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22 お弁当
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病院から出て、道沿いに続くヒマワリ畑を自転車で走った。
そのヒマワリ畑の先の大きな切り株に座ってお弁当を食べる事にした。
貰ったお弁当にはたっぷりとおかずが詰まっている。まずは目についた大きめのハムをフォークで刺してガブリとかぶりつく。
チーズを挟んだ分厚いハムのしょっぱさが一緒に一口入れたおにぎりでちょうど良くなって、とても美味しい。
思えばここ数日間は疲れているのに、何を食べても味も満腹感も得られていなかった事に気が付いた。
そして自分が空腹である事を思い出すのと同時に、久々に味わう『仕事をした後の充実感』に似た感覚に満たされて涙がぶわりと溢れてきた。
風が吹いてヒマワリ達が、大きくなった種の重みで頭を垂らし、少し申し訳無さそうに揺れている。
遠くの夕焼けが美しく、しばらくそれを眺めながらネズミは夢中でお弁当をたいらげた。
とても有り難かった。
こんな所で突然、幸せを感じるとは思わなかった。
今まで自分が、何に喜び、何をするのが嬉しいのかを思い出した気がした。
何かを食べて美味しいと思うことや、誰かが喜んでいるのを見て何だか温かい気持ちになるのが自分にとっては幸せなんだなと感じた。
一つの失敗からその全ての感情を忘れ、今その大切さにもう一度、気が付いたのだ。
涙が溢れる度に、胸の奥に溜まっていた何かが少しずつ溶けていくのを感じる。
夕日ヶ丘一面がピンク色に包まれて温かく染まっていた。
______________________________
その晩、家でゆっくりしていると実家から電話がかかってきた。
「もしもし、あんた、元気でやっとる?」
久しぶりに聞く母のとぼけた声を聞いて、ふいに泣きそうになった。
「別に、、元気だよ。」
「そっちは?どう?、、一人で困ってることないんか?」
ぐっと感情をおさえながら平静を装う。
「こっちはなんもないから、気にせんでええんよ。」「そんで、食べるもんと冬服、色々送ったからね。ちゃんと食べないかんよ。」
「夜はちゃんと寝てるんか?」
「うん、、、。」
母のいつもと変わらない調子にとても安心感を覚えていた。
「仕事は順調なん?」
「、、、まぁ、まぁ。」
「、、、あんた、何かあったんか?」
「、、いや、別に、何もないよ。」
親の前ではあまり素直になれない自分なのに、何故かいつも母は鋭い所をついてくる。
「そう、ならいいけども、、。」
一瞬、母も心配そうな風を見せたが、すぐにいつもの口調に戻る。
「たまには電話ぐらいちょうだいね。」
「お風呂入って、掃除もするんよ。」
「それじゃーね。頑張りぃね。」プツッ、、、
ツー、ツー、ツー、、、、、。
特に何も無いと分かると母は用件を話すと、一方的に電話を切ってしまった。
フッ、、、。
(相変わらずだなぁ)とあまりのマイペースぶりに少し笑えてきた。
当たり前だと思っていたけど、自分にはいつも辛いと思っている時に味方がいるんだという事を痛感した。相談こそしないものの、いてくれると思うだけで救われているところがあったんだ。
彼は心底からそれを有り難く思いながらその日はぐっすりと眠りについた。
そのヒマワリ畑の先の大きな切り株に座ってお弁当を食べる事にした。
貰ったお弁当にはたっぷりとおかずが詰まっている。まずは目についた大きめのハムをフォークで刺してガブリとかぶりつく。
チーズを挟んだ分厚いハムのしょっぱさが一緒に一口入れたおにぎりでちょうど良くなって、とても美味しい。
思えばここ数日間は疲れているのに、何を食べても味も満腹感も得られていなかった事に気が付いた。
そして自分が空腹である事を思い出すのと同時に、久々に味わう『仕事をした後の充実感』に似た感覚に満たされて涙がぶわりと溢れてきた。
風が吹いてヒマワリ達が、大きくなった種の重みで頭を垂らし、少し申し訳無さそうに揺れている。
遠くの夕焼けが美しく、しばらくそれを眺めながらネズミは夢中でお弁当をたいらげた。
とても有り難かった。
こんな所で突然、幸せを感じるとは思わなかった。
今まで自分が、何に喜び、何をするのが嬉しいのかを思い出した気がした。
何かを食べて美味しいと思うことや、誰かが喜んでいるのを見て何だか温かい気持ちになるのが自分にとっては幸せなんだなと感じた。
一つの失敗からその全ての感情を忘れ、今その大切さにもう一度、気が付いたのだ。
涙が溢れる度に、胸の奥に溜まっていた何かが少しずつ溶けていくのを感じる。
夕日ヶ丘一面がピンク色に包まれて温かく染まっていた。
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その晩、家でゆっくりしていると実家から電話がかかってきた。
「もしもし、あんた、元気でやっとる?」
久しぶりに聞く母のとぼけた声を聞いて、ふいに泣きそうになった。
「別に、、元気だよ。」
「そっちは?どう?、、一人で困ってることないんか?」
ぐっと感情をおさえながら平静を装う。
「こっちはなんもないから、気にせんでええんよ。」「そんで、食べるもんと冬服、色々送ったからね。ちゃんと食べないかんよ。」
「夜はちゃんと寝てるんか?」
「うん、、、。」
母のいつもと変わらない調子にとても安心感を覚えていた。
「仕事は順調なん?」
「、、、まぁ、まぁ。」
「、、、あんた、何かあったんか?」
「、、いや、別に、何もないよ。」
親の前ではあまり素直になれない自分なのに、何故かいつも母は鋭い所をついてくる。
「そう、ならいいけども、、。」
一瞬、母も心配そうな風を見せたが、すぐにいつもの口調に戻る。
「たまには電話ぐらいちょうだいね。」
「お風呂入って、掃除もするんよ。」
「それじゃーね。頑張りぃね。」プツッ、、、
ツー、ツー、ツー、、、、、。
特に何も無いと分かると母は用件を話すと、一方的に電話を切ってしまった。
フッ、、、。
(相変わらずだなぁ)とあまりのマイペースぶりに少し笑えてきた。
当たり前だと思っていたけど、自分にはいつも辛いと思っている時に味方がいるんだという事を痛感した。相談こそしないものの、いてくれると思うだけで救われているところがあったんだ。
彼は心底からそれを有り難く思いながらその日はぐっすりと眠りについた。
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