―レイプされたあの日から―

雨宮 千夏

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序章

 母親の男

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 ―――初めてのセックス、いや、母の交際相手により強姦され処女を喪ったのは、14歳の時だった。
 

 生まれた時から、父親はいなかった。母は奔放な人だったと思う。物心ついた頃から幾人もの男が家を出入りしていたのを覚えている。

 美弥が14歳の頃、いつのまにか家にいりびたるようになっていた男は、何の仕事をしているのかわからない崩れた感じを漂わせていた。時折、美弥の体をいやらしい目で嘗め回すように見ることには気付いていた―――。

 
―――ある日、部屋で学校から帰ったままの制服姿で寝転んで漫画を読んでいると、突然男が部屋に入ってきた。母は留守だった。

 男は扉をしめるなり、無言のまま襲い掛かってきた。
  

 何が起こったのかわからず、声をあげることもできなかった。制服をたくしあげられた時にようやく手で男の顔を押して抵抗したら、頬を2発張られた。耳の奥でキーンという金属音が鳴った。ブラジャーが剥ぎ取られ、14歳にしては発育のよかった胸を男は夢中で揉みしだき、乳首をなめ回した。





 突然氾濫した川の濁流に飲み込まれたようだった。なすすべもなく圧倒的な水量に押し流され、体が汚泥にまみれていくような――。


 男は荒い息を吐きながら、美弥の体中を執拗にまさぐった。
 性についておぼろげな知識だけしかない14歳の美弥には理解しがたい行為が、美弥の意思を置き去りに理不尽に繰り広げられる。
 なぜ男が女にこんな事をしたがるのか、女は本当にこんな事を望むのか、何もかもまるでわからなかった。

 恐怖と気持ち悪さしかなかった――。

 ただ、こんなことで処女を喪うんだな――と、どこか他人事のように思った。頭の中に一瞬、好きな子が浮かんで、消えた。




 なすすべもなく濁流に押し流される中で、激しい痛みとともに、ズサリ―――という音を聴いた気がする。きっと実際にはそんな音はしていない。体内からの音だったのか。肉が裂かれ体内に異物が混入し暴れまわる。
 そして男は美弥の上で狂ったように腰をふった。


 この悪夢のような時間が早く過ぎ去ってくれればいい――それだけを願った―――。


 やがて男の荒い息遣いが聞こえなくなった時、男は美弥の顔を覗き込み、下卑た笑いを浮かべながら悪びれもなく言った。
 「こんなこと話したら母ちゃん悲しむのわかるな? 誰にも言ったらいけんぞ」
 

 男が出ていった後、動けずそのままの姿勢で、なぜだか天井を見続けた―――。



―――それからも男は母の隙を見ては美弥を犯した。
 

 
 美弥はそのつど感情を遮断して心を凍らせる。男の歪んだ性的嗜好を満たす玩具にされる自分を少しでも認識しないで済むように―――。

 我がもの顔で美弥の体を弄びながら男はある日、不満げに言った。

「母ちゃんはすぐにグチョグチョになるのに美弥はあまり濡れないな」

 
 心は、いつしか凍りついた―――。


                  
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