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第二章
父との再会2
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有明は十年前と変わらず優しく未令を抱きしめ、ごめんなごめんなと何度も謝った。
「お父さん、力があんまりなかったせいでおまえのおじいちゃんを助けられなかった。康之にも会わせたかったのに、自分まで捕まって幽閉されるとは情けないよな」
「じゃあお父さんはまだおじいちゃんとおばあちゃんには会えてないの?」
ああと有明は頷く。
「未令は力はあるのか?」
「ううん」
未令が首を振ると有明はほっとしたように息をついた。
「未令の髪は黒で、血族の赤い色を受け継いでいないものな」
「お父さんはいつも染めてたの?」
未令は有明の見慣れない赤い髪に手を伸ばした。
今の有明は未令の見知った黒髪ではなく、赤い髪をしている。ごわごわとした手触りの固い髪だ。
「ずっと黒く染めてたんだよ。まさかこの赤い髪にそんな意味があるとはここに来るまで知らずにね。康之も元々赤い髪だったんだが、中学生頃だったかな。次第に黒髪になっていったな。でも十年前のあの日、一人の男が訪ねてきた。白銀の髪の男だ。金の術者、奈生金だった。私はその男の顔に見覚えがあった」
父が十歳の時だった。今でもはっきりと覚えている。
背の高い、黒いジャケットを羽織った白銀の男が両親を訪ねてきたのだと。
「両親はその男のことをよく知っているようで男の顔を見たとたん表情が強張った。男は私と兄にはわからない話をして帰っていった。そのすぐあとだ。両親は失踪した」
失踪後、有明と康之は施設に入所し、以来両親とは会っていない。
ただ両親は失踪するとき多額のお金を有明と康之に残した。
「そのお金のおかげで私と康之は人並みに成人できた。でも当時父は三十五、母は三十歳だったんだ。普通の会社員をしていた父と、専業主婦だった母がその若さでどうやってあれだけのお金を用意できたのか」
その後は平穏に月日が流れ、両親が失踪して三十年後、再びあの白銀の男が現れた。
「両親に会わせてくれると言うから、どうしても行かずにはいられなかった」
平安国を訪れ、それこそ世界がひっくり返るほどの衝撃だったと父は言う。
両親がまさか異世界の人間で、帝から逃げるために平安国からすれば異世界である日本にまで逃げてきたとは。
「でもそのせいでこんなに長い間、未令を一人にしてしまうとは思いもしなかった。本当に悪かった」
「まだ会えてないんだよね……。祥文帝から面会の許可は下りなかったの?」
「ああ。だめだった。未令は、私との面会を祥文帝がよく許可してくれたな」
未令は先ほどの薙刀での応戦を話した。
「未令は薙刀をやっているのか」
いつか見せてくれと少し寂しそうに有明は笑う。最後は焔将に助けられた経緯も話した。
「焔将さまが?」
あの方はときどき気まぐれな方だからなと有明は納得する。
焔将は時折有明の元を訪れては平安国のことを語り、日本のことを聞いていくそうだ。
何を考えているのかつかめない人間だが、安倍晴明の生きた日本には興味があるようだという。
「お父さん、力があんまりなかったせいでおまえのおじいちゃんを助けられなかった。康之にも会わせたかったのに、自分まで捕まって幽閉されるとは情けないよな」
「じゃあお父さんはまだおじいちゃんとおばあちゃんには会えてないの?」
ああと有明は頷く。
「未令は力はあるのか?」
「ううん」
未令が首を振ると有明はほっとしたように息をついた。
「未令の髪は黒で、血族の赤い色を受け継いでいないものな」
「お父さんはいつも染めてたの?」
未令は有明の見慣れない赤い髪に手を伸ばした。
今の有明は未令の見知った黒髪ではなく、赤い髪をしている。ごわごわとした手触りの固い髪だ。
「ずっと黒く染めてたんだよ。まさかこの赤い髪にそんな意味があるとはここに来るまで知らずにね。康之も元々赤い髪だったんだが、中学生頃だったかな。次第に黒髪になっていったな。でも十年前のあの日、一人の男が訪ねてきた。白銀の髪の男だ。金の術者、奈生金だった。私はその男の顔に見覚えがあった」
父が十歳の時だった。今でもはっきりと覚えている。
背の高い、黒いジャケットを羽織った白銀の男が両親を訪ねてきたのだと。
「両親はその男のことをよく知っているようで男の顔を見たとたん表情が強張った。男は私と兄にはわからない話をして帰っていった。そのすぐあとだ。両親は失踪した」
失踪後、有明と康之は施設に入所し、以来両親とは会っていない。
ただ両親は失踪するとき多額のお金を有明と康之に残した。
「そのお金のおかげで私と康之は人並みに成人できた。でも当時父は三十五、母は三十歳だったんだ。普通の会社員をしていた父と、専業主婦だった母がその若さでどうやってあれだけのお金を用意できたのか」
その後は平穏に月日が流れ、両親が失踪して三十年後、再びあの白銀の男が現れた。
「両親に会わせてくれると言うから、どうしても行かずにはいられなかった」
平安国を訪れ、それこそ世界がひっくり返るほどの衝撃だったと父は言う。
両親がまさか異世界の人間で、帝から逃げるために平安国からすれば異世界である日本にまで逃げてきたとは。
「でもそのせいでこんなに長い間、未令を一人にしてしまうとは思いもしなかった。本当に悪かった」
「まだ会えてないんだよね……。祥文帝から面会の許可は下りなかったの?」
「ああ。だめだった。未令は、私との面会を祥文帝がよく許可してくれたな」
未令は先ほどの薙刀での応戦を話した。
「未令は薙刀をやっているのか」
いつか見せてくれと少し寂しそうに有明は笑う。最後は焔将に助けられた経緯も話した。
「焔将さまが?」
あの方はときどき気まぐれな方だからなと有明は納得する。
焔将は時折有明の元を訪れては平安国のことを語り、日本のことを聞いていくそうだ。
何を考えているのかつかめない人間だが、安倍晴明の生きた日本には興味があるようだという。
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