上 下
20 / 25

第20章 シンクロする2人

しおりを挟む
【響の宿舎】

今日は璃子は学校だし、1人で行くか…

倉吉ぐらい1人でも行けるぞ。

バスに乗れば良いだけなんだからな。

【バス停】

シロの避妊手術が済んだので、倉吉の動物病院まで迎えに行くんだ。

【バスの中】

関金から小鴨川を渡ると河原町って、言ってたっけな?

かーら町(河原町)の角の菓子屋のかへいさんが、蚊に噛まれてかいー、かかあ掻いてごしぇ、かかあもかいーけ、よう掻かん。

【倉吉の町】

夕方に来てください、って言われたから、まだ少し早いか。

どうしよう?

どこか観光スポットでも行くか?

こういう時は、いつも璃子が仕切って、僕はついて行くだけだからな。

1人だと、どうして良いのかわからないぞ。

倉吉絣は、見せてもらえるのかな?

〈スマホで倉吉観光案内を調べる響〉

はあ、絣の着物を着て町を歩いて、写真撮影が出来るのか。

璃子が喜びそうだよな。

今度一緒の時にしよう。

1人で行ったら、文句言われそうだもんな。

梨っこ館に行くか。

【梨っこ館】

うわ~凄い老木が有る。

あ、ナッシーだ。

可愛いな。

世界の梨が有るぞ。

歴史も学べるようになってるんだな。

梨は、カリウムが多く含まれていて、高血圧や脳卒中の予防になるのか。

【梨っこ館前】

楽しく学べたぞ。

まだ時間が有るか。

お婆ちゃんが良く言っていた、打吹公園に行ってみるかな?

せっかくだから、白壁土蔵を回って行こう。

【白壁土蔵群】

うわ~この景色だ。

お婆ちゃんは川が流れてる、って言ってたぞ。

ああ、本当だ。

向こうに川が有る。

昔の倉が、今はレストランになってるよ、って言ってたな。

白壁土蔵群は、重要伝統的建造物群保存地区なのか。


【打吹公園】

ここが、打吹公園だ。

日本さくら名所100選、日本の都市公園100選、森林浴の森100選に選ばれているのか。

羽衣池?

羽衣を隠されて、下界の男性と結婚した天女が、羽衣を見つけて、子供を地上に残したまま天に帰ったと言う打吹山の伝説か。

あれ?

お袋が三味線で弾く常磐津の松迺羽衣って、三保の松原の漁師白竜と天女の話しだよな。

あのお袋、あれで常磐津の師範だからな。

お師匠さんは、特別無形文化財だ。

羽衣はお袋の得意な曲で、弾き唄いしてるけど、唄の意味が良くわからないもんな…

なんて言ったら「だからお稽古なさい、って言ったでしょう」って、お袋に怒られそうだけどな。

「天女の池だって、素敵!」

うん?

「あら、響」

やっぱり璃子の声だったか。

一本木先生も一緒だ。

「学校じゃなかったのか?」

「終わったから来たのよ」

はあ、またデートの邪魔してるのか?僕は…

「シロ迎えに行くから、またな」

「私も行く」

「何言ってるんだよ、デート中だろ」

「あ、そうか」

「いや、俺、はっきり断られたんだ」

「え?お前、断っといて付き合わせてるのか?」

「今は、普通にお友達よ」

「お前なあ」

「良いんだ、良いんだ、普通にする約束だから」

はあ、一本木先生は人が良いな。

断られたって、そう簡単に気持ち切り替えられるのか?

まあ、気まずくなるより良いけどな。

【倉吉の町】

結局3人でシロを迎えに行った。

早く連れて帰ってやろう。

マエストロは、浅田が見てくれてるけどな。


【響の宿舎】

〈シロの尻尾にじゃれて飛び回るマエストロ〉

「ニャニャ、ニャ」

シロの避妊もしたし、チャコは町猫なので、ボランティアの人が去勢してくれたから、もう赤ちゃんが生まれる事は無い。

こんなに可愛いの、もう見られないんだな。

「マエストロ」

「ミュー」

「出かけて来るから、ママと良い子にしてるんだぞ」

シロとマエストロは、浅田が見ててくれるから、お盆休みは東京に帰るんだ。

【東京の鐘城家】

「ただいま」

「お帰り」

【キッチン】

「お婆ちゃんは?」

「もう寝てるんじゃない?」

「そうか」

「明日、大学に行って来る」

【横浜のマンション】

「せっかく来たのに、パパは明日も仕事なのね」

「病気は待ってくれないからな。香も医者になるなら、覚悟しておけよ」

「そうね」

「涼子はどうしてる?」

「お姉ちゃんの神社、もうすぐ盆踊りだから」

「そうか」

【川原家】

「お婆ちゃんの煮物は、やっぱり美味しい」

「響、お嫁さんが料理を作ってくれたら、お母さんの味と違うとか、お婆ちゃんの方が美味しいとか、言ったらダメよ」

「うん、お袋もそう言ってた」

けど…

お嫁さんは、まだだから。

「ごちそうさま。大学行って来るね」

私が生きてる間に、結婚してよ。

響は、100まで生きろ、って言ってくれるけど…

まあ、丁度100まで生きた姉も居るから、頑張りますか。

【オルフェウス音楽院正門前】

ああ、久々に来たぞ。

秋は、学内コンクールとオルフェウス音楽祭だな。


【裏庭】

ピアノが聞こえる。

今日は、城咲先生か?

国際コンクールをいくつも優勝して、ショパンコンクール1位無しの2位になった翌年帰国して講師になったんだ。

今は、助教授だけどな。

ここの卒業生だけど、彼女がこの学校に居たのは小学校までで、ヨーロッパに留学したんだ。

ここは中学までは普通科で、高校から普通科と音楽院のどちらか選べるようになっていて、大学は音楽院だけだ。

元々音楽院だったところに、後から普通科が出来たんだよな。

【正門前】

ここが、オルフェウス音楽院。

響先生は、ここに通ってたのね。

こんなに近くに居たの。

本当に、すれ違っていたかも知れないわね。

【並木道】

温室で野菜を作っていて、カフェで食べられるんだけど、音楽を聴かせて育てた野菜なんだよな。

僕はピアノだからやらなかったけど、オルフェウス・アカデミー・オーケストラの人達が交代で演奏しているんだ。

今日は、誰か居るかな?

ちょっと寄ってみるか。

【温室】

誰も居ないか。

さすがに夏は暑いから皆んな嫌がってたもんな。

【正門前】

〈夕方〉

さて、お腹が空いたな。

何か食べに行くか。

【中華街】

お買い物もしたし、帰ろうかな?

〈店から響が出て来る〉

「あれ?」

「え?」

〈しばらく固まる2人〉

「どうして?先生の家東京でしょう?」

「大学に用が有って」

「じゃあ、さっきまで大学に?」

「うん、居た」

もしかして…私が通りかかった時も?

「香は、どうして横浜に居るんだ?」

「父に会いに来たんです」

「そうか、オルフェウスの近くだったな」

「先生の家は、東京のどこですか?」

「中野だよ。中央線の中野駅から15分ぐらい」


「そうだ、私行きたい所が有るんです」

「気をつけてな」

「あ、知らない町で生徒を1人にして心配じゃないんですか?」

「え?だって昔住んでただろ」

「7才までです」

「お父さんの家近いし」

「心配じゃないのね」

「いや、心配。凄ーく心配」

「ウフフ」

【遊園地入り口】

で、結局一緒に来てしまった。

まあ、保護者だな。

「初めてのデートね」

「違う違う、僕は保護者だから」

「フフフ」

何を言っても嬉しそうに笑っている。

本当に、いつも、香の笑顔は輝いているな。

【遊園地の中】

「乗りましょう」

「え?これ…乗るのか?」

「どうしてそんな嫌な顔するんですか?」

「……」

「先生はこの白い馬ね、私は馬車」

女の子は、好きだよな…

メリーゴーランド。

ああ、恥ずかしい。

〈夜になると、遊園地はライトアップされて、星空の中に浮かび上がる〉

「次は、あれに乗りましょう」

「え?」

「もしかして、怖いんですか?」

「いや…」

乗りました。

観覧車。

怖いのは、高い所じゃなくて狭い所です。

そして、こんな所で、君と2人っきりになる事だよ、はあ…。

「夜は綺麗ね」

「そうだな」

「あ、夜に誰かと乗った事有るんですか?」

「無い無い」

「本当かしら?」

「本当だよ…たぶん」

「たぶん?」

「無いです」(汗)

そんなの忘れちゃったけどな…

だから、たぶん。

「私は、小さい頃父と良く乗りました。でも、夜は初めて」

そうなのか。

「ロマンチックね」

ロマンチックになられても…

困るんですけどね…

ドキドキするな、落ち着け、相手は生徒だぞ。

「あ、そうだ。先生の切らさない食材って、何ですか?」

「うーん、ミルクと卵かな?」

コッコちゃんが産んでくれるし、昔から毎日食べてたぞ。

「覚えておきます」

って、嬉しそうに笑ってるな。

人の気も知らないで…


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

妻がヌードモデルになる日

矢木羽研
大衆娯楽
男性画家のヌードモデルになりたい。妻にそう切り出された夫の動揺と受容を書いてみました。

小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話

矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」 「あら、いいのかしら」 夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……? 微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。 ※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。 ※小説家になろうでも同内容で投稿しています。 ※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。

分析スキルで美少女たちの恥ずかしい秘密が見えちゃう異世界生活

SenY
ファンタジー
"分析"スキルを持って異世界に転生した主人公は、相手の力量を正確に見極めて勝てる相手にだけ確実に勝つスタイルで短期間に一財を為すことに成功する。 クエスト報酬で豪邸を手に入れたはいいものの一人で暮らすには広すぎると悩んでいた主人公。そんな彼が友人の勧めで奴隷市場を訪れ、記憶喪失の美少女奴隷ルナを購入したことから、物語は動き始める。 これまで危ない敵から逃げたり弱そうな敵をボコるのにばかり"分析"を活用していた主人公が、そのスキルを美少女の恥ずかしい秘密を覗くことにも使い始めるちょっとエッチなハーレム系ラブコメ。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

明智さんちの旦那さんたちR

明智 颯茄
恋愛
 あの小高い丘の上に建つ大きなお屋敷には、一風変わった夫婦が住んでいる。それは、妻一人に夫十人のいわゆる逆ハーレム婚だ。  奥さんは何かと大変かと思いきやそうではないらしい。旦那さんたちは全員神がかりな美しさを持つイケメンで、奥さんはニヤケ放題らしい。  ほのぼのとしながらも、複数婚が巻き起こすおかしな日常が満載。  *BL描写あり  毎週月曜日と隔週の日曜日お休みします。

幼なじみとセックスごっこを始めて、10年がたった。

スタジオ.T
青春
 幼なじみの鞠川春姫(まりかわはるひめ)は、学校内でも屈指の美少女だ。  そんな春姫と俺は、毎週水曜日にセックスごっこをする約束をしている。    ゆるいイチャラブ、そしてエッチなラブストーリー。

女子高生は卒業間近の先輩に告白する。全裸で。

矢木羽研
恋愛
図書委員の女子高生(小柄ちっぱい眼鏡)が、卒業間近の先輩男子に告白します。全裸で。 女の子が裸になるだけの話。それ以上の行為はありません。 取って付けたようなバレンタインネタあり。 カクヨムでも同内容で公開しています。

RUBBER LADY 屈辱の性奴隷調教

RUBBER LADY
ファンタジー
RUBBER LADYが活躍するストーリーの続編です

処理中です...