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自己開発済みの平凡くんが美形司書さん司書さんに抱かれて、欲しかったものを手に入れるお話
後編 *
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ホテルの個室に入ると、眼鏡を外した蒼一郎さんが俺の唇にかぶりついてきた。
「んぅっ」
くぐもった声を漏らして苦しいと訴えてもなかなか解放してくれない。キスってこんなに激しいものなんだ? 知らなかった。
蒼一郎さんってもしかしてSなのかな? 俺はいじめるより、いじめられる方が好きだから相性いいかも。
俺たちはベッドに倒れ込んだ。
蒼一郎さんが俺のシャツを脱がしていく。
「あ、あのっ。シャワーは浴びさせて?」
「一緒に入ろう」
「だーめ! ネコには準備が必要なんですから」
俺はバスルームに逃げ込んだ。
丁寧に体を清めていく。後ろの始末も忘れない。シャワーが流れる音に、鼓動が重なる。
俺、タチ未経験の人を食おうとしてる。
そしてあわよくば、自分好みに染めようとしてる。
地味な俺のどこにこんな行動力があったのだろう。いや、地味だからこそか。いっつも人の恋愛を観察していて、自分だったらこうしたい、ああしたいと妄想を膨らませていた。
そう。俺はセックスの経験がないけれども、ものすごくエッチなのだ。
蒼一郎さんが多少不慣れでも問題はない。俺の乳首とアヌスは自己開発済みである。
俺がリードして蒼一郎さんを気持ちよくしてあげよう。
白いバスローブを着てバスルームから出ると、蒼一郎さんが濡れたまなざしを送ってきた。
誰かに求められるのは初めてだ。
俺の腹の奥底に熱が灯る。早くここを暴いてほしい。
「僕も入ってくるね」
「……うん」
そういうホテルなので、蒼一郎さんの裸身が磨りガラス越しに見える。着痩せするタイプなのかな? 角張った肩とか、筋肉がついた上腕とかとても男らしい。
俺、これからあの人に抱かれるんだ。
そう思うと、勃起してしまった。
なんとか興奮を収めようとしたその時、蒼一郎さんがベッドに戻ってきた。浅ましく膨らんだ下腹部をばっちり見られてしまう。
「あ、あの。これは……っ」
「圭太くん、可愛い」
蒼一郎さんは俺の腹に乗り上げると、「舐めてもいいよね?」と囁いた。
俺のシナリオでは、まず俺が先にフェラをして蒼一郎さんをトロ顔にする予定だったのだが、どうしよう。俺が無言のまま肩を震わせていると、蒼一郎さんに髪を撫でられた。
「圭太くんも初めてなんだ」
「……お、俺は自己開発とかめっちゃしてて。ドスケベだから大丈夫ですよ」
「でも、自分ではここ、しゃぶれないでしょ?」
「あっ! あ、ぁっ……!」
蒼一郎さんが俺の貧相な竿を舌でなぞり始めた。細くて短い俺のペニスは初めての刺激を受けて、ぴゅうぴゅうとカウパーを垂らした。蒼一郎さんが舌を尖らせて、俺の尿道口をぐりぐりっと押す。
やっぱりこの人、Sだ。
SMの愛好者にはインテリが多いっていうけど、蒼一郎さんもそうなのかな。蒼一郎さんは俺の両腕を高く上げさせると、手首をバスローブの帯で縛った。
「圭太くんは口元、手で隠しちゃうから」
「やっ、これ……恥ずかしいですっ。脇も丸見えだし……」
「羞恥心を感じるように仕向けてるんだよ」
「あぁんっ」
蒼一郎さんの唇が俺の乳首を挟んだ。
もう片方の突起は、指でこね回された。自己開発済みだから、ちょっとやそっとの愛撫では乱れないと思っていたのに俺の腰は蒼一郎さんの指の動きに合わせてはしたなく揺れた。
「圭太くんの肌、手触りがいいね」
「……蒼一郎さんだって」
「練り絹を撫でてるみたいだ」
「んっ、そこは……まだっ」
尻肉を揉まれ、俺は焦った。
蒼一郎さんが俺の太ももにキスマークをつける。じんと熱くなったその部分を見下ろせば、赤い花びらが止まったようなしるしが刻まれていた。
男を抱くのは初めてのはずなのに、蒼一郎さんが俺の陰嚢を揉みしだきながら会陰を執拗にさすってくる。手を縛られているので、俺の声を遮ってくれるものは何もない。室内に、発情期の猫のような俺の嬌声が響いた。
「蒼一郎さんっ……。そこ、もう……ゆるして……っ」
「泣き顔も可愛いね」
「んっ、うぅっ」
ちゅっちゅっとあやすようなキスをしたあと、蒼一郎さんは俺の首筋にもキスマークをつけた。痛みを上回る快感が俺の全身を駆け抜ける。
俺、やられっぱなしじゃね?
未経験のイケメンを自分の手でリードするなんて、平凡な俺にできるわけがなかったんだ。
蒼一郎さんのきれいな一重が、俺の痴態を見るたびにすうっと細まる。
「もしかして僕の童貞を食い散らかすつもりだった?」
「……あっ、や……っ! ちくび、きゅうってしないでぇっ」
「食われるのは圭太くんの方だよ」
「あ……!」
俺のアヌスを蒼一郎さんの赤い舌がちろんと舐めた。
皺の線を一本一本なぞるような丁寧な舌遣いに、俺は溶かされていった。
「だめぇっ! そんなとこ、やだぁっ」
「恥ずかしがり屋なのに、エッチなことは大好きなんだ。圭太くんのここ、くぱくぱしてるよ。ナカもとってもきれいなピンク色だね。ふふっ。うねうねしてる」
「やっ、ちが……っ。俺は……っ」
「何が違うの? 僕のちんぽが欲しいんでしょ」
蒼一郎さんがバスローブを脱ぎ去った。
体の中心に雄々しくそそり立ったモノを見て、俺はひくんと喉を震わせた。俺が買い揃えてきた玩具とは比べものにならないほど長大だ。しかも裏筋がビクビクと脈動している。
「舐めて」
「ひゃいっ」
命令されると俺の心はきゅうんとときめいた。手を縛られているので、顔を寄せて蒼一郎さんの太い竿にかぶりつく。先走りってこういう味がするんだ。汗よりもとろっとしてる。俺は潮の香りがするペニスに夢中でしゃぶりついた。
「顔、その位置で固定してて」
「んうっ、ん、ぐっ!」
蒼一郎さんが腰を前後に遣う。極太のペニスが俺の口内を行き来した。いわゆるイラマチオである。喉奥を突かれるたびにえずきそうになる。苦しい。唇のはしから唾液が垂れて、顔がぐちゃぐちゃになっている。でも俺は幸せの最中にいた。
俺は地味で平凡。無個性のタグなし。そう思っていた。
でも違う。
俺はエッチが大好きなドMのネコだったんだ。
蒼一郎さんがそんな俺を発見してくれた。
「いい子だね。頑張ったね」
激しいプレイのあとにねぎらいの言葉をかけられれば、俺は嬉しさのあまりとろけた笑顔を浮かべた。蒼一郎さんがよだれでべとべとになった俺の唇を吸う。キスが上手いのは女性と恋愛経験があるから? それとも、天性の才能なのかな?
「今夜だけじゃいやだ……」
息継ぎの時間を与えられた俺は、蒼一郎さんに抱きついた。蒼一郎さんが俺の後ろ頭を優しく撫でる。
「僕だって。今夜だけじゃ足りない」
「俺と付き合ってください」
「……僕たちはもう恋人だろう?」
「本当に? 絶対に? 嘘じゃないですよね?」
「ああ」
「信じてもいいんですか?」
蒼一郎さんが疑いの言葉ばかり口にする俺の唇を封じた。そのままベッドに押し倒される。俺はお腹の上に蒼一郎さんの重みを感じた。この人は幻覚じゃない。確かに存在していて、俺にたくさんのキスを浴びせてくれる。俺は蒼一郎さんを真似て上顎のざらついた部分を舐めた。ふっと蒼一郎さんの吐息が頬に吹きかかる。一箇所ばかり責めていても芸がない。俺は蒼一郎さんの湿った口腔をねろりと舐めた。
「圭太くん、もうそんなエッチなキスを覚えたんだ」
「ずっとイメトレしてましたから」
「それって誰をイメージしてたの? 推しの俳優?」
「……蒼一郎さんみたいな和風のイケメン」
「僕の顔が好きなんだ?」
「はい……」
「これは? 気に入ってくれた?」
俺は再び、蒼一郎さんの竿に口をつけた。
「そう。じゃあ、もっと近くに行かないとね」
視線で促されたので、俺はみずから足を開いた。膝と膝のあいだをできるだけ離す。蒼一郎さんは「体、柔らかいね」とご機嫌だった。指先にローションを絡めて、俺のアヌスに触れてくる。
すんなりと一本目の指が入った。
「随分と自習してたんだ」
「……はい」
「おもちゃも使ったの?」
「自分の指だけです。初めてがおもちゃとか寂しいから……。いっぱい持ってるけど」
「指は? 何本入れてたの」
俺が答えようとすると、キスで唇を塞がれた。
蒼一郎さんがぐちゅりと二本目の指を突き入れてきた。自分の指とは感じが違う。不規則な動きでナカをこすられれば、俺の口からは「あ」とも「お」ともつかない情けない声が漏れた。
「まだいけそうだね」
「……んっ、うっ!」
「いっぱい泣いて、目元腫れちゃったね。でも僕はまだ足りないから。ごめんね」
「あぁっ!」
三本目の指が入ってきた。
さすがに圧迫感を覚え、俺は喘ぐことしかできなかった。ぐちゅぐちゅという粘ついた水音が俺の耳に絡みつく。蒼一郎さんの指は長くて、でも一番奥には届かなくて、俺のナカにもどかしさが募ってきた。ねだるように唇を開けば、指が一気に引き抜かれた。
「待ちきれない?」
「……んっ」
「素直な圭太くんが大好きだよ」
蒼一郎さんは優しく微笑むと、腰のモノをずんと沈めてきた。
指とは比べ物にならない質量に満たされ、俺は肌が輝くような恍惚を覚えた。結合部で生まれた熱が全身をぬくめていく。互いの汗が肩を滑って、俺の腹に小さな水たまりを作った。
セックスってこんなに汗をかくものなのか。
俺の匂いが蒼一郎さんに丸わかりじゃないかと思うと、恥ずかしさのあまり内股になった。もじもじと太ももを蒼一郎さんのウエストにこすりつけていると、律動が足りないと訴えていると思われたらしく、ピストン運動が始まった。
前後に揺さぶられて、俺のナカがきゅんきゅんと収縮する。
根元まで引き抜かれたあとに最奥まで貫かれれば、俺の被虐心はこれ以上ないほど満たされて、唇に微笑みが浮かんだ。
両手を縛られた状態で、好きな人に肉の楔を打ち込まれている。
自分の現状を俯瞰してみるとそれはとても卑猥で、ますます興奮が加速した。蒼一郎さんの目が妖しく輝く。
「圭太くんはエッチが大好きなんだ」
「……ひゃいっ。ごめんらさい……っ」
「呂律回らなくなるほど気持ちいいの? 本当に可愛いね」
繋がった状態でぎゅうっと抱きしめられる。
俺が待ち望んでいたのはこれだ。好きな人のぬくもり。乱れた吐息。見つめられるだけで肌が焦げてしまいそうな視線。今この瞬間、それらは全部ぜんぶ俺のものなんだ。
「蒼一郎さぁんっ」
「名前呼ぶ時、締まるとか反則でしょ……?」
「来てっ! いっぱいちょうだいっ」
「ああ、もう。きみって子は……」
呆れながらも蒼一郎さんは俺に優しいキスをしてくれた。俺は夢中になって腰をくねらせた。いいところに当たった蒼一郎さんのペニスに俺のすぼまりがちゅぽんっと吸いつく。
もう恥ずかしいところはすべて見られている。今更隠すことなどない。俺は嬌声を上げながら蒼一郎さんのちんぽの形を覚え込んだ。
「は……っ、もう……限界っ」
蒼一郎さんが眉根を寄せる。
俺のナカは熱いものでじっとりと濡れた。ペニスを引き抜かれれば栓を失った後孔から、たらりと白濁が垂れてシーツを汚した。こんなに「お釣り」が出ちゃうものなんだ。
「よく頑張ったね」
蒼一郎さんが俺の手首の戒めを解いた。
俺は蒼一郎さんの残滓を指先に絡めると、口に含んだ。夏の蒸した青草に顔を埋めたような匂いがする。蒼一郎さんみたいに綺麗な人でも精液はこういう味なのかと感慨に耽っていると、ベッドに押し倒された。
「ふつう、舐める? きみって本当にエッチだね」
「蒼一郎さん、照れてます?」
「照れるよ、そりゃあ」
余裕の表情が崩れた蒼一郎さんはとても可愛らしくて、俺は首に抱きついた。
「いいカラダしてますよね、蒼一郎さんって」
「司書は重たい本を運ぶ仕事だからね。自然に筋肉がついたんだ」
「俺も鍛えようかな?」
「圭太くんのその華奢な感じが可愛いんだけどな」
蒼一郎さんが前髪をかき上げる。
額を出すとイケメンにますます磨きがかかるな。俺は思わず自分の二の腕をつねった。ちゃんと痛い。夢ではないようだ。
「また寂しそうな顔してる」
「地顔です」
「まあ、僕はきみのその表情が好きなんだけどね。全部あげたくなっちゃう」
それから蒼一郎さんと俺はミネラルウォーターを飲んだ。行為のあとの水がこんなにも美味しいものだとは知らなかった。俺が喉を鳴らしてペットボトルを傾けていると、「もう一回いけそう?」と聞かれた。
「はい……」
俺たちはバックで交わった。
二回目の結合はスムーズで、蒼一郎さんの耳を煩わせるような苦しげな声は出なかった。
俺は蒼一郎さんに支配される喜びを味わった。
事後、俺は蒼一郎さんの肩にもたれかかった。
「……俺のタグ、見つかりました」
「タグ?」
「イケメンとか陽キャとか、そういう記号です」
「圭太くんは何かな? エッチなネコちゃん?」
「……蒼一郎さん専用です」
「きみって子は……」
俺たちはベッドの上でじゃれ合いながら、キスを交わした。
(完)
「んぅっ」
くぐもった声を漏らして苦しいと訴えてもなかなか解放してくれない。キスってこんなに激しいものなんだ? 知らなかった。
蒼一郎さんってもしかしてSなのかな? 俺はいじめるより、いじめられる方が好きだから相性いいかも。
俺たちはベッドに倒れ込んだ。
蒼一郎さんが俺のシャツを脱がしていく。
「あ、あのっ。シャワーは浴びさせて?」
「一緒に入ろう」
「だーめ! ネコには準備が必要なんですから」
俺はバスルームに逃げ込んだ。
丁寧に体を清めていく。後ろの始末も忘れない。シャワーが流れる音に、鼓動が重なる。
俺、タチ未経験の人を食おうとしてる。
そしてあわよくば、自分好みに染めようとしてる。
地味な俺のどこにこんな行動力があったのだろう。いや、地味だからこそか。いっつも人の恋愛を観察していて、自分だったらこうしたい、ああしたいと妄想を膨らませていた。
そう。俺はセックスの経験がないけれども、ものすごくエッチなのだ。
蒼一郎さんが多少不慣れでも問題はない。俺の乳首とアヌスは自己開発済みである。
俺がリードして蒼一郎さんを気持ちよくしてあげよう。
白いバスローブを着てバスルームから出ると、蒼一郎さんが濡れたまなざしを送ってきた。
誰かに求められるのは初めてだ。
俺の腹の奥底に熱が灯る。早くここを暴いてほしい。
「僕も入ってくるね」
「……うん」
そういうホテルなので、蒼一郎さんの裸身が磨りガラス越しに見える。着痩せするタイプなのかな? 角張った肩とか、筋肉がついた上腕とかとても男らしい。
俺、これからあの人に抱かれるんだ。
そう思うと、勃起してしまった。
なんとか興奮を収めようとしたその時、蒼一郎さんがベッドに戻ってきた。浅ましく膨らんだ下腹部をばっちり見られてしまう。
「あ、あの。これは……っ」
「圭太くん、可愛い」
蒼一郎さんは俺の腹に乗り上げると、「舐めてもいいよね?」と囁いた。
俺のシナリオでは、まず俺が先にフェラをして蒼一郎さんをトロ顔にする予定だったのだが、どうしよう。俺が無言のまま肩を震わせていると、蒼一郎さんに髪を撫でられた。
「圭太くんも初めてなんだ」
「……お、俺は自己開発とかめっちゃしてて。ドスケベだから大丈夫ですよ」
「でも、自分ではここ、しゃぶれないでしょ?」
「あっ! あ、ぁっ……!」
蒼一郎さんが俺の貧相な竿を舌でなぞり始めた。細くて短い俺のペニスは初めての刺激を受けて、ぴゅうぴゅうとカウパーを垂らした。蒼一郎さんが舌を尖らせて、俺の尿道口をぐりぐりっと押す。
やっぱりこの人、Sだ。
SMの愛好者にはインテリが多いっていうけど、蒼一郎さんもそうなのかな。蒼一郎さんは俺の両腕を高く上げさせると、手首をバスローブの帯で縛った。
「圭太くんは口元、手で隠しちゃうから」
「やっ、これ……恥ずかしいですっ。脇も丸見えだし……」
「羞恥心を感じるように仕向けてるんだよ」
「あぁんっ」
蒼一郎さんの唇が俺の乳首を挟んだ。
もう片方の突起は、指でこね回された。自己開発済みだから、ちょっとやそっとの愛撫では乱れないと思っていたのに俺の腰は蒼一郎さんの指の動きに合わせてはしたなく揺れた。
「圭太くんの肌、手触りがいいね」
「……蒼一郎さんだって」
「練り絹を撫でてるみたいだ」
「んっ、そこは……まだっ」
尻肉を揉まれ、俺は焦った。
蒼一郎さんが俺の太ももにキスマークをつける。じんと熱くなったその部分を見下ろせば、赤い花びらが止まったようなしるしが刻まれていた。
男を抱くのは初めてのはずなのに、蒼一郎さんが俺の陰嚢を揉みしだきながら会陰を執拗にさすってくる。手を縛られているので、俺の声を遮ってくれるものは何もない。室内に、発情期の猫のような俺の嬌声が響いた。
「蒼一郎さんっ……。そこ、もう……ゆるして……っ」
「泣き顔も可愛いね」
「んっ、うぅっ」
ちゅっちゅっとあやすようなキスをしたあと、蒼一郎さんは俺の首筋にもキスマークをつけた。痛みを上回る快感が俺の全身を駆け抜ける。
俺、やられっぱなしじゃね?
未経験のイケメンを自分の手でリードするなんて、平凡な俺にできるわけがなかったんだ。
蒼一郎さんのきれいな一重が、俺の痴態を見るたびにすうっと細まる。
「もしかして僕の童貞を食い散らかすつもりだった?」
「……あっ、や……っ! ちくび、きゅうってしないでぇっ」
「食われるのは圭太くんの方だよ」
「あ……!」
俺のアヌスを蒼一郎さんの赤い舌がちろんと舐めた。
皺の線を一本一本なぞるような丁寧な舌遣いに、俺は溶かされていった。
「だめぇっ! そんなとこ、やだぁっ」
「恥ずかしがり屋なのに、エッチなことは大好きなんだ。圭太くんのここ、くぱくぱしてるよ。ナカもとってもきれいなピンク色だね。ふふっ。うねうねしてる」
「やっ、ちが……っ。俺は……っ」
「何が違うの? 僕のちんぽが欲しいんでしょ」
蒼一郎さんがバスローブを脱ぎ去った。
体の中心に雄々しくそそり立ったモノを見て、俺はひくんと喉を震わせた。俺が買い揃えてきた玩具とは比べものにならないほど長大だ。しかも裏筋がビクビクと脈動している。
「舐めて」
「ひゃいっ」
命令されると俺の心はきゅうんとときめいた。手を縛られているので、顔を寄せて蒼一郎さんの太い竿にかぶりつく。先走りってこういう味がするんだ。汗よりもとろっとしてる。俺は潮の香りがするペニスに夢中でしゃぶりついた。
「顔、その位置で固定してて」
「んうっ、ん、ぐっ!」
蒼一郎さんが腰を前後に遣う。極太のペニスが俺の口内を行き来した。いわゆるイラマチオである。喉奥を突かれるたびにえずきそうになる。苦しい。唇のはしから唾液が垂れて、顔がぐちゃぐちゃになっている。でも俺は幸せの最中にいた。
俺は地味で平凡。無個性のタグなし。そう思っていた。
でも違う。
俺はエッチが大好きなドMのネコだったんだ。
蒼一郎さんがそんな俺を発見してくれた。
「いい子だね。頑張ったね」
激しいプレイのあとにねぎらいの言葉をかけられれば、俺は嬉しさのあまりとろけた笑顔を浮かべた。蒼一郎さんがよだれでべとべとになった俺の唇を吸う。キスが上手いのは女性と恋愛経験があるから? それとも、天性の才能なのかな?
「今夜だけじゃいやだ……」
息継ぎの時間を与えられた俺は、蒼一郎さんに抱きついた。蒼一郎さんが俺の後ろ頭を優しく撫でる。
「僕だって。今夜だけじゃ足りない」
「俺と付き合ってください」
「……僕たちはもう恋人だろう?」
「本当に? 絶対に? 嘘じゃないですよね?」
「ああ」
「信じてもいいんですか?」
蒼一郎さんが疑いの言葉ばかり口にする俺の唇を封じた。そのままベッドに押し倒される。俺はお腹の上に蒼一郎さんの重みを感じた。この人は幻覚じゃない。確かに存在していて、俺にたくさんのキスを浴びせてくれる。俺は蒼一郎さんを真似て上顎のざらついた部分を舐めた。ふっと蒼一郎さんの吐息が頬に吹きかかる。一箇所ばかり責めていても芸がない。俺は蒼一郎さんの湿った口腔をねろりと舐めた。
「圭太くん、もうそんなエッチなキスを覚えたんだ」
「ずっとイメトレしてましたから」
「それって誰をイメージしてたの? 推しの俳優?」
「……蒼一郎さんみたいな和風のイケメン」
「僕の顔が好きなんだ?」
「はい……」
「これは? 気に入ってくれた?」
俺は再び、蒼一郎さんの竿に口をつけた。
「そう。じゃあ、もっと近くに行かないとね」
視線で促されたので、俺はみずから足を開いた。膝と膝のあいだをできるだけ離す。蒼一郎さんは「体、柔らかいね」とご機嫌だった。指先にローションを絡めて、俺のアヌスに触れてくる。
すんなりと一本目の指が入った。
「随分と自習してたんだ」
「……はい」
「おもちゃも使ったの?」
「自分の指だけです。初めてがおもちゃとか寂しいから……。いっぱい持ってるけど」
「指は? 何本入れてたの」
俺が答えようとすると、キスで唇を塞がれた。
蒼一郎さんがぐちゅりと二本目の指を突き入れてきた。自分の指とは感じが違う。不規則な動きでナカをこすられれば、俺の口からは「あ」とも「お」ともつかない情けない声が漏れた。
「まだいけそうだね」
「……んっ、うっ!」
「いっぱい泣いて、目元腫れちゃったね。でも僕はまだ足りないから。ごめんね」
「あぁっ!」
三本目の指が入ってきた。
さすがに圧迫感を覚え、俺は喘ぐことしかできなかった。ぐちゅぐちゅという粘ついた水音が俺の耳に絡みつく。蒼一郎さんの指は長くて、でも一番奥には届かなくて、俺のナカにもどかしさが募ってきた。ねだるように唇を開けば、指が一気に引き抜かれた。
「待ちきれない?」
「……んっ」
「素直な圭太くんが大好きだよ」
蒼一郎さんは優しく微笑むと、腰のモノをずんと沈めてきた。
指とは比べ物にならない質量に満たされ、俺は肌が輝くような恍惚を覚えた。結合部で生まれた熱が全身をぬくめていく。互いの汗が肩を滑って、俺の腹に小さな水たまりを作った。
セックスってこんなに汗をかくものなのか。
俺の匂いが蒼一郎さんに丸わかりじゃないかと思うと、恥ずかしさのあまり内股になった。もじもじと太ももを蒼一郎さんのウエストにこすりつけていると、律動が足りないと訴えていると思われたらしく、ピストン運動が始まった。
前後に揺さぶられて、俺のナカがきゅんきゅんと収縮する。
根元まで引き抜かれたあとに最奥まで貫かれれば、俺の被虐心はこれ以上ないほど満たされて、唇に微笑みが浮かんだ。
両手を縛られた状態で、好きな人に肉の楔を打ち込まれている。
自分の現状を俯瞰してみるとそれはとても卑猥で、ますます興奮が加速した。蒼一郎さんの目が妖しく輝く。
「圭太くんはエッチが大好きなんだ」
「……ひゃいっ。ごめんらさい……っ」
「呂律回らなくなるほど気持ちいいの? 本当に可愛いね」
繋がった状態でぎゅうっと抱きしめられる。
俺が待ち望んでいたのはこれだ。好きな人のぬくもり。乱れた吐息。見つめられるだけで肌が焦げてしまいそうな視線。今この瞬間、それらは全部ぜんぶ俺のものなんだ。
「蒼一郎さぁんっ」
「名前呼ぶ時、締まるとか反則でしょ……?」
「来てっ! いっぱいちょうだいっ」
「ああ、もう。きみって子は……」
呆れながらも蒼一郎さんは俺に優しいキスをしてくれた。俺は夢中になって腰をくねらせた。いいところに当たった蒼一郎さんのペニスに俺のすぼまりがちゅぽんっと吸いつく。
もう恥ずかしいところはすべて見られている。今更隠すことなどない。俺は嬌声を上げながら蒼一郎さんのちんぽの形を覚え込んだ。
「は……っ、もう……限界っ」
蒼一郎さんが眉根を寄せる。
俺のナカは熱いものでじっとりと濡れた。ペニスを引き抜かれれば栓を失った後孔から、たらりと白濁が垂れてシーツを汚した。こんなに「お釣り」が出ちゃうものなんだ。
「よく頑張ったね」
蒼一郎さんが俺の手首の戒めを解いた。
俺は蒼一郎さんの残滓を指先に絡めると、口に含んだ。夏の蒸した青草に顔を埋めたような匂いがする。蒼一郎さんみたいに綺麗な人でも精液はこういう味なのかと感慨に耽っていると、ベッドに押し倒された。
「ふつう、舐める? きみって本当にエッチだね」
「蒼一郎さん、照れてます?」
「照れるよ、そりゃあ」
余裕の表情が崩れた蒼一郎さんはとても可愛らしくて、俺は首に抱きついた。
「いいカラダしてますよね、蒼一郎さんって」
「司書は重たい本を運ぶ仕事だからね。自然に筋肉がついたんだ」
「俺も鍛えようかな?」
「圭太くんのその華奢な感じが可愛いんだけどな」
蒼一郎さんが前髪をかき上げる。
額を出すとイケメンにますます磨きがかかるな。俺は思わず自分の二の腕をつねった。ちゃんと痛い。夢ではないようだ。
「また寂しそうな顔してる」
「地顔です」
「まあ、僕はきみのその表情が好きなんだけどね。全部あげたくなっちゃう」
それから蒼一郎さんと俺はミネラルウォーターを飲んだ。行為のあとの水がこんなにも美味しいものだとは知らなかった。俺が喉を鳴らしてペットボトルを傾けていると、「もう一回いけそう?」と聞かれた。
「はい……」
俺たちはバックで交わった。
二回目の結合はスムーズで、蒼一郎さんの耳を煩わせるような苦しげな声は出なかった。
俺は蒼一郎さんに支配される喜びを味わった。
事後、俺は蒼一郎さんの肩にもたれかかった。
「……俺のタグ、見つかりました」
「タグ?」
「イケメンとか陽キャとか、そういう記号です」
「圭太くんは何かな? エッチなネコちゃん?」
「……蒼一郎さん専用です」
「きみって子は……」
俺たちはベッドの上でじゃれ合いながら、キスを交わした。
(完)
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