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第一章 柔軟な身体
第一話 コマネチ知ってる?
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「コマネチ」を知っているだろうか?
元々はルーマニアの体操選手の名前であるが、ビートたけしが昭和に流行らせた一発ギャグである。
体操選手のレオタードの股のV字の形を両手で示し、「コマネチっ!」と言いながら両膝を上部に勢い良く引く。
この時の指先の角度は35度と言われているらしい。
※詳しく知りたい方は動画で検索して見てみると良いだろう。
何故突然このコマネチの話が出たかというと、一部のご家庭ではこれが一発で体を柔らかくする動作として頻繁に登場しているらしい、、という謎に満ちた事実を耳にしたからである。
私のコマネチへの認識は芸能人の有名な過去のギャグとしてのものでしか無かった。
なので、にわかに信じ難い話だが一部始終をお話するので少しだけお付き合い願いたいのである。
____________
私が仕事の出張修理を行うために、あるお宅へお邪魔した時の話だ。
本日はDVDデッキの修理と接続である。
家主は三十代後半の女性で、この時はママ友が数人遊びに来ていた。
リビングに通され、私はデッキ修理に伴い次第に空気となっていった。
キッチンの大きなテーブルではすっかり健康ネタが出来上がっている。
私はいつものように空気をまとっては、しっかりと聞き耳をたてていた。
「うちの子、空手やってても全然上達しなくて~。」
「でもすごーく練習してるよね。」
「うんー、体が硬いのよね。
前屈も床に届かないし、足も上がらないから全然点決められなくって~、、」
「えー、じゃあ
コマネチ知ってる?」
?、、、?
私は聞き間違いかと耳を疑った。
「え?あの、
たけしがやってたやつ?」
「そうそう、ギャグのコマネチ!」
聞き間違いでは無かった。
あってた。でも、
いったい、ナンノカンケイガ、、。
あまりの唐突さに自分の脳内コンピューターがパニックを起こしかけている。
そんな私の同様に容赦はなく話は降り注がれる。
「あれを全力でやると体柔らかくなるよ。」
全力デヤルト体ヤワラカクナルヨ。
はて?
どういう意味やらさっぱり、、。
「なんかね、ここの股の筋肉がほぐれて血流が良くなったら体全体がほぐれるらしいのよね。」
「えー、ほんとぉ~?」
「ここに体の血液を流すポンプがあって~、それを~」
「相撲のね、シコ踏むみたいに
がに股で膝を曲げると
体の中の血液がダーッと流れるんだって~。」
えー、うっそぉ、、、
コマネチは信じ難いが後半ちょっとまともな事を言っているぞ。
と思っているうちに修理のめどが
ある程度ついた。
「あのぉ、修理終わりました。」
家に帰って風呂に入り、一杯やろうかと冷蔵庫に手を伸ばす。
ふと昼間のコマネチの話を思い出す。
くだらない話だな、と思いながらも試してみたい衝動にかられてしまう。
まずは自分の体の様子を伺うために小学校以来の前屈をしてみる。
硬い、、、踏ん張ってみても床に手が届かない。
マイナス14センチぐらいなものかな。
次は空手の真似事をしてみる。
壁の角に足を上げて上がった所に作業用テープを貼ってみると、自分では上げたつもりが腰の位置よりも上がっていない。
想像はしていたが、これほど酷いとは、、、。
ではいよいよコマネチだ。
股の筋肉がほぐれるらしい「ここ」と呼ばれる場所(太ももの付け根)の線に合わせて手のひらを伸ばし斜め上にスライドさせ、
「コマネチっ」
夜中なので声は小さめにやってみる。
一体自分は何をやっているんだろうと思いながらも、主婦の井戸端会議のリスペクトゆえに体が実践してみることを止めようとしないのである。
まてよ、、あの主婦は「全力で」と言っていた。
次は渾身の力を込めて開脚広めの
「コマネチっ!」
自然に声量が上がってしまった。
おっと、何回すればいいのか聞きそびれてしまっていた。
本当は何十回かしなければいけないものかもしれない。
けれどとりあえずは一回で駄目だったらこのネタはボツとしようではないか。
さて、、
軽い気持ちで前屈をしてみる。
スゥ、、、ッ、、
膝を曲げることなく指先が床に届く。
おや、?まさか。
たった一回ですよ??
次は空手風の足上げの為にもう一度、
「コマネチっ!」
以前より勇ましい。
空手の足上げもにわかに力が入る。
「ハッ。」
掛け声も付けちゃったりなんかして、、、
ハッと足を上げた瞬間
軽く腰を超えた位置につま先がかかる。
おーーーーーーっ!!
これは、、!!
コマネチをこのような形でもう一度口にする日が来るなんて、、
そしてこの懐かしい一発ギャグが中年を夜中に1人感動させる日が来るとは誰が想像しただろうか。
これは続けると柔軟な体というのもひょっとして、ひょっとすると手に入れられるかもしれないぞ!などと少しだけ胸が温まった夜であった。
やはり主婦の健康ネタのリスペクトは、これからも続くのである。
●結果には個人差がありますので御了承願います。
元々はルーマニアの体操選手の名前であるが、ビートたけしが昭和に流行らせた一発ギャグである。
体操選手のレオタードの股のV字の形を両手で示し、「コマネチっ!」と言いながら両膝を上部に勢い良く引く。
この時の指先の角度は35度と言われているらしい。
※詳しく知りたい方は動画で検索して見てみると良いだろう。
何故突然このコマネチの話が出たかというと、一部のご家庭ではこれが一発で体を柔らかくする動作として頻繁に登場しているらしい、、という謎に満ちた事実を耳にしたからである。
私のコマネチへの認識は芸能人の有名な過去のギャグとしてのものでしか無かった。
なので、にわかに信じ難い話だが一部始終をお話するので少しだけお付き合い願いたいのである。
____________
私が仕事の出張修理を行うために、あるお宅へお邪魔した時の話だ。
本日はDVDデッキの修理と接続である。
家主は三十代後半の女性で、この時はママ友が数人遊びに来ていた。
リビングに通され、私はデッキ修理に伴い次第に空気となっていった。
キッチンの大きなテーブルではすっかり健康ネタが出来上がっている。
私はいつものように空気をまとっては、しっかりと聞き耳をたてていた。
「うちの子、空手やってても全然上達しなくて~。」
「でもすごーく練習してるよね。」
「うんー、体が硬いのよね。
前屈も床に届かないし、足も上がらないから全然点決められなくって~、、」
「えー、じゃあ
コマネチ知ってる?」
?、、、?
私は聞き間違いかと耳を疑った。
「え?あの、
たけしがやってたやつ?」
「そうそう、ギャグのコマネチ!」
聞き間違いでは無かった。
あってた。でも、
いったい、ナンノカンケイガ、、。
あまりの唐突さに自分の脳内コンピューターがパニックを起こしかけている。
そんな私の同様に容赦はなく話は降り注がれる。
「あれを全力でやると体柔らかくなるよ。」
全力デヤルト体ヤワラカクナルヨ。
はて?
どういう意味やらさっぱり、、。
「なんかね、ここの股の筋肉がほぐれて血流が良くなったら体全体がほぐれるらしいのよね。」
「えー、ほんとぉ~?」
「ここに体の血液を流すポンプがあって~、それを~」
「相撲のね、シコ踏むみたいに
がに股で膝を曲げると
体の中の血液がダーッと流れるんだって~。」
えー、うっそぉ、、、
コマネチは信じ難いが後半ちょっとまともな事を言っているぞ。
と思っているうちに修理のめどが
ある程度ついた。
「あのぉ、修理終わりました。」
家に帰って風呂に入り、一杯やろうかと冷蔵庫に手を伸ばす。
ふと昼間のコマネチの話を思い出す。
くだらない話だな、と思いながらも試してみたい衝動にかられてしまう。
まずは自分の体の様子を伺うために小学校以来の前屈をしてみる。
硬い、、、踏ん張ってみても床に手が届かない。
マイナス14センチぐらいなものかな。
次は空手の真似事をしてみる。
壁の角に足を上げて上がった所に作業用テープを貼ってみると、自分では上げたつもりが腰の位置よりも上がっていない。
想像はしていたが、これほど酷いとは、、、。
ではいよいよコマネチだ。
股の筋肉がほぐれるらしい「ここ」と呼ばれる場所(太ももの付け根)の線に合わせて手のひらを伸ばし斜め上にスライドさせ、
「コマネチっ」
夜中なので声は小さめにやってみる。
一体自分は何をやっているんだろうと思いながらも、主婦の井戸端会議のリスペクトゆえに体が実践してみることを止めようとしないのである。
まてよ、、あの主婦は「全力で」と言っていた。
次は渾身の力を込めて開脚広めの
「コマネチっ!」
自然に声量が上がってしまった。
おっと、何回すればいいのか聞きそびれてしまっていた。
本当は何十回かしなければいけないものかもしれない。
けれどとりあえずは一回で駄目だったらこのネタはボツとしようではないか。
さて、、
軽い気持ちで前屈をしてみる。
スゥ、、、ッ、、
膝を曲げることなく指先が床に届く。
おや、?まさか。
たった一回ですよ??
次は空手風の足上げの為にもう一度、
「コマネチっ!」
以前より勇ましい。
空手の足上げもにわかに力が入る。
「ハッ。」
掛け声も付けちゃったりなんかして、、、
ハッと足を上げた瞬間
軽く腰を超えた位置につま先がかかる。
おーーーーーーっ!!
これは、、!!
コマネチをこのような形でもう一度口にする日が来るなんて、、
そしてこの懐かしい一発ギャグが中年を夜中に1人感動させる日が来るとは誰が想像しただろうか。
これは続けると柔軟な体というのもひょっとして、ひょっとすると手に入れられるかもしれないぞ!などと少しだけ胸が温まった夜であった。
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●結果には個人差がありますので御了承願います。
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