49 / 63
神戸公演編
-49-
しおりを挟む
信じられない面持ちでトージはケイを凝視した。
形の良いアーモンド・アイが真ん丸になるまで見開かれた。
好きと言われたからには、断罪がなされたことを示すのか、罪が償われたことの証明なのか。
いやいや。
あんまりにも腹が立ったから、逆に一度持ち上げたあと、一気に突き落とす作戦かもしれない。
だって変じゃないか。
今の流れのどこに、ケイに「好き」を言わせるポイントがあったっていうのだ。
確かにケイはときどき突拍子もないことをしてくれるけど、トージにとって意味不明なことは(結果としてだが)してこなかった。
――いや、違う。
ケイはトージが好きだってさっきも言った。
それをもう一度言ったって……おかしくは――ない?
好きとはいったいどういう意味なのか、たまらず尋ねようとトージが口を開きかけたところへ、ケイの人差し指がそっとそれを封じた。
息を呑み込むトージに、指の持ち主は微かに頷く。
静かに。
目でそう言いながら、ケイはトージの唇のラインをゆっくりとなぞった。
少し痒い感じに、トージは無意識のうちに唇にひと筋の隙間を作った。
「トージ……」
指の動きは繊細で、愛しさに満ちている。
トージはケイの目を見る。
その中に存在する自分の影を見出し、身震いした。
薄衣のような恍惚さの奥には、しっかりとした意志の光がこちらを貫いた。
光は真っ直ぐトージの目を通りぬけ、心臓へと突き刺さる。
その瞬間、ヨーヨーが破裂して弾けるように、感情の奔流がただひとつの欲望と化してトージの全身に――細胞のひとつに至るまで飛び散った。
…恋人の欲しているものがわからないでは恋人失格だ。
話が宙に浮いてしまってもかまわない。
トージは躊躇うことなく行動に出た。
最前まで瀕死だった獣が息を吹き返し、獲物に飛び掛かる。
恋人の肩をベッドに縫いつけ、失われた血肉を補うかのように、自分を待ち望んで差し出してくれた唇にむさぼりついた。
形の良いアーモンド・アイが真ん丸になるまで見開かれた。
好きと言われたからには、断罪がなされたことを示すのか、罪が償われたことの証明なのか。
いやいや。
あんまりにも腹が立ったから、逆に一度持ち上げたあと、一気に突き落とす作戦かもしれない。
だって変じゃないか。
今の流れのどこに、ケイに「好き」を言わせるポイントがあったっていうのだ。
確かにケイはときどき突拍子もないことをしてくれるけど、トージにとって意味不明なことは(結果としてだが)してこなかった。
――いや、違う。
ケイはトージが好きだってさっきも言った。
それをもう一度言ったって……おかしくは――ない?
好きとはいったいどういう意味なのか、たまらず尋ねようとトージが口を開きかけたところへ、ケイの人差し指がそっとそれを封じた。
息を呑み込むトージに、指の持ち主は微かに頷く。
静かに。
目でそう言いながら、ケイはトージの唇のラインをゆっくりとなぞった。
少し痒い感じに、トージは無意識のうちに唇にひと筋の隙間を作った。
「トージ……」
指の動きは繊細で、愛しさに満ちている。
トージはケイの目を見る。
その中に存在する自分の影を見出し、身震いした。
薄衣のような恍惚さの奥には、しっかりとした意志の光がこちらを貫いた。
光は真っ直ぐトージの目を通りぬけ、心臓へと突き刺さる。
その瞬間、ヨーヨーが破裂して弾けるように、感情の奔流がただひとつの欲望と化してトージの全身に――細胞のひとつに至るまで飛び散った。
…恋人の欲しているものがわからないでは恋人失格だ。
話が宙に浮いてしまってもかまわない。
トージは躊躇うことなく行動に出た。
最前まで瀕死だった獣が息を吹き返し、獲物に飛び掛かる。
恋人の肩をベッドに縫いつけ、失われた血肉を補うかのように、自分を待ち望んで差し出してくれた唇にむさぼりついた。
0
お気に入りに追加
13
あなたにおすすめの小説
王道学園の冷徹生徒会長、裏の顔がバレて総受けルート突入しちゃいました!え?逃げ場無しですか?
名無しのナナ氏
BL
王道学園に入学して1ヶ月でトップに君臨した冷徹生徒会長、有栖川 誠(ありすがわ まこと)。常に冷静で無表情、そして無言の誠を生徒達からは尊敬の眼差しで見られていた。
そんな彼のもう1つの姿は… どの企業にも属さないにも関わらず、VTuber界で人気を博した個人VTuber〈〈 アイリス 〉〉!? 本性は寂しがり屋の泣き虫。色々あって周りから誤解されまくってしまった結果アイリスとして素を出していた。そんなある日、生徒会の仕事を1人で黙々とやっている内に疲れてしまい__________
※
・非王道気味
・固定カプ予定は無い
・悲しい過去🐜
・不定期
見ぃつけた。
茉莉花 香乃
BL
小学生の時、意地悪されて転校した。高校一年生の途中までは穏やかな生活だったのに、全寮制の学校に転入しなければならなくなった。そこで、出会ったのは…
他サイトにも公開しています
【完結】義兄に十年片想いしているけれど、もう諦めます
夏ノ宮萄玄
BL
オレには、親の再婚によってできた義兄がいる。彼に対しオレが長年抱き続けてきた想いとは。
――どうしてオレは、この不毛な恋心を捨て去ることができないのだろう。
懊悩する義弟の桧理(かいり)に訪れた終わり。
義兄×義弟。美形で穏やかな社会人義兄と、つい先日まで高校生だった少しマイナス思考の義弟の話。短編小説です。
鬼上司と秘密の同居
なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳
幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ…
そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた…
いったい?…どうして?…こうなった?
「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」
スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか…
性描写には※を付けております。
幸せのカタチ
杏西モジコ
BL
幼馴染の須藤祥太に想いを寄せていた唐木幸介。ある日、祥太に呼び出されると結婚の報告をされ、その長年の想いは告げる前に玉砕する。ショックのあまり、その足でやけ酒に溺れた幸介が翌朝目覚めると、そこは見知らぬ青年、福島律也の自宅だった……。
拗れた片想いになかなか決着をつけられないサラリーマンが、新しい幸せに向かうお話。
イケメンモデルと新人マネージャーが結ばれるまでの話
タタミ
BL
新坂真澄…27歳。トップモデル。端正な顔立ちと抜群のスタイルでブレイク中。瀬戸のことが好きだが、隠している。
瀬戸幸人…24歳。マネージャー。最近新坂の担当になった社会人2年目。新坂に仲良くしてもらって懐いているが、好意には気付いていない。
笹川尚也…27歳。チーフマネージャー。新坂とは学生時代からの友人関係。新坂のことは大抵なんでも分かる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる