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第1話 花嫁学校の入学試験

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『設問その1

 あなたのアルファが誕生日にプレゼントを贈ってきました。
 そのことに対する、あなたの反応を記述しなさい』

 テスト用紙に書かれた文章を読んで、僕はホッとした。
 なーんだ。
 こんな簡単な問題が、ブランシェール学院の入学試験なんだ。大陸共通語や歴史、そして算術に関する難しい問題を出されるのかと思っていた。
 試験会場に集まった他のみんなも、そう思ってるんじゃないかな。
 僕の名前はアズリール・セレスティ。
 公爵家の次男坊である。この春、16歳になった。そして先日初めてのヒートが訪れ、オメガであることが判明した。
 お父様から「ブランシェール学院に通え」と言われた時は猛烈に反発した。ブランシェール学院とは、王都にあるオメガ専用の花嫁学校である。全寮制だから、もしも受かったならば大好きなセレスティ領を離れないといけない。
 ブランシェール学院に集められるのは、16歳から18歳までのオメガだ。学校案内を読んだけれども、講義内容は「家政学」とだけ書かれていて、実際のところはよく分からない。
 貴族の家に生まれた僕に、拒否権はない。
 さんざん抵抗したけれども、僕は結局ブランシェール学院の入学試験を受けることになった。お兄様もオメガで、ブランシェール学院の卒業生である。先日結婚して、お婿さんを迎えた。
 幸せそうなお兄様夫婦を見て、花嫁学校も悪くはないかもと思った。
 さて、今は問題に集中しなければいけない。入学試験に落ちたら落ちたで、お父様からの叱責が待っている。なんとしてでも受からねば。
 僕は、設問その1への解答を記入した。

『プレゼントをもらった喜びを全身で表現して、「ありがとう! すごく嬉しいです」と言って、アルファに抱きつきます』
 
 これが正解でしょ!
 贈り物をしてくれたアルファの気持ちを考えたら、ちゃんとお礼を言って、笑顔を見せないとね。
 達成感を覚えた僕は、次の設問に取りかかった。

『設問その2

 あなたのアルファが風邪をひきました。
 その時、あなたはどのような対応を取るか、記述しなさい』

 この問題も簡単だなあ。

『寝室を訪ねて、お水とお粥のような滋養のある食べものを届けます。お粥が熱いようなら、冷ましたうえで食べさせてあげます。汗をかいているようだったら、拭いてさしあげます。そして、「治ったら一緒に遊びましょう」と言って、アルファを励まします』

 僕がされて嬉しいことを、僕のアルファにしてあげればいい。
 この試験、きっと合格だな。
 これならお父様に叱られなくて済む。僕は残りの問題も順調に解いていった。
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