やっぱりやらねば(続)

Anastasia

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アイラと廉

その7-03

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「あら、久しぶりね」

 それで、意味深できれいな微笑が上がり、それ以上に、意味深な色を映した瞳で、廉を見上げて来る。

 初めて出会ったマレーシアの時から、全くその外見も容姿も変わらない。
 超がつくほどの清楚な雰囲気を醸し出し、小柄で華奢で、そして、艶々と輝く黒髪に神秘的な黒い瞳を持っている。

 ミカ・シバザキ。

 アイラの一族では、一番最初の女児ということで、一族中で可愛がられたらしい“お姫様”である。

 なのに、その外見と容姿に反して、性格は大人しくはない。
 アイラのように豪快で、強気のある態度でもないが、頭の回転が早く、その口に勝てる者はいないと、されているらしい。

 おまけに、昔から器用で、なんでもチャチャっとこなしてしまう癖がある為、時間を決して無駄にしない。

 面倒なことは、さっさと自分で勝手に片づけてしまうほどだ。

 昔は、父親にならい、会計士の免許をもっている。

 仕事先が国際企業で、シンガポールをヘッドクォーターとしている大会社に入社できたのだが、あまりに仕事がつまらなさ過ぎると、さっさと辞めてしまい、その時にできたコネで、旅行会社のマネージャーに転換したと言う、あまりに聞かない話だ。

 だが、やり手で、実行派。
 それで、グングンと業績を伸ばしていったので、香港の支部長はどうか、と誘われて、一気に昇進である。

 それで、今は、ベースを香港に移していた。

「お久しぶりです」

 清楚で可憐な容姿を持ちながら、その瞳は、いつも、相手を興味深げに観察していた。
 わざと、男を試すような、煽るような、そんな色香を含ませた眼差しだ。

 久しぶりに会っても、全く、その特徴も変わっていないようだった。

 美花だって、あのマレーシア以来、廉に会うのは久しぶりである。

 あの時は、(謎の)友達グループで、今は、アイラの彼氏だ。

 あった時から変わらず、あまりに冷静過ぎる態度に、淡々と何にも動じない様相だ。

 美花の視線が、通されたアパートの居間を、サッと動いていく。

「随分、いい場所に住んでいるのね」
「まあ、街には近いから便利ね」

 美花がやって来るというので、一応、仕方なく仕事を早めに終わらせたアイラは、空港まで美花を迎えに行き、そのまま、二人の住んでいるアパートに戻って来た。

 その日は、三人で夕食を取り、本格的に、明日からはウェディング準備の手伝いに入るらしい。

 アイラと廉は普段通り仕事があるので、朝食を済ませると仕事に向かう。

 その時は、美花はまだ寝ているらしく、アイラがメモを残して、アパートを後にしていた。
 アイラが何件か目を付けていた、ウェディングドレスのサロンをリストしてあるので、美花は目が覚めたら、一人で、まず、サロン回りなそうな。

「どうだった?」
「まあまあね。全部回ったの?」

「そうよ。今日は、ドレス見て回るんじゃないもの。どんなドレスを置いてあるのか、その程度の確認よ」

 夕食の席で、長旅の疲れも見せず、今日一日の報告を済ます美花だ。

 アイラは、5件ほどのサロンをピックアップしていた。

 一応、値段の上下をカバーできるように、高級サロンやブティックが数件、中くらいのと、お値段もそれほど高過ぎないブティックが一件と言った所だ。

「明日、ミカと一緒にアリゾナに発つから。もう、結婚式まで3週間もきってるんだもん。時間がなさ過ぎだわ。確認したら、日曜に戻って来るわ」
「そう」

 それで、それだけの説明で納得しているし、それ以上の説明を促さないし、廉はいつもと変わらず、淡々としたものだ。

 こうやって夕食を一緒にしても、廉は全く態度が変わらず、美花が勝手に押しかけてきても、文句を言っている様子でもない。

 そんな淡々とした簾の様子を、ただ、観察している美花はその日の夕食を終えていた。

 それで、アイラと美花がアリゾナに向けた旅発った――はずなのに、なぜか、次の日、朝一番の飛行機で、またサンフランシスコに戻って来たのだ。

 今度は、セスのブライドとなる恋人を一緒に伴って。

「これはまた、随分、お早いお帰りで」

 昨夜、アイラから電話があり、朝一番で空港に迎えに来てよね、と言われた廉は、車を出して空港にまでやって来ていた。

 アイラと美花が連れて来た女性は、Tシャツにジーンズ、そして、スニーカーだけといったとてもシンプルな服装でやって来た。

 いつも、きちんと(完璧なほどに)着飾っているアイラと美花の隣で、そのシンプルさがあまりに浮き立つものだ。

 黒髪に近い焦げ茶色の髪の毛はストレートで、濁りのない珍しいグレーの瞳が印象的だった。


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