髪マンガ☆

天仕事屋(てしごとや)

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第3話 寝癖

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 髪の毛はそんなに伸びてないのだが、トリートメントの予約をしてしまい、再びここに来てしまった。

 もちろんあの美容院だ。
 表のガラスのドアにはお店の名前なのか「solace」と書いてある。

 このお店にはカフェも併設されていて、予約の時間までをコーヒーなどを飲んで過ごすことが出来る。

 私はアイスカフェモカを飲みながら時間を潰していた。、、というよりもガラス越しに彼を見ていた。
 八神保都(やがみたもつ)さん。年配のお客さんの髪の毛をカットしている。
 白いシャツの襟元から見える喉仏や、まくった袖からの腕の筋に見入ってしまう。

 はぁ~ ズズズッ
 頬杖をつきながらカフェモカをすする。
 真剣な目で髪の毛を見つめて優しく指ではさみ、その束をカットして撫でるように流す仕草、、、。  
 はぁ、、、、「髪になりたい」とすら見ているものを思わせるこの感じは何なんだろうか。

 「何だか気になっちゃうのよね。たもっちゃんて。」
 うんうん。 ズズズッ  、、、?
 今、私の心の声がっ!

 驚いてカウンター席の横隣を見ると年配の女性がため息まじりに笑みを浮かべながらこちらを見ている。
 み、見てたの気づかれた~!
 恥ずかしくてどう返していいのか分からず、私は聞こえないふりをして目を逸らしてしまった。、、一度目はあったけれど。ごめんなさい!

 「あなたも、たもっちゃんの事気になってるんでしょう?」
 、、、あなたも?この人も八神さんの事??

 そう一言いうと60代ぐらいのおしゃれなマダムが自己紹介を始めた。
 彼女は天パの金子くんには「山手さん」と呼ばれているが八神さんには「すみさん」と呼ばれてるらしい。

 「私もねぇこんなおばちゃんだけど、たもっちゃんの事はなにか放っておけなくてね~。」

 「昔、たもっちゃんがまだ新人の頃に私の髪もやってもらった事があってね、、。」
とニコニコしながら話を続ける。


 _______________________________
 
 山手「今日はカット無しでお願い。」
 そういう言葉をよそに無言で八神は髪を触っている。
 八神「、、、あのぉ、ここの髪の毛っていつも跳ねてきますよね、、?」 
 山手「、、そうなのよ!毎回ちゃんとセットしてもそこだけ上手くいかなくって、、」

 八神「じゃあ、」シャキンッ。
 彼女が言い終わると同時に八神はハサミでそのくせ毛を切ってしまった。
 山手「?!、、、あなた!今日はカット無しでって言ったでしょっ?!」
 八神「、、でも跳ねるんですよね?」
 山手「だからって!」
 八神「寝癖がついてなおらないって事は、そこに必要ない髪が余ってるってことでしょ?」
 「髪だって、いつまでも要らないって言われ続けて居座るのもキツイと思うんですけど。」

 山手「、、、、、。」

 _______________________________

 「初めはこの子何言ってるの?って思ったわ。」
「でもそれまで腹がたってたのに、急に腹立たしさが収まって、、、それもそうだなって。」

「ちょうど家でも土地を手放すかどうかだとか、断捨離も始めてもなかなか進まずにいたし、、、。」

 「要らないって分かってるのになんだか執着してたのかなぁって思ってね~。」
 「あの時はたもっちゃんの言葉に助けられたのよね~。その後結局カットもお願いしちゃったの。」
「たもっちゃんは店長にめちゃくちゃ怒られてたけど、今だにお願いしているのよ。」

 八神さんの事を話している彼女は、まるで息子の事を話す母親のように嬉しそうだった。

 その時チラッと八神さんがこちらに気付いて視線を向けると、にっこり口元を弛ませて軽く頭を下げる。
 その仕草にこちらまで顔が緩んで、二人で照れながら頭を下げる。
 はっと二人で同じ事をしているのに気付いて吹き出してしまった。
 「やぁねぇ」と山手さんは私の肘を小突く。

 山手さんはアイスティーを一気に飲み干すと、私に手を振って美容院に入り、八神さんの元へと軽い足取りでかけていく。
 なんだか韓流スターの追っかけの様に八神さんに手を振る山手のおばちゃんは少し可愛らしかった。

 その後しばらく八神さんが山手さんの髪の手入れをしているのをずっと見ていた。

 二人の会話は聞こえないが、八神さんは山手さんが何か言うと照れ臭そうだったり時に煩わしそうで答えにくそうにしている。けれどその後の笑顔はとても優しい。
 その姿は親子のようでとても微笑ましかった。

 何か山手さんのお陰で私の知らない八神さんの一面を見られて、一人でとても得した気分になった。
 いっそ今日はこれだけでもいいかなと思うぐらいほっこりした時間を楽しむ彩芽だった。

 




 ____________________________

 山手「ちゃんとご飯食べてるの?」
 八神「はい、食べてます。」
 山手「誰かいい子はいないの?」
 八神「なんでそんな事、報告するんです?」笑
 山手「いるの?いないの?」笑
 八神「教えません。」笑
 山手「もぅ。」
 八神  (おかんか。)笑  




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