【完結】お馬鹿令息ですが、イケメン従者とカップルにならないと魔法学園を永久に卒業できません

古井重箱

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第10話 焦らしプレイ *

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 寮の浴室はがらんとしていた。
 入浴時間にはまだ早いため貸切状態である。
 ヴァンは脱衣所で俺の服を素早く脱がせると、浴室へといざなった。

「さあ。綺麗にして差し上げますね」

 この魔法学園ではシャワーを使うことができる。水魔法と火炎魔法が組み込まれているからだ。ここラルム王国では魔道具と呼ばれる便利グッズが広く普及している。
 ヴァンはシャワーで俺の汗を洗い流したあと、石鹸を泡立てた。愛用している白い石鹸からはスズランのいい香りがしてきた。泡まみれになったヴァンの手が俺の肌に触れる。
 そのまま性器や乳首をいじられるのかと思ったが、ヴァンはそっと泡をつけるだけだった。
 俺はつい、物欲しげな目でヴァンを見つめてしまった。
 
「どうしました? ここで意地悪をされたいんですか」
「まさか! 共有スペースでサカるのとか最悪だろ」

 本当のところは、部屋に行くまで待っていられない。ヴァンの鍛え抜かれた裸を見ていると、早くあの分厚い胸に包まれたいと思ってしまう。俺って淫乱なのかな。
 いつまで経っても触ってくれないので、ペニスを自分の手で清めた。
 ヴァンは次に洗髪料を泡立てて、俺の髪に撫でつけた。香りは石鹸と同じく、スズランである。ヴァンは頭皮のマッサージまでしてくれた。やけに優しい手つきだ。
 でも、ヴァンの手が俺の下腹部に伸びてくることはなかった。キスもなし。
 俺は物足りなくて、ヴァンの腕にぺたんと濡れた頭をくっつけた。ヴァンが微笑む。

「甘えん坊さんですね。俺の愛撫が恋しくなったのですか」
「……ヴァンがいつもと違って大人しいから」
「もうプレイは始まっていますよ。エドゥアール様はどうされたいんですか?」
「そんなの言えないっ」
「ふうん。すごくエッチなことを考えてるんだ」
「違うってば! 俺はただ、もっとヴァンの近くに行きたいだけだ……!」

 キスを求めて顔を寄せれば、人差し指で唇を止められた。

「だーめ。みんなが使うスペースですよ、ここは」
「図書館の書庫でエロいことしたくせに。急に優等生ぶってどうしたんだよ」
「エドゥアール様をお預け状態にしたいんです」
「俺は……っ。別にそこまでおまえのことを欲しがってなんか」
「嘘つき」
「ひゃあぁっ!」

 鈴口をぐりっと指の腹で押され、俺はのけ反った。お待ちかねの刺激を与えられたペニスが、ぷるんと揺れながら角度を上げていく。ヴァンは泡まみれになった俺の性器をそろりと握った。
 石鹸の泡でできた薄い膜がペニスに張りついている。
 ヴァンの触り方が弱々しいので、俺のちんこは生殺し状態になった。半勃ちになったところでヴァンの手が止まる。

「あとはご自分で綺麗にしてくださいね」
「今日は……しないのか」
「それはエドゥアール様次第ですよ。可愛らしくおねだりできたら、たっぷり愛して差し上げます」
「俺に誘えって言うのかよ!」

 そんなこと恥ずかしくてできない。
 俺は体についた泡をシャワーで洗い流すと、脱衣所に向かった。タオルで水分を取って、ドレスシャツを羽織る。ボタンを留めていると、ヴァンが脱衣所にやって来た。半勃ちになったままの俺のペニスと違って、ヴァンのちんこは全然反応していない。
 それにしても、勃起していない状態でそのサイズかよ。立派すぎるだろう。俺がちんこをガン見していると、ヴァンがさっと下着を履いた。

「そんなに俺のアレが気になりますか? 扱いたり、舐めたりしてみたいんですか?」
「だ、誰が男のちんこなんて……!」

 余裕たっぷりのヴァンが憎ったらしくて、俺はキスを仕掛けた。しかしヴァンは俺の舌先を軽く吸ったあと、すぐに顔を離した。

「またお預けかよ」
「エドゥアール様。言葉にして伝えてください。俺にどうしてほしいですか?」
「……お腹が空いたから、部屋に食べ物を持って来てほしい。俺は先に戻るからな!」
「かしこまりました。食堂で軽食を調達して参ります」

 ヴァンはさっと身支度を整えると、脱衣所から出ていった。
 肩透かしをくらったため、俺は心の中がモヤモヤした。ヴァンの奴、何を考えてるんだ? 繁華街から戻る時はやる気満々の表情だったのに。
 部屋に帰って、ひとりベッドの上にいると、寂しさが募ってきた。
 もしかして、ヴァンの一連の行動って釣った魚には餌をやらないってやつか!? 俺がヴァンのことが好きだと伝えたから、もう放置モードに入ったのかも。

「ううっ……」

 いっぱい意地悪されたい。
 ちょっとキスして終わりだなんて嫌だ。
 俺はベッドの上でベルトを緩めた。スラックスを足から引き抜いて、下着だけになる。
 ヴァンめ。
 俺に寂しい思いをさせたこと、後悔させてやる。悩殺ポーズをとって、ヴァンのちんこをガチガチにしてやるんだからな!
 俺が四つん這いになって尻を高く突き上げた瞬間、ヴァンが部屋にやって来た。

「ハムとチーズのサンドでよろしいですか? ちゃんとマスタードを入れてもらいましたからね。紅茶をお淹れしましょう」
「おまえなあ。この状況で食べ物がどうこう言ってる場合かよ! 見ろよ、俺のセクシーポーズ!」
「セクシーというか、猫ちゃんが戯れているようで可愛らしいですね。さあ、お腹が空いているんでしょう。どうぞお食べください」
「ヴァン……! いい加減にしろ。俺を待たせるな!」

 俺はたくましい腕を引いて、ヴァンをベッドに連れ込んだ。
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