7 / 25
第7話 まさかのデレ (ヴァン視点)
しおりを挟む
外から鳥の鳴き声が聞こえる。朝の始まりだ。
俺の腕の中で、エドゥアール様はすやすやと眠っている。
後ろから抱き締めているので、可愛い寝顔を拝むことはできない。俺はエドゥアール様のうなじに顔をうずめて、プラチナブロンドからほのかに漂ってくるスズランの香りを存分に楽しんだ。
この方は本当に、真っ白なスズランの花のように無垢だ。
だから、汚したくなる。
昨夜、俺にイかされた時にエドゥアール様が見せた恥じらいといったら。思い出すだけで勃起しそうだ。
エドゥアール様は最高に可愛い。
社交界では得意の歌と踊りで周りを魅了し、学園生活ではみんなの笑顔を引き出している。
俺がエドゥアール様への恋情を確信したのは11歳の時だ。
エドゥアール様のことを考えると下腹部がもどかしくなった。それで俺は初めてのひとり遊びに耽り、精通を経験したのだった。
BLゲームの世界に転生したからといって、相手など誰でもいいと思えるわけがない。俺は天使が提示してきた規約を抜きにしても、エドゥアール様というお方に惚れている。
エドゥアール様の魅力はたくさんある。
女好きのお馬鹿さんだなあと呆れることも多々あるが、調理実習でフェリシアさんを助けたように、エドゥアール様は人のために尽くす優しさを持っている。お茶目で明るくて、愛嬌たっぷりなところも大好きだ。
ああ、エドゥアール様。
愛しております。
俺はエドゥアール様のプラチナブロンドを指先ですくい取ると、軽くキスをした。
本当は可憐な唇に吸いつきたい。願わくば周囲に大勢のギャラリーがいるシチュエーションで角度を変えて何回もキスをして、エドゥアール様の腰を砕けさせて、この人は俺のものだと主張したい。
……また浅ましい欲をこじらせてしまった。俺は自分の大きすぎる感情を持て余している。
「んっ……、ヴァン。おはよ」
厚いカーテン越しにも日差しが感じ取れるような時刻になった。
エドゥアール様がもぞもぞと動いて、俺の方を向いた。綺麗なお顔に浮かんでいるのは爽やかな微笑みである。
「喉が乾いちゃった」
しなやかな腕を伸ばすと、エドゥアール様はベッドサイドテーブルに置いてあった水差しを取った。そしてこくんと水を飲み干し、頬を赤く染めた。
「昨日のことは……他の奴らには秘密だぞ」
「誰にも言ったりしませんよ。エドゥアール様の可愛らしいお姿は、全部俺のものです」
「ヴァン。今日って学校は休みだよな」
「はい。どこかに出かけますか?」
「そうだな。銀猫亭のコーデルシュが飲みたい」
このラルム王国で広く親しまれているコーデルシュはエドゥアール様の大好物である。木の実を乾燥させて粉末状にしたあと、蜂蜜と牛乳を混ぜて作る飲み物だ。隠し味にスパイスを何種類か入れるので、店によって味がかなり違う。
銀猫亭は王都で一、二を争う人気店だ。
エドゥアール様は舌が肥えているのでレベルの低い店には絶対に足を運ばない。
一方の俺は魔法騎士の家に生まれた。騎士が食事にこだわるのは恥とされる。主命とあらば、泥水をすすってでも勝利することが求められるからだ。俺は食に関しては無頓着である。
エドゥアール様にはこの先も贅沢好みのボンボンでいてほしい。これでもかと甘やかして、俺がいないとダメな人にしてしまいたい。
「銀猫亭は混雑していますよ。俺がコーデルシュを買って来ましょうか」
「いや。俺も一緒に並ぶ」
エドゥアール様はサファイアブルーの瞳を輝かせた。
「あの店のお姉さんたち、みんな可愛いし!」
「また女性の話ですか。懲りない人ですね」
「おまえだって、俺のことばっかり見てるくせに」
すりすりと胸に頭を寄せられたので、俺は驚いた。
この子猫のような仕草はなんだ? 可愛らしすぎて脳が溶けそうになるんだが。
エドゥアール様は昨夜の行為を恥じらって、俺に辛く当たると思っていた。ところが、予想外のデレを発揮している。
「……俺が嫌いになったんじゃないんですか」
「なんで?」
「それは……。昨日、いやらしいことを沢山したから」
「本当におまえのことが嫌いだったら、あんなに感じなかったと思う」
エドゥアール様のお顔はとてもすっきりしていた。
「雌堕ちは嫌だとおっしゃっていたのに……」
「誰だって雌呼ばわりされるのは不愉快だろ。でもさ、俺は気持ちいいことが大好きだし。おまえとならいいかなって」
「……お待ちください、エドゥアール様! そんなに素直でいいんですか? チョロくありませんか? 女の子が大好きなあなたはどこへ行ったのですか?」
「うーっ。お馬鹿の俺相手に、いっぺんに沢山質問すんな! 俺だってよく分かんねぇよ。女の子は大好きだけど、ヴァンも好きなの。どっちか一つを選べって言われても困る」
「それは……光栄です」
この反応は、もしかして快楽堕ちというやつか?
初めてなのに、エドゥアール様は感度が抜群によかったからな。でも、カラダから籠絡していいものだろうか。俺はエドゥアール様の心も欲しい。
俺が固まっていると、エドゥアール様はベッドからするりと下りて着替えを始めた。流れるような所作で寝間着をさっと脱ぐ。室温が低いためか、エドゥアール様の珊瑚色の乳首がピンと尖っている。なんとも目に毒だ。
俺が視線を逸らすと、エドゥアール様はいたずらっ子のような微笑みを浮かべた。
「もしかして、俺のおっぱいが気になるのかな?」
「当たり前でしょう。あっちを向いてください」
「へえ。ヴァンって攻め込まれると弱いんだ?」
「気のせいでは? 俺は特に焦ってはいませんよ」
「ふーん、そう」
エドゥアール様は白いドレスシャツを羽織ると、俺の方にやって来た。
「ボタンはめて」
「はい」
俺はエドゥアール様の白い喉を見つめながら、ごくりと唾液を飲み込んだ。
この人ってやっぱり、綺麗な肌してるよな……。キメが細かいうえにみずみずしくて、手のひらに吸いついてくる。野菜嫌いなのに不思議だ。
「ヴァンったら。なーんか、顔赤くね?」
「別にふつうですよ。寝ぼけていらっしゃるのでは?」
ぷちぷちと丸いボタンを小さな穴にくぐらせていく。いつもならば間違わないのに、今日はボタンの位置がずれてしまった。やり直さないといけない。
「失礼致しました」
「ヴァン、もしかして照れてる?」
「あなたがケロッとしているから……。想定外ですよ」
「だって俺、お馬鹿さんだもーん。考えたってしょうがねぇよ。ヴァンとエッチなことして気持ちよかったのは事実だろ? 俺はおまえのことが嫌いじゃない」
「では、俺の子を産んでくれますか?」
「すぐそう言うんだから。子どもっていうのは作って終わりじゃないだろ。命を育てるのには責任が伴うって、パパが言ってたぞ」
エドゥアール様の言葉に俺はハッとなった。
俺は今まで、愛しい人を自分のものにすることしか考えていなかった。もしも本気で子どもをもうけるとなったら、周囲の理解と協力は絶対に必要である。
それに、エドゥアール様は公爵家の令息だ。騎士階級の俺がそのお相手に立候補していいのかという問題だってある。
「ん、どうした? 腹でも痛いのか」
「エドゥアール様。昨日は沢山いやらしいことをして、すみませんでした」
「おまえも男だからな。溜まってたんだろ」
「そうやって、あっさりと俺を許さないでください。図に乗ってまたエドゥアール様をいじめるかもしれませんよ?」
「俺さ、ヴァンに意地悪されると、かなり感じる……」
「えっ」
「自分でも分からないんだよ! 男でいたい俺と、ヴァンと一緒に気持ちよくなりたい俺がいるの!!」
「それは脈アリということですか」
「……可能性はゼロじゃないと思う。たぶんだけど」
「失礼致します!」
俺は部屋を出て、トイレの個室に駆け込んだ。
下腹部がビンビンと反応している。
エドゥアール様……。無垢な方だとは思っていたが、まさかあそこまで順応性が高いとは。
いざエドゥアール様が雌堕ちした時に、俺のコレを気に入っていただけるだろうか?
……もっと鍛錬せねば。心と体はもちろん、閨事のテクニックに関しても。
イチモツをこすりながら、頭の中でエドゥアール様の裸身を思い描く。
俺はあっけなく吐精した。
周囲からは渋いなどと言われるけれども、俺はまだ18歳の若造なのであった。
俺の腕の中で、エドゥアール様はすやすやと眠っている。
後ろから抱き締めているので、可愛い寝顔を拝むことはできない。俺はエドゥアール様のうなじに顔をうずめて、プラチナブロンドからほのかに漂ってくるスズランの香りを存分に楽しんだ。
この方は本当に、真っ白なスズランの花のように無垢だ。
だから、汚したくなる。
昨夜、俺にイかされた時にエドゥアール様が見せた恥じらいといったら。思い出すだけで勃起しそうだ。
エドゥアール様は最高に可愛い。
社交界では得意の歌と踊りで周りを魅了し、学園生活ではみんなの笑顔を引き出している。
俺がエドゥアール様への恋情を確信したのは11歳の時だ。
エドゥアール様のことを考えると下腹部がもどかしくなった。それで俺は初めてのひとり遊びに耽り、精通を経験したのだった。
BLゲームの世界に転生したからといって、相手など誰でもいいと思えるわけがない。俺は天使が提示してきた規約を抜きにしても、エドゥアール様というお方に惚れている。
エドゥアール様の魅力はたくさんある。
女好きのお馬鹿さんだなあと呆れることも多々あるが、調理実習でフェリシアさんを助けたように、エドゥアール様は人のために尽くす優しさを持っている。お茶目で明るくて、愛嬌たっぷりなところも大好きだ。
ああ、エドゥアール様。
愛しております。
俺はエドゥアール様のプラチナブロンドを指先ですくい取ると、軽くキスをした。
本当は可憐な唇に吸いつきたい。願わくば周囲に大勢のギャラリーがいるシチュエーションで角度を変えて何回もキスをして、エドゥアール様の腰を砕けさせて、この人は俺のものだと主張したい。
……また浅ましい欲をこじらせてしまった。俺は自分の大きすぎる感情を持て余している。
「んっ……、ヴァン。おはよ」
厚いカーテン越しにも日差しが感じ取れるような時刻になった。
エドゥアール様がもぞもぞと動いて、俺の方を向いた。綺麗なお顔に浮かんでいるのは爽やかな微笑みである。
「喉が乾いちゃった」
しなやかな腕を伸ばすと、エドゥアール様はベッドサイドテーブルに置いてあった水差しを取った。そしてこくんと水を飲み干し、頬を赤く染めた。
「昨日のことは……他の奴らには秘密だぞ」
「誰にも言ったりしませんよ。エドゥアール様の可愛らしいお姿は、全部俺のものです」
「ヴァン。今日って学校は休みだよな」
「はい。どこかに出かけますか?」
「そうだな。銀猫亭のコーデルシュが飲みたい」
このラルム王国で広く親しまれているコーデルシュはエドゥアール様の大好物である。木の実を乾燥させて粉末状にしたあと、蜂蜜と牛乳を混ぜて作る飲み物だ。隠し味にスパイスを何種類か入れるので、店によって味がかなり違う。
銀猫亭は王都で一、二を争う人気店だ。
エドゥアール様は舌が肥えているのでレベルの低い店には絶対に足を運ばない。
一方の俺は魔法騎士の家に生まれた。騎士が食事にこだわるのは恥とされる。主命とあらば、泥水をすすってでも勝利することが求められるからだ。俺は食に関しては無頓着である。
エドゥアール様にはこの先も贅沢好みのボンボンでいてほしい。これでもかと甘やかして、俺がいないとダメな人にしてしまいたい。
「銀猫亭は混雑していますよ。俺がコーデルシュを買って来ましょうか」
「いや。俺も一緒に並ぶ」
エドゥアール様はサファイアブルーの瞳を輝かせた。
「あの店のお姉さんたち、みんな可愛いし!」
「また女性の話ですか。懲りない人ですね」
「おまえだって、俺のことばっかり見てるくせに」
すりすりと胸に頭を寄せられたので、俺は驚いた。
この子猫のような仕草はなんだ? 可愛らしすぎて脳が溶けそうになるんだが。
エドゥアール様は昨夜の行為を恥じらって、俺に辛く当たると思っていた。ところが、予想外のデレを発揮している。
「……俺が嫌いになったんじゃないんですか」
「なんで?」
「それは……。昨日、いやらしいことを沢山したから」
「本当におまえのことが嫌いだったら、あんなに感じなかったと思う」
エドゥアール様のお顔はとてもすっきりしていた。
「雌堕ちは嫌だとおっしゃっていたのに……」
「誰だって雌呼ばわりされるのは不愉快だろ。でもさ、俺は気持ちいいことが大好きだし。おまえとならいいかなって」
「……お待ちください、エドゥアール様! そんなに素直でいいんですか? チョロくありませんか? 女の子が大好きなあなたはどこへ行ったのですか?」
「うーっ。お馬鹿の俺相手に、いっぺんに沢山質問すんな! 俺だってよく分かんねぇよ。女の子は大好きだけど、ヴァンも好きなの。どっちか一つを選べって言われても困る」
「それは……光栄です」
この反応は、もしかして快楽堕ちというやつか?
初めてなのに、エドゥアール様は感度が抜群によかったからな。でも、カラダから籠絡していいものだろうか。俺はエドゥアール様の心も欲しい。
俺が固まっていると、エドゥアール様はベッドからするりと下りて着替えを始めた。流れるような所作で寝間着をさっと脱ぐ。室温が低いためか、エドゥアール様の珊瑚色の乳首がピンと尖っている。なんとも目に毒だ。
俺が視線を逸らすと、エドゥアール様はいたずらっ子のような微笑みを浮かべた。
「もしかして、俺のおっぱいが気になるのかな?」
「当たり前でしょう。あっちを向いてください」
「へえ。ヴァンって攻め込まれると弱いんだ?」
「気のせいでは? 俺は特に焦ってはいませんよ」
「ふーん、そう」
エドゥアール様は白いドレスシャツを羽織ると、俺の方にやって来た。
「ボタンはめて」
「はい」
俺はエドゥアール様の白い喉を見つめながら、ごくりと唾液を飲み込んだ。
この人ってやっぱり、綺麗な肌してるよな……。キメが細かいうえにみずみずしくて、手のひらに吸いついてくる。野菜嫌いなのに不思議だ。
「ヴァンったら。なーんか、顔赤くね?」
「別にふつうですよ。寝ぼけていらっしゃるのでは?」
ぷちぷちと丸いボタンを小さな穴にくぐらせていく。いつもならば間違わないのに、今日はボタンの位置がずれてしまった。やり直さないといけない。
「失礼致しました」
「ヴァン、もしかして照れてる?」
「あなたがケロッとしているから……。想定外ですよ」
「だって俺、お馬鹿さんだもーん。考えたってしょうがねぇよ。ヴァンとエッチなことして気持ちよかったのは事実だろ? 俺はおまえのことが嫌いじゃない」
「では、俺の子を産んでくれますか?」
「すぐそう言うんだから。子どもっていうのは作って終わりじゃないだろ。命を育てるのには責任が伴うって、パパが言ってたぞ」
エドゥアール様の言葉に俺はハッとなった。
俺は今まで、愛しい人を自分のものにすることしか考えていなかった。もしも本気で子どもをもうけるとなったら、周囲の理解と協力は絶対に必要である。
それに、エドゥアール様は公爵家の令息だ。騎士階級の俺がそのお相手に立候補していいのかという問題だってある。
「ん、どうした? 腹でも痛いのか」
「エドゥアール様。昨日は沢山いやらしいことをして、すみませんでした」
「おまえも男だからな。溜まってたんだろ」
「そうやって、あっさりと俺を許さないでください。図に乗ってまたエドゥアール様をいじめるかもしれませんよ?」
「俺さ、ヴァンに意地悪されると、かなり感じる……」
「えっ」
「自分でも分からないんだよ! 男でいたい俺と、ヴァンと一緒に気持ちよくなりたい俺がいるの!!」
「それは脈アリということですか」
「……可能性はゼロじゃないと思う。たぶんだけど」
「失礼致します!」
俺は部屋を出て、トイレの個室に駆け込んだ。
下腹部がビンビンと反応している。
エドゥアール様……。無垢な方だとは思っていたが、まさかあそこまで順応性が高いとは。
いざエドゥアール様が雌堕ちした時に、俺のコレを気に入っていただけるだろうか?
……もっと鍛錬せねば。心と体はもちろん、閨事のテクニックに関しても。
イチモツをこすりながら、頭の中でエドゥアール様の裸身を思い描く。
俺はあっけなく吐精した。
周囲からは渋いなどと言われるけれども、俺はまだ18歳の若造なのであった。
応援ありがとうございます!
1
お気に入りに追加
119
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる