トイレットペーパー替えないマン

天仕事屋(てしごとや)

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03 使わせババア

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 トイレで一人、どのくらいの時間が過ぎただろうか。

 カァカァと外からカラスの鳴き声が聞こえる。

 夕方の音楽も流れてきた。

 (もう、帰る時間なのになんで、こんな時に限って誰も探しに来ないんだよ。)

 (僕がゲームするって言ったから、みんなもう帰ったと思ったのかなぁ?)

 ひろしは半べそで泣きそうになった。

 「あきらー!!たくみーー!!!」

 「みんな帰っちゃったのかよー!」

 トイレは相変わらず静まり返っている。

 「だれかぁ、本当に誰もいないのー?」

 ついにひろしは泣き出してしまった。

 グスッ、、グスッ、、、

 

 「おやおや、そこにいるのは、、?」

 突然、誰かの声がした。

 「え?だれかいるの?」

 「あのー、、、すみません、、トイレットペーパーって、ありませんか?あれば、貰えませんか?」

 ドアの外はまた静かになった。

 (あれ??声がした気がしたんだけど。)

 「いやーーだね!」

 しわがれたその声を聞いてひろしは背筋が凍る思いがした。

 「だって、お前さん」
 「トイレットペーパー替えないマンなんだろう?」
 「紙が無くても、ぜーんぜん、気にしないんだろう?」

 ヒーッヒッヒッヒ、、、、

 (どうして、朝の、僕が言ったことを知っているんだ?)

 「あ、あなたは、、、誰ですか?」

 ひろしは恐る恐る聞いた。

 「あたしはねぇ、使わせババアさ。」
 「トイレットペーパーを無駄に使いたくなるようにしむけるのさ。へっへっへ」

 
 (つ、使わせババア?)

 「お前さんは家で紙が無くなっても何とも思わなかったんだろう?」

 「次にトイレを使う人が困ろうとどうなろうと、知ったこっちゃないんだろう?」

 「ヒッヒッヒ、紙がなくて今、、お前さんはどんな気分だい?」

 使わせババアはさも楽しそうに笑っている。
 
 「うぅ~、お願いだから、紙をおくれよぉ。」

 ひろしはなきべそをかきながらババアにお願いをした。

 「嫌なこった。紙がない。替えなかったから紙がない。」

 「知らん顔して替えなくちゃ」

 「ペーパー替えないマンが困っているよ!」

 「紙がなくても気にしない、替えないマンが困っているよ」

 「あぁ、愉快愉快!替えないと次の人が困るねぇ。」

 「替えないマン、次に入って、困っているよ。」

 「愉快だねぇ、ヒッヒッヒ。」

 ババアは笑いながら歌い出した。


 「やめて、もうやめてよー!」




 「ひろし!!」

 はっと目が覚めるとドアの向こうでお姉ちゃんの声がする。

 「そこにいるの?どうしたの?お腹痛いの?」


 「お姉ちゃーん!」
 「か、紙が、ペーパーが無くって拭けないんだ!」

 「なぁんだ、もぉ、早くここ開けて。」

 ドアを開けると、そこにはキラキラと光るお姉ちゃんがいて、真っ白なペーパーを差し出してくれたんだ。

 僕はそれを受け取るとお尻をキレイに拭いた。

 (なぁんだ、、棚に、新しいペーパーがあったのかぁ、、、恥ずかしいの我慢して、取りに行けば良かったなぁ~)

 「なかなか帰ってこないから、探したんだから!」
 お姉ちゃんはひろしの頭をコツンとやった。

 「あきらくんとたくみくんも、あんたがいなくなったから先に帰ったって思ったみたいだよ!」

 「ごめんなさい。」


 僕はなきベソをかいて、冷たくなったお尻をパンツにしまいながらトイレの水を流した。

 水道で手を洗ってハンカチで拭くと、お姉ちゃんが手を出して

 「帰ろうか。お母さん、待ってるよ」と、言った。

 僕は涙をふいて顔を上げて、
「うん。」とお姉ちゃんの手を握った。





 

 

 

 

 

 

 

 

 

 
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