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灰よりも白く
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街の外れに少女は年老いた母親と暮らしていました。誰も少女の母親の年齢を知りませんでしたが、干上がった沼のようにひび割れた肌をしていたため何百年も生きた魔女だと信じられており、街の人々は魔女を信じるのと同じように、人に言えぬ恨みや欲望をかなえるためのまじないや薬があると信じ、時折街外れの家にやって来ましたが、少女だけは母親の瞳の中に宿る若々しく美しい光を知っていたのです。
少女は自分に向けられる優しい母親の瞳は嫌いではありませんでしたが、魔女としての暮らしが母親の頭をおかしくしたのか、「恐ろしい、恐ろしい」と言いながら、かまどの灰を毎日、少女の頭にふりかけていたのです。
それが嫌でたまらず、少女はあるとき母親に尋ねました。
「母さん、何がそんなに恐ろしいの?」
すると母親は、固まった皮膚にぺきぺきとひびを入れながら口元を動かし、「恐ろしいのはこの美しさだよ」と言い、そして、この街で最も美しい娘の話を始めました。
娘は街中の誰よりも美しく、見る者すべてを虜にしました。
街の男どもは、彼女の機嫌を取るため列を作って贈り物を運び、少しでも彼女の歓心を買うために、その視線をわずかでも向けてもらうためにより良いものをと、妻に送った高価な宝石を持ち出したり、盗みを働いてまで贈り物をする者も出てきたのです。
それを取り締まりに城から兵士が派遣されたが、兵士たちまでもが虜になって城の装飾品をこっそり持ち出して贈り物にする始末でした。
ついに腹を立てた国王が娘を捕らえましたが、牢に入れても牢番が彼女の虜となって、毛布や食べ物を運び入れ、それだけでなく、国の大臣たちまでが牢番の役目を買って出たいと言い出しました。そして、彼女を裁くため王宮に連れて来ると、国王でさえ娘を一目見るなり自分の妃にしたいと考えたのです。
誰もが娘を手に入れたいと考えていましたが、一人が手にすれば他の者が奪おうとするのは明白でした。そうして手に入れても次の者に奪われ、また次の者が奪おうとし、最後の一人になるまで、それは続くであろうと容易に想像できたのです。
すべての男を虜にした娘の美しさを称賛しながらも、王女は嫉妬に身を焦がし引き千切ってやりたいと思っていました。
しかし、娘を一言でも貶そうものなら街中の男に八つ裂きにされ兼ねません。そこで、ある一つの方法を思いつきました。
「誰か一人の物に出来ぬのなら、いっそう皆の物にすればよかろう」
王女の言葉に街中の男が頷き、お前が生まれたのだ。
母親はそう言うと、固まった灰が鱗のようになった手のひらで少女の頬を撫で灰を塗りつけました。柔らかい頬には小さなひっかき傷ができて血がにじんだが、すぐに灰に吸収されて見えなくなりました。
母親との暮らしは、そう長いものではなく、魔女と呼ばれた割には、あっさりと死んでしまいました。
少女は冷たくなった死体をかまどに放り込んで灰にすると、森にある川へ向かって、そこで毎日ふりかけられた灰を綺麗に洗い流しました。こびりついた灰が落ちると艶やかな黒髪に淡い桃色の肌が現れました。灰に覆われていても少女の美しさは少しも損なわれていなかったのです。いや、灰に覆われていたからこその無垢な肌の美しさが、生来の艶めかしさが損なわれなかったのです。
自分でもほれぼれするほどの美しさに、踊るように軽やかに歩き出しました。風に乗るように軽やかに歩けたのは、街に入るまででした。街に入ると男たちの驚嘆の視線が向けられ、品定めするように少女の体に絡みつかせて、「何処へ行くんだいお嬢さん」と言い寄ってきます。差し伸べられた手を振り払って逃げ出そうとする彼女をどこまでも荒い息が追ってきました。
少女は家へ帰ると、真っすぐかまどに向かって灰を頭からかぶりました。初めて美しさの恐ろしさに気づいたのです。灰を肌にこすりつけながら震える体をおさえつけていました。
こうしてひっそりと暮らす灰にまみれ干上がった沼のような肌をした少女を、街の人々は数百年生きている魔女だと信じて、まじないや薬を求めて訪れましたが、少女の瞳の美しさは誰にも知られる事はありませんでした。ですが、恐れを抱きながらも美しく着飾る事へのあこがれは少女の中から消えてはいなかったのです。
ある時、豪華な馬車に乗ったお金持ちの娘が少女の家にやってきました。
「魔女よ、今日は肌の調子が良くなくてな、良い薬はないか?」
金持ちの娘はお城の舞踏会で王子と踊れるように、美しくなる薬を欲しがっていたのでした。それに気付いた少女は娘に眠り薬を飲ませたのです。体の灰を綺麗に落とし、娘のドレスをはぎ取って着替えると娘に成りすまして馬車に乗り込みました。
城に着くと輝くほどの娘の美しさに、誰もが引きつけられ我先にと集まってきます。
「美しいお方、是非、私と踊ってください」
「この私こそ、貴方と踊るにふさわしい」
次々と差し伸べられる手の間を抜けて優雅に歩いていくと、そこには王子が待っていました。
「どうぞ、私の手をお取りください」
恭しい礼をして王子が手を差し伸べました。
少女は王子の手に自分の手を添えて踊りました。夢のような輝かしい時間はあっという間に過ぎ、時を告げる金がなると少女は帰らねばならない時間が来た事に気づきました。金持ちの娘に飲ませた眠り薬の効果が切れる時間を思い出したのです。
礼も言わず慌てて帰ろうとする少女を王子が悲鳴のような声を上げて止めようとしました。少女は振り返りもせず、引き留めようとして強引に袖を引く人々をかき分けて進みました。進むうちにドレスは破れ宝石も靴も失くしてしまいます。
それでも何とか馬車に飛び乗り家に帰りつくと、今度は目を覚ました金持ちの娘が待ち構えていました。
「私に薬を飲ませて眠らすなんて!」
金持ちの娘は謝る少女を火掻き棒で叩きました。
「もう真夜中の鐘が鳴ってしまったわ、舞踏会が終わってしまったわ!」
金持ちの娘は少女の返事を待たず棒で叩きました。
「私のドレスは? 靴は? 宝石は?」
金持ちの娘は三度少女を叩きました。
棒で三度も叩かれた少女は起き上がる事が出来ずに、三日三晩、痛みを堪えて床の上で眠り続けていましたが、四日目の朝に扉の前で呼ぶ大声に目を覚ましました。のろのろと体を起こし顔を出すと、そこには金持ちの娘の使いの者が贈り物の箱を持ってきていました。
舞踏会で落とした靴から持ち主を探し出した王子は金持ちの娘に求婚したのでした。そのお礼か、口封じか、贈り物の箱には美しい絹のドレスに宝石が山ほど入っていました。少女はそれを一つも身につける事なく、かまどに入れると灰になるまで燃やしました。燃え尽きた真っ白な灰の中には赤い宝石が溶けた小さな雫となって残っていた。その雫に指先で触れて口に入れると、灰にまみれた少女の唇は血のように赤くなりました。
金持ちの娘が魔女の薬を使って王子と結婚したうわさは瞬く間に広がり、街の娘たちが次々と少女の元を訪れるようになりました。美しくなる薬を求めたのです。
パン屋のそばかすだらけの顔の痩せっぽっちの娘が来たときは、後ろから押してかまどに押し込んで焼いてしまいました。細い体は良く火が通り元の半分くらいの大きさになったが、真っ白の陶器人形のような美しい肌に焼き上がった。
仕立て屋の娘は大きくたくましい体をしていたので、薬を飲ませて眠らせてからかまどで焼きました。脂がぱちぱちと爆ぜて激しく燃えると、箒のようにほっそりと焼き上がりました。
茶屋の娘は、香ばしい良い匂いがしました。
そして、王子と結婚した金持ちの娘が豪華な馬車乗ってやってきました。
「魔女よ、これまでの、どの娘よりも美しくしておくれ」
そう言った王子と結婚した金持ちの娘を頭からかまどに放り込んで、火掻き棒でぐるぐるかき混ぜて灰も残さず焼くと、馬車で寝ていた御者の所に灰を持って行き、御者にも火をつけました。燃え上がった御者に驚いた馬が悲鳴を上げて走り出すと、吹き付ける風で御者の炎が馬車に燃え移り、馬たちは何処までも追ってくる炎に恐怖し街中を走り回りました。そして、街を一回りして、少女の家まで戻ってくると、泡を吹いて倒れてしまった。
少女は馬に灰をかけて焼くと、残った灰を自分の体にまぶし始めた。
一方、炎を上げて走り回る馬車に恐怖した街の人々は、手に手に武器を持って集まり、魔女を打ち倒そうと少女の家の前で叫んでいた。
恐怖は怒りとなり、街の人々の中で燃え上がった。
そして、暴徒となった街の人たちが魔女の家の門を打ち壊して雪崩れ込もうとした時、中から真っ白な大きな馬に引かれた立派な馬車が現れた。
一本の混じりけもない真っ白な馬を白いつば広の帽子を深々と被った御者が操る美しい馬車に集まった街の人々は息を飲んだ。そして、魔女の家から真っ白なメイドに先導されて出てきた少女の美しさに視線が釘付けになった。少女は灰のように真っ白な肌に、白いドレスを纏い、首元には白く大粒の真珠が輝き、月の光のように輝く髪を蜘蛛の糸の白いベールが包んでいた。
その白の中で、血のように赤い唇が微笑みを作ると、街の人々の怒りの炎は灰となって風に舞い街中に燃え移った。少女が馬車に乗って進む道を照らすかがり火のように街を焼いて王宮までの道を示した。
少女が王宮に入ると街は業火となって燃え上がり、赤い炎がくるくると舞って、パチパチと爆ぜる音楽が奏でられる。空さえ嫉妬に身を焦がすほど美しい狂乱の宴は、二十四時の鐘が鳴ると白い煙となって天へと帰り、白い灰となって降り積もると、街のすべてを覆い尽くしました。白く。白く。
少女は自分に向けられる優しい母親の瞳は嫌いではありませんでしたが、魔女としての暮らしが母親の頭をおかしくしたのか、「恐ろしい、恐ろしい」と言いながら、かまどの灰を毎日、少女の頭にふりかけていたのです。
それが嫌でたまらず、少女はあるとき母親に尋ねました。
「母さん、何がそんなに恐ろしいの?」
すると母親は、固まった皮膚にぺきぺきとひびを入れながら口元を動かし、「恐ろしいのはこの美しさだよ」と言い、そして、この街で最も美しい娘の話を始めました。
娘は街中の誰よりも美しく、見る者すべてを虜にしました。
街の男どもは、彼女の機嫌を取るため列を作って贈り物を運び、少しでも彼女の歓心を買うために、その視線をわずかでも向けてもらうためにより良いものをと、妻に送った高価な宝石を持ち出したり、盗みを働いてまで贈り物をする者も出てきたのです。
それを取り締まりに城から兵士が派遣されたが、兵士たちまでもが虜になって城の装飾品をこっそり持ち出して贈り物にする始末でした。
ついに腹を立てた国王が娘を捕らえましたが、牢に入れても牢番が彼女の虜となって、毛布や食べ物を運び入れ、それだけでなく、国の大臣たちまでが牢番の役目を買って出たいと言い出しました。そして、彼女を裁くため王宮に連れて来ると、国王でさえ娘を一目見るなり自分の妃にしたいと考えたのです。
誰もが娘を手に入れたいと考えていましたが、一人が手にすれば他の者が奪おうとするのは明白でした。そうして手に入れても次の者に奪われ、また次の者が奪おうとし、最後の一人になるまで、それは続くであろうと容易に想像できたのです。
すべての男を虜にした娘の美しさを称賛しながらも、王女は嫉妬に身を焦がし引き千切ってやりたいと思っていました。
しかし、娘を一言でも貶そうものなら街中の男に八つ裂きにされ兼ねません。そこで、ある一つの方法を思いつきました。
「誰か一人の物に出来ぬのなら、いっそう皆の物にすればよかろう」
王女の言葉に街中の男が頷き、お前が生まれたのだ。
母親はそう言うと、固まった灰が鱗のようになった手のひらで少女の頬を撫で灰を塗りつけました。柔らかい頬には小さなひっかき傷ができて血がにじんだが、すぐに灰に吸収されて見えなくなりました。
母親との暮らしは、そう長いものではなく、魔女と呼ばれた割には、あっさりと死んでしまいました。
少女は冷たくなった死体をかまどに放り込んで灰にすると、森にある川へ向かって、そこで毎日ふりかけられた灰を綺麗に洗い流しました。こびりついた灰が落ちると艶やかな黒髪に淡い桃色の肌が現れました。灰に覆われていても少女の美しさは少しも損なわれていなかったのです。いや、灰に覆われていたからこその無垢な肌の美しさが、生来の艶めかしさが損なわれなかったのです。
自分でもほれぼれするほどの美しさに、踊るように軽やかに歩き出しました。風に乗るように軽やかに歩けたのは、街に入るまででした。街に入ると男たちの驚嘆の視線が向けられ、品定めするように少女の体に絡みつかせて、「何処へ行くんだいお嬢さん」と言い寄ってきます。差し伸べられた手を振り払って逃げ出そうとする彼女をどこまでも荒い息が追ってきました。
少女は家へ帰ると、真っすぐかまどに向かって灰を頭からかぶりました。初めて美しさの恐ろしさに気づいたのです。灰を肌にこすりつけながら震える体をおさえつけていました。
こうしてひっそりと暮らす灰にまみれ干上がった沼のような肌をした少女を、街の人々は数百年生きている魔女だと信じて、まじないや薬を求めて訪れましたが、少女の瞳の美しさは誰にも知られる事はありませんでした。ですが、恐れを抱きながらも美しく着飾る事へのあこがれは少女の中から消えてはいなかったのです。
ある時、豪華な馬車に乗ったお金持ちの娘が少女の家にやってきました。
「魔女よ、今日は肌の調子が良くなくてな、良い薬はないか?」
金持ちの娘はお城の舞踏会で王子と踊れるように、美しくなる薬を欲しがっていたのでした。それに気付いた少女は娘に眠り薬を飲ませたのです。体の灰を綺麗に落とし、娘のドレスをはぎ取って着替えると娘に成りすまして馬車に乗り込みました。
城に着くと輝くほどの娘の美しさに、誰もが引きつけられ我先にと集まってきます。
「美しいお方、是非、私と踊ってください」
「この私こそ、貴方と踊るにふさわしい」
次々と差し伸べられる手の間を抜けて優雅に歩いていくと、そこには王子が待っていました。
「どうぞ、私の手をお取りください」
恭しい礼をして王子が手を差し伸べました。
少女は王子の手に自分の手を添えて踊りました。夢のような輝かしい時間はあっという間に過ぎ、時を告げる金がなると少女は帰らねばならない時間が来た事に気づきました。金持ちの娘に飲ませた眠り薬の効果が切れる時間を思い出したのです。
礼も言わず慌てて帰ろうとする少女を王子が悲鳴のような声を上げて止めようとしました。少女は振り返りもせず、引き留めようとして強引に袖を引く人々をかき分けて進みました。進むうちにドレスは破れ宝石も靴も失くしてしまいます。
それでも何とか馬車に飛び乗り家に帰りつくと、今度は目を覚ました金持ちの娘が待ち構えていました。
「私に薬を飲ませて眠らすなんて!」
金持ちの娘は謝る少女を火掻き棒で叩きました。
「もう真夜中の鐘が鳴ってしまったわ、舞踏会が終わってしまったわ!」
金持ちの娘は少女の返事を待たず棒で叩きました。
「私のドレスは? 靴は? 宝石は?」
金持ちの娘は三度少女を叩きました。
棒で三度も叩かれた少女は起き上がる事が出来ずに、三日三晩、痛みを堪えて床の上で眠り続けていましたが、四日目の朝に扉の前で呼ぶ大声に目を覚ましました。のろのろと体を起こし顔を出すと、そこには金持ちの娘の使いの者が贈り物の箱を持ってきていました。
舞踏会で落とした靴から持ち主を探し出した王子は金持ちの娘に求婚したのでした。そのお礼か、口封じか、贈り物の箱には美しい絹のドレスに宝石が山ほど入っていました。少女はそれを一つも身につける事なく、かまどに入れると灰になるまで燃やしました。燃え尽きた真っ白な灰の中には赤い宝石が溶けた小さな雫となって残っていた。その雫に指先で触れて口に入れると、灰にまみれた少女の唇は血のように赤くなりました。
金持ちの娘が魔女の薬を使って王子と結婚したうわさは瞬く間に広がり、街の娘たちが次々と少女の元を訪れるようになりました。美しくなる薬を求めたのです。
パン屋のそばかすだらけの顔の痩せっぽっちの娘が来たときは、後ろから押してかまどに押し込んで焼いてしまいました。細い体は良く火が通り元の半分くらいの大きさになったが、真っ白の陶器人形のような美しい肌に焼き上がった。
仕立て屋の娘は大きくたくましい体をしていたので、薬を飲ませて眠らせてからかまどで焼きました。脂がぱちぱちと爆ぜて激しく燃えると、箒のようにほっそりと焼き上がりました。
茶屋の娘は、香ばしい良い匂いがしました。
そして、王子と結婚した金持ちの娘が豪華な馬車乗ってやってきました。
「魔女よ、これまでの、どの娘よりも美しくしておくれ」
そう言った王子と結婚した金持ちの娘を頭からかまどに放り込んで、火掻き棒でぐるぐるかき混ぜて灰も残さず焼くと、馬車で寝ていた御者の所に灰を持って行き、御者にも火をつけました。燃え上がった御者に驚いた馬が悲鳴を上げて走り出すと、吹き付ける風で御者の炎が馬車に燃え移り、馬たちは何処までも追ってくる炎に恐怖し街中を走り回りました。そして、街を一回りして、少女の家まで戻ってくると、泡を吹いて倒れてしまった。
少女は馬に灰をかけて焼くと、残った灰を自分の体にまぶし始めた。
一方、炎を上げて走り回る馬車に恐怖した街の人々は、手に手に武器を持って集まり、魔女を打ち倒そうと少女の家の前で叫んでいた。
恐怖は怒りとなり、街の人々の中で燃え上がった。
そして、暴徒となった街の人たちが魔女の家の門を打ち壊して雪崩れ込もうとした時、中から真っ白な大きな馬に引かれた立派な馬車が現れた。
一本の混じりけもない真っ白な馬を白いつば広の帽子を深々と被った御者が操る美しい馬車に集まった街の人々は息を飲んだ。そして、魔女の家から真っ白なメイドに先導されて出てきた少女の美しさに視線が釘付けになった。少女は灰のように真っ白な肌に、白いドレスを纏い、首元には白く大粒の真珠が輝き、月の光のように輝く髪を蜘蛛の糸の白いベールが包んでいた。
その白の中で、血のように赤い唇が微笑みを作ると、街の人々の怒りの炎は灰となって風に舞い街中に燃え移った。少女が馬車に乗って進む道を照らすかがり火のように街を焼いて王宮までの道を示した。
少女が王宮に入ると街は業火となって燃え上がり、赤い炎がくるくると舞って、パチパチと爆ぜる音楽が奏でられる。空さえ嫉妬に身を焦がすほど美しい狂乱の宴は、二十四時の鐘が鳴ると白い煙となって天へと帰り、白い灰となって降り積もると、街のすべてを覆い尽くしました。白く。白く。
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