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Part 3
Е.д 楽しみ - 09 (セシルの歴史教室:辺境伯)
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そんな風に恋焦がれて、思いが溢れてくるかのように熱く、甘く囁かれたら、セシルだって、つい、流されてしまいそうになる。
「はしたない、女はお嫌いですか……?」
「え……?」
「お嫌い、ですか?」
「あなたを嫌いになるはずもない」
まだ二人とも間近で見つめ合ったまま、お互いの瞳に自分自身の瞳を映し、お互いの吐息が肌をこすっていく。
「絶対に。一生涯の、純愛ですから」
「……っ……」
そのセリフは――口説き文句じゃなかったとしても、グサッと、女心に突き刺さり、刺激するものだ。
「……ギルバート様になら、どんな女性でも、溺れてしまいますわね……」
「溺れて、下さい。私だけに……」
熱に浮かされたように瞳を熱く輝かせ、もう我慢できないかのように、グッと、ギルバートが唇を押し付けて来た。
そして、その腕が力強くセシルを抱き寄せる。
「……セシル嬢……」
「……っ――ギルバート、様……」
普段から騎士団で鍛えているだけあり、抱き寄せられ、少し向きを変えたセシルの体に当たるギルバートの胸板は、硬いものだった。
でも、セシルを少しだけ抱きしめる腕はどこまで優しくて、まるで壊さないように、宝物でも扱うかのような触れ方だ。
それなのに、口付けだけは、その気持ちが素直で。
強く押し付けてきて、それ以上に、セシルを欲しがって、望んで、セシルにも、まるで同じことを望んで、息もつけないほどに。
「……ふ……っ……」
押さえつけられている唇の隙間で呼吸をしようにも、また、すぐに深く口付けされる。
息苦しくなって、セシルが少しだけギルバートの胸を押し返すようにした。
それで、ふっと、ギルバートが唇を離した。
セシルを真っすぐに見つめてくる瞳が――燃え上っていて、その渇望している色があまりに強く、腰が砕けてしまいそうな壮絶な色気を孕んでいる。
熱に浮かされて、止められなくて、その熱を押し込めるかのようにギルバートが目を瞑り、こつんと、額を合わせてくる。
「……あなたを、前にすると、もう……どうにも、歯止めがきかなくて……」
普段冷静沈着なギルバートの、一体、どこにこんな熱情を隠しているのだろうか。
「……ギルバート様、はしたない女は、お嫌いですか……?」
「いいえ、あなたなら、全部、惚れ込んでしまいそうです。あたなは、私が、どれほどあなたに溺れているか、ご存知ないでしょう?」
「………………」
その無言に、くすっと、ギルバートが笑う。
「――結婚したら……、期待しちゃいます……」
「ええ、してください」
ギルバートが嬉しそうに破顔した。
ここでちょっと歴史のおさらないなど?
~*~ セシルの歴史教室:辺境伯 ~*~
辺境伯と聞いて、大抵、国境の端にある領土を守る伯爵家、というような認識があると思いますが、それはちょっとだけ違います。
国境の端を守る、と言う点では当たっています。
辺境伯(Margrave)。この場合、“伯”は称号で、“伯爵”を意味するのではありません。
この称号や地位は、中世ドイツと英国の意味合いが両方混ざっています。大抵、この地位は、封建社会では世襲制となることも多かったのです。
Margraveは、ドイツ語から変換した英語とフランス語の形態です。独語では、Markgraf。
“Mark”は、“march”または“mark”という語源で、意味は“Border land(国境)”。
そして、“Graf”は、“Count(伯爵)”と言う意味になります(by en.wikipedia.org/wiki/Margrave)。
意味的には、英国の “Marcher Lord(国境付近の領主、君主)”に近いものでしょう。
神聖ローマ帝国やオーストリア帝国などの中世ドイツ社会では、“辺境伯”は軍事君主として任命された立場ですが、貴族の階級をもらっている人も、この称号をもらうことができます。
神聖ローマ帝国の階級制では、大まかに言うと、
• Emperor (Kaiser、皇帝)
• Archduke (Erzherzog、大公)
• Duke (Herzog、公爵)
• Margrave (Markgraf、辺境伯), Landgrave (Landgraf、封建諸侯の方伯), Count Palatine (Pfalzgraf、中世ドイツの宮廷伯)
というようなものがあります(もう少し細かくなるんですけれどね(笑))。
最後の三つの階級は、ほぼ同じ階級にあたります。
辺境伯は、国境区域の軍事的侵略を防ぐこと、または、王国や帝国の軍事的戦争の通過点となる重要な区域を任される為、政治的にも軍事的にも、軍力と自治権を与えられることがよくあります。
その為、他の貴族と比例して、軍事、政治の多大な力を行使することができます。
伯爵(Count)より、階級はもちろん上です。
だから、ただの辺境にいる伯爵サマ、ではないんですね。
一応、公爵(Duke)の下です。
辺境伯(Margrave)は、オーストリア帝国の南方や、帝国時代のイタリアの北方では、侯爵(Marquis)と、イタリア語で称されることもありました。
“辺境伯”は、“伯爵”ではありません。
ちなみに、方伯(Landgrave)は、皇帝から任命された貴族階級で、自領で王権を行使することができる“伯爵”です。
そんなこんなで、ちょっと歴史雑談でした。
~*~~*~~*~~*~~*~~*~~*~
~・~・~・~・~・~・~・~・
読んでいただき、ありがとうございます。
Gobeithio eich bod wedi mwynhau'r digwyddiad hwn
~・~・~・~・~・~・~・~・
「はしたない、女はお嫌いですか……?」
「え……?」
「お嫌い、ですか?」
「あなたを嫌いになるはずもない」
まだ二人とも間近で見つめ合ったまま、お互いの瞳に自分自身の瞳を映し、お互いの吐息が肌をこすっていく。
「絶対に。一生涯の、純愛ですから」
「……っ……」
そのセリフは――口説き文句じゃなかったとしても、グサッと、女心に突き刺さり、刺激するものだ。
「……ギルバート様になら、どんな女性でも、溺れてしまいますわね……」
「溺れて、下さい。私だけに……」
熱に浮かされたように瞳を熱く輝かせ、もう我慢できないかのように、グッと、ギルバートが唇を押し付けて来た。
そして、その腕が力強くセシルを抱き寄せる。
「……セシル嬢……」
「……っ――ギルバート、様……」
普段から騎士団で鍛えているだけあり、抱き寄せられ、少し向きを変えたセシルの体に当たるギルバートの胸板は、硬いものだった。
でも、セシルを少しだけ抱きしめる腕はどこまで優しくて、まるで壊さないように、宝物でも扱うかのような触れ方だ。
それなのに、口付けだけは、その気持ちが素直で。
強く押し付けてきて、それ以上に、セシルを欲しがって、望んで、セシルにも、まるで同じことを望んで、息もつけないほどに。
「……ふ……っ……」
押さえつけられている唇の隙間で呼吸をしようにも、また、すぐに深く口付けされる。
息苦しくなって、セシルが少しだけギルバートの胸を押し返すようにした。
それで、ふっと、ギルバートが唇を離した。
セシルを真っすぐに見つめてくる瞳が――燃え上っていて、その渇望している色があまりに強く、腰が砕けてしまいそうな壮絶な色気を孕んでいる。
熱に浮かされて、止められなくて、その熱を押し込めるかのようにギルバートが目を瞑り、こつんと、額を合わせてくる。
「……あなたを、前にすると、もう……どうにも、歯止めがきかなくて……」
普段冷静沈着なギルバートの、一体、どこにこんな熱情を隠しているのだろうか。
「……ギルバート様、はしたない女は、お嫌いですか……?」
「いいえ、あなたなら、全部、惚れ込んでしまいそうです。あたなは、私が、どれほどあなたに溺れているか、ご存知ないでしょう?」
「………………」
その無言に、くすっと、ギルバートが笑う。
「――結婚したら……、期待しちゃいます……」
「ええ、してください」
ギルバートが嬉しそうに破顔した。
ここでちょっと歴史のおさらないなど?
~*~ セシルの歴史教室:辺境伯 ~*~
辺境伯と聞いて、大抵、国境の端にある領土を守る伯爵家、というような認識があると思いますが、それはちょっとだけ違います。
国境の端を守る、と言う点では当たっています。
辺境伯(Margrave)。この場合、“伯”は称号で、“伯爵”を意味するのではありません。
この称号や地位は、中世ドイツと英国の意味合いが両方混ざっています。大抵、この地位は、封建社会では世襲制となることも多かったのです。
Margraveは、ドイツ語から変換した英語とフランス語の形態です。独語では、Markgraf。
“Mark”は、“march”または“mark”という語源で、意味は“Border land(国境)”。
そして、“Graf”は、“Count(伯爵)”と言う意味になります(by en.wikipedia.org/wiki/Margrave)。
意味的には、英国の “Marcher Lord(国境付近の領主、君主)”に近いものでしょう。
神聖ローマ帝国やオーストリア帝国などの中世ドイツ社会では、“辺境伯”は軍事君主として任命された立場ですが、貴族の階級をもらっている人も、この称号をもらうことができます。
神聖ローマ帝国の階級制では、大まかに言うと、
• Emperor (Kaiser、皇帝)
• Archduke (Erzherzog、大公)
• Duke (Herzog、公爵)
• Margrave (Markgraf、辺境伯), Landgrave (Landgraf、封建諸侯の方伯), Count Palatine (Pfalzgraf、中世ドイツの宮廷伯)
というようなものがあります(もう少し細かくなるんですけれどね(笑))。
最後の三つの階級は、ほぼ同じ階級にあたります。
辺境伯は、国境区域の軍事的侵略を防ぐこと、または、王国や帝国の軍事的戦争の通過点となる重要な区域を任される為、政治的にも軍事的にも、軍力と自治権を与えられることがよくあります。
その為、他の貴族と比例して、軍事、政治の多大な力を行使することができます。
伯爵(Count)より、階級はもちろん上です。
だから、ただの辺境にいる伯爵サマ、ではないんですね。
一応、公爵(Duke)の下です。
辺境伯(Margrave)は、オーストリア帝国の南方や、帝国時代のイタリアの北方では、侯爵(Marquis)と、イタリア語で称されることもありました。
“辺境伯”は、“伯爵”ではありません。
ちなみに、方伯(Landgrave)は、皇帝から任命された貴族階級で、自領で王権を行使することができる“伯爵”です。
そんなこんなで、ちょっと歴史雑談でした。
~*~~*~~*~~*~~*~~*~~*~
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読んでいただき、ありがとうございます。
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