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完璧再臨
《第60話》完璧再臨 その1
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8月10日。
とてもうるさい蝉の声で、私は目を覚ました。カーテンの隙間から鋭く日光が差し込み、いかにも夏って感じだ。
「いやぁー派手にやったねぇ矢上原ちゃん?」
腹に大穴開けられた私を回収し、家まで連れ帰ってくれたのは私の最高の契約者。矢上原千聖ちゃん
「いいんですよ。契約内容ですし、貴女は私の大切な人です」
彼女はニコリと笑い、私の腹に巻かれた包帯をしゅるしゅると取った。
「もう大丈夫。完璧に塞がってますよ」
「ありがとう。やはり君は完璧だ」
私がそう言うと、「当然です。何か食べるもの持ってきますね」と言って部屋から出ていった。
私は机に置いてある水の入ったコップを手に取り、グイッと飲み干した。
「やはり、」
私の魂はこの西条茜という身体にようやく馴染んできていたところだったのに・・・なのに・・・
「水が・・・不味い・・・」
矢上原ちゃん襲撃から2時間後。俺はベッドの上で目を覚ました。
「・・・くっ結構痛い」
俺は何かが刺さった首をさすった。もう流石に傷は治っていたが、まだ痛む。
「そりゃそうだ。それは神が創り出した葉を加工して作った暗器だからな」
「・・・その声は、ボスか?」
俺は身体をゆっくりと起こし、声の主の方を見ると、「あ、店長やっと起きた!心配したんだぞ!」という声が聞こえ、その瞬間ドスッ!と俺の腹に何かが飛び込んできた。
「ぐへぇっ!って・・・なんだ、一ちゃんか・・・それ、心配してくれて嬉しいけれども、怪我人にする行為ではないよ・・・」
俺は合法ケモ耳ロリをひょっと持ち上げ、床に下ろした。
「せっかく人が心配してたのに・・・」
と、ぶつくさ言いながら、ベットの下に這いつくばってなにか探し始めた。おおよそ俺に飛びついた時に何かを落としたのだろう。
「なぁ、一ちゃん。さっきボスの声が聞こえた気がするんだが・・・」
「あったぁ!!!!ってぇ!!!」
「ゴン!!!」と、ベットの下から音が聞こえ、俺の体に若干の衝撃が走る。ベットの下で頭を打った感じかな・・・痛そ。
「いてちぃ・・・はい、これ」
頭の打ったところをさすさすしながら、一ちゃんが俺に手渡してきたのは、このスマートなご時世には珍しい、パカッと開く型の携帯電話だった。
「もしもし?」
ちょっと懐かしいなと思いながら、その携帯電話を耳に当てる。
「あー店長。元気してた?」
その声の主は、ボス、西条鷹影ではなく、可愛いらしいぼんやりとした感じの女の子の声であった。
「って、三来か、そっちこそ元気?」
一 三来、読刀 未来の所持者で一ちゃんの妹。そして、彼女も合法ケモ耳ロリ。
「ボクは元気してるよ~最近は刀も使ってないしね」
彼女は言ってしまえば一ちゃん第3号であり、一ちゃん基、《対生物用殺戮生体兵器1型》に比べ、全体的な身体能力や知能が高く、まるでロボットのように襲いかかってきていたようだ。それが《対生物用殺戮生体兵器3型》である彼女だ。
ちなみに彼女は昔から唯野に恋心を抱いており、付き合ってるのか結婚してるのかよくは分からないが、いい雰囲気ではあることは間違いない。出会った時は若い頃の唯野は知らないが、今のアイツのどこが良いのだろうか・・・
でも、唯野の事を聞くといつもの無表情がちょっとてろっと緩んだり、ちょっとからかったら顔を赤らめてデレデレするところは凄く可愛いと思う。
そういえば、彼女に名前を付けたのは唯野なんだっけ・・・。
もはや彼女じゃなくて娘じゃん
「いやまぁ、すごい久しぶりだから色々聞きたいことはあるけども、ちょっとこっちには時間が無いや」
「分かってるよ。ボクやボスが援軍に行ってもいいけど、そういう問題でもないんでしょ?」
「そうだ。すまないが、ボスに電話代わってくれない?」
「ん、分かった」
そう言うと、電話越しにボス~と呼ぶ声が聞こえた。
「あれ?一ちゃん。まやくんは?」
さっきまで、いや、倒れる前までバトルしていた俺の友達の姿が見えない。もしかして、拗ねているのだろうか・・・まぁ、無理はない。あの子は成長したけども、唐突に帰ってきた俺はあくまであの子の先輩を殺そうとしたわけで・・・後で会ったら謝るべきなのだろうか・・・
「あーまいまいは・・・」
一ちゃんがそう言いかけたその時、
「すまん。ちょっとトイレ言ってた」
と、電話から聞きなれた渋く、ぺにょっとした声が聞こえた。
とてもうるさい蝉の声で、私は目を覚ました。カーテンの隙間から鋭く日光が差し込み、いかにも夏って感じだ。
「いやぁー派手にやったねぇ矢上原ちゃん?」
腹に大穴開けられた私を回収し、家まで連れ帰ってくれたのは私の最高の契約者。矢上原千聖ちゃん
「いいんですよ。契約内容ですし、貴女は私の大切な人です」
彼女はニコリと笑い、私の腹に巻かれた包帯をしゅるしゅると取った。
「もう大丈夫。完璧に塞がってますよ」
「ありがとう。やはり君は完璧だ」
私がそう言うと、「当然です。何か食べるもの持ってきますね」と言って部屋から出ていった。
私は机に置いてある水の入ったコップを手に取り、グイッと飲み干した。
「やはり、」
私の魂はこの西条茜という身体にようやく馴染んできていたところだったのに・・・なのに・・・
「水が・・・不味い・・・」
矢上原ちゃん襲撃から2時間後。俺はベッドの上で目を覚ました。
「・・・くっ結構痛い」
俺は何かが刺さった首をさすった。もう流石に傷は治っていたが、まだ痛む。
「そりゃそうだ。それは神が創り出した葉を加工して作った暗器だからな」
「・・・その声は、ボスか?」
俺は身体をゆっくりと起こし、声の主の方を見ると、「あ、店長やっと起きた!心配したんだぞ!」という声が聞こえ、その瞬間ドスッ!と俺の腹に何かが飛び込んできた。
「ぐへぇっ!って・・・なんだ、一ちゃんか・・・それ、心配してくれて嬉しいけれども、怪我人にする行為ではないよ・・・」
俺は合法ケモ耳ロリをひょっと持ち上げ、床に下ろした。
「せっかく人が心配してたのに・・・」
と、ぶつくさ言いながら、ベットの下に這いつくばってなにか探し始めた。おおよそ俺に飛びついた時に何かを落としたのだろう。
「なぁ、一ちゃん。さっきボスの声が聞こえた気がするんだが・・・」
「あったぁ!!!!ってぇ!!!」
「ゴン!!!」と、ベットの下から音が聞こえ、俺の体に若干の衝撃が走る。ベットの下で頭を打った感じかな・・・痛そ。
「いてちぃ・・・はい、これ」
頭の打ったところをさすさすしながら、一ちゃんが俺に手渡してきたのは、このスマートなご時世には珍しい、パカッと開く型の携帯電話だった。
「もしもし?」
ちょっと懐かしいなと思いながら、その携帯電話を耳に当てる。
「あー店長。元気してた?」
その声の主は、ボス、西条鷹影ではなく、可愛いらしいぼんやりとした感じの女の子の声であった。
「って、三来か、そっちこそ元気?」
一 三来、読刀 未来の所持者で一ちゃんの妹。そして、彼女も合法ケモ耳ロリ。
「ボクは元気してるよ~最近は刀も使ってないしね」
彼女は言ってしまえば一ちゃん第3号であり、一ちゃん基、《対生物用殺戮生体兵器1型》に比べ、全体的な身体能力や知能が高く、まるでロボットのように襲いかかってきていたようだ。それが《対生物用殺戮生体兵器3型》である彼女だ。
ちなみに彼女は昔から唯野に恋心を抱いており、付き合ってるのか結婚してるのかよくは分からないが、いい雰囲気ではあることは間違いない。出会った時は若い頃の唯野は知らないが、今のアイツのどこが良いのだろうか・・・
でも、唯野の事を聞くといつもの無表情がちょっとてろっと緩んだり、ちょっとからかったら顔を赤らめてデレデレするところは凄く可愛いと思う。
そういえば、彼女に名前を付けたのは唯野なんだっけ・・・。
もはや彼女じゃなくて娘じゃん
「いやまぁ、すごい久しぶりだから色々聞きたいことはあるけども、ちょっとこっちには時間が無いや」
「分かってるよ。ボクやボスが援軍に行ってもいいけど、そういう問題でもないんでしょ?」
「そうだ。すまないが、ボスに電話代わってくれない?」
「ん、分かった」
そう言うと、電話越しにボス~と呼ぶ声が聞こえた。
「あれ?一ちゃん。まやくんは?」
さっきまで、いや、倒れる前までバトルしていた俺の友達の姿が見えない。もしかして、拗ねているのだろうか・・・まぁ、無理はない。あの子は成長したけども、唐突に帰ってきた俺はあくまであの子の先輩を殺そうとしたわけで・・・後で会ったら謝るべきなのだろうか・・・
「あーまいまいは・・・」
一ちゃんがそう言いかけたその時、
「すまん。ちょっとトイレ言ってた」
と、電話から聞きなれた渋く、ぺにょっとした声が聞こえた。
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