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第20章 シンクロする2人
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【響の宿舎】
今日は璃子は学校だし、1人で行くか…
倉吉ぐらい1人でも行けるぞ。
バスに乗れば良いだけなんだからな。
【バス停】
シロの避妊手術が済んだので、倉吉の動物病院まで迎えに行くんだ。
【バスの中】
関金から小鴨川を渡ると河原町って、言ってたっけな?
かーら町(河原町)の角の菓子屋のかへいさんが、蚊に噛まれてかいー、かかあ掻いてごしぇ、かかあもかいーけ、よう掻かん。
【倉吉の町】
夕方に来てください、って言われたから、まだ少し早いか。
どうしよう?
どこか観光スポットでも行くか?
こういう時は、いつも璃子が仕切って、僕はついて行くだけだからな。
1人だと、どうして良いのかわからないぞ。
倉吉絣は、見せてもらえるのかな?
〈スマホで倉吉観光案内を調べる響〉
はあ、絣の着物を着て町を歩いて、写真撮影が出来るのか。
璃子が喜びそうだよな。
今度一緒の時にしよう。
1人で行ったら、文句言われそうだもんな。
梨っこ館に行くか。
【梨っこ館】
うわ~凄い老木が有る。
あ、ナッシーだ。
可愛いな。
世界の梨が有るぞ。
歴史も学べるようになってるんだな。
梨は、カリウムが多く含まれていて、高血圧や脳卒中の予防になるのか。
【梨っこ館前】
楽しく学べたぞ。
まだ時間が有るか。
お婆ちゃんが良く言っていた、打吹公園に行ってみるかな?
せっかくだから、白壁土蔵を回って行こう。
【白壁土蔵群】
うわ~この景色だ。
お婆ちゃんは川が流れてる、って言ってたぞ。
ああ、本当だ。
向こうに川が有る。
昔の倉が、今はレストランになってるよ、って言ってたな。
白壁土蔵群は、重要伝統的建造物群保存地区なのか。
【打吹公園】
ここが、打吹公園だ。
日本さくら名所100選、日本の都市公園100選、森林浴の森100選に選ばれているのか。
羽衣池?
羽衣を隠されて、下界の男性と結婚した天女が、羽衣を見つけて、子供を地上に残したまま天に帰ったと言う打吹山の伝説か。
あれ?
お袋が三味線で弾く常磐津の松迺羽衣って、三保の松原の漁師白竜と天女の話しだよな。
あのお袋、あれで常磐津の師範だからな。
お師匠さんは、特別無形文化財だ。
羽衣はお袋の得意な曲で、弾き唄いしてるけど、唄の意味が良くわからないもんな…
なんて言ったら「だからお稽古なさい、って言ったでしょう」って、お袋に怒られそうだけどな。
「天女の池だって、素敵!」
うん?
「あら、響」
やっぱり璃子の声だったか。
一本木先生も一緒だ。
「学校じゃなかったのか?」
「終わったから来たのよ」
はあ、またデートの邪魔してるのか?僕は…
「シロ迎えに行くから、またな」
「私も行く」
「何言ってるんだよ、デート中だろ」
「あ、そうか」
「いや、俺、はっきり断られたんだ」
「え?お前、断っといて付き合わせてるのか?」
「今は、普通にお友達よ」
「お前なあ」
「良いんだ、良いんだ、普通にする約束だから」
はあ、一本木先生は人が良いな。
断られたって、そう簡単に気持ち切り替えられるのか?
まあ、気まずくなるより良いけどな。
【倉吉の町】
結局3人でシロを迎えに行った。
早く連れて帰ってやろう。
マエストロは、浅田が見てくれてるけどな。
【響の宿舎】
〈シロの尻尾にじゃれて飛び回るマエストロ〉
「ニャニャ、ニャ」
シロの避妊もしたし、チャコは町猫なので、ボランティアの人が去勢してくれたから、もう赤ちゃんが生まれる事は無い。
こんなに可愛いの、もう見られないんだな。
「マエストロ」
「ミュー」
「出かけて来るから、ママと良い子にしてるんだぞ」
シロとマエストロは、浅田が見ててくれるから、お盆休みは東京に帰るんだ。
【東京の鐘城家】
「ただいま」
「お帰り」
【キッチン】
「お婆ちゃんは?」
「もう寝てるんじゃない?」
「そうか」
「明日、大学に行って来る」
【横浜のマンション】
「せっかく来たのに、パパは明日も仕事なのね」
「病気は待ってくれないからな。香も医者になるなら、覚悟しておけよ」
「そうね」
「涼子はどうしてる?」
「お姉ちゃんの神社、もうすぐ盆踊りだから」
「そうか」
【川原家】
「お婆ちゃんの煮物は、やっぱり美味しい」
「響、お嫁さんが料理を作ってくれたら、お母さんの味と違うとか、お婆ちゃんの方が美味しいとか、言ったらダメよ」
「うん、お袋もそう言ってた」
けど…
お嫁さんは、まだだから。
「ごちそうさま。大学行って来るね」
私が生きてる間に、結婚してよ。
響は、100まで生きろ、って言ってくれるけど…
まあ、丁度100まで生きた姉も居るから、頑張りますか。
【オルフェウス音楽院正門前】
ああ、久々に来たぞ。
秋は、学内コンクールとオルフェウス音楽祭だな。
【裏庭】
ピアノが聞こえる。
今日は、城咲先生か?
国際コンクールをいくつも優勝して、ショパンコンクール1位無しの2位になった翌年帰国して講師になったんだ。
今は、助教授だけどな。
ここの卒業生だけど、彼女がこの学校に居たのは小学校までで、ヨーロッパに留学したんだ。
ここは中学までは普通科で、高校から普通科と音楽院のどちらか選べるようになっていて、大学は音楽院だけだ。
元々音楽院だったところに、後から普通科が出来たんだよな。
【正門前】
ここが、オルフェウス音楽院。
響先生は、ここに通ってたのね。
こんなに近くに居たの。
本当に、すれ違っていたかも知れないわね。
【並木道】
温室で野菜を作っていて、カフェで食べられるんだけど、音楽を聴かせて育てた野菜なんだよな。
僕はピアノだからやらなかったけど、オルフェウス・アカデミー・オーケストラの人達が交代で演奏しているんだ。
今日は、誰か居るかな?
ちょっと寄ってみるか。
【温室】
誰も居ないか。
さすがに夏は暑いから皆んな嫌がってたもんな。
【正門前】
〈夕方〉
さて、お腹が空いたな。
何か食べに行くか。
【中華街】
お買い物もしたし、帰ろうかな?
〈店から響が出て来る〉
「あれ?」
「え?」
〈しばらく固まる2人〉
「どうして?先生の家東京でしょう?」
「大学に用が有って」
「じゃあ、さっきまで大学に?」
「うん、居た」
もしかして…私が通りかかった時も?
「香は、どうして横浜に居るんだ?」
「父に会いに来たんです」
「そうか、オルフェウスの近くだったな」
「先生の家は、東京のどこですか?」
「中野だよ。中央線の中野駅から15分ぐらい」
「そうだ、私行きたい所が有るんです」
「気をつけてな」
「あ、知らない町で生徒を1人にして心配じゃないんですか?」
「え?だって昔住んでただろ」
「7才までです」
「お父さんの家近いし」
「心配じゃないのね」
「いや、心配。凄ーく心配」
「ウフフ」
【遊園地入り口】
で、結局一緒に来てしまった。
まあ、保護者だな。
「初めてのデートね」
「違う違う、僕は保護者だから」
「フフフ」
何を言っても嬉しそうに笑っている。
本当に、いつも、香の笑顔は輝いているな。
【遊園地の中】
「乗りましょう」
「え?これ…乗るのか?」
「どうしてそんな嫌な顔するんですか?」
「……」
「先生はこの白い馬ね、私は馬車」
女の子は、好きだよな…
メリーゴーランド。
ああ、恥ずかしい。
〈夜になると、遊園地はライトアップされて、星空の中に浮かび上がる〉
「次は、あれに乗りましょう」
「え?」
「もしかして、怖いんですか?」
「いや…」
乗りました。
観覧車。
怖いのは、高い所じゃなくて狭い所です。
そして、こんな所で、君と2人っきりになる事だよ、はあ…。
「夜は綺麗ね」
「そうだな」
「あ、夜に誰かと乗った事有るんですか?」
「無い無い」
「本当かしら?」
「本当だよ…たぶん」
「たぶん?」
「無いです」(汗)
そんなの忘れちゃったけどな…
だから、たぶん。
「私は、小さい頃父と良く乗りました。でも、夜は初めて」
そうなのか。
「ロマンチックね」
ロマンチックになられても…
困るんですけどね…
ドキドキするな、落ち着け、相手は生徒だぞ。
「あ、そうだ。先生の切らさない食材って、何ですか?」
「うーん、ミルクと卵かな?」
コッコちゃんが産んでくれるし、昔から毎日食べてたぞ。
「覚えておきます」
って、嬉しそうに笑ってるな。
人の気も知らないで…
今日は璃子は学校だし、1人で行くか…
倉吉ぐらい1人でも行けるぞ。
バスに乗れば良いだけなんだからな。
【バス停】
シロの避妊手術が済んだので、倉吉の動物病院まで迎えに行くんだ。
【バスの中】
関金から小鴨川を渡ると河原町って、言ってたっけな?
かーら町(河原町)の角の菓子屋のかへいさんが、蚊に噛まれてかいー、かかあ掻いてごしぇ、かかあもかいーけ、よう掻かん。
【倉吉の町】
夕方に来てください、って言われたから、まだ少し早いか。
どうしよう?
どこか観光スポットでも行くか?
こういう時は、いつも璃子が仕切って、僕はついて行くだけだからな。
1人だと、どうして良いのかわからないぞ。
倉吉絣は、見せてもらえるのかな?
〈スマホで倉吉観光案内を調べる響〉
はあ、絣の着物を着て町を歩いて、写真撮影が出来るのか。
璃子が喜びそうだよな。
今度一緒の時にしよう。
1人で行ったら、文句言われそうだもんな。
梨っこ館に行くか。
【梨っこ館】
うわ~凄い老木が有る。
あ、ナッシーだ。
可愛いな。
世界の梨が有るぞ。
歴史も学べるようになってるんだな。
梨は、カリウムが多く含まれていて、高血圧や脳卒中の予防になるのか。
【梨っこ館前】
楽しく学べたぞ。
まだ時間が有るか。
お婆ちゃんが良く言っていた、打吹公園に行ってみるかな?
せっかくだから、白壁土蔵を回って行こう。
【白壁土蔵群】
うわ~この景色だ。
お婆ちゃんは川が流れてる、って言ってたぞ。
ああ、本当だ。
向こうに川が有る。
昔の倉が、今はレストランになってるよ、って言ってたな。
白壁土蔵群は、重要伝統的建造物群保存地区なのか。
【打吹公園】
ここが、打吹公園だ。
日本さくら名所100選、日本の都市公園100選、森林浴の森100選に選ばれているのか。
羽衣池?
羽衣を隠されて、下界の男性と結婚した天女が、羽衣を見つけて、子供を地上に残したまま天に帰ったと言う打吹山の伝説か。
あれ?
お袋が三味線で弾く常磐津の松迺羽衣って、三保の松原の漁師白竜と天女の話しだよな。
あのお袋、あれで常磐津の師範だからな。
お師匠さんは、特別無形文化財だ。
羽衣はお袋の得意な曲で、弾き唄いしてるけど、唄の意味が良くわからないもんな…
なんて言ったら「だからお稽古なさい、って言ったでしょう」って、お袋に怒られそうだけどな。
「天女の池だって、素敵!」
うん?
「あら、響」
やっぱり璃子の声だったか。
一本木先生も一緒だ。
「学校じゃなかったのか?」
「終わったから来たのよ」
はあ、またデートの邪魔してるのか?僕は…
「シロ迎えに行くから、またな」
「私も行く」
「何言ってるんだよ、デート中だろ」
「あ、そうか」
「いや、俺、はっきり断られたんだ」
「え?お前、断っといて付き合わせてるのか?」
「今は、普通にお友達よ」
「お前なあ」
「良いんだ、良いんだ、普通にする約束だから」
はあ、一本木先生は人が良いな。
断られたって、そう簡単に気持ち切り替えられるのか?
まあ、気まずくなるより良いけどな。
【倉吉の町】
結局3人でシロを迎えに行った。
早く連れて帰ってやろう。
マエストロは、浅田が見てくれてるけどな。
【響の宿舎】
〈シロの尻尾にじゃれて飛び回るマエストロ〉
「ニャニャ、ニャ」
シロの避妊もしたし、チャコは町猫なので、ボランティアの人が去勢してくれたから、もう赤ちゃんが生まれる事は無い。
こんなに可愛いの、もう見られないんだな。
「マエストロ」
「ミュー」
「出かけて来るから、ママと良い子にしてるんだぞ」
シロとマエストロは、浅田が見ててくれるから、お盆休みは東京に帰るんだ。
【東京の鐘城家】
「ただいま」
「お帰り」
【キッチン】
「お婆ちゃんは?」
「もう寝てるんじゃない?」
「そうか」
「明日、大学に行って来る」
【横浜のマンション】
「せっかく来たのに、パパは明日も仕事なのね」
「病気は待ってくれないからな。香も医者になるなら、覚悟しておけよ」
「そうね」
「涼子はどうしてる?」
「お姉ちゃんの神社、もうすぐ盆踊りだから」
「そうか」
【川原家】
「お婆ちゃんの煮物は、やっぱり美味しい」
「響、お嫁さんが料理を作ってくれたら、お母さんの味と違うとか、お婆ちゃんの方が美味しいとか、言ったらダメよ」
「うん、お袋もそう言ってた」
けど…
お嫁さんは、まだだから。
「ごちそうさま。大学行って来るね」
私が生きてる間に、結婚してよ。
響は、100まで生きろ、って言ってくれるけど…
まあ、丁度100まで生きた姉も居るから、頑張りますか。
【オルフェウス音楽院正門前】
ああ、久々に来たぞ。
秋は、学内コンクールとオルフェウス音楽祭だな。
【裏庭】
ピアノが聞こえる。
今日は、城咲先生か?
国際コンクールをいくつも優勝して、ショパンコンクール1位無しの2位になった翌年帰国して講師になったんだ。
今は、助教授だけどな。
ここの卒業生だけど、彼女がこの学校に居たのは小学校までで、ヨーロッパに留学したんだ。
ここは中学までは普通科で、高校から普通科と音楽院のどちらか選べるようになっていて、大学は音楽院だけだ。
元々音楽院だったところに、後から普通科が出来たんだよな。
【正門前】
ここが、オルフェウス音楽院。
響先生は、ここに通ってたのね。
こんなに近くに居たの。
本当に、すれ違っていたかも知れないわね。
【並木道】
温室で野菜を作っていて、カフェで食べられるんだけど、音楽を聴かせて育てた野菜なんだよな。
僕はピアノだからやらなかったけど、オルフェウス・アカデミー・オーケストラの人達が交代で演奏しているんだ。
今日は、誰か居るかな?
ちょっと寄ってみるか。
【温室】
誰も居ないか。
さすがに夏は暑いから皆んな嫌がってたもんな。
【正門前】
〈夕方〉
さて、お腹が空いたな。
何か食べに行くか。
【中華街】
お買い物もしたし、帰ろうかな?
〈店から響が出て来る〉
「あれ?」
「え?」
〈しばらく固まる2人〉
「どうして?先生の家東京でしょう?」
「大学に用が有って」
「じゃあ、さっきまで大学に?」
「うん、居た」
もしかして…私が通りかかった時も?
「香は、どうして横浜に居るんだ?」
「父に会いに来たんです」
「そうか、オルフェウスの近くだったな」
「先生の家は、東京のどこですか?」
「中野だよ。中央線の中野駅から15分ぐらい」
「そうだ、私行きたい所が有るんです」
「気をつけてな」
「あ、知らない町で生徒を1人にして心配じゃないんですか?」
「え?だって昔住んでただろ」
「7才までです」
「お父さんの家近いし」
「心配じゃないのね」
「いや、心配。凄ーく心配」
「ウフフ」
【遊園地入り口】
で、結局一緒に来てしまった。
まあ、保護者だな。
「初めてのデートね」
「違う違う、僕は保護者だから」
「フフフ」
何を言っても嬉しそうに笑っている。
本当に、いつも、香の笑顔は輝いているな。
【遊園地の中】
「乗りましょう」
「え?これ…乗るのか?」
「どうしてそんな嫌な顔するんですか?」
「……」
「先生はこの白い馬ね、私は馬車」
女の子は、好きだよな…
メリーゴーランド。
ああ、恥ずかしい。
〈夜になると、遊園地はライトアップされて、星空の中に浮かび上がる〉
「次は、あれに乗りましょう」
「え?」
「もしかして、怖いんですか?」
「いや…」
乗りました。
観覧車。
怖いのは、高い所じゃなくて狭い所です。
そして、こんな所で、君と2人っきりになる事だよ、はあ…。
「夜は綺麗ね」
「そうだな」
「あ、夜に誰かと乗った事有るんですか?」
「無い無い」
「本当かしら?」
「本当だよ…たぶん」
「たぶん?」
「無いです」(汗)
そんなの忘れちゃったけどな…
だから、たぶん。
「私は、小さい頃父と良く乗りました。でも、夜は初めて」
そうなのか。
「ロマンチックね」
ロマンチックになられても…
困るんですけどね…
ドキドキするな、落ち着け、相手は生徒だぞ。
「あ、そうだ。先生の切らさない食材って、何ですか?」
「うーん、ミルクと卵かな?」
コッコちゃんが産んでくれるし、昔から毎日食べてたぞ。
「覚えておきます」
って、嬉しそうに笑ってるな。
人の気も知らないで…
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