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Part 3
Е.г 思いはそれぞれ - 06
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色合いを考慮することは、第一の基本だ。顔色にも大きく左右されるし、お化粧でも、全く違った印象になってしまう。
元からの肌の色もあるし、ドレスを着ていく場所や、行事の内容によっても色合いを変えなくてはならない。
でも、体形に関係なく、ほとんどの令嬢や夫人が似ているデザインやスタイルのドレスを着ているから、自分の体形に合ったドレスを把握するべきだ、なんて言われたのは、カリーナにとっても初めてだった。
「……ご領主さまが見せてくださいましたドレスは、そのどれも……本当に素晴らしいものばかりでした。繊細な飾り付けや、優雅なドレスライン。そのドレスを着ているご領主さまは、とても美しく、それでいて厳かな雰囲気が漂っていました」
「まあ……、それは、ありがとうございます」
セシルも、面と向かってここまで直球で褒められたのは初めてである。
「コルセットもしていないのに、そのドレスの全てが全て、ご領主さまにとても良く似合っていらっしゃいました……。それで……、ご領主さまのドレス選びの間も、素材選びの間も、ずっと考えておりまして……。…………ご領主さまに一番似合うドレスを、ウェディングドレスを作るのなら、今のデザインでは、ない方が、良いのではないと、思ってしまい……」
「今のデザインでなければ、どのようなデザインを考えているのですか?」
「実は……コルセットなしで、それで……、こちらのお針子達から見せてもらった、ドレスや服のデザインパターンを、もう一度、お願いして、見させてもらったのですが……、領主様には、あの……お持ちのドレスのような、ドレスの裾の広がったようなドレスがよくお似合いではないかと……」
もごもご、もごもごと、はっきりしない説明をしているカリーナの前で、キラリン、とセシルの瞳が光っていたのを、カリーナは知らない。
コルセットなし。
その一言で、セシルの注意が一気に集中していたのだ。
コルセット使用は、この時代、どの王国でも至極当たり前の習慣になっている。ノーウッド王国だって、夫人や令嬢達が着ているドレスは、アトレシア大王国の流行っているドレスとさして変わりはない。
母親のレイナだって、いつもコルセット身に着けている。
だから、コルセット付きのウェディングドレスを紹介された時、アトレシア大王国の習慣に習い、セシルのウェディングドレスもコルセット付きのドレスになるだろうなと、セシルは初めから諦めていた。
なにしろ、現世(なのか前世) の記憶があるセシルは、幼い時から、自分の好んだドレスや服を作るように励んでいたから、領地のお針子達も、そうやって、セシルにしっかりと特訓された者達ばかりだ。
それで、今日このかた、実は、セシルはコルセット付きのドレスを着たことがなかったのだ。
普段は、夫人や令嬢達も、コルセットの締めを少々緩めてしまっても許されるのだろうが、今回は、王国内の正式な婚儀である。
国を挙げての式典、である。
元王子殿下の婚儀である。
そうなると、コルセットで死ぬほど腰を締め付け、これでもかっ! ――というほどの勢いで締め付けた、ものすごい細い腰を見せつけなければならないだろうな……と、密かに、その嫌な問題だけがセシルの悩めるところだったのだ。
今、コルセットなしで、なんて言いましたよね?
「裾が広がっているドレスとは、どのスタイルですか?」
「えーと……、あのぉ……、マーメイドスタイルも素敵でした。トランペット、ですか?」
「そうですね。フィット・アンド・フレア(Fit & Flare) も、よく使います」
「ああっ、そうです。その、“フィット・アンド・フレア”も、優雅な形で、とても美しいと思います。ただ。そういう風に、少々、体のラインを見せつけてしまったら……」
周囲から、王子の婚約者は男を誘い込んでいるのか――なんて、嫌な悪口を言われてしまうかもしれない。
「それで……、こちらのお針子達から、ドレスが膨らんで見えるかのように、ドレスの上から軽い生地のフレアを何段も重ねたり、長いレースを重ねてドレスに見えるにしたり工夫をしたら良いのではないか、と……提案されまして……。そのように、領主様がよく提案してくださったから、と……」
「そうですね」
簡単にセシルの了承を得て、パッと、カリーナが顔を輝かす。
「ですから、流れるような裾を伸ばして、その上から、フレアを重ねてボリュームを見せたら、いいんじゃないかと思いまして。こちらで流行っているレースを……、わたし達が作り上げるのは、たくさん時間がかかってしまうと思うんです……。レースは無理だとしても、刺繍をふんだんに取り入れたり、宝石の削り粉や、余った宝石の欠片をフレアの部分にまぶしたら、光に反射して、それはもう……きれいな仕上がりになるのではないかと」
「いい案ですね」
「そうですかっ?!」
あまりに嬉しくて、つい、カリーナの顔が緩んでしまう。
「デザイン画はできているのですか?」
「はいっ。一応、そのコンセプトで、数枚用意してあります」
「では、トップはどうするのです?」
「トップは……、ネックレスを強調したいので、オフショルダー気味ですが、そこまで肩を出さず、鎖骨を見せて、スクエア型にしようか、ハート型にしようか、今、考えています。カー・サルヴァソンさんに聞いて、大体のティアラの形も理解しましたので、ベールの長さもどうしようか、考えています。ただ、顔を隠すだけではなく、ドレスの裾が伸びていますから、ベールも流れるような形にできたらな、なんて……」
~・~・~・~・~・~・~・~・
読んでいただき、ありがとうございます。ブックマーク・評価★・感想・レビューなどなど応援いただければ励みになります!
Bu romanı okuduğunuz için teşekkür ederiz (hebraw)
~・~・~・~・~・~・~・~・
元からの肌の色もあるし、ドレスを着ていく場所や、行事の内容によっても色合いを変えなくてはならない。
でも、体形に関係なく、ほとんどの令嬢や夫人が似ているデザインやスタイルのドレスを着ているから、自分の体形に合ったドレスを把握するべきだ、なんて言われたのは、カリーナにとっても初めてだった。
「……ご領主さまが見せてくださいましたドレスは、そのどれも……本当に素晴らしいものばかりでした。繊細な飾り付けや、優雅なドレスライン。そのドレスを着ているご領主さまは、とても美しく、それでいて厳かな雰囲気が漂っていました」
「まあ……、それは、ありがとうございます」
セシルも、面と向かってここまで直球で褒められたのは初めてである。
「コルセットもしていないのに、そのドレスの全てが全て、ご領主さまにとても良く似合っていらっしゃいました……。それで……、ご領主さまのドレス選びの間も、素材選びの間も、ずっと考えておりまして……。…………ご領主さまに一番似合うドレスを、ウェディングドレスを作るのなら、今のデザインでは、ない方が、良いのではないと、思ってしまい……」
「今のデザインでなければ、どのようなデザインを考えているのですか?」
「実は……コルセットなしで、それで……、こちらのお針子達から見せてもらった、ドレスや服のデザインパターンを、もう一度、お願いして、見させてもらったのですが……、領主様には、あの……お持ちのドレスのような、ドレスの裾の広がったようなドレスがよくお似合いではないかと……」
もごもご、もごもごと、はっきりしない説明をしているカリーナの前で、キラリン、とセシルの瞳が光っていたのを、カリーナは知らない。
コルセットなし。
その一言で、セシルの注意が一気に集中していたのだ。
コルセット使用は、この時代、どの王国でも至極当たり前の習慣になっている。ノーウッド王国だって、夫人や令嬢達が着ているドレスは、アトレシア大王国の流行っているドレスとさして変わりはない。
母親のレイナだって、いつもコルセット身に着けている。
だから、コルセット付きのウェディングドレスを紹介された時、アトレシア大王国の習慣に習い、セシルのウェディングドレスもコルセット付きのドレスになるだろうなと、セシルは初めから諦めていた。
なにしろ、現世(なのか前世) の記憶があるセシルは、幼い時から、自分の好んだドレスや服を作るように励んでいたから、領地のお針子達も、そうやって、セシルにしっかりと特訓された者達ばかりだ。
それで、今日このかた、実は、セシルはコルセット付きのドレスを着たことがなかったのだ。
普段は、夫人や令嬢達も、コルセットの締めを少々緩めてしまっても許されるのだろうが、今回は、王国内の正式な婚儀である。
国を挙げての式典、である。
元王子殿下の婚儀である。
そうなると、コルセットで死ぬほど腰を締め付け、これでもかっ! ――というほどの勢いで締め付けた、ものすごい細い腰を見せつけなければならないだろうな……と、密かに、その嫌な問題だけがセシルの悩めるところだったのだ。
今、コルセットなしで、なんて言いましたよね?
「裾が広がっているドレスとは、どのスタイルですか?」
「えーと……、あのぉ……、マーメイドスタイルも素敵でした。トランペット、ですか?」
「そうですね。フィット・アンド・フレア(Fit & Flare) も、よく使います」
「ああっ、そうです。その、“フィット・アンド・フレア”も、優雅な形で、とても美しいと思います。ただ。そういう風に、少々、体のラインを見せつけてしまったら……」
周囲から、王子の婚約者は男を誘い込んでいるのか――なんて、嫌な悪口を言われてしまうかもしれない。
「それで……、こちらのお針子達から、ドレスが膨らんで見えるかのように、ドレスの上から軽い生地のフレアを何段も重ねたり、長いレースを重ねてドレスに見えるにしたり工夫をしたら良いのではないか、と……提案されまして……。そのように、領主様がよく提案してくださったから、と……」
「そうですね」
簡単にセシルの了承を得て、パッと、カリーナが顔を輝かす。
「ですから、流れるような裾を伸ばして、その上から、フレアを重ねてボリュームを見せたら、いいんじゃないかと思いまして。こちらで流行っているレースを……、わたし達が作り上げるのは、たくさん時間がかかってしまうと思うんです……。レースは無理だとしても、刺繍をふんだんに取り入れたり、宝石の削り粉や、余った宝石の欠片をフレアの部分にまぶしたら、光に反射して、それはもう……きれいな仕上がりになるのではないかと」
「いい案ですね」
「そうですかっ?!」
あまりに嬉しくて、つい、カリーナの顔が緩んでしまう。
「デザイン画はできているのですか?」
「はいっ。一応、そのコンセプトで、数枚用意してあります」
「では、トップはどうするのです?」
「トップは……、ネックレスを強調したいので、オフショルダー気味ですが、そこまで肩を出さず、鎖骨を見せて、スクエア型にしようか、ハート型にしようか、今、考えています。カー・サルヴァソンさんに聞いて、大体のティアラの形も理解しましたので、ベールの長さもどうしようか、考えています。ただ、顔を隠すだけではなく、ドレスの裾が伸びていますから、ベールも流れるような形にできたらな、なんて……」
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