2 / 7
駐車場
しおりを挟む僕の家の近くにさ、ケヤキ薬局ってあるじゃない。
そうそう、うちの近所は薬局が六店舗もあるんだけど、そのうちの六店舗目。
一番新しく出来たところね。
そこの駐車場がやたらと広くてさ、向かいの大通りに繋がってんの。
だからよくショートカットに通ることがあるんだけどさ、実際のところ他の道を通ってもさして距離は変わらないんだけど、それはまあ置いといて。
二週間ぐらい前の話になるかな。
その日は気持ちが良いぐらいの冬晴れで、日差しもあるからそんなに寒さを感じなかったんだ。
さて、今日も通りますかと。
まあこれは誇張で、実際のところ何の気無しにいつもと同じようにその駐車場に足を踏み入れたんだけど、いつもとは明らかに違っているのが僕にはすぐに分かった。
というより誰にだってすぐ分かるだろうけど、駐車場奥、隅の方に人が立っていたんだ。
じっとね。
最近は多様性の時代と言うけれど、それにしたってその人はちょっと異様だったと思う。
真っ白なワンピースを着たとても髪の長い女性。
怖い話なんかじゃ王道なんだろうけど実際に見るとやっぱそれなりの圧がある。
オバケかな?なんて年甲斐もなく思ったけど昼間だったしそれも無さそうとその時は思ったよ。
少し近づくとそいつの身長が結構高いことに気づいた。
180くらいはあるんじゃないかな僕より高そうだったから。
今さっきは女性って言ったけど、それは格好だけ見た僕の思い込みで、本当は男性だったんじゃないかとも思う。
ぴくりとも動かずにじーっと俯いて立っていたんだ。
いずれにせよすごく不気味だから、その日は足早に通り過ぎたんだけど、次の日どうしても気になっちゃって、またその駐車場を見に行ったんだ。
そしたらね、やっぱりあいつがまた同じ場所に立ってるんだよ。
僕もやめときゃ良いのに変な好奇心が悪さをして、でも臆病だから少し遠くから離れて、そいつをしばらく見ていたんだ。
そしたら薬局の客が店から出てきてそいつの横を普通に通り過ぎたんだ、何も気にしていない、というよりはそいつが見えていないような振る舞いだった。
もうしばらく待った、今度は親子が出てきた、まだ小さい女の子を連れていたし当然怖がるなり何らかの反応があるはずだと思った。
驚くほどに無反応だった。
ああこれは本物だと、僕だけに見えているんだなと思って急いでその場を離れたんだ。
それからもうその場所は通ってないね。
本当に怖かったから。
そういえば薬局が出来る前、そこに元々何があったか全く思い出せないんだよね。
周りに聞いてもみんな覚えてないってさ。
僕どうにも気になっちゃって、マップアプリの機能でストリートビューっていうのがあるじゃない。
ほら、360度視点で実際の道を見ることが出来るやつ。
それでちょっと過去の記録を遡ってね、薬局ができる前は何があったのか突き止めようと思ったんだけど、それでもやっぱりダメだった。
記録はあったよ、しっかりと。
でもある日より前の記録は全部薬局の部分に真っ黒なモザイク?みたいなものが覆い被さって写らなくなってたんだ。
バグとかそんなのではないと思う。
だって同じ場所にいたんだよ。
そう、隠されていなかったら元々薬局の駐車場があるであろう場所。
あいつだけがどれも鮮明に写っていたんだもの。
0
お気に入りに追加
1
あなたにおすすめの小説
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
【Vtuberさん向け】1人用フリー台本置き場《ネタ系/5分以内》
小熊井つん
大衆娯楽
Vtuberさん向けフリー台本置き場です
◆使用報告等不要ですのでどなたでもご自由にどうぞ
◆コメントで利用報告していただけた場合は聞きに行きます!
◆クレジット表記は任意です
※クレジット表記しない場合はフリー台本であることを明記してください
【ご利用にあたっての注意事項】
⭕️OK
・収益化済みのチャンネルまたは配信での使用
※ファンボックスや有料会員限定配信等『金銭の支払いをしないと視聴できないコンテンツ』での使用は不可
✖️禁止事項
・二次配布
・自作発言
・大幅なセリフ改変
・こちらの台本を使用したボイスデータの販売
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
【短編】怖い話のけいじばん【体験談】
松本うみ(意味怖ちゃん)
ホラー
1分で読める、様々な怖い体験談が書き込まれていく掲示板です。全て1話で完結するように書き込むので、どこから読み始めても大丈夫。
スキマ時間にも読める、シンプルなプチホラーとしてどうぞ。


ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる