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Part 3

Е.д 楽しみ - 11

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 今まで、女性の影どころか、そんな浮いた噂一つ上がらなかったほどの“仕事の鬼”である騎士団の副団長で、第三王子殿下であるギルバートだったはずだ。

 なのに、あの一瞬で――ギルバートが独り身ではない事実を、全貴族令嬢に見せつけたような場面となってしまった、と言っても過言ではない。

 夫と揃い、あの場に参列していたロニアだって――さすがに、あの登場は予想していなく、手に持っていた扇の陰で、ポカンと、口を開けてしまっていたのを覚えている。

 夫のハラルドは、あの場で何も口に出さなかったが、ギルバートが、伯爵令嬢のエスコート役を許されたその事実を、どうやら、知らされていなかったようである。

 夜会の間中、貴婦人からも令嬢からも、ものすごい嫉妬の嵐が吹き荒れるようなきつい眼差しを向けられ、衆人環視の中、ギルバート達は、四六時中見張られていたも同然の場だった。

 それでも、ギルバートはセシルと一緒に、随分、楽し気な様子だった(対するセシルは、全然、生きた心地がしませんでしたわよ……)。

 あれからしばらく、王宮内でも、社交界でも、セシルの話題で持ちっきりだった。
 だが、正にその噂の渦中にいるセシル本人は王国にいない為、噂だけが膨れ上がり、勝手な憶測だけが膨れ上がり、またも、悪口や陰口だけが飛び交っていたような状態だ。

 そんなうるさい喧噪に終止符を打つかのように、またしても衝撃なニュース。
 第三王子殿下の婚約である!

 もう、去年からずっと、ほぼ一年中、社交界での“超噂の人物No1”をキープした噂のご令嬢は(そんなもの、セシルは一度として望んでいません……)、婚約の儀に現れて――現れただけで、年を明けての婚儀まで、また、完全に消えてしまった状態だ。

 近づきたくても、本人不在。
 謎の令嬢で、誰一人として、セシルの素性も知らなければ、どんな令嬢であるのかも全く知らないままだった。

 それに加え――婚約が決まっただけの立場で、ロニアからしても、(あまりに) 不自然なほどの王家の保護。

 ロニアだって、夫のハラルドに問い詰めてみたほどだ。


「どうなっているんですの?」


 だが、夫のハラルドは、国王陛下が、ギルバート殿下の我儘わがままを許され承諾なされただけだ、なんて説明にもならない説明をして、ロニアを不満にさせたものだった。

 王国にも、王家にも、そして、王族にも全く関係もなく、因縁もないはずの他国の令嬢なのに、もうすでに、王家の――全員から、その結婚を許されている令嬢など、ロニアだって聞いたことはない。

 ロニアは夫のハラルドを通して、ほとんどの貴族夫人や令嬢が知らない情報を耳にしている。“噂”と言えど、ロニアは――ほぼ、事実を耳にしていたようなものだ。

 だから、ロニアだって、王家全員から“保護”されるほどの令嬢を、一度、しっかりと確認しておきたかったのだ。

 ヴォーグル侯爵家は侯爵家筆頭で、これから、新国王陛下の統治下で、王国と王家を支えていかなければならない重要な立場なのだ。

 他国の若いご令嬢がやって来て、王国を――更に、王家をかき回されては、たまったものではない。
 ロニアは、ギルバートの婚約者となったかの伯爵令嬢を、見極める必要があるのだ。

 王家の介入なしに。

「あぁ、楽しみですわぁ」
「まずは婚儀が先だろう」
「ええ、そうですわね。それも楽しみですわぁ」

 王国1~2を争う、“最良物件”をさらっていったかのご令嬢ですものねえ。婚儀でも、それは、さぞ、美しい花嫁になることでしょうに。

 うふふふふと、意味深な笑みが緩く弧を描き、ロニアの口元に浮かんでいく。

「随分、楽しそうだな」
「ええ、それはもう。待ちきれませんわ」




 ゾワッ……と理由も分らず、なぜか――ひょうに目をつけられてしまったかのような悪寒がして、先行き不安になるべきなのかしら……などと、こっそり、セシルが感じていたなど誰が知り得ようか。



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読んでいただき、ありがとうございます。
Umid qilamanki, siz ushbu epizoddan zavq oldingiz
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