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東京公演編
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しおりを挟む「お疲れ」
水分補給しているところへ声をかけてきたのは、ケイだ。劇中は敵であり、最大の理解者でもある親友役を演じる彼も、初演に引き続きの参加だった。
キャスト発表を知って、トージがもっとも安堵したのもこれだ。
初演のとき、二人はキャラクターの関係性について研究し、一度大喧嘩までして作り上げた。おかげで二人の役は作品において一、二を争う人気を獲得し、舞台の成功にひと役かった。
だから再演への出演が決まると、トージは真っ先に、このいわば相手役のキャストが気になったのも当然であった。
ケイ――平山啓。
そのケイが、小休止する自分を追いかけてくる気配があったので、トージはさほど驚かない。
でもどことなく気まずく感じている。
それはケイの与り知らぬことであって、トージの自分勝手な感情でしかないのだが、それでもまだケイと仕事以外の話をしたくなかった。
ケイが悪いわけじゃない。
そんなことはちゃんとわかっている。
あのとき、ケイの言葉に曖昧な答えをしか返せなかった自分が情けなくて、それがいまだ胸にくすぶっている所為だった。
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