戦国異伝~悠久の将~

海土竜

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秀頼の秘策

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 黄泉の国から来た亡者と戦う事になろうとは、しかし、俺には秘策がある!
 アンデットならば弱点をつけば一網打尽よ!

「本願寺顕如はいるかー!」

「どうした秀頼、もう銀山は攻め落としたのか?」

「いや、まだだ、あの銀山には亡者の軍勢が居るんだ」

「何と嘆かわしい、この世の欲を捨てられぬ金の亡者どもか!」

「いや、金の亡者じゃない。アンデットだ!」

「あんでっと? 饅頭の事か、余り勢い良くかぶりつくと、裏からアンがでっとーってやつだな」

「違う! 黄泉の国から這い出て来た本物の亡者だ」

「ふっ……、何を馬鹿な事を、黄泉の国など在りはしない。人間は死んだら極楽浄土に行くのだ」

「あー、いや、行けないやつも居るんだろ? そういうやつらが死んだら亡者となって徘徊したりするんじゃないのか?」

「善人なおもて往生をとく、いわんや悪人をや! 大体誰でも極楽に行ける!」

 なんだその勝ち誇ったような、決めポーズは!
 頭巾をしてても分かる程の、どや顔は!

「まぁ、どこでもいいよ、とりあえず死人の軍隊が銀山を占拠しているんだ。お前も僧侶なら、成仏させるディスペルくらい使えるだろう」

「スペルで動いているのかそいつら?」

「違うのか? あいつらってどうやって動いている……? 誰かが操っているのか? ……いや、そんな事はどうでもいい、何か動く死体に効く攻撃あるだろ、僧侶だし!」

「ふぅ……、何を馬鹿な事を、死体は動かんのだよ。動かんから死体なのだ。これを見よ! 先代も先々代も、こうやって即仏身になって、じっとしておられる!」

「うわっ! 怖いぞ、寺の中にこんな物、飾っているのか!」

「何を言うか、苦行の末に十日間、護摩を焚き上げた煙でいぶして、この様な姿を残されるのだ」

「ふむ、それはいいが、先代が炊きあげられている横にある魚とかタマゴはなんだ?」

「こうやって、一緒に炊き上げる事で香りも味も良い燻製が出来上がるのだ!」

「お前、先代の即仏身の横で何作っているんだ」

「そりゃ、先代と晩酌するのにあてぐらいいるだろう。……ねぇ先代、むっ、この肉は美味いな、いい味が出とる」

「それは、先代の右手だぞ!」

「ぬっ! まぁ、そんな事より動き回る死体などある訳がない、何かの見間違いだ。心霊写真など、合成よ、合成、幽霊などいる訳がないんだ……」

「僧侶がそんなこと言っていいのか! おい、先代の右手が手羽先になっているぞ!」

 自らの信念を曲げないからこそ法主などと呼ばれているのか、恐るべし本願寺。

「とんだ生臭坊主だぜ……」

「わしの燻製が生臭い筈が無い!」
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