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#02 クマのおじさんとキツネ
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クマのおじさんは今日も釣りを楽しみに、みくりが池に来ていました。
リュックを置いて、お気に入りの岩に腰を掛けると、静かに釣り糸を水面にたらします。
穏やかに風が吹き、白い小さな花が揺れているのをぼんやりとクマのおじさんは眺めていました。
しばらくするとなにやら、賑やかに歌声が聞こえてきます。
現れたのはキツネの青年でした。
キツネはチェックのベストを着て、被っている黒い帽子にはキラキラとした飾りがついています。
手にはステッキを持っていて、それで小枝を払いながら森の小道から出てきました。
キツネはクマのおじさんと目が合うなり、
「これはこれは。」
「こんなところでのんびり釣りですか?」
そう言うとキツネは鼻をクンクンと鳴らして思い切り息を吸った後、
「ここは最高のロケーションですね!」
「私の別荘を建てるには申し分ない場所です。」
クマは黙って知らん顔をしていました。
するとキツネは気に触ったのか、持っていたステッキで岩場をカンカンと叩き、
「ただー、ここの岩場はいただけない!」
「邪魔になるので、取り除かなければ、、!」
クマはキツネの立てるその音に毛がビリビリと逆立つ思いがしました。
次にキツネは釣り糸を垂らした池の水に、ステッキの先をつけてぐるぐるとかき混ぜると、勢いよくそれを水面に叩きつけました。
そして鼻でフンッと言うとステッキの水を払い、持っていたハンカチで水を拭きました。
クマはそれをびっくりした顔で最初は見ていましたが、段々と肩をブルブルと震わせました。
そんな事はお構いなしにキツネは話続けています。
「私がお金持ちになって建てたホテルには!
沢山の金持ちが泊まりに来るんですよ!」
「きらびやかな飾りや美味しい料理でみんなをもてなすんですよ!」
そう言うとキツネはクマの大きな背中にすがるように自分の体を擦り寄せて来るのでした。
クマは背中がグイグイ押されるのに耐えながら、なんとかこの時をやり過ごそうと歯を食いしばって努めています。
それでも構わず、キツネの話は続きます。
「そうすれば、金持ち達は満足していくらでも金をばらまくのですよ。いい気味だ!そうでしょう?」とキツネは得意気に言いました。
クマは話の間中、腹が立ってたまりませんが、
「ああ、でも、沢山のお金さえあれば、お前さんは本当に幸せなのかい?」と口を挟みました。
するとキツネはクマの背中にすがったまま黙っていました。
そして、ステッキを岩にコンコンと叩きつけ始めました。
クマはまたその音にイラッとしてフゥフゥ息を荒らげています。
やっぱりなんにも気付かないキツネは
「うぅーん、、お金がたくさんあっても、、私は、幸せではないような気がする。」
「周りのみんなはいつも私の悪口ばかり言っている。」
「こんなにも、良い思いを沢山させてやっているのにも関わらずだ!」
そう言いながらカンカンと岩を叩き続けています。
クマはその音にもう我慢がならず、ついに大きく腕を振り上げたとたん!
「そうかッ!!!」
とキツネは前に飛び跳ねて、強くステッキの先を岩に打ち付けました。
運悪く下敷きになったクマの手は何度もキツネのステッキに打たれてしまい、「あいたたたた!」と
慌ててクマは手を引っ込めました。
それでも、キツネはキラキラした目でクマのほうを振り返ると、
「私は間違っていたかもしれない!!」
「貧しい客が幸せになれるホテルをたくさん作ればいいんだ!!」
そう言うとクマに「ありがとぅー!」とお礼を言ってまたステッキをふりふりあっという間に山を下りて行きました。
残されたクマは、
「ステッキは振り回したら、ダメだぞ、、、」
クマは腫れた左手を擦りながらキツネを見送っていました。
池の釣りざおを見ると、また糸が動いています。
糸を引き上げてみると、
細長い体が銀色にキラキラと光るワカサギがかかっていました。
クマは手にフーっと息を吹きかけて、やれやれと少し笑顔になりました。
リュックを置いて、お気に入りの岩に腰を掛けると、静かに釣り糸を水面にたらします。
穏やかに風が吹き、白い小さな花が揺れているのをぼんやりとクマのおじさんは眺めていました。
しばらくするとなにやら、賑やかに歌声が聞こえてきます。
現れたのはキツネの青年でした。
キツネはチェックのベストを着て、被っている黒い帽子にはキラキラとした飾りがついています。
手にはステッキを持っていて、それで小枝を払いながら森の小道から出てきました。
キツネはクマのおじさんと目が合うなり、
「これはこれは。」
「こんなところでのんびり釣りですか?」
そう言うとキツネは鼻をクンクンと鳴らして思い切り息を吸った後、
「ここは最高のロケーションですね!」
「私の別荘を建てるには申し分ない場所です。」
クマは黙って知らん顔をしていました。
するとキツネは気に触ったのか、持っていたステッキで岩場をカンカンと叩き、
「ただー、ここの岩場はいただけない!」
「邪魔になるので、取り除かなければ、、!」
クマはキツネの立てるその音に毛がビリビリと逆立つ思いがしました。
次にキツネは釣り糸を垂らした池の水に、ステッキの先をつけてぐるぐるとかき混ぜると、勢いよくそれを水面に叩きつけました。
そして鼻でフンッと言うとステッキの水を払い、持っていたハンカチで水を拭きました。
クマはそれをびっくりした顔で最初は見ていましたが、段々と肩をブルブルと震わせました。
そんな事はお構いなしにキツネは話続けています。
「私がお金持ちになって建てたホテルには!
沢山の金持ちが泊まりに来るんですよ!」
「きらびやかな飾りや美味しい料理でみんなをもてなすんですよ!」
そう言うとキツネはクマの大きな背中にすがるように自分の体を擦り寄せて来るのでした。
クマは背中がグイグイ押されるのに耐えながら、なんとかこの時をやり過ごそうと歯を食いしばって努めています。
それでも構わず、キツネの話は続きます。
「そうすれば、金持ち達は満足していくらでも金をばらまくのですよ。いい気味だ!そうでしょう?」とキツネは得意気に言いました。
クマは話の間中、腹が立ってたまりませんが、
「ああ、でも、沢山のお金さえあれば、お前さんは本当に幸せなのかい?」と口を挟みました。
するとキツネはクマの背中にすがったまま黙っていました。
そして、ステッキを岩にコンコンと叩きつけ始めました。
クマはまたその音にイラッとしてフゥフゥ息を荒らげています。
やっぱりなんにも気付かないキツネは
「うぅーん、、お金がたくさんあっても、、私は、幸せではないような気がする。」
「周りのみんなはいつも私の悪口ばかり言っている。」
「こんなにも、良い思いを沢山させてやっているのにも関わらずだ!」
そう言いながらカンカンと岩を叩き続けています。
クマはその音にもう我慢がならず、ついに大きく腕を振り上げたとたん!
「そうかッ!!!」
とキツネは前に飛び跳ねて、強くステッキの先を岩に打ち付けました。
運悪く下敷きになったクマの手は何度もキツネのステッキに打たれてしまい、「あいたたたた!」と
慌ててクマは手を引っ込めました。
それでも、キツネはキラキラした目でクマのほうを振り返ると、
「私は間違っていたかもしれない!!」
「貧しい客が幸せになれるホテルをたくさん作ればいいんだ!!」
そう言うとクマに「ありがとぅー!」とお礼を言ってまたステッキをふりふりあっという間に山を下りて行きました。
残されたクマは、
「ステッキは振り回したら、ダメだぞ、、、」
クマは腫れた左手を擦りながらキツネを見送っていました。
池の釣りざおを見ると、また糸が動いています。
糸を引き上げてみると、
細長い体が銀色にキラキラと光るワカサギがかかっていました。
クマは手にフーっと息を吹きかけて、やれやれと少し笑顔になりました。
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