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乱世の梟雄・松永久秀
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将来の徳川家康・竹千代を亡き者にしようと暗躍していたが、度重なる失敗のせいでガードが固く近づく事もままならなくなっていた。
「織田家が人質をこんなにも手厚く保護するとは予想外だったな」
「何でも、織田家には竹千代様のお母上がいらっしゃるとか」
「まじか! それで迂闊に近づけないのか、父上がもう少し手柄を立てていてくれれば……」
北条早雲との合戦で立てた手柄で水軍を任せられるようになった九鬼義隆と違って、豊臣秀吉になるはずのサルはいまだにサルのままであった。
「竹千代様のお屋敷に入れないですよね~」
「こうなったら……織田家ごと滅ぼすか」
「ええ? 織田家は今や飛ぶ鳥を落とす勢い、次々と大名家を支配下に置いて、京都まで進出するチャンスを狙っている大大名ですよ!」
「なーに、戦とは兵の数だけがものを言う訳ではない、最も兵の数でも天下人の俺の前では、足元にも及ぶまいがな」
「しかし、織田家には御父上もお仕えしていらっしゃるのに」
「……いや、いくら父上がサルっぽいからと言って、あそこまでサルの訳が無かろう。あれはきっとただのサルだ。天下人であるこの俺を惑わそうとする織田家の猿知恵に負ける訳にはいかん!」
「流石、秀頼様! 策がお有りなのですね!」
「その通り、古来より伝わる権謀術数の秘術の一つ流言の計! 京都までの道すがら織田信長の悪口を言って回るのだ」
「……なんか地味な方法ですね」
「これが結構、馬鹿にできないんだって……」
あー団子は美味い。
俺はついに二本の三食団子を串に沿って半分食べ、張り合わせて一度に二つの味を楽しめる六色団子を完成させるに至ったというのに、汗だくで走り回っていた千絵は流言一つ上手く流せていないようだった。
「秀頼様~、ダメです。織田信長様が合戦に向かう途中バナナの皮に滑ってぶつかった拍子に第六天魔王と体が入れ替わった話は、誰にも聞いてもらえませんでした~」
「けっこういい設定だと思ったんだがな……。今度はもう少しシンプルに、織田信長はサル毛のカツラをかぶっている事にしよう。この話が広まれば、京都に向かう途中サルズラだと後ろ指差されて満足に進めまい」
「今度は聞いてもらえますかね~?」
「行ける、今度こそ行けるはずだ! この計画の成否はお前の双肩に掛かっているんだ、千絵」
「わっ私のですか~?」
「そう、そして! 織田信長暗殺者として歴史に名が残るのだ」
「ほう、兄さん方、なかなか面白い話をしていらっしゃいますな……」
まずい、見るからに怪しいおっさんに聞かれたか!
ここまで怪しい奴は初めて見たが、織田の密偵かもしれん。ならば、興味を引く話をして油断させている隙に千絵の暗殺拳で始末するか。
「秀頼様、私はいったい何をさせられているのですか……」
「ふっふっふ、気になりますかな? 怪しいおっさん」
「はい! 気になります」
「お前じゃねー! お前は、怪しいおっさんか!」
「ひぃー! ちっ違います~」
「その娘、おっさんだったのか!」
「おっさんはお前だ! お前以上に怪しい奴がいるか」
「このわしを不審がるとは、ただ者では無いな……。さては、信長を暗殺して三好長慶に取りいる気か?」
「三好? 『俺を踏み台にした?』でおなじみの三馬鹿の居る三好家か? なぜ俺が取り入らねばならんのだ」
「ほう、三好三人衆は踏み台か、しかし、江口城で細川政長を破り、足利義輝を京都から追い出した三好長慶の権勢に敵うものはおるまい」
「それも今の内だけよ。足利義輝は将軍としてはいまいちでも剣の腕は確かだから、そう簡単には殺せん、先に長慶や十河が死んでしまう。そうなると織田家の一人勝ちよ」
「甲斐の武田や上杉、西には毛利も控えておる。とても独り勝ちとは言えぬだろう」
「武田や上杉は京都から遠すぎるし、毛利は地盤を固めるので手いっぱい。三好政権の支配地をそっくりそのまま抑えてしまえれば敵ではないからな」
「何という見識、おぬしただ者では無いな……」
「……しかし、義輝が京都から追い出されたのであれば、義輝を連れて京都に戻れば将軍の名を使って織田信長を京都に呼び寄せれるし、一石二鳥か」
「まさか三好長慶の領地だけでなく、織田信長の領地まで一度に取ろうというのか!」
「領地をとる? この国は全て天下人たる俺の物よ!」
「天下人! その心意気ただ者ではない、この松永久秀、全身全霊をもって力添えいたしますぞ」
この怪しいおっさんが松永久秀だったのか!
なんか仲間になってくれそうだけど、直ぐ裏切るろくな奴じゃないって父上が言ってたしな……。いや、サルが相手だからか、サルが相手ならふつう裏切るよな。って言うか、こいつ、サルにケツ爆破されたんだっけ? そう考えると被害者はこのおっさんの方かもしれないな……。
「うむ、松永久秀よろしく頼むぞ。…………ケツには気を付けろ、サルに狙われるからな」
「えっ? ケツ? サル?……」
「織田家が人質をこんなにも手厚く保護するとは予想外だったな」
「何でも、織田家には竹千代様のお母上がいらっしゃるとか」
「まじか! それで迂闊に近づけないのか、父上がもう少し手柄を立てていてくれれば……」
北条早雲との合戦で立てた手柄で水軍を任せられるようになった九鬼義隆と違って、豊臣秀吉になるはずのサルはいまだにサルのままであった。
「竹千代様のお屋敷に入れないですよね~」
「こうなったら……織田家ごと滅ぼすか」
「ええ? 織田家は今や飛ぶ鳥を落とす勢い、次々と大名家を支配下に置いて、京都まで進出するチャンスを狙っている大大名ですよ!」
「なーに、戦とは兵の数だけがものを言う訳ではない、最も兵の数でも天下人の俺の前では、足元にも及ぶまいがな」
「しかし、織田家には御父上もお仕えしていらっしゃるのに」
「……いや、いくら父上がサルっぽいからと言って、あそこまでサルの訳が無かろう。あれはきっとただのサルだ。天下人であるこの俺を惑わそうとする織田家の猿知恵に負ける訳にはいかん!」
「流石、秀頼様! 策がお有りなのですね!」
「その通り、古来より伝わる権謀術数の秘術の一つ流言の計! 京都までの道すがら織田信長の悪口を言って回るのだ」
「……なんか地味な方法ですね」
「これが結構、馬鹿にできないんだって……」
あー団子は美味い。
俺はついに二本の三食団子を串に沿って半分食べ、張り合わせて一度に二つの味を楽しめる六色団子を完成させるに至ったというのに、汗だくで走り回っていた千絵は流言一つ上手く流せていないようだった。
「秀頼様~、ダメです。織田信長様が合戦に向かう途中バナナの皮に滑ってぶつかった拍子に第六天魔王と体が入れ替わった話は、誰にも聞いてもらえませんでした~」
「けっこういい設定だと思ったんだがな……。今度はもう少しシンプルに、織田信長はサル毛のカツラをかぶっている事にしよう。この話が広まれば、京都に向かう途中サルズラだと後ろ指差されて満足に進めまい」
「今度は聞いてもらえますかね~?」
「行ける、今度こそ行けるはずだ! この計画の成否はお前の双肩に掛かっているんだ、千絵」
「わっ私のですか~?」
「そう、そして! 織田信長暗殺者として歴史に名が残るのだ」
「ほう、兄さん方、なかなか面白い話をしていらっしゃいますな……」
まずい、見るからに怪しいおっさんに聞かれたか!
ここまで怪しい奴は初めて見たが、織田の密偵かもしれん。ならば、興味を引く話をして油断させている隙に千絵の暗殺拳で始末するか。
「秀頼様、私はいったい何をさせられているのですか……」
「ふっふっふ、気になりますかな? 怪しいおっさん」
「はい! 気になります」
「お前じゃねー! お前は、怪しいおっさんか!」
「ひぃー! ちっ違います~」
「その娘、おっさんだったのか!」
「おっさんはお前だ! お前以上に怪しい奴がいるか」
「このわしを不審がるとは、ただ者では無いな……。さては、信長を暗殺して三好長慶に取りいる気か?」
「三好? 『俺を踏み台にした?』でおなじみの三馬鹿の居る三好家か? なぜ俺が取り入らねばならんのだ」
「ほう、三好三人衆は踏み台か、しかし、江口城で細川政長を破り、足利義輝を京都から追い出した三好長慶の権勢に敵うものはおるまい」
「それも今の内だけよ。足利義輝は将軍としてはいまいちでも剣の腕は確かだから、そう簡単には殺せん、先に長慶や十河が死んでしまう。そうなると織田家の一人勝ちよ」
「甲斐の武田や上杉、西には毛利も控えておる。とても独り勝ちとは言えぬだろう」
「武田や上杉は京都から遠すぎるし、毛利は地盤を固めるので手いっぱい。三好政権の支配地をそっくりそのまま抑えてしまえれば敵ではないからな」
「何という見識、おぬしただ者では無いな……」
「……しかし、義輝が京都から追い出されたのであれば、義輝を連れて京都に戻れば将軍の名を使って織田信長を京都に呼び寄せれるし、一石二鳥か」
「まさか三好長慶の領地だけでなく、織田信長の領地まで一度に取ろうというのか!」
「領地をとる? この国は全て天下人たる俺の物よ!」
「天下人! その心意気ただ者ではない、この松永久秀、全身全霊をもって力添えいたしますぞ」
この怪しいおっさんが松永久秀だったのか!
なんか仲間になってくれそうだけど、直ぐ裏切るろくな奴じゃないって父上が言ってたしな……。いや、サルが相手だからか、サルが相手ならふつう裏切るよな。って言うか、こいつ、サルにケツ爆破されたんだっけ? そう考えると被害者はこのおっさんの方かもしれないな……。
「うむ、松永久秀よろしく頼むぞ。…………ケツには気を付けろ、サルに狙われるからな」
「えっ? ケツ? サル?……」
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