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学園編 2年目

男爵家男孫と魔術教員 ×

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夏季休暇も残り数日となり、ロキは渓流に遊びに来ていた。課外授業で来た場所ではなく、もう少し学園に近い場所。当たり前だが狩場認定されていない場所だ。

流れる穏やかな川が陽射しをキラキラと反射する眩い午後。
木陰の下、立ったまま白シャツの袖を捲った。

「今日暑いな…」

「そう?」

足元から声がする。
木に凭れ、先程まで寝ていたジンが見上げてくる。

課外授業後、ギルドが慌ただしくしていると言う事でジンはギルドへ通い詰めだった。
今後の事で話があったので呼び出すと、少し疲れた顔をしていたので、無理やり休ませる為に連れて来た。

(我ながら下手な言い訳だったな…)

休めと言って休む奴ではない気がして、休むまで見ておきたいが自室に連れ込む訳にも行かず、「夏の納涼にフィルを連れて行きたい」と良く分からない事を言ってしまった。いや、方向性は悪くはなかった筈だ。
しかし、きょとんとした此奴の顔を思い出すと恥ずかしくなる。

『良いよ。…俺も付いてって良い?』

甘えるように尋ねられた時、真の目的を分かってて聞いていると気付いた。それがまた気恥ずかしかった。

そして今、川遊びをする2頭を見つつ木陰で休んでいる。

ジンは自分と似たようなサラリとした長袖の白シャツに、柔らかな生地の下衣、夏らしいサンダルとやらを履いている。
口角を薄く吊り上げた顔は涼しげで、暑さなどひとつも感じていないようだ。

「……羨ましいな、『体温維持』」

「『環境適応』の方かも」

「どちらにせよだ」

身体の周りにサァッと冷たい霧を発生させる。少しだけ涼しくなるが、暫くするとまた暑くなるのだろう。

「先生」

「ん?」

「フィルが呼んでる」

ジンは正面の渓流を指した。
一緒に居た筈のドラゴの姿は見えず、フィルが口を開けて仁王立つように此方を見ていた。まるで絵のように動かない。尻尾だけがブンブンと強く振られていた。
可愛らしい待ち方につい頬が緩む。

「…行ってくる」


数分後ーー


「びっしょびしょじゃん」

ジンは小さく笑った。

「……あの2頭は、いつもこんな感じか」

「概ねあんな感じ。先生と一緒に泳ぎたかったみたいだな」

フィルへ近付いたら、ぐるぐると回って喜んでくれた。
既にびしょびしょのフィルだ。水飛沫くらいは承知の上だったが、突然身体を大きく震わせて水を飛ばして来た。眼鏡まで濡らされるとは。
グラスコードがあるので外して胸にぶら下げると、目の前で川にダイブした。と、思ったらドラゴが水の中から飛び出て来て、また濡れた。
丸いツヤツヤした石を見せ付けられ、「投げろ!」と言われたので投げたら、川へまた飛び込んで行った。
結局2頭とも好き勝手に遊ぶので、川を何となく覗き込んだら、フィルが突然背後から飛びかかって来て、そのまま川へ落ちた。

溺れる事はなかったが、突っ伏すように倒れ込んでしまい、頭から滴る水に暫く呆然としていた。
気付くと傍らに立っていたジンが手を差し出した。太陽を背景に、爽やかに歯を覗かせる笑顔が妙に映えていた事は黙っておこう。
手を少々乱暴に掴むと、引き上げる力に任せた。

そして笑われた。

手を離し濡れた靴と靴下を脱ぎ、裸足で木陰へと戻る。
背後からドラゴの声と、激しい水音が聞こえるのでまたダイブし合っているのだろう。

高めに一つ括りにした髪を絞り、水を落とす。
風属性で乾かそうとした瞬間、

「待って、先生」

と、止められた。

「うん?どうし……た、って…お前、何を」

振り向こうとして、背後から腕を回され抱き込まれた。

「乳首透けてんの、えっろい。シャツの下なんも着てないんだ?」

言われて顔を下ろすと、確かに濡れて透けていた。
ジンの手が両胸を撫でた。しゃらりとグラスコードと眼鏡が揺れる。

「お前な…ここを何処だと」

「どこ?」

「外だ、やめろ」

布越しに爪の先で乳首を引っ掻かれ、耳の後ろを舐められた。ぞわりと肌が震える。
止めようとジンの両手を掴んだが、不意に以前の性行為を思い出してしまい、腰が疼いた。

あの日以降、誰ともまともに魔力循環を出来ないでいた。何度となく試したが満足の得られるものはなく、それ以降他人の肌に触れる事も、触れられる事もなかった。

久々の人肌と快感は想像以上に手放し難い。

「先生が誘ったのに?」

唇でくすぐられながら耳元で囁かれて、それだけで身体が熱くなるのは、そのせいだ。きっと。

「誘ってないだろ、その都合の良い解釈をやめ、…っ」

引っ掻かれ続けた乳首は、ぷくりと透けたシャツを押し上げ勃った。キュッと摘まれ、小さな刺激に息が詰まる。

「違った?てっきり、今日、約束果たしてくれるのかと思ってたんだけど」

「…っ…約束…は、ぁ、舐めるな…」

強めに摘まれ、指で弾かれ、先端を掻かれて。
耳の形をなぞる舌の動きにも腰が引いてしまう。臀部にグリと硬くなったジンの熱を感じる。
鼻をくすぐるフェロモンの甘い匂いが漂い始め、いよいよ危機感を覚えて肘で押す。

「やめろ!」

前回の失敗を踏まえ、軽く防御術で弾いた。パンッと音が鳴り、手が離れた瞬間、大きく前へと踏み出し、振り返ろうとしーー

ドンッ

耳の横と背中で音がした。離れた距離を一気に詰められ、目の前にジンの顔があり、片手は木に置かれ、囲まれたような心地になる。
木の幹に追い詰められ、そのまま縫い付けられるようにジンの身体で挟まれた。すりすりと太腿で股間を撫でられ腰がピクンと跳ねる。

「……ちょ、ちょっと待て」

これでは前回の二の舞だ。

「約束は守ってよ、先生なんだから」

約束。ジンの前でフェロモンを香らせたら抱かれる。
そんな馬鹿げた約束なのに、心臓が高鳴る。認めたくなくて目を逸らした。

「…あんな一方的な口約束」

「先生の癖に、そんな風に約束反故にしようとすんの?今だって、こんなに強く俺を誘ってんのに」

頬が熱くなった。止め処なくフェロモンが匂い立っている自覚はあったから。

「先生、こっち見て」

グイッと顎を捕まれ、口付けられそうな距離で見詰め合う。見えない胸元で指が這う感触がする。膨れて萎む気配のない、情けない乳首を引っ掻かれて唇を噛んだ。
ジンのフェロモンの匂いも強まり、つい深く吸い込んでしまう。近い唇が触れ合わない事がもどかしい。

自分からは絶対にねだれない、形の良い唇。

「聞いてる?…口ばっか見てるけど、キスしたい?」

「……ッ!」

バッと顔を逸らした。

「私は、約束するとは言ってない」

声が震えないように強めに告げた。卑怯だとは分かってる。

「先生って、ちゃんと先生する時って『私』って言うよね」

「…それが何だ」

「…俺の前で最初から最後まで『私』でいた事ないよなーって」

ジンの顔が離れ、下がる。逸らしていた視界の端で、胸へと降りる顔が見えた。

「……うまそう」

「やめ…っ、んッ!」

口がシャツごと乳首へ吸い付いた。

「…く、…っ」

胸先を摘んで乳首を舐め上げられ、ジンの肩を掴んだが、どうしても強く押し返す事が出来ない。形だけの抵抗で、指先に力を入れれば、まるでねだっているようにも伝わるだろう。
案の定、ジンは赤褐色の瞳に下心を浮かべて細めた。
羞恥に顔が熱くなる。

(どうしようない教師だ、俺は)

「はあ…ッ…ジン…人が、来るかもしれな、…ッ気が済んだら、離せ…」

聞いてるのかいないのか、返事もなくねっとりと執拗に舐め上げられる乳首。シャツ越しなのが焦ったい。
指先でシャツを押し広げられ、乳首が伸びるように潰される。その中心を硬く尖らせた舌先で穿られて、快感が全身を震わせる。
焦ったさにすら腰が疼き、顎を仰け反らせ、熱い呼気を空へと逃して気を紛らわそうとするが、一向に紛れるわけもない。

ドラゴとフィルが楽しそうに水遊びをしている姿が視界の端に映り込む。
人間の性行為に興味がないとは言え、彼らの前で快感に浸るのは良くないだろう。今更と、言われてしまいそうだが。

「気持ちい?」

「…馬鹿言ってないで、もう離れろ」

「まだ気済んでないけど」

「…ッ」

ピンと強めに弾かれ、水と唾液で濡れて腫れたように膨らんだ乳首が震えた。息が詰まる。
ジンが股間を擦り合わせてくる。

「…ッ!ちょ、お前…」

互いに服を押し上げて膨らみ、硬くなった中心。

「気持ち良い?」

乳首を弄られながら、股間を擦り合わされる。

「…ジン、もうやめろ……あッ…♡」

口では止めるのに、腰は離れるどころか、膨らみを押し付け返してしまう。
くにくにと乳首を摘まれて、切ない嬌声が漏れる。

「先生」

甘えた声で呼ばれ、目線を向けると唇が寄せられる。
木漏れ日が彼の顔に落ちて揺れた。

木陰の下で、こんな所で、何をしてるんだか

「…ん、」

近付いてきた唇を避けられず、重ね合う。首の後ろが震えた。
ちゅ、と音を何度も立てて唇を吸い合う。
顎先を上げるのは、今や自分の方になっている。

薄く開いた視界には熱っぽくこちらを見つめる彼がいた。心臓が高鳴り、身体の中心の熱が暴れそうだった。

舌が入り込んできて、中を舐め回されると、腰の奥に響く。
びくりと腰を跳ねれば、すかさず膨らみ同士を擦り上げられ、快感でぼうとしてきた。

「はッ…♡ん、…んん…ッ」

「…先生、ズボンもぐっちょぐちょじゃん」

「…その言い方は、…お、おい、まさか…ッ」

「脱がねえと風邪引くよ」

ベルトを外され、下着ごとズボンを引き摺り下ろされる。ぶるん、と半勃ちのペニスが弾かれるように外に出て、心許ない格好に身体中が熱くなる。

「こ、こんな所で、何考えてる」

「それは先生も同じだろ。ほら」

「うッ…あッ…♡」

ペニスを握られ、根本から扱き上げられて快感が身体から力を抜かす。暖かい手で竿を数度行き来されただけで、呆気なく勃起しまった。

「ここ、こんなにして、俺を叱んのは流石に説得力なくない?」

「…ッッ、そ、そもそも、お前が胸なんか弄るか、ら…あッ♡やめ…先を…引っ掻くなあ…ッ♡」

「確かに。俺のせいだな。先生と気持ち良い事したくてしょうがねぇの。先生は悪くねぇから。ほら、好きなだけヨガって」

「あ、ッ、やめ、ああ、ッ、♡」

「気持ち良さそうだね、良かった」

鈴口を指先で強く抉られて、堪らず先走りが溢れ出した。離れていた唇が揶揄うようにまた触れ合う。
思わずこちらからも吸い付いて、舌を欲しがり口を開けてしまう。駄目だと分かっているのに。

「ンッ…んッ…♡あ…、出る…ジン……ッ♡」

舌を絡め合わせると脳まで蕩けるようだ。
またこの男に容易く堕とされる。

「ん、良いよ先生、出して」

ぐちゅぐちゅと音を立てながら、早まる手の動きに高まっていく。
舌を吸われ、見詰めてくる赤褐色の瞳が細まった。ぞくぞくと強い快感に襲われる。

「…く、ッッ♡」

彼の思うままに、射精してしまった。

「うわ、濃ゆ。溜まってた?」

粘ついた白濁を見せ付けるように手を持ち上げてくる。

「ぐ…ッ、お前な……」

きょとんとした顔をわざとするジン。
悔しげに睨みつければ、子供とは到底言えない笑みを浮かべた。卑しさを滲ませながら、妙に色気立つその笑顔に心臓が掴まれる。
そうだ、此奴はもう成人していた。時々悪戯っ子のように笑うから、つい子供のように思ってしまうが。

「…お前は、俺なんかに手を出してないで、同じ年頃の奴としろ」

「…え?」

「そもそも、してるだろ。なんでわざわざ俺のような歳の離れた教師にちょっかい出すんだ…」

「なんか先生が意地悪言ってる」

「…意地悪じゃなくて、俺はただ…」

(このままでは抜けられなくなってしまいそうで)

「先生に触りたい」

「…!!」

両手で腰を抱き寄せられ、目を見開く。
顔を隠すように、甘えるように、肩に頭を埋めたジンの姿に、驚きが隠せない。すりすりと頬擦りまでされて、硬直してしまう。
ゆっくりと持ち上がる顔、近い距離で目線を絡め取られ、呼吸まで奪われそうだ。

「先生、いや?」

「…お前、な」

「駄目」ではなく、「嫌」かを聞いてくるなんて。

卑怯者が、心の中で罵倒する。

言葉の続きは言えなかった。ジンに唇を塞がれてしまったからと言い訳をして。
白シャツの前を丁寧に開かれて、晒される身体。どこもかしこも立ち上がっていて、羞恥に真っ赤になるのが分かる。

「…んんっ…あふ、あ、こら、ジン…っ♡」

脚の間から手を差し込まれた。睾丸を揉まれ、会陰を撫でられて、指が穴へと押し込まれてくる。
同時に口の中へ長い舌が入り込んできて、上も下もねっとりと掻き回される。

「……ん…ッ…んん…ッ、は…ッ…ッ♡♡」

舌も指も、使い方が上手すぎる。
弱い所を的確に見つけ出しては、小刻み且つ激しく擦り上げられて、情けなく腰が揺れる。
徐々に膝は曲がり、指が動かしやすいようにと、みっともなく突き出すような体勢になってしまった。

「はー…えっち…♡」

「…くッ…ん…んんッ…あ♡あ♡」

窄まりを丁寧に広げて、長い指は本数を増やして中を引っ掻いてくる。ぐちゅぐちゅと泡立てるような卑猥な音がする。おまけに片手は腰を抱き、今度は直に乳首を吸われた。ピリピリとした小さくも強い刺激に煽られる。

「ああッ♡ゆ、指で、指でイクッ♡」

「ホント?イケそう?」

「イクッ、イクッ♡や、やめ…ッ♡そ、そんな、あ♡あ♡」

前立腺を抉られ、熱が先走りとなってペニスを伝う。後頭部を幹へと擦り付けるが、結い上げた髪が邪魔で上手く快感を逃せない。カクカクと腰が揺れて、合わせるように指の動きも音も激しくなる。天を仰ぐペニスから、滂沱に溢れる先走りが濁り始めていた。競り上がってくる射精感を我慢出来ない。

「んああッッッ♡♡♡」

幹に背を押し付け、仰け反り、びゅるっと勢いよく精液を飛ばし、窄まりはジンの指を強く強く締め上げた。出る筈ないのに、彼からの熱の迸りを欲するように。

「先生の身体、完成され過ぎだよな」

どう言う意味なのか問い詰めたいような、聞きたくないような気持ちになる。どちらにしても、口から出て来るのは荒く熱い呼吸だけで何も言えない。
ぬぽっと指を抜かれ、腰が落ちかけるがジンの手が腰をグッと持ち上げた。座る事さえ許してくれないのか。
下は剥き出しの大地だから、直に座るのはあまり良くないだろうが。

(ああ、くそ…いっそ、魔力を流してくれれば言い訳も立つのに…)

軽くはない身体を、軽く片手で支えられて、深く口付けられる。思わず目を瞑り、受け入れてしまう。

「んっ…ん…♡」

「……はあ、かわいい先生」

リップ音と共に離れた唇、ギュッと下唇を噛んだ。

口付けひとつで身体が次を求めてる。

ねだるように彼のシャツを握り締めれば、笑う彼の目にまた余裕が1つ削ぎ落とされる。
鼻先が触れ合う距離、触れ合えない口が寂しく思えて唇へ自ら顔を寄せた。くっと口角を引き上げて笑う男は生徒の顔をしていない。
唇を軽く食まれ、下唇を労るようにちゅっと吸われた。

「先生、こっち」

両手を優しく掴まれて幹へと押し付けられる。
腰を少し突き出す形に後ろから抱かれ、抵抗する気力が抜けてしまい、項垂れて開かれた自分の足を見下ろした。纏めていた髪の毛先が落ちてくる。

(…こいつ、バックが好きなのか)

そんな事を考える。
羞恥心と期待と背徳感で頭の中がぐちゃぐちゃだ。

「ロキ先生」

殊更、教員であることを主張してくるように呼ぶ彼が少し憎い。

「ん…」

臀部の合間に塗りつけられる熱を感じ、また顔に血が集まるようだ。
入りそうで入らない、もどかしい動き。
窄まりが期待にヒクついてるのが自分でも分かる。

「…っ、はやく、しろ」

「欲しい?」

「……っ…ちが、も、さっさと済ませ…あッ♡」

「はは、すげぇ吸い付いて来る」

先端を窄まりへと少しだけ入れて、ジンは嬉しそうな声を出した。ちゅっちゅっと熱い粘膜を感じて、背骨が痺れるような快感が走る。

「い、いいからジン、早く…っ」

「いれてって言って」

「…っ、い、いれて…くれ…早く…」

「…うん、いれるね先生」

甘えるような声で先生と呼ばれて、憎らしいのにそれだけで蕩けそうになる。熱く硬い肉棒が体内へ入ってくると、得も言われぬ甘い窮屈な快感に満たされる。

(はぁ…ッ♡せ、性行為は、こんなに、気持ち良いものだったか、ダメだ、頭が、)

「あっ…と、とける…とけるジン…っ♡」

「ん、先生の中も熱くて俺もとけそう…このままくっついて、ひとつになったりして」

殊更ゆっくりと入ってくる熱に、幹を持つ手が震えた。

「んっ、あ…♡な、……ッ♡」

なりたい、そんな思考が巡って硬く口を閉ざした。
お構いなしに侵入は進み、奥をこつりと先端が触れた。とろとろと先走りが地面へ落ちる。恥ずかしいほどに糸を引いて。

早く、はやく動いてほしい

「あッ♡」

こつ、こつ、と叩かれる度、魔力を流されてる。
膝が震えた。

「あ、…っ、…ああ…っ…♡」

はやくはやく、もっと

甘いノックだけでは足りない。
魔力も足りない。
腰をくねらせ、中を締め上げてもジンの腰の動きも魔力の量も変わらない。

「ああ♡あ……♡あ、♡ああ♡」

自ら腰を揺らしてしまう。
太くて長い肉棒を媚肉が強く抱き締め、奥へと招くように蠕動してるのに、誘われてくれない。

「じ、じん…はや、く、…♡人が、来るかも、しれな、い、から…♡」

「違うだろ、先生」

言い訳を鋭く見抜かれる。

「素直に欲しいって言わねぇと」

「……く、…あ…っ♡」

「欲しい?俺の事?」

狙い定めたように魔力を流し込んでくる。
頭の中が急激に靄がかるような感覚。反して身体は敏感になって、もどかしさが加速した。

「欲しい…♡欲しい、ジン♡もっと、奥、はやく♡おッッーー~ッ♡」

ドチュッと深くに押し込まれ、息が出来ない快感にハクハクと口が動く。そのまま2度目の突きが奥を穿ち、髪を振り上げるように顎を反った。

「お、おッッ♡♡」

パンッパンッと外で聞いてはいけない音が、耳を刺激してくる。
木の幹に無様にしがみ付き、揺れる身を支えた。

「ッ…♡はあっあっ♡あっ♡そこッ♡」

「ここ?ここ好き?」

「んんッ♡あっ♡ああッ♡♡それ、イッ♡イクッ…あ、あ、いや、んぁ…ァッ~~ッッ~♡♡」

「声も出ない?そんなにここ気持ち良い?」

角度を変え、下から食い込ませるような腰の動きに背中を反る。がっちりと腰を掴まれ、臀部に腰を密着するように深く挿入され、的確に弱い所を激しく抉り上げられる。ジンの手首を掴み、後頭部を彼の肩に押し付けた。
快感が全身を暴れ回り、目がチカチカする。懸命に頷く、あまりの気持ちよさに息さえ上手く出来ない。

「俺もイキそ、中に出す?外が良い?どうする先生?どっちが良い?」

後ろから頬に口付けられる。質問も聞こえてる。何も答えられず、もうダメと伝えたくて首を左右に振った。

「ッ~だ、め…ぁッ…ァ!ーーー~~ッッ♡♡♡」

「あ、イッた」

耐え切れず全身を痙攣させながら絶頂した。
指先まで痺れる快感が抜けると、全身の力も抜けてしまう。いつの間にかジンへと委ねていた身を剥がし、幹にすら掴まれずに地面へと両手を付いた。
膝も、膝下にずり落ちたままの下衣も、汚れてしまうと頭の片隅で分かっていても構えない。

ジンは繋がったまま、器用に腰を合わせて下ろした。
その上、四つん這いの背後から無遠慮に腰を打ち付ける。

「んおッ…♡ ま、待て、ジン…すこし、あ♡」

「散々待ったよ、俺。ずっと先生に喰われんの待ってたのに。全然誘ってくれねぇんだもん」

「んあッ♡あッ♡ああッ♡」

絶頂後の媚肉はもう熟れに熟れ、抵抗する気もなくジンの肉棒を懸命に抱き込んでいる。引かれる度にちゅううと吸い付いて離さず、奥を突き上げられると歓喜に震えた。

「…ほら、せんせ、中と外どっちに出されたい?」

また目の前がチカチカして来た。土を握り締め、額を擦りつける。

「な、中ッ♡中に、くれ、♡はぁッ♡…ああ、また、イッ…イク…ッッ♡あ、あッーー~~ッッ♡♡♡」

「……く、♡」

魔力とは違う物理的な質量のある熱が敏感になった体内に注がれるのが分かって、中出しに合わせてまた軽く達してしまう。ゆさゆさと腰を揺すり、最後の一雫まで中へ落とそうとする動きに、喜びを感じている自分がいる。
魔力循環に精子そのものは必要ないのに。

「……はー、…めちゃくちゃ良かったよ先生。顔上げれる?汚れてねぇ?」

終わりの宣言に似た言葉。呼吸を整え、頭を上げた。魔力循環をしながら魔力を使う事は基本出来ない。術を展開した途端、大体循環は切れてしまう。
だから切るつもりだった。掌に清潔魔術を展開し、顔を拭う。汗や葉、土で汚れた顔を清める。身体は後で良い。

循環は切れなかった。と言うより、無理やり繋げ直された感覚があった。コントロールだけなら俺より上回っているかもしれない。

「……ジン、…もう…」

なけなしの理性をフル稼働し、止めに入る。
片肘をついて、横臥するように振り返りジンを見上げた。『体温維持』や『環境適応』も自発的な熱には効果がないのか、ジンも汗が流れ落ちていた。掻き上げた前髪から、血のような赤い目が晒された。高鳴る心臓が憎い。

「先生、俺の魔力好きだろ。セックスも。なんでそんな嫌がるフリすんの」

「フリ…じゃ…」

「フリだよ」

断言されたのは事実でしかなくて、反論出来ない。

まともに話も出来ないから、離れて欲しくて片膝を自分の腹に寄せ、ジンを押すと抵抗なく抜いてくれた。だがその膝を掴まれ、引っ掛かっていただけの下衣を脱がされる。ビクリと身体が跳ねたが抗えず、ヒクつく窄まりから白濁が溢れ出る感覚にさえ感じつつ、でも懸命に教師の矜持を保とうとーー

「……お、俺だって、…お前が生徒じゃ、なければ…もっと…」

して、出来ず、愚かな願望が口から零れ落ちた。
明確な規則として存在する、禁じられた教員と生徒の不純行為。(誰がするんだ)と鼻で笑っていた時代が遠い昔のようだ。
青空を背景に、木漏れ日に揺れるジンは、少し考え込んだ後首を傾いだ。

「……でもなぁ、生徒じゃなかったら、今俺は、ここに居ないよ」

「…………だからと、こんな関係、間違ってる…卒業してからでも…」

言い掛けて、口篭る。

卒業後、順当に行けば此奴は男爵になる。それも最北端の地で。
貴族になった卒業生と教師がプライベートで会うと言う話を聞くのは稀だ。
互いに忙しくなるし、身分の差が産まれる。後継の問題や、婚約の話も出るだろう。

だからこそ、学生の内に遊んでおこうと言う魂胆なんじゃないか

(『卒業したら会う気はない』と言われたら、俺は)

それならそれで、尚の事今の関係を享受する必要などないではないか。

ガキの遊びに付き合わせるな、と怒れば良い
寧ろ縋ってみるか、先を匂わせれば向こうが引くかもしれない

(ああ、そうだ。それが良い。此奴は追えば逃げるタイプだろう。本気になったように見せ掛けて…)

頭の中に、見た事もないジンの顔が過った。迷惑そうに此方を見る、興味を失せた冷ややかな赤い目。

ただの想像に心臓が冷えるようだった。

甘えたように「先生」と呼ぶ声が聞こえなくなったら
無垢な子供のように笑う顔が見れなくなったら

何も言わない俺にジンも何も言わない。指ひとつ動かさず、緩やかで甘い魔力を流し込んでるだけ。
まるで考え込む俺に猶予を与えるかの様に。

今やめろと言えばやめる気がした。
未来永劫、何もかも。

唇を開いた、出て来たのは熱のこもった吐息だけ。

(…危なっかしいんだ、此奴は。まだ最大出力に頼る悪癖を治していない、だから、そう、それまでは。俺が最初に暴いたんだ。此奴の魔力秘密を。だから俺が最後まで、面倒を見なければ)

言い訳に次ぐ、言い訳。

ジンはまるで、心の内を読んだようなタイミングで眦を垂らして微笑んだ。

「…良いじゃん、内緒の関係。ね、先生。興奮するだろ」

「あ、…んッ…ッ…んんッ♡♡」

寝そべったままの体勢で、片足を肩まで持ち上げられ、開かれた股。ずぷ、と後ろに熱くて太い質量が入り込んでくる。
ニヤつくように上がった唇が、持ち上げられた足首へねっとりと吸い付く。

「……っ♡」

「先生が喰ってくれないなら、いいよ。俺が先生を喰うから」

「それ…何も変わら、ん…ッ♡ぁ、ああッ♡ジンッ♡それ…ッ♡あ、深…い…おッ♡」

抵抗感も反発もなく、中はジンを奥まで招き入れた。
股座が密着する体位は先程よりも深くを抉って来る。思わず喉を逸らす。密着したまま腰を揺すられて、腹の底に乱暴な快感が生まれた。

「どうせまた全然ヤらしてくれねぇだろうから、今日いっぱい喰っとこ♡」

「おっ♡♡あッ♡ん、ッ♡んは、あ、そこッ、あッあッ♡」

腰の動きが激しくなり、突かれる度に声が出た。じゅぷじゅぷと立つ音に耳を嬲られ、なけなしの理性は簡単に砕け散る。

「ハアッ…気持ちいーね、せんせ」

「んあ、あ…ッ♡ん、きもちい…ッ♡ジン♡あッ♡あ、あッ…ーー~~♡♡♡」

熱く濡れた吐息と声で煽られる。
身体の深く柔い場所をぢゅぽぢゅぽと音を立てて何度も突かれながら、ペニスを扱かれてあまりの快感に背をしならせ身を捻る。

無遠慮に魔力を流し込み、ジンの魔力を欲しがった。

喰われたい、喰いたい
貪るほどにお前が欲しい

ここが外で、人が来るかもしれないと言う警戒心さえも溶けていく。

夏の気温は暑く、汗塗れでどろどろで不快な筈なのに、もう何も考えられない。

.
.
.

「あー……水が気持ち良い」

「………」

陽が沈んで星が出て来た。
色んなもので汚れた俺とジンは、清潔魔術と洗浄魔術で頭から足まで清めたが、結局川に入った。
下着姿で。

抵抗するのも疲れた俺はされるがままだったが、取り敢えず羞恥と怒りで無言で居た。
振り返るジンは川の中程に立っている。
月明かりに照らされるジンの肉体は、華奢でないこの身ですら情けなく感じるほど、肩幅と胸筋が逞しい。しかし腰が細く脚が長いからか、暑苦しさもない。

(作り込んでるんだな)

彼の身体を完璧な造形だと思う。薄らと浮かぶ、けれど目立つ傷の痕も含めて。所謂、『好み』なのだろう。

(身体的な好みなどないと思っていたのに)

ザバッとその長い脚が水を掻き分けて近付いて来る。

「先生、そんな離れなくても…眼鏡はごめんって」

「そんな事で怒ってはいない」

眼鏡はコードが切れて、いつの間にか下敷きになっていた。だがそんな物はどうでも良い。
此奴ははぐらかしなのか天然なのか時々分からなくなる。

「ホント?じゃあ…」

顔を寄せられて、避けられない。

「許してよ」

薄ら笑う大人の顔で、甘ったれた声。
腕を組んだままの俺の腰を抱き寄せ、唇を重ねてくる。

ちゅっと音を立てて啄み返し、鼻先を擦り合わせ見詰め合い皮肉っぽく笑ってやった。

「許さん」

お前が生徒に甘んじるのなら、俺は意地でも教師の矜持を押し付ける。
それが例え幾度も崩れる砂状の城だとしても。

思い通りになると思うなよ。
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