。自動でされるので戦闘中に弾切れになるとやられるぞ」

/麗/はい!

「物陰に隠れてリロードだ。狙撃に気をつけろ」

/麗/はい!

〈麗はテロリストに撃たれキルされてリスポーンになる〉

「あ、ごめんなさい」

「うん?喋れるではないか」

「あっ…」

「喋れるなら喋った方が良い。文字を打ち込む間にやられる」

「あ…はい」

「高い所から狙撃して来るぞ、注意しろ」

「はい。あ、ごめんなさい。今教えて頂いたばかりなのにわたくし…」

「うん?!その声は?」

「復活致しました」

「倒れた者が武器を落とすから、自分のよりも強ければ拾うのだ」

「まあ、そうですの?お借りしても宜しいのね?」

「やはり、そのお声は」

「あっ」

「もしや貴女は…?」

「……」

「貴女様は…」

「あ、またやられてしまいました」

「レイ姫様ではございませんか?」

「はい…ごめんなさい。ノホが心配で、少しでも手伝ってやりたかったのです」

「やはり!数々の御無礼お許しください!」

「やめてください。ここでは身分など有りません。わたくしはレイ姫ではなく麗です」

「しかし」

「お願いです。今迄通り厳しく教えてください。でなければわたくし、もう続けられません」

「わ、わかりました」

「ほら、また」

「わかった」

「フフフ」

〈汗汗のイカリ将軍〉

【図書館】

〈いつものようにガミの授業を受けるノホ王子〉

キタキョウ国との戦いは、輸送ミッションなんだよな。

敵がトラックで物資を輸送するのを阻止するんだ。

とは言っても、危険物を沢山積んでいるからノロノロ走ってる。

追いかけたり、先回りしたりして攻撃するんだけど、キル(やられる)されたらリスポーン(ペナルティ付きで復活してやり直す)になるからね。

輸送中にキルされるとそこで車は止まり、また乗り込むまで動かないんだ。

輸送車の定員は10名だけど、トラックに乗り込まないで敵を狙うのも有りだしね。

時間内にどこまで運べるかを交代でやるわけなんだよね。

今回の現実世界に反映される戦争は、キタキョウ国が勝てば相手の要求通り援助金を支払わなければならない。

僕達の国ハポネスが勝てば、その差額を差し引いて支払う事になるんだ。

どちらにしても資金援助はするわけなんだけど、法外な金額を要求して来てるからね、絶対に勝たないと。

そんな国家資金が有るなら、もっと苦しんでいる人達を助ける為に使いたいよね。

キタキョウ国にも困っている人は沢山居るけど、援助金をその人達の為に使ってくれるか疑問だもんな。

「王子、何をボケっとなさっているのです?」

「あ、えーっと…どこだっけ?」

せっかく早く終わらせる為に予習して来たんだ。

ここでお説教食らったら元も子も無いぞ。

「全く、私の話しを聞いていましたか?上の空で、ブツブツ、ガミガミ」

「き、聞いてました、聞いてました。ほ、ほら、ここでしょう?」

「あら、線を引いておいたのですね。まあ、感心感心」

ホッ…

助かった。

【秘密基地】

〈麗と訓練を繰り返す猛将イカリ〉

「中々上達なさいましたな」

「ほら、また」

「腕を上げたではないか」

「はい、ご指導ありがとうございます」

「ふー…」

「フフフ」

あれ?

イカリ将軍がいつも以上に汗汗でマウス握ってるぞ。

まだ暖炉に火も入ってないのに。

「また教えてくださいね」

「やれやれ…」

いつもみたいに壊れたマウスは散らばってないな。

それなのに汗を拭いているイカリ将軍。

いったい何してたんだろう?

なんて言ってる場合じゃないか。

防具強化しとかないとな。

ああ、頭パーツ集めに行こう。

もう少しで強化出来そうだぞ。

「ハンナさん凄い装備になってる」

「はい、ガチャで出ましたぁ」

「良いなあ。ねえ、ゾンビ行こう」

「良いてすよ。ダン君は?」

「俺も行く」

〈ノホ、ハンナ、ダンの3人はルームに入って行く〉

「あと2人入れるね」

ギル茶
/三銃士/ゾンビあと2人お願いします
/激ウマ焼肉定食/俺行きます笑笑
/暴走娘乱子/アタシも行くよん

〈激ウマ焼肉定食と暴走娘乱子がルームに入る〉

/三銃士/揃ったね、行きまする
/暴走娘乱子/オケオケ

〈5.4.3.2.1で始まる〉

ここからはボイスチャットだね。

うわぁ、乱子さん凄い。

これはイカリ将軍と良い勝負かも知れないな。

「三銃士ちゃん、危なっ」

ちゃん?

「わっ」

乱子さんが助けてくれた。

今のうちに物陰に入ってHP回復だ。

「ありがとう。ねえ、乱子さん。明日のギルド戦出る?」

「夜8時だよね?仕事終わって帰れたらかなー?」

「そしたら来てよ。絶対勝ちたいんだ」

「オッケー。でもあんま期待しないでー」

まあ、仕事だから仕方ないよね。

だけど、乱子さん居てくれたら心強いよな。

〈そして…〉

【食堂】

〈翌日夕食を食べるハピネス国王、レイ王女、ノホ王子〉

「いよいよ今日は決戦の日じゃな」

「はい、お父様。あ、いえ、軍の人達もノホも頑張っておりますのよ」

姉上秘密基地に来たからな、皆んなが頑張ってるの見てるもんね。

「(どうしましょう…?イカリ将軍はああ仰っていたけれど…)」

【秘密基地】

「皆んな準備はできているか!」

「はい!」

「絶対に負けられんぞ!」

「はっ!」

イカリ将軍力入ってるな。

僕も皆んなの足を引っ張らないように頑張らないと。

「入られよ」

〈入り口を見ているイカリ将軍〉

うん?

「皆が待っております。どうぞお入りください」

「イカリ将軍。今迄通りと申しましたでしょう」

「オッホン。麗さん、入りなさい」

「れ、麗さん?」

「まさか、麗さんが来てるの?」

え?

「いや、しかし、民間人には内緒の戦争で、国が人を集めて育成したりも禁止な筈」

ちょっと、待った。

嫌ーな予感がする。

〈レイ姫が静かに部屋に入って来る〉

やっぱりか。

姉上の声がわからない筈ないだろ。

って、姉上が麗さん?

えーーーっ?

「ノホ王子?ダン君…あらら、二人とも固まってるわ。つついたら粉々に砕けそうね」

「というわけだ。ここでは身分は関係無く皆と同じように扱ってくれなければ来ないと仰せになるのでな」

「僕も同じだよ。それをこの秘密基地のルールにしよう」

「まあ、そう致しましょう。ノホもたまには良い事を言うのね」

たまには、って何だよ。

「ダン君」

「……」

「ダン君」

「貴方が爆弾オヤジさんね」

「は、は、は、はい!そうで有ります」

「仲良くしてくださいね」

〈微笑むレイ〉

「な、仲良く…で、有りますか?恐れ多くも」

「あら、それはいけないルールでしたわよね」

「こ、光栄で有ります!」

「フフフ」

姉上。

ダン君本当に固まっちゃってるから、そのぐらいにしてあげて。

そろそろ時間だしね。

「お姉様」

〈ノホはレイ姫の手を引っ張って連れて来る〉

「なあに?」

「ダン君緊張して出来ないからお姉様はこっち」

「10分前だ、皆んなギルドルームに入れ!」

〈秘密基地に居るメンバーはギルドレ・シルフィードのギルドルームに入る〉

ギル茶
/三銃士/宜しくです(=^^=)
/激ウマ焼肉定食/宜しくお願いします笑笑

ソウちん来てくれたんだ。

乱子さんは来てくれるかな?

「良いか、最初はキタキョウ国が輸送を開始する。こちらは敵の輸送車を銃撃し、阻止するのだ」

そうなんだ。

そしてタイムアップしたら交代して僕達が防衛側になって輸送する。

コースは決まっていて、エリアA、エリアB、エリアC、エリアDとチェックポイントが有って、エリアEが終着点。

時間内にどこまで運べるか、なんだ。

キタキョウ国が勝てば全額支払うんだよな。

僕達の国が勝っても差額を支払うわけだから、出来るだけ開始地点に近い所でタイムアップさせたいよね。

〈5.4.3.2.1スタート!〉

「止めろ!」

ここからはボイスチャットだ。

自分達のギルドルームにだけ流れて、相手には聞こえないようになっている。

「ごめんなさい」

姉上がやられた。

もう麗さんも喋るわけだね。

輸送戦は、キルされるとリスポーンで開始地点に復活するんだ。

ああ、でもどうしよう?

お姉様って呼べないよね。

「あ、やられた」

そんな事考えてたらやられちゃったよ。

キタキョウ国のチャット
/ハクトン/殺れ!キル!キル!キル!

ハポネス王国のボイスチャット
「左上のミニマップで輸送車と敵兵の位置を確認しろ!」

「はい!」

「負けないわよ!」

「あれ、乱子さん来てる」

「おまた~今帰って来たよーん」

おまたって…この人チャットだったらお股って書きそう。

「お帰り」

「ただいまー。さあ、蹴散らすよ!」

頼もしいね。

僕も頑張ろう。

敵のトラックがエリアBに到着。

それ以上進めさせないぞ!

「三銃士!後ろ来てるよー」

「うわっ」

危なっ。

ちょっと物陰でHP回復。

今のうちにリロしとこ。

あれ?

何だかスティンガーが麗さんを守ってる感じ?

要するにダン君が姉上を守ってるんだよね、あれは。

「エリアCに向かうぞ!」

「了解です!」

敵のトラックはエリアBからエリアCに向かっている。

何人か先回りして迎え撃つんだね。

遠距離からでも結構攻撃届くから。

「アタシはケツから打っ放すよ」

武官達は、イカリ将軍と一緒にエリアCに向かった。

僕達は車両を攻撃しつつ進む。

これってFPSだから、本当にマイキャラが自分のような気がするんだよね。

だから、姉上がやられたりするとドキッとする。

ワールドみたいなMMOもそうだよね。

フローラさん見つけるとドキドキしちゃう。

あ、イカリ将軍達が向こうから攻撃してる。

「これ以上進めさせんぞ!」

トラックが止まった。

タイムアップだ。

今度は僕達が防衛側だね。

出来るだけ敵よりも遠くまで運ばないと。

〈5.4.3.2.1スタート!〉

トラックが到着した。

「乗り込むぞ!」

「アタシは周り警戒」

僕も乱子さんについて行こう。

ミニマップで敵の位置を確認しながら走る。

とは言えずっとマップに表示されているわけじゃないんだ。

装備によって自分がマップに表示される時間を短くしたり出来るからね。

突然敵が現れたりする。

「あそこ、狙撃居るよ」

「え?」

あそこって、どこ?

なんて思ってたらやられた。

「せっかく教えてくれたのに、ごめんね」

「ドンマイ」

姉上はイカリ将軍達とトラックに乗り込んだみたいだね。

ダン君が守ってくれているんだろうな。

すぐ横に居るのに変な感じだけどね。

エリアB到着!

あ、トラックがやられた!

イカリ将軍達全員リスポーンだ。

「乗り込むわよ!」

「りょ」

乱子さんと僕はトラックに乗り込んだ。

ソウちんが援護してくれてる。

「ソウちん援護ありがとう」

「いえいえ、笑笑」

「笑笑」

ボイスチャットでも笑笑って言ってる。

もうすぐエリアCだ。

敵が攻撃して来る。

乱子さんが蹴散らす。

僕達だけでは厳しいね。

って、僕が頼りないのか。

イカリ将軍達が来た。

エリアCに到着。

敵の攻撃を振り切ってエリアDに向かう。

あ、やっぱりダン君が姉上を守ってくれている。

もう少しでエリアDに着くね。

だけど、もう時間が無い。

わっ、敵がたくさん来てる。

「蹴散らしてくれるわ!」

〈イカリ将軍と士官達が応戦する〉

来た!

僕達もトラックから撃ちまくるぞ。

エリアD到着!

タイムアップだ。

やった!

勝ったぞ!

最終地点まで到達出来なかったのは悔しいけど勝てた。

ハポネス王国がキタキョウ国に資金援助する額はこの戦争の結果の差額になる。

ちゃんと国民の為に使ってくれよ。

「次回は、次の国際スポーツ大会の会場を決める戦いだ」

「今度はいったい何のゲームです?」

「ワールドレーシング」

「おお!」

ダン君が燃えてるぞ。

「この戦争で勝った国で国際スポーツ大会が開催される事になる。絶対勝つぞ!」

「おー!」
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