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#04 君はどこ?

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 次の日は、雨がしとしとと降っていました。
 この日はうさぎは来ませんでした。
 朝から降り続く雨は、大地をぬらしてあたたかい土の匂いが一面に漂っています。

 こぐまは穴の中で、どんぐりを転がしたり、木の実を食べたりと、一日中ゴロゴロとして過ごしました。

 以前は一匹で穴の中で過ごしても何も思わなかったのに、今は何故か少し寂しい様な気がするのでした。
 「あーあ、つまんないな。」とこぐまは呟きました。


 その次の日は雨が止んで、春の陽射しがとても心地のよい一日でした。
 今日も、うさぎは来ませんでした。

 「うさぎさん、、一体どうしたんだろう、?」

 一日中、こぐまはうさぎの事を考えてゴロゴロとしていました。

 「毎日ここへ来ていたのに、何かあったのかな?」
 「何処かでケガでもして、動けなくなっていたらどうしよう」
 考えれば考えるほど、胸がドキドキとしてきました。

 こぐまは穴から外の様子を何度も何度ものぞいては、鼻を出したり、手を出したりしていましたが、すぐにまた穴の奥の寝床へ行くと、うずくまってどんぐりの匂いをクンクンと嗅いでいました。

 何度も繰り返しているうちに、ついにこぐまは居ても立っても居られなくなって、大きく息を吸うと、目をつぶって「えいっ」と穴から飛び出しました。
 (とにかく、うさぎさんを探しに行こう!)

 それからはとにかく走って 走って、
山の開けた場所を探しながら必死で野山を駆け上がりました。
 「あいたっ、、、」昔切られた木の切り株がこぐまの足を捉えて、けっつまずいてドスンとこぐまの体が地面に転がりました。お尻が少し痛みました。

 「うさぎさん、どこにいるの?」
 こぐまは少しだけ、心細くなりました。

 体を半分だけ起こして、座ったまま ふぅ~ とため息をつきました。
 その時、木々の隙間から光が差して、山の上に開けた野原があってそこに大きな木が見えました。
 ふいに、こぐまの鼻には木の実の甘い香りがかすかに届いていました。

 「もしかしたら」とこぐまは大きく目を見開いてスックと立ち上がると、木の実の野原を目指して勢い良く走り出しました。


 
 

 
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