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駐車場

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僕の家の近くにさ、ケヤキ薬局ってあるじゃない。

そうそう、うちの近所は薬局が六店舗もあるんだけど、そのうちの六店舗目。

一番新しく出来たところね。

そこの駐車場がやたらと広くてさ、向かいの大通りに繋がってんの。

だからよくショートカットに通ることがあるんだけどさ、実際のところ他の道を通ってもさして距離は変わらないんだけど、それはまあ置いといて。

二週間ぐらい前の話になるかな。

その日は気持ちが良いぐらいの冬晴れで、日差しもあるからそんなに寒さを感じなかったんだ。

さて、今日も通りますかと。

まあこれは誇張で、実際のところ何の気無しにいつもと同じようにその駐車場に足を踏み入れたんだけど、いつもとは明らかに違っているのが僕にはすぐに分かった。

というより誰にだってすぐ分かるだろうけど、駐車場奥、隅の方に人が立っていたんだ。

じっとね。

最近は多様性の時代と言うけれど、それにしたってその人はちょっと異様だったと思う。

真っ白なワンピースを着たとても髪の長い女性。

怖い話なんかじゃ王道なんだろうけど実際に見るとやっぱそれなりの圧がある。

オバケかな?なんて年甲斐もなく思ったけど昼間だったしそれも無さそうとその時は思ったよ。

少し近づくとそいつの身長が結構高いことに気づいた。

180くらいはあるんじゃないかな僕より高そうだったから。

今さっきは女性って言ったけど、それは格好だけ見た僕の思い込みで、本当は男性だったんじゃないかとも思う。

ぴくりとも動かずにじーっと俯いて立っていたんだ。

いずれにせよすごく不気味だから、その日は足早に通り過ぎたんだけど、次の日どうしても気になっちゃって、またその駐車場を見に行ったんだ。

そしたらね、やっぱりあいつがまた同じ場所に立ってるんだよ。

僕もやめときゃ良いのに変な好奇心が悪さをして、でも臆病だから少し遠くから離れて、そいつをしばらく見ていたんだ。

そしたら薬局の客が店から出てきてそいつの横を普通に通り過ぎたんだ、何も気にしていない、というよりはそいつが見えていないような振る舞いだった。

もうしばらく待った、今度は親子が出てきた、まだ小さい女の子を連れていたし当然怖がるなり何らかの反応があるはずだと思った。

驚くほどに無反応だった。

ああこれは本物だと、僕だけに見えているんだなと思って急いでその場を離れたんだ。

それからもうその場所は通ってないね。

本当に怖かったから。

そういえば薬局が出来る前、そこに元々何があったか全く思い出せないんだよね。

周りに聞いてもみんな覚えてないってさ。

僕どうにも気になっちゃって、マップアプリの機能でストリートビューっていうのがあるじゃない。

ほら、360度視点で実際の道を見ることが出来るやつ。

それでちょっと過去の記録を遡ってね、薬局ができる前は何があったのか突き止めようと思ったんだけど、それでもやっぱりダメだった。

記録はあったよ、しっかりと。

でもある日より前の記録は全部薬局の部分に真っ黒なモザイク?みたいなものが覆い被さって写らなくなってたんだ。

バグとかそんなのではないと思う。

だって同じ場所にいたんだよ。

そう、隠されていなかったら元々薬局の駐車場があるであろう場所。

あいつだけがどれも鮮明に写っていたんだもの。
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